2 / 27
「聖少女」となれ(1)
しおりを挟む
突然現れた『その人』に莉子、陽菜は、固まるしかなかった。
姉妹の使っている部屋に出現した『その人』は、ガブリエルと名乗り、
「あなた方には、『聖少女』になってもらいます」
と告げた。
ガブリエルは女性らしい柔らかな顔立ちに、頭の後ろで結われたポニーテール、中世ヨーロッパ風の赤いドレスに白い羽根を持ち合わせていた。
美女といってもいいくらいなのに、発する声は男性のように低い。
ガブリエルのそのギャップと、紡ぎ出された言葉に、莉子はあっけにとられていた。
「何者? あなた」
「わたくしですか? 天使ですよ」
陽菜は怪しんで、目をすがめた。
「本当に天使なの?」
「本当ですよ」
言うなりガブリエルは、部屋中を花園にし、
「陽菜、あなたは怪我をしていますね」
と、骨折していた陽菜の左腕を治した。
陽菜は恐る恐る左腕を回してみた。
「痛くない! ……りこちゃん!!」
彼女は、反射的に姉の背後に隠れた。
しばし呆然としていた莉子は、気を取り直し、背中までの長い髪を揺すりながら首を振った。
「あなたが天使ということは信じるわ、一応。でも聖少女って何? 誰が言ったの?」
冷ややかな口調にも、ガブリエルは動じない。
「ミカエル様です」
「は?」
「あたし、知ってる! 天使の長でしょ!?」
陽菜が叫んだ。迷惑そうに顔をしかめているのが、気配でわかる。
ガブリエルは頷いた。
「今の人間界は、腐敗しています。人が人を殺す、盗みをはたらく。罪を数えたらきりがありません。そこでわたくしたちの神は、悪い人間を監視して裁く人間を決めるため、ミカエル様に意見を求められました。そして決まったのが、小鳥遊姉妹。あなた方です」
「……」
莉子たちは顔を見合わせた。あまりにも突飛すぎて、いまいち実感がわかない。
「あたし、やだ」
最初に口を開いたのは陽菜だった。
「人が人を裁くなんて、傲慢もいいところだよ。そういうことは、天使がやればいいんだよ。りこちゃんもそう思うよね!?」
中学生の妹にそう言われ、大学生の莉子は頷くしかなかった。
だが、ガブリエルは首を横に振る。
「かつて、人間を見張る天使たちが堕天使になった経緯があるので、それはできません」
陽菜は負けじと言い募る。
「あたしたちが、悪いことをしないという保証はないでしょう?」
そして、莉子がたたみかける。
「そういうこと。わかった? 帰ってちょうだい」
ガブリエルは、束ねた長い髪を揺らしながら首を振り、目を伏せた。
勝った! と莉子は思った。しかしその時、
「そうはいかない」
言葉とともに現れたのは、グレーのスーツを着た、長めの白髪の若い男だった。
姉妹の使っている部屋に出現した『その人』は、ガブリエルと名乗り、
「あなた方には、『聖少女』になってもらいます」
と告げた。
ガブリエルは女性らしい柔らかな顔立ちに、頭の後ろで結われたポニーテール、中世ヨーロッパ風の赤いドレスに白い羽根を持ち合わせていた。
美女といってもいいくらいなのに、発する声は男性のように低い。
ガブリエルのそのギャップと、紡ぎ出された言葉に、莉子はあっけにとられていた。
「何者? あなた」
「わたくしですか? 天使ですよ」
陽菜は怪しんで、目をすがめた。
「本当に天使なの?」
「本当ですよ」
言うなりガブリエルは、部屋中を花園にし、
「陽菜、あなたは怪我をしていますね」
と、骨折していた陽菜の左腕を治した。
陽菜は恐る恐る左腕を回してみた。
「痛くない! ……りこちゃん!!」
彼女は、反射的に姉の背後に隠れた。
しばし呆然としていた莉子は、気を取り直し、背中までの長い髪を揺すりながら首を振った。
「あなたが天使ということは信じるわ、一応。でも聖少女って何? 誰が言ったの?」
冷ややかな口調にも、ガブリエルは動じない。
「ミカエル様です」
「は?」
「あたし、知ってる! 天使の長でしょ!?」
陽菜が叫んだ。迷惑そうに顔をしかめているのが、気配でわかる。
ガブリエルは頷いた。
「今の人間界は、腐敗しています。人が人を殺す、盗みをはたらく。罪を数えたらきりがありません。そこでわたくしたちの神は、悪い人間を監視して裁く人間を決めるため、ミカエル様に意見を求められました。そして決まったのが、小鳥遊姉妹。あなた方です」
「……」
莉子たちは顔を見合わせた。あまりにも突飛すぎて、いまいち実感がわかない。
「あたし、やだ」
最初に口を開いたのは陽菜だった。
「人が人を裁くなんて、傲慢もいいところだよ。そういうことは、天使がやればいいんだよ。りこちゃんもそう思うよね!?」
中学生の妹にそう言われ、大学生の莉子は頷くしかなかった。
だが、ガブリエルは首を横に振る。
「かつて、人間を見張る天使たちが堕天使になった経緯があるので、それはできません」
陽菜は負けじと言い募る。
「あたしたちが、悪いことをしないという保証はないでしょう?」
そして、莉子がたたみかける。
「そういうこと。わかった? 帰ってちょうだい」
ガブリエルは、束ねた長い髪を揺らしながら首を振り、目を伏せた。
勝った! と莉子は思った。しかしその時、
「そうはいかない」
言葉とともに現れたのは、グレーのスーツを着た、長めの白髪の若い男だった。
0
あなたにおすすめの小説
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる