聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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「聖少女」となれ(5)

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莉子と陽菜が飛ばされたところは、高層ビルの屋上だった。ふと見ると、若い男性が柵を越えようとしている。
 莉子は驚いたが、思わず叫んだ。
「ちょっと待って!」
 男性はこちらを振り返ったが、無視してまた飛び越えようとしている。

「陽菜!!」
 妹を呼ぶと、陽菜は頷き、走っていって男性の服のすそをつかんだ。
「死なせてくれえーっ!」
 中学生の力がかなうはずもなく、男性は陽菜もろとも飛び降りた。
「陽菜ーっ!!」
 莉子は顔面蒼白になり、走り出した。しかし間に合うはずもない。陽菜と男性は莉子の視界から消えた。

 柵をくぐって下を見る。どちらの姿も見えない。こんなことなら、自殺しようとする奴なんか放っておけばよかった。
 へなへなと腰が抜けたその時、男性の両腕をつかんだ陽菜が、ふらふらと浮いてきた。

「ひ、な……」
「りこちゃん。なんとか助かったみたい……」
 よく見れば、男性は気を失っている。
「どうして……」
 莉子がつぶやくと、陽菜は左手を少し上げてみせた。
「このブレスレットのおかげだよ」
 彼女の言う通り、ブレスレットは光っている。
「よかった……」
 莉子はつぶやいて立とうとしたが立てない。陽菜は屋上に降りると、男性を横たえた。

「りこちゃん、大丈夫?」
「なんとか」
 頑張って立とうとすると、今度はなんとか立てた。と同時に、男性も意識を取り戻す。
「え……と、僕は……」
「生きてるわよ。もし死んでたら、許さなかったところよ」
 莉子がぴしゃりと言った。

「りこちゃん。助けたのはあたし……」
 小さい声で反論する陽菜を無視し、莉子は男性の胸ぐらをつかんだ。
「さあ、言いなさい。なんで死のうとしたの!?」
 彼は呆然としていたが、目に涙を浮かべた。
「彼女にフラれたんだ。もう生きていけない……」
 嗚咽をもらす彼に、莉子は怒鳴った。
「女なんていくらでもいるわよ。そんなことで死のうとしないで!! おかげでうちの妹が巻き添えになるとこだったわよ!!」

 男性は莉子を見て、陽菜に視線を移す。そして泣き笑いの表情を浮かべた。
「そうだね。死ななくてよかった。君を好きになってもいいかい?」
 彼は陽菜の手をつかんだ。
「え、あの、あたし中学生……」
「そうなんだ。じゃあ、君が大人になるまで待ってるよ」
「はい!?」
 姉妹は素っ頓狂な声をあげた。

 結局、別れを惜しむ男性を家まで送り届け、莉子と陽菜は家に戻った。
「あのラファエルのせいで、さんざんだったわ」
 莉子が憮然として言うと、陽菜は首を傾げた。
「こんなことがいつまで続くのかしら。あたし、もう嫌よ。2回目だけど」
「ミカエルもガブリエルも姿を現さないしね」
「ブレスレットも取れないし」
 2人は、はあっとため息をついた。
「なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだろう……」
 答えを返してくれるであろう天使たちが、現れることはなかった。
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