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ドレスを買いに行きました2
しおりを挟む「では、2日後の夜に迎えに来る。」
その言葉を聞くと共にテオと別れ、屋敷に戻った私は、自分の部屋にて夢見心地で買って貰ったドレスを眺めていた。
とても素敵なドレスだ。
テオと出会わなければ一生袖を通すことは無かったかもしれない。
私が嬉しそうにしているのを見てか、妖精たちもいつもよりテンションが高い。
「良いドレスを買って貰って良かったね!」
「ユリアがこれを着て、夜会に参加するのを早く見たいよ~」
妖精たちの言葉を聴きながらドレスを見ていたが、ふいに嫌な考えが頭をよぎった。
こんな高級そうなドレス、もし使用人やローラに見つかったら何されるか分からない……!
奪われるか、傷つけられるか、どうなるか分からないけど見つからないに越したことはない。
幸い、私の部屋は、ローラ達と違いメイドが毎日掃除に来ることもないので、部屋のどこかに隠しておけば見つかることは無い。
今日だって、家まで送るといったテオを断っり少し離れた所で馬車を降りてわざわざそこから歩いて帰ってきたんだから、誰にもこのドレスの存在は知られていないはず。
部屋を見渡し、隠して置けそうな場所を探す。
散々悩んだ結果、ベットの下くらいしか隠す場所が無かった。
本当はクローゼットに入れたいけど……でももし誰かが開けてしまったら……。
「どうしたの?」
私がドレスを持ったまクローゼットの前で立ち尽くしているのを見て、ルクスが話し掛けてきた。
「ドレスを隠せるような場所を探しているのよ。」
「なんで?隠さないとダメなの?」
ルクスの疑問はもっともだ。心配しすぎかもしれない。
だけど、
「大切だから、絶対奪われたくないの。」
絶対にね!
力強く答える私に、ルクスが頷いた。
「なら、僕に任せて!ドレスを透明にしてあげるよ。」
ルクスはそう答えた途端、体が光だし、同時にドレスも同じ光に包まれた。
そして、光が収まる頃には私の手に持っていたドレスは忽然と消えていた。
否、ドレスを持っている感触だけはそのままだ。
手は確かにドレスの生地を掴んでいる感覚だ。
なのにドレスは見えない。
ルクスは言葉通り、ドレスを透明にしてしまったようだ。
「ありがとう!これなら、大丈夫ね。」
ルクスについでにドレスと一緒に購入した装飾品も透明にしてもらい、まとめてクローゼットに閉まった。
これで一安心。
後は、夜会を待つだけだ。
思いのほか、楽しみにしている自分が居ることに驚く。
そして、楽しみになればなるほど、その先に待っている結婚が嫌になっていった。
絵が描ければ何でもいいのだが、この世界で貴族の女性の嗜みといえば、せいぜい刺繍とお茶会なんだとか。
そうメイド達が話しているのを最近耳にした。
だから、毎日誰とも会わず絵を描くユリアは貴族の女として恥ずべき存在なんだということを。
であれば、嫁ぎ先で自由に絵を描かせてもらえる可能性は低いだろう。
そして、私になる前の元々のユリアは、絵を描いてはいないが私と同じく部屋に引き込もっていたらしい。
そりゃあそうよね。
そもそもお茶会や社交活動して欲しいならまともなドレスを与えてあげなさいよ。
そういえば……、ユリアの魂はどうして居なくなってしまったのだろうか。
ここに来る前に、あの神と名乗る変な少年の言っていた言葉。
「ちょうど欠員の出た世界があるんだ。」
今までこの世界の事を理解するのに必死であまり考えてこなかったけど。
欠員ってなんだろう。
本当のユリアの魂は何処に行ったのだろうか。
あの少年にもう一度会えたら色々聞けるのにな。
そう思いながら、部屋の外を眺めた。
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