【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

文字の大きさ
14 / 62

男に再会しました。

しおりを挟む

「ユリア.......大丈夫??」


妖精がそう聞いてきた時には、私の息は既に上がっていて、足がふらふらになっていた。



なんの考えも無く勢いで逃げてきちゃったけど、ここからどうしよう。



抱えていた妖精達は3人とも私の腕から抜け出し、心配そうに顔を覗き込んできた。



「ごめんね、大丈夫だよ。

あなた達こそ、私の妹に怯えていたようだったけど、もう大丈夫なの?」

妖精たちの表情を確認しながらそう聞いた。

とりあえず落ち着いている様子ではあるけど。   
 

「私たちも大丈夫だよ。」


ルクスとイグニスの顔を見てからエリザが私に答えた。


「良かった。ローラがやっぱり怖かった?」


そう聞くと、エリザとルクスとイグニスが顔を見合せた。



「ううん、怖かったというより、動揺してしまって。


あの顔、見覚えのある顔なの。」




そうなの?

もしかして、ローラもあの森へ足を運んだことがあるのだろうか。


「そう。でも、怯えていたわけじゃないなら安心したわ。」


妖精に微笑んだ後、辺りを見てふと思った。


そういえば、絵を貰ってくれた男の人と会ったのもこの場所だったな。


なんとなく、今日もいたらいいのにな、なんて心の中で少し考えた時だった。


「また会えたな、フリージア。」


突然後ろから聞こえてきた低い声。





その声に振り向くと、正に先日ここで絵を渡した男が立っていた。

格好も相変わらずフードをかぶり、その下には貴族が着ていそうな高貴な衣服を身にまとっている。

あの時と同じだ。

すごい、なんて偶然なの!

それとも、元々この辺をよく通る人なのかな?
 




「お、お久しぶりです。」

少し吃りながら言葉を返す。

相変わらず、今日も見ていて目が満足する顔だ。


私の名前、覚えててくれたんだ。




「この前と同じで、困った顔をしているな。」



男が眉を潜めながらそういった。



え、私、そんなに表情に出ているのかな??


確かに、この前も今も困っている状況だけども。





「また、店を探しているのか?」



そう聞かれて首を振った。

違う、今私が求めているのは.......。




「どこか、静かで落ち着く場所を知りませんか?」



心を落ち着かせる場所に行きたい。考えを整理したい。


ローラのあんな顔を見てしまったから、まだ少し動揺している。




私の言葉に男は少し考える素振りを見せてから口を開いた。



「案内するから、着いて来い。」





言われるがまま、男の後ろについて行った。









どれくらい歩いただろうか。

足が疲れ、そろそろどこかで座って休憩したい気持ちが出てきた頃。




「着いたぞ。」



男がそう言って私を見たので顔を上げた。




「.......わあ!!」



目の前には海が広がっていた。


ここは港なのだろうか。


鎖で繋がれた船が何隻か漂っていた。




「最近別の場所にここより大きな港ができたから、
ここはあまり使われなくなったんだ。

だから誰も来ないし、落ち着いてゆっくり過ごせるぞ。」




その言葉通り、付近に人影は見当たらない。




海なんて、この世界に来てからは初めて見た。


久しぶりだな。



波の音、潮の匂い。


砂浜の上に座ろうとする私を見て、男がポケットからハンカチを取り出した。


「ちょっと待て。座るならせめてこの上にしてくれ。

汚れたら困るだろう?」




そう言いながらハンカチを敷く男に思わず私は慌ててしまう。



「そんなのいいですよ!ハンカチが汚れますし!」




私の言葉に男が顔をしかめた。



「.......君は本当に伯爵家の令嬢なのか?

今の発言を聞く限り、そうは見えない。着ている衣服も、平民の方が綺麗なものを着ているぞ?」




.......返す言葉がない。


こんなことを言われるくらいなら、大人しくハンカチの上に座れば良かった。



責められている気分になり落ち込んでいると、男が取り繕うように言葉を並べた。



「傷付けるわけで言ったんじゃないんだ。不快にさせたならすまない。

とにかく、ご令嬢を砂の上に座らせることなんて出来ないから、この上に座ってくれ。」




そう言われて、今度は遠慮せず、大人しく敷いてくれたハンカチの上に腰を下ろした。





「さっきの続きだが、伯爵家の令嬢なのは本当か?」


「本当ですよ。」


男が再びそう聞いてきたので、少しむっとしながら答えた。


「では、家にお金があまり無いのか?」


 「そうではありません.......ただ、」

心臓の鼓動が少し早くなる。

こんな着古したドレスを着ていれば、そう思うのも仕方がない。


だけど、改めて第三者からそう言われてしまうと、自分がいかに冷遇されているのか指摘されているようで心が傷付いた。



お金が無いのでは無く、父は私にお金を使わないのだと、自分で言うのは惨めだ。



惨めだけど、


「私は愛されていないのです。」



でも、誰かに聞い欲しいと思ってしまった。

ユリアのことを。

今の私の事を.......。


男はそれを聞いてから、特に何も言わなくなった。




同情したのだろうか。

それとも、他人の家庭事情にこれ以上首を突っ込むのは野暮だとでも思ったのか。



お互い無言になったが、波の音が聞こえるせいか、気まずくはなかった。






しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生賢妻は最高のスパダリ辺境伯の愛を独占し、やがて王国を救う〜現代知識で悪女と王都の陰謀を打ち砕く溺愛新婚記〜

紅葉山参
恋愛
ブラック企業から辺境伯夫人アナスタシアとして転生した私は、愛する完璧な夫マクナル様と溺愛の新婚生活を送っていた。私は前世の「合理的常識」と「科学知識」を駆使し、元公爵令嬢ローナのあらゆる悪意を打ち破り、彼女を辺境の落ちぶれた貴族の元へ追放した。 第一の試練を乗り越えた辺境伯領は、私の導入した投資戦略とシンプルな経営手法により、瞬く間に王国一の経済力を確立する。この成功は、王都の中央貴族、特に王弟公爵とその腹心である奸猾な財務大臣の強烈な嫉妬と警戒を引き寄せる。彼らは、辺境伯領の富を「危険な独立勢力」と見なし、マクナル様を王都へ召喚し、アナスタシアを孤立させる第二の試練を仕掛けてきた。 夫が不在となる中、アナスタシアは辺境領の全ての重責を一人で背負うことになる。王都からの横暴な監査団の干渉、領地の資源を狙う裏切り者、そして辺境ならではの飢饉と疫病の発生。アナスタシアは「現代のインフラ技術」と「危機管理広報」を駆使し、夫の留守を完璧に守り抜くだけでなく、王都の監査団を論破し、辺境領の半独立的な経済圏を確立する。 第三の試練として、隣国との緊張が高まり、王国全体が未曽有の財政危機に瀕する。マクナル様は王国の窮地を救うため王都へ戻るが、保守派の貴族に阻まれ無力化される。この時、アナスタシアは辺境伯夫人として王都へ乗り込むことを決意する。彼女は前世の「国家予算の再建理論」や「国際金融の知識」を武器に、王国の経済再建計画を提案する。 最終的に、アナスタシアとマクナル様は、王国の腐敗した権力構造と対峙し、愛と知恵、そして辺境の強大な経済力を背景に、全ての敵対勢力を打ち砕く。王国の危機を救った二人は、辺境伯としての地位を王国の基盤として確立し、二人の愛の結晶と共に、永遠に続く溺愛と繁栄の歴史を築き上げる。 予定です……

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...