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波の音を聴きながら、2人で海を眺めていた。
男は私に何か聞くわけでもなく、ただずっとそばに居てくれた。
だから私も、ほぼ初対面の男に気を遣うことなく、頭を空っぽにして海を見つめていた。
眺めているうちに、そういえば転生前の私はこういう日々に憧れていた事を思い出した。
平日は働いて、休みの日には家のことをして。
働く日も休みの日も、一日はあっという間に終わっていく。
そんな忙しない日々の中、会社でパソコンと向き合っている時にふと思った。
私ってそういえば、最近空を見上げたことあったっけ?
もうどれくらい、青空を眺めていないんだろう?
天気なんて、ニュースで確認してそれで終わりだ。
朝の通勤時なんて前しか見ていないし、会社に行けば、出てくる頃にはもう日は沈んでいる。
休みの日は、ほぼ寝ているし。
だからもうずっと、社会人になってからはゆっくり空なんか見ていない。
それに気づいてしまってからは、度々思うようになった。
こんなに忙しい日々ではなく、空をぼーっと眺めたりしたい。
会社で席が隣のおばさんの、永遠に続きそうな愚痴ではなく、
波の音を聴きながら海辺でゆっくり寛いだりしたいと。
そして気が向いたら絵を描いて、そんな毎日が送れたらいいのにな、なんて思いながら働いていた。
やっぱり、この世界に来て良かった。
あの時、転生すると答えて良かった。
あの日々に比べたら、家族から冷たくあしらわれることも、ローラの存在も可愛いものよ。
ローラと妖精の関係性は気になるけど、あの表情を見る限り関わらない方が良い気がする。
どうせあともう何日か経てばあの家を出るのだし、それまでローラの事を上手く避ければいいだけの事。
そうでしょう?わたし。
両手で自分の頬を叩き、気合いを入れ直した。
そんな私を見て、男が少し驚いた表情をしている。
しまった、こういう行動も貴族の女性らしくないよね?
急に自分の顔を叩いているのを見たら、普通の人だってびっくりするだろうし。
また本当に貴族の娘なのかなんて疑われる前に何か話題を出して逸らさなければ。
そう思いながら、まだ男の名前すら知らないことに気がついた。
「ねえ、そういえば私は自己紹介したけど、あなたはしてくれないの?」
そう聞くと、男は少し間を空けてから答えた。
「俺の名前はテオだ。」
絶対に、テオの後に続く名前が有りそうだけど言いたくないのだろう。
道端で会ったような存在の私に、それ以上深く聞く権利は無いか。
会話をするのに必要なだけだし、呼び名が分かれば十分。
「そう。テオ、今日はありがとうね。おかげで少し心が軽くなった。
もし良かったら何かお礼させてよ!
私にできる範囲ならなんでもするわ。」
テオにお礼を伝えてから立ち上がり、大きく伸びをした。
良い気分転換になった。
初めて会った時も、絵を褒めてくれて元気が出たし、今日もテオのお陰で落ち着けたし、本人にそのつもりが無くても、私にとってテオは心の安定剤みたいな存在だな。
どうせもう会うことは無いだろうし、最後に何かテオにお礼をしたい。
なんて考えていると、テオも立ち上がり私を見つめた。
「.......それなら、3日後に城で開かれる夜会にパートナーが必要なのだが、頼まれてくれないか?」
その言葉に思わずたじろいだ。
夜会って、あの貴族たちが集まって踊ったりするパーティの事よね??
私、踊れないしそもそも着ていくドレスも無いんだけど.......。
「私は踊れませんし、夜会に着ていくドレスも有りません。.......身に余る光栄ですが、パートナーは無理です。」
そう断ると、テオは考える仕草をしてみせた。
「踊る必要はない。俺の傍に居てくれるだけでいい。ドレスもこちらで用意しよう。それならいいか?」
そこまでしてくれるなんて、本当にパートナーが見つからなくて困っているのだろうか?
テオの顔面偏差値なら、わざわざこんな風にお願いしなくてもパートナーになりたい女性はいっぱいいるんじゃ.......?
そう悩んでいると、考えを見透かしたかのようにテオが口を開いた。
「俺は面倒な女が嫌いなんだ。確か近々婚約を控えていると言っていたな?
お前をパートナーに連れていけば、夜会中に他の女のようにしつこく結婚してほしいなどと迫ってくることは無いだろう?」
もううんざりしているんだ、と付け加えてテオは頭を抱えた。
モテすぎてもしんどいのね、可哀想に。
まあ、そういう事ならいいのかな?
こっちの世界の事はよく分からないけど、とりあえずまだ正式にローザン・モンテヌ伯爵と婚約したわけじゃないからいいか。
今の家族にもこれから嫁ぐところにも夜会に連れて行ってもらえないかもしれないし。
最後の思い出作りとでも思って。
「分かりました。そういう事ならパートナーとして参加いたします。」
私の返事に、テオは満足したように頷いて見せた。
「では、明日の朝ドレスを買いに行こう。また、今日会った場所で待っている。」
テオの言葉に頷いた。
少しだけ、胸がときめく。
自分好みのドレスを選べるなんて楽しみ.......!
胸のときめきはテオと別れて屋敷に戻ってからも続き、そのときめきのおかげで、もうローラの冷たい顔を思い出すことは無かった。
妖精達と談笑しながら、自分の部屋へと戻った。
誰かが柱の影から、そんな私を見つめているとも知らずに.......。
男は私に何か聞くわけでもなく、ただずっとそばに居てくれた。
だから私も、ほぼ初対面の男に気を遣うことなく、頭を空っぽにして海を見つめていた。
眺めているうちに、そういえば転生前の私はこういう日々に憧れていた事を思い出した。
平日は働いて、休みの日には家のことをして。
働く日も休みの日も、一日はあっという間に終わっていく。
そんな忙しない日々の中、会社でパソコンと向き合っている時にふと思った。
私ってそういえば、最近空を見上げたことあったっけ?
もうどれくらい、青空を眺めていないんだろう?
天気なんて、ニュースで確認してそれで終わりだ。
朝の通勤時なんて前しか見ていないし、会社に行けば、出てくる頃にはもう日は沈んでいる。
休みの日は、ほぼ寝ているし。
だからもうずっと、社会人になってからはゆっくり空なんか見ていない。
それに気づいてしまってからは、度々思うようになった。
こんなに忙しい日々ではなく、空をぼーっと眺めたりしたい。
会社で席が隣のおばさんの、永遠に続きそうな愚痴ではなく、
波の音を聴きながら海辺でゆっくり寛いだりしたいと。
そして気が向いたら絵を描いて、そんな毎日が送れたらいいのにな、なんて思いながら働いていた。
やっぱり、この世界に来て良かった。
あの時、転生すると答えて良かった。
あの日々に比べたら、家族から冷たくあしらわれることも、ローラの存在も可愛いものよ。
ローラと妖精の関係性は気になるけど、あの表情を見る限り関わらない方が良い気がする。
どうせあともう何日か経てばあの家を出るのだし、それまでローラの事を上手く避ければいいだけの事。
そうでしょう?わたし。
両手で自分の頬を叩き、気合いを入れ直した。
そんな私を見て、男が少し驚いた表情をしている。
しまった、こういう行動も貴族の女性らしくないよね?
急に自分の顔を叩いているのを見たら、普通の人だってびっくりするだろうし。
また本当に貴族の娘なのかなんて疑われる前に何か話題を出して逸らさなければ。
そう思いながら、まだ男の名前すら知らないことに気がついた。
「ねえ、そういえば私は自己紹介したけど、あなたはしてくれないの?」
そう聞くと、男は少し間を空けてから答えた。
「俺の名前はテオだ。」
絶対に、テオの後に続く名前が有りそうだけど言いたくないのだろう。
道端で会ったような存在の私に、それ以上深く聞く権利は無いか。
会話をするのに必要なだけだし、呼び名が分かれば十分。
「そう。テオ、今日はありがとうね。おかげで少し心が軽くなった。
もし良かったら何かお礼させてよ!
私にできる範囲ならなんでもするわ。」
テオにお礼を伝えてから立ち上がり、大きく伸びをした。
良い気分転換になった。
初めて会った時も、絵を褒めてくれて元気が出たし、今日もテオのお陰で落ち着けたし、本人にそのつもりが無くても、私にとってテオは心の安定剤みたいな存在だな。
どうせもう会うことは無いだろうし、最後に何かテオにお礼をしたい。
なんて考えていると、テオも立ち上がり私を見つめた。
「.......それなら、3日後に城で開かれる夜会にパートナーが必要なのだが、頼まれてくれないか?」
その言葉に思わずたじろいだ。
夜会って、あの貴族たちが集まって踊ったりするパーティの事よね??
私、踊れないしそもそも着ていくドレスも無いんだけど.......。
「私は踊れませんし、夜会に着ていくドレスも有りません。.......身に余る光栄ですが、パートナーは無理です。」
そう断ると、テオは考える仕草をしてみせた。
「踊る必要はない。俺の傍に居てくれるだけでいい。ドレスもこちらで用意しよう。それならいいか?」
そこまでしてくれるなんて、本当にパートナーが見つからなくて困っているのだろうか?
テオの顔面偏差値なら、わざわざこんな風にお願いしなくてもパートナーになりたい女性はいっぱいいるんじゃ.......?
そう悩んでいると、考えを見透かしたかのようにテオが口を開いた。
「俺は面倒な女が嫌いなんだ。確か近々婚約を控えていると言っていたな?
お前をパートナーに連れていけば、夜会中に他の女のようにしつこく結婚してほしいなどと迫ってくることは無いだろう?」
もううんざりしているんだ、と付け加えてテオは頭を抱えた。
モテすぎてもしんどいのね、可哀想に。
まあ、そういう事ならいいのかな?
こっちの世界の事はよく分からないけど、とりあえずまだ正式にローザン・モンテヌ伯爵と婚約したわけじゃないからいいか。
今の家族にもこれから嫁ぐところにも夜会に連れて行ってもらえないかもしれないし。
最後の思い出作りとでも思って。
「分かりました。そういう事ならパートナーとして参加いたします。」
私の返事に、テオは満足したように頷いて見せた。
「では、明日の朝ドレスを買いに行こう。また、今日会った場所で待っている。」
テオの言葉に頷いた。
少しだけ、胸がときめく。
自分好みのドレスを選べるなんて楽しみ.......!
胸のときめきはテオと別れて屋敷に戻ってからも続き、そのときめきのおかげで、もうローラの冷たい顔を思い出すことは無かった。
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