聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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「聖少女」となれ(4)

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 初めての「聖少女」としての仕事を終え、莉子と陽菜はすでにうんざりしていた。
「学校へ行く以外に、外に出るのはやめようよ」
 陽菜の言葉に莉子も頷いた。
「そうね。そうすれば、面倒事もないだろうし」
 けだるくつぶやく莉子の前で、陽菜はブレスレットを自分の手から外そうとしている。
 
 わかっていても、訊いてみることにした。
「なにしてるの?」
「外れないかな、と思って」
「無理でしょ」
「そうかな……」
 それでも頑張っている陽菜を見ていたその時、
「無理に外そうとすると、手首が腐って落ちるよ。可愛いお嬢さん」
 という、物騒なセリフが聞こえた。
 
 莉子はハッとし、
「誰!?」
 鋭く叫ぶと、2人の青年が現れた。ミカエルやガブリエルの時と同じような出現の仕方だ。
「とってもキュートなお嬢さん方だ。どう? これからお茶……」
 軽薄そうな金髪緑色の瞳の青年の頭を、もうひとりの銀色の髪と瞳をもつ青年がバコッと叩く。
「……そういう話じゃないだろ」
「いいじゃないか。これからのためにも、聖少女だって息抜きは必要さ。ねえ、お嬢さん方」
 
 莉子は、目をすがめた。初対面のはずなのに、どこかで見たことある。
 しばし考えて気づいた。あの銀行で、警察官をなだめていた初老の男性だ。
「あ、あなた、あの時の……!」
 
 あの時とは全く違う若々しい青年は、にっこり笑った。
「よくわかったね。僕はラファエル。そして、こっちの仏頂面がウリエル。四大天使さ」
 言いながらラファエルは陽菜に近寄り、彼女のあごを長い指で上げた。
 華やかな印象の美形に迫られ、陽菜はしどろもどろになった。
「僕としては、お姉さんより妹ちゃんの方が好みだな。ねえ君、年上好き? だったらうれしいんだけどなあ」
「え……、あのその……」
 陽菜は固まってしまった。たまりかねた莉子が、ラファエルの手から妹を引き離した。
 自分が相手の好みではないということに苛立ったわけでは断じてない。

「何なの、あなた。ミカエルの仲間? だったら、このブレスレットの外し方を教えなさいよ」
 脅すように言ってみたが、ラファエルは肩をすくめただけだった。
「それが無理なんだな。……ガブリエルが懸念していたとおりだ。やめておいた方がいいよ、お嬢さん。ミカエル様には、慈悲というものがないから」
 莉子はムッとして、ラファエルの胸ぐらをつかんだ。

「おやおや。乱暴なレディだ」
「ふざけるんじゃないわよ。いいかげんにして。聖少女なんて、1回で十分よ」
 しかしラファエルは笑みを絶やさない。
「仕方ないよ。ミカエル様は絶対だから。時には、神よりも上なんじゃないかと思えてくる。1回だけじゃわからないよ。何回もやっていれば、使命感というものが君たちに芽生えるはずだから」
 
 そしてラファエルは、耳をすませる。
「ほら、仕事だよ」
 彼が指を鳴らすと同時に、莉子と陽菜の体は宙に浮く。
「ちょっと、なにっ」
「いってらっしゃい」
 ラファエルの一言で、姉妹はその場から消えた。
「……ラファエル」
 ウリエルがため息をつく。ラファエルは片目をつぶってみせた。
「仕方ないよ。あのミカエル様のご命令だ」
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