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男に再会しました。
しおりを挟む「ユリア.......大丈夫??」
妖精がそう聞いてきた時には、私の息は既に上がっていて、足がふらふらになっていた。
なんの考えも無く勢いで逃げてきちゃったけど、ここからどうしよう。
抱えていた妖精達は3人とも私の腕から抜け出し、心配そうに顔を覗き込んできた。
「ごめんね、大丈夫だよ。
あなた達こそ、私の妹に怯えていたようだったけど、もう大丈夫なの?」
妖精たちの表情を確認しながらそう聞いた。
とりあえず落ち着いている様子ではあるけど。
「私たちも大丈夫だよ。」
ルクスとイグニスの顔を見てからエリザが私に答えた。
「良かった。ローラがやっぱり怖かった?」
そう聞くと、エリザとルクスとイグニスが顔を見合せた。
「ううん、怖かったというより、動揺してしまって。
あの顔、見覚えのある顔なの。」
そうなの?
もしかして、ローラもあの森へ足を運んだことがあるのだろうか。
「そう。でも、怯えていたわけじゃないなら安心したわ。」
妖精に微笑んだ後、辺りを見てふと思った。
そういえば、絵を貰ってくれた男の人と会ったのもこの場所だったな。
なんとなく、今日もいたらいいのにな、なんて心の中で少し考えた時だった。
「また会えたな、フリージア。」
突然後ろから聞こえてきた低い声。
その声に振り向くと、正に先日ここで絵を渡した男が立っていた。
格好も相変わらずフードをかぶり、その下には貴族が着ていそうな高貴な衣服を身にまとっている。
あの時と同じだ。
すごい、なんて偶然なの!
それとも、元々この辺をよく通る人なのかな?
「お、お久しぶりです。」
少し吃りながら言葉を返す。
相変わらず、今日も見ていて目が満足する顔だ。
私の名前、覚えててくれたんだ。
「この前と同じで、困った顔をしているな。」
男が眉を潜めながらそういった。
え、私、そんなに表情に出ているのかな??
確かに、この前も今も困っている状況だけども。
「また、店を探しているのか?」
そう聞かれて首を振った。
違う、今私が求めているのは.......。
「どこか、静かで落ち着く場所を知りませんか?」
心を落ち着かせる場所に行きたい。考えを整理したい。
ローラのあんな顔を見てしまったから、まだ少し動揺している。
私の言葉に男は少し考える素振りを見せてから口を開いた。
「案内するから、着いて来い。」
言われるがまま、男の後ろについて行った。
どれくらい歩いただろうか。
足が疲れ、そろそろどこかで座って休憩したい気持ちが出てきた頃。
「着いたぞ。」
男がそう言って私を見たので顔を上げた。
「.......わあ!!」
目の前には海が広がっていた。
ここは港なのだろうか。
鎖で繋がれた船が何隻か漂っていた。
「最近別の場所にここより大きな港ができたから、
ここはあまり使われなくなったんだ。
だから誰も来ないし、落ち着いてゆっくり過ごせるぞ。」
その言葉通り、付近に人影は見当たらない。
海なんて、この世界に来てからは初めて見た。
久しぶりだな。
波の音、潮の匂い。
砂浜の上に座ろうとする私を見て、男がポケットからハンカチを取り出した。
「ちょっと待て。座るならせめてこの上にしてくれ。
汚れたら困るだろう?」
そう言いながらハンカチを敷く男に思わず私は慌ててしまう。
「そんなのいいですよ!ハンカチが汚れますし!」
私の言葉に男が顔をしかめた。
「.......君は本当に伯爵家の令嬢なのか?
今の発言を聞く限り、そうは見えない。着ている衣服も、平民の方が綺麗なものを着ているぞ?」
.......返す言葉がない。
こんなことを言われるくらいなら、大人しくハンカチの上に座れば良かった。
責められている気分になり落ち込んでいると、男が取り繕うように言葉を並べた。
「傷付けるわけで言ったんじゃないんだ。不快にさせたならすまない。
とにかく、ご令嬢を砂の上に座らせることなんて出来ないから、この上に座ってくれ。」
そう言われて、今度は遠慮せず、大人しく敷いてくれたハンカチの上に腰を下ろした。
「さっきの続きだが、伯爵家の令嬢なのは本当か?」
「本当ですよ。」
男が再びそう聞いてきたので、少しむっとしながら答えた。
「では、家にお金があまり無いのか?」
「そうではありません.......ただ、」
心臓の鼓動が少し早くなる。
こんな着古したドレスを着ていれば、そう思うのも仕方がない。
だけど、改めて第三者からそう言われてしまうと、自分がいかに冷遇されているのか指摘されているようで心が傷付いた。
お金が無いのでは無く、父は私にお金を使わないのだと、自分で言うのは惨めだ。
惨めだけど、
「私は愛されていないのです。」
でも、誰かに聞い欲しいと思ってしまった。
ユリアのことを。
今の私の事を.......。
男はそれを聞いてから、特に何も言わなくなった。
同情したのだろうか。
それとも、他人の家庭事情にこれ以上首を突っ込むのは野暮だとでも思ったのか。
お互い無言になったが、波の音が聞こえるせいか、気まずくはなかった。
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