聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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「聖少女」となれ(3)

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 2人は外に出て様子をみることにした。
 ブレスレットは包帯の下である。
「どうしようかなあ……」
 莉子が歩きながら考えこんでいると、陽菜が叫んだ。
「こんなの、無視しちゃえばいいのよ!」
 しかし莉子は渋い顔をする。
「できるのかなあ……」
 つぶやきながらあることに気づき、彼女は立ち止まった。

「どこよ、ここ?」
 家の近所を歩いているはずが、大通りを歩いていたのだ。
「いつの間に……」
 陽菜も片手で口を押さえる。
 
 2人が辺りを見回していると、車道を高速で走っていく車があった。銀行と菓子の店の間の路地に入っていく。
「……怪しくない?」
「怪しいわね」
 だからといって、わざわざそんな場所に行くことはない。帰ろうとする莉子と陽菜の左手首の包帯が破れ、ブレスレットが光った。
 
 2人のまわりの空間が歪む。
「な、何!?」
 体が押しつぶされそうな感覚の後、莉子と陽菜は銀行の中に立っていた。
 近くの椅子に座っている年配の女性が、ぎょっとしたように莉子たちを見ている。
 莉子は愛想笑いをしてごまかし、ぐるりと行内を見回す。
 業務を行う銀行員。彼らとやり取りしていたり、順番を待っている客。特別不審な点はない。

「りこちゃん。あたしたち、なんでこんなところに来たんだろう?」
「さあ」
 陽菜が小声で莉子にささやく。莉子も頷くしかなかった。
「帰ろうか」
 2人が自動ドアに向かおうとした時、いきなりドアが開いた。入ってきたのは、覆面の2人組だった。
 そのうちのひとりが、ピストルを懐から取り出す。

「キャー!!」
 悲鳴が飛び交う。
「現金出せ! ほら、早く!!」
 覆面のもうひとりが、女性行員の前の受付台に、大きな鞄を置く。
 声はくぐもっていたが、その人物が男だとわかった。ピストルを持つ方も、体格からいって男だろう。

「銀行強盗……?」
「これをどうにかしろっていうの?」
 陽菜がつぶやき、莉子はため息をついた。
 幸い、莉子たちは彼らから離れていたので、会話ができた。
 
 指名された女性行員は、震える手で鞄にお金を入れている。
 他の行員は、なんとか警察を呼ぼうとしているらしいが、覆面の2人ともが自分たちを見ているので、少しも動くことができない。
 男性客のひとりが携帯電話を取り出した。その時、ピストルを持っていた覆面の片割れが、携帯電話めがけて発砲する。男性客は硬直した。
 
 とっさに莉子がブレスレットに手をやった。何が起こるかわからない。でも、男性客を助けなければ! そう思ったその時、ブレスレットから放たれた光が、彼に向かう弾を空中分解させた。
 覆面と男性客はもちろん、当の莉子も唖然とした。
「やった!」
 陽菜が興奮して言った。
 
 現金を入れるよう、早くと女性行員をせかしていた覆面男は、相棒に怒鳴った。
「おい! そこの小娘を縛り上げろ!」
 しかし怒鳴られた方はなにが起こったのかわからず、呆然としたままだ。
「おい!! 早くしろ!」
 覆面男は相棒が役に立たないことを悟り、女性行員をせきたてる。
 
 その間に、行員のうちの誰かが警察に連絡したらしい。遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
「ちっ。逃げるぞ!」
 覆面男が現金の入った鞄を持ち上げ、相棒に声をかける。やっと正気に戻った男は、莉子めがけて走り出した。
「おい、何してるんだ。ずらかるぞ!」
 覆面男の声も聞こえないのか、相棒の男は莉子を捕まえようと一生懸命だ。
 
 莉子はすかさず、ブレスレットがある左手を突き出した。とたんに、ブレスレットが雷光を発し、男を直撃した。
「うわあああ!!」
 男は真っ黒になってその場に倒れた。莉子は青ざめた。
(まさか、死んじゃった!?)
 静寂が行内を包んだ。
 しかし男は、しばらくするとゆっくり起き上がった。
「あれ? 俺……」
 彼もまた、自分の命が潰えたと思ったらしい。
 
 そこへ、多くの警察官がなだれこんできた。
 2人の覆面男は逮捕された。片割れが全身真っ黒なのを、警官のひとりが問いつめた。
「あの小娘が……」
 自分が指差されたことに気づいた莉子は、陽菜の手をつかんで逃げようとした。
「こら、君たち。待ちなさい」
 冗談ではなかった。警察に連れていかれて、何を話せというのか。

 逃げる直前に、莉子は警察官たちのいる方向へ目をやった。そこには初老の男性がいて、彼らをなだめている。
(助かった……)
 莉子は陽菜とともに銀行を飛び出した。
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