【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

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ドレスを買いに行きました1

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「ユリア!起きて、ユリア!」



妖精が耳元で騒ぐ声で渋々目を開ける。


「.......もう朝なの?」


そう聞くと、エリザが呆れた声で言った。



「そうよ。昨日、テオと約束したでしょう?」



そうだ。今日は明後日開かれる夜会のためのドレスを買いに行く日。



どんなデザインのドレスがあるのかな?


わくわくしながらベッドから降りて支度を進めた。








屋敷を出て、テオが待つ場所へ向かった。

細かい時間は決めていなく、朝に待ち合わせと言われただけなんだけど、さすがに早く来すぎたかな?


そう思いながら歩いていると、意外にもまだいないと思っていたはずのテオの背中が見えた。





「テオ!もう来てたのね!」



そう言いながら駆け寄ると、背中を向けていたテオがこちらに振り向いた。

今日も相変わらずフードを被っていて、身を隠すようにしている。

こういうのって、元いた世界では芸能人とかがやりそうなものだけど、テオは周りにバレると不味い程の有名人なのかな?


「.......ああ。」



テオは私と目は合わさず、素っ気ない返事を返してきた。


そういえば、元カレもこんな風に素っ気ない返事をする人だった。


なんだか懐かしいかもしれない。


そう思い、つい「ふふっ」と笑い声を出してしまった。

そんな私を見てテオが眉をしかめた。ようやくテオの目が私を捉える。



「何が可笑しい?」



「い、いえ!なにも!気にしないでください!」



不機嫌になるテオに慌てて取り繕うように言う。


全く、難しいよテオは。




「まあいい。
近くに馬車を待たせているからそれに乗って仕立て屋に行こう。」


そう言いながら歩き出すテオに、こちらも急いで歩調を合わせる。



馬車なんて人生で初めて乗るよ!

好奇心旺盛な私は初めての経験に胸をふくらませた。

どんな乗り心地なんだろう?




テオの後に続きたどり着いた馬車は、想像以上に豪華な装飾品が施された馬車だった。




やっぱりテオって、どう考えてもかなり身分が高そうだ。

少なくとも、伯爵家以上の家柄で間違いない気がする。

「早く乗れ。手を出せ。」


考察しながら馬車を見上げていると、先に馬車に乗り込んだテオが急かすように私へ手を差し出した。


「.......!はい!」


慣れない手つきでテオに手を差し出し、なんとか初の馬車に乗り込んだ。




御者が手綱を握り、馬車が動き出した。



つ、ついに!馬車が動いた!!



そう胸をときめかせたのもつかの間、想像以上に揺れる馬車に忍耐力が試されることになってしまった。



やっぱり、元いた世界の車に勝る乗り心地なわけがないのよね、馬車が。


それに、当たり前だがそこまで馬車のスピードは早くない。

まあ、自分の足で歩くよりはマシなのかな?
こっちは歩き疲れもしないし。


でも.......、ともどかしく思いながら馬車の窓から景色を眺める。

今から向かう場所も、車なら一瞬で着くのにな、なんて思いながら長い時間馬車に揺られていた。




「.......着いたぞ。」


テオの言葉で、やっとこの乗り物から解放されるのだと安堵した。

テオが乗る時同様、先に降りて私を馬車から降りるのに手を貸してくれた。

こういう、さらっとエスコート出来てしまうのも育ちの良さが伺える。




「さあ、どれでもいい。好きなドレスを選べ。」


テオがそう言いながら入った店には、目に入るもの全てが輝いているように見える、素敵なドレスがズラっと並んでいた。




どうしよう、どんなドレスがいいかな?

ローラはリボンが沢山ついているピンクのドレスを良く着ているけど、私はそういうのあんまりこのみじゃないしな。


そう思いながら色々なドレスを手に取り、慎重に選ぶ。


派手すぎず、かといってテオに恥をかかせないような、高級そうでオシャレなドレス.......。



試行錯誤しながら、条件を満たすドレスを1着手に取った。



「試着ってしてもいいですか?」



傍に居た店員にお願いをすると、ドレスルームへ案内された。


店員も一緒に入ってきたので、どうやら着替えを手伝ってくれるらしい。



屋敷のメイドよりも丁寧なもてなしに、つい感動しながら選んだドレスに着替えた。

店員はドレスに着替え終わった私に、ドレスに合うようにと、ヘアセットもついでにしてくれた。


おかげで鏡に映るユリアは、今までで1番綺麗な姿をしていた。





ドレスルームを出て、テオのいる場所へ戻る。




「どうかな?」


そう聞くと、テオは私をまじまじ見ながらふっと笑った。




「悪くない。いいんじゃないか?」


その言葉に、つい顔が熱くなった。

異性に容姿を褒められるなんて.......もちろんユリアは美人だけど、中身が私だからつい照れてしまう。



「このドレスと、このドレスに似合うネックレスや髪飾りも売ってくれ。」




テオの言葉に店員が張り切りながら私に似合う物を何個か見繕い、テオは全てそれを買ってくれた。



太っ腹すぎる.......!

いや、この世界の貴族はこういう買い方が普通なのかな?


まだ価値観が前世のままの私は、購入金額に若干引きつつお店を後にした。





「あの、ありがとうね!ドレスもアクセサリーも.......こんなに。」

 
帰りの馬車でテオにお礼を伝えた。

この世界に来てから着古したドレスにしか袖を通していなかったので、理由が何であれテオには感謝しかない。



テオは表情一つ変えず、私を横目で見た。




「......気にするな。夜会に出てくれるお礼だ。」


テオの言葉に感心してしまう。

素っ気ない態度は元彼と似ているけど、こういう所はまるで正反対だ。


何せ、私の元彼は別れた瞬間お金を請求してくるようなケチなのだから。



いや、待てよ。

でも元カレも最初はそんな素振り見せなかったし、もしかして。




「これ、ドレスの代金後から請求されるなんてないですよね.......?」



恐る恐るテオに聞いてみる。

お礼を言われても表情を変えなかったテオだが、この言葉には眉をしかめた。


「俺がそんなに器の小さい男に見えるか?」



「いえ!見えないです!」


あからさまに機嫌の悪くなるテオに、慌てて否定しなだめる。



目の前にいる男は、元カレじゃないんだからしっかりしなきゃ.......。



あの別れ際に言われた言葉が、いまだに尾を引いている。


早く忘れないと。



相変わらずゆっくり進む馬車に揺られながら、気持ちを切り替えるためにも近々開かれる夜会に思いを馳せた。





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