38 / 62
レインはとにかく謎が多い。
しおりを挟む街からレインと一緒に森に戻った私を、三人の妖精が無言で出迎えてくれた。
みんな私に話しかけたそうにはしているが、レインがいるから我慢しているようだ。
たしかに、これまで妖精と一緒に森以外の場所でも過ごしてきたが、ローラ以外で妖精の姿が見える人には会ったことが無い。
だから妖精たちと会話をすると、周りからは私が一人で何もないところに話しかけているように見えるらしく、不信がられることがあったのだ。
私もレインが帰ったらみんなに話しかけよう。
そう思っていた時だった。
「可愛い妖精たちだね。あの口うるさい男も、妖精の姿だとこんなに大人しいのか。」
レインがそう言ったのを聞いて、勢いよく振り返ってしまう。
そのせいで馬から落ちそうになってしまった。
「大丈夫かい?」
危なかった。
間一髪のところでレインが支えてくれたので、馬から落ちずに済んだ。
「ありがとう。・・・レインにはこの子たちが見えるんですか?」
お礼ついでに聞いてみる。
「ああ、見えるよ。はっきりとね。」
私と同じように、妖精が見える人に会うのはこれで二度目だ。
一度目はローラだった。
でも、ローラはそもそも妖精だったので、人間で妖精が見える人に会うのはレインが初めてだ。
エリザが前に、妖精の姿が見えるのは心が綺麗な人だけって言っていたけど。
それがその通りなら、レインは心が綺麗だということ・・・?
ついついレインの顔をじっと見てしまう。
レインがきょとんとした表情になった。
「僕の顔に何かついているかい?」
「い、いいえ。」
慌てて首を振ると、レインがニヤッと笑った。
「じゃあ、僕の美しい顔面に見惚れていたの?」
「それも違うから!!」
相変わらずのレインに思わずため息が出てしまう。
ほんとにナルシストなんだから。
もちろん、レインは整った顔をしているから、そうなってしまうのも仕方ないかもしれないけど。
「楽しそうね、ユリア。」
気が付くと、すぐそばにエリザが寄ってきていた。
レインが妖精の姿が見えると分かったので、遠慮せず話しかけてもいいと思ったのかもしれない。
「ユリアにとって、僕といるのは間違いなく楽しいと思うよ。」
私が返事をするよりも先に、レインが自信満々に答える。
「なんでレインが答えるのよ・・・。」
呆れながらついそう言ってしまった。
本当なら公爵家の身分の人にこんなため口をきいていいはずがないのに、レインがこんな感じなのでついつい敬語を忘れてしまう。
レインも、その辺はあまり気にしていない様子だった。
そんなレインだが、急に真面目な表情で私を見つめた。
「ユリア、ずっと言おうと思ってたんだけどさ。
女の子がこんな森で、一人で暮らすのは危ないよ。」
レインにそう言われたが、周りに飛ぶ妖精を見て答える。
「大丈夫よ。この子たちがいるから、1人じゃないし。」
しかしレインはそれでも不安が拭えないらしく、首を振った。
「それでは心許ないよ。妖精だけじゃ魔物に襲われたとき心配だ。」
その言葉を聞いて、若干不安が湧いてきた。
確かにそうだ。
どの程度の魔物か分からない以上、危険はあるかもしれない。
そう考えたら、急に怖くなってきてしまった。
魔物なんて、転生前はゲームでしか対峙したことがないから、上手く想像できないけど。
あっちの世界で例えるなら、熊に襲われるのと同等だろうか?
もしそうなら怖すぎる。襲われたらひとたまりもない。
ユリアの身体なんか細すぎて、一度噛みつかれただけで絶命してしまいそうだ。
そんな私に、レインが優しく声を掛けた。
「だから、今日から僕の屋敷においでよ。」
思わず顔を上げる。
レインの屋敷に・・・?
「だめよ、ユリアを連れて行かないで。」
エリザが私の前に飛び出し、レインをにらんだ。
ルクスとイグニスも同じようにレインを見る。
「今ユリアにとって街は危ないんだから。何も知らないのに、勝手に決めないで。」
レインがエリザを見つめて、やれやれと息を吐いた。
「もちろん、ユリアが頷けばの話さ。でも、要は妹に気をつければいいのだろう?
屋敷へは馬車で向かえば誰にも顔を見られないだろうし、屋敷に着いたら外に出ないようにすればいい。
ここで魔物に襲われるより、よっぽど安全だと思うけど。」
レインの言う通りだ。
でも・・・。
「でも」
私が口を開いたので、エリザもレインも私を見つめた。
「あなたもテオのようにローラの言いなりになってしまうかもしれない。
歌を聴いてしまったら。」
もうあんな風に裏切られるのは怖い。
それなら、最初からいない方がいい。
あの日の出来事は、自分が思ったより心に傷がついている。
レインが慰めるように、私の頭を優しく撫でた。
「ユリア、僕はローラの歌には操られないよ、絶対に。」
「どうしてそんな風に断言できるの?」
「それは・・・。」
レインは一瞬口ごもったが、すぐにまた口を開いた。
「ユリアがローラに操られないのと、同じ理由だ。」
「それって・・・?」
どういうこと?レインも私と同じ転生者という意味なの?
いやでも、もしそうならなぜ私が異世界から来たと分かったの?
浮かんでくる疑問を聞こうとしたら、レインが人差し指で私の口をふさいだ。
「だーめ。まだ、ユリアの質問には答えてあげられない。」
レインは意地悪そうに笑ってから、言葉をつづけた。
「知りたいなら、僕の屋敷に来るしかないよ。
そしたら、そのうち教えてあげる日が来るかもしれない。
・・・どうする?」
気になって仕方がない私はもう、こう答えるしかなかった。
「レインの屋敷に連れて行ってください。」
知りたい、レインのことを。
もし本当に私と同じなら、友達になれるかもしれないし。
今の状況では、味方がいるに越したことはない。
それに、本当にローラの歌声が効かないなら、かなり心強い味方になる。
0
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!
あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】
小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。
その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。
ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。
その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。
優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。
運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。
※コミカライズ企画進行中
なろうさんにも同作品を投稿中です。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない
魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。
そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。
ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。
イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。
ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。
いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。
離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。
「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」
予想外の溺愛が始まってしまう!
(世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!
目覚めたら大好きなアニメの悪役令嬢でしたが、嫌われないようにしただけなのに全員から溺愛されています
月影みるく
恋愛
目を覚ましたら、大好きだったアニメの世界。
しかも私は、未来で断罪される運命の悪役令嬢になっていた。
破滅を回避するために決めたことはただ一つ――
嫌われないように生きること。
原作知識を頼りに穏やかに過ごしていたはずなのに、
なぜか王族や騎士、同年代の男女から次々と好意を向けられ、
気づけば全員から溺愛される状況に……?
世界に一人しかいない光属性を持つ悪役令嬢が、
無自覚のまま運命と恋を変えていく、
溺愛必至の異世界転生ラブファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
