【完結】悪役令嬢に仕立てあげられそうですが、私は絵を描きたいだけなんです。

ぴえろん

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レインはとにかく謎が多い。

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街からレインと一緒に森に戻った私を、三人の妖精が無言で出迎えてくれた。


みんな私に話しかけたそうにはしているが、レインがいるから我慢しているようだ。

たしかに、これまで妖精と一緒に森以外の場所でも過ごしてきたが、ローラ以外で妖精の姿が見える人には会ったことが無い。

だから妖精たちと会話をすると、周りからは私が一人で何もないところに話しかけているように見えるらしく、不信がられることがあったのだ。


私もレインが帰ったらみんなに話しかけよう。

そう思っていた時だった。


「可愛い妖精たちだね。あの口うるさい男も、妖精の姿だとこんなに大人しいのか。」



レインがそう言ったのを聞いて、勢いよく振り返ってしまう。

そのせいで馬から落ちそうになってしまった。


「大丈夫かい?」

危なかった。

間一髪のところでレインが支えてくれたので、馬から落ちずに済んだ。


「ありがとう。・・・レインにはこの子たちが見えるんですか?」


お礼ついでに聞いてみる。


「ああ、見えるよ。はっきりとね。」


私と同じように、妖精が見える人に会うのはこれで二度目だ。

一度目はローラだった。

でも、ローラはそもそも妖精だったので、人間で妖精が見える人に会うのはレインが初めてだ。

エリザが前に、妖精の姿が見えるのは心が綺麗な人だけって言っていたけど。

それがその通りなら、レインは心が綺麗だということ・・・?



ついついレインの顔をじっと見てしまう。

レインがきょとんとした表情になった。


「僕の顔に何かついているかい?」


「い、いいえ。」


慌てて首を振ると、レインがニヤッと笑った。


「じゃあ、僕の美しい顔面に見惚れていたの?」


「それも違うから!!」


相変わらずのレインに思わずため息が出てしまう。

ほんとにナルシストなんだから。

もちろん、レインは整った顔をしているから、そうなってしまうのも仕方ないかもしれないけど。



「楽しそうね、ユリア。」


気が付くと、すぐそばにエリザが寄ってきていた。

レインが妖精の姿が見えると分かったので、遠慮せず話しかけてもいいと思ったのかもしれない。


「ユリアにとって、僕といるのは間違いなく楽しいと思うよ。」


私が返事をするよりも先に、レインが自信満々に答える。


「なんでレインが答えるのよ・・・。」


呆れながらついそう言ってしまった。

本当なら公爵家の身分の人にこんなため口をきいていいはずがないのに、レインがこんな感じなのでついつい敬語を忘れてしまう。


レインも、その辺はあまり気にしていない様子だった。


そんなレインだが、急に真面目な表情で私を見つめた。

「ユリア、ずっと言おうと思ってたんだけどさ。

女の子がこんな森で、一人で暮らすのは危ないよ。」


レインにそう言われたが、周りに飛ぶ妖精を見て答える。


「大丈夫よ。この子たちがいるから、1人じゃないし。」


しかしレインはそれでも不安が拭えないらしく、首を振った。


「それでは心許ないよ。妖精だけじゃ魔物に襲われたとき心配だ。」


その言葉を聞いて、若干不安が湧いてきた。


確かにそうだ。

どの程度の魔物か分からない以上、危険はあるかもしれない。


そう考えたら、急に怖くなってきてしまった。

魔物なんて、転生前はゲームでしか対峙したことがないから、上手く想像できないけど。

あっちの世界で例えるなら、熊に襲われるのと同等だろうか?

もしそうなら怖すぎる。襲われたらひとたまりもない。

ユリアの身体なんか細すぎて、一度噛みつかれただけで絶命してしまいそうだ。

そんな私に、レインが優しく声を掛けた。


「だから、今日から僕の屋敷においでよ。」


思わず顔を上げる。

レインの屋敷に・・・?


「だめよ、ユリアを連れて行かないで。」


エリザが私の前に飛び出し、レインをにらんだ。

ルクスとイグニスも同じようにレインを見る。


「今ユリアにとって街は危ないんだから。何も知らないのに、勝手に決めないで。」

レインがエリザを見つめて、やれやれと息を吐いた。

「もちろん、ユリアが頷けばの話さ。でも、要は妹に気をつければいいのだろう?

屋敷へは馬車で向かえば誰にも顔を見られないだろうし、屋敷に着いたら外に出ないようにすればいい。

ここで魔物に襲われるより、よっぽど安全だと思うけど。」


レインの言う通りだ。

でも・・・。


「でも」


私が口を開いたので、エリザもレインも私を見つめた。


「あなたもテオのようにローラの言いなりになってしまうかもしれない。

歌を聴いてしまったら。」


もうあんな風に裏切られるのは怖い。

それなら、最初からいない方がいい。


あの日の出来事は、自分が思ったより心に傷がついている。


レインが慰めるように、私の頭を優しく撫でた。



「ユリア、僕はローラの歌には操られないよ、絶対に。」


「どうしてそんな風に断言できるの?」



「それは・・・。」

レインは一瞬口ごもったが、すぐにまた口を開いた。


「ユリアがローラに操られないのと、同じ理由だ。」


「それって・・・?」

どういうこと?レインも私と同じ転生者という意味なの?

いやでも、もしそうならなぜ私が異世界から来たと分かったの?


浮かんでくる疑問を聞こうとしたら、レインが人差し指で私の口をふさいだ。


「だーめ。まだ、ユリアの質問には答えてあげられない。」


レインは意地悪そうに笑ってから、言葉をつづけた。

「知りたいなら、僕の屋敷に来るしかないよ。

そしたら、そのうち教えてあげる日が来るかもしれない。


・・・どうする?」


気になって仕方がない私はもう、こう答えるしかなかった。



「レインの屋敷に連れて行ってください。」


知りたい、レインのことを。

もし本当に私と同じなら、友達になれるかもしれないし。

今の状況では、味方がいるに越したことはない。


それに、本当にローラの歌声が効かないなら、かなり心強い味方になる。




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