聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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禁忌の恋(1)

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「ちょっといいかな」
 ある日の午後、莉子は啓史に呼び止められた。要は今日欠席している。
「なんですか?」
「こっちに」
 啓史は空き教室に莉子を招き入れた。そして見すえてくる。
「要のこと、どう思う?」
「どうって……」
 莉子は口ごもった。学校でも授業終わりに遊びに行くのも一緒で、楽しいは楽しいが、なんか違和感がある。
 しかしそれを要の親友である啓史に言うのははばかられた。

「もし要のことが好きなら、そのブレスレットを取ってくれ」
「え……」
 思わずブレスレットを右手で隠した。すると啓史の瞳が赤く光った。その瞬間、彼の背中には黒い羽根が生えた。
 莉子は後ずさりした。人間じゃない。かといって純粋な天使でもない。妖精ではもちろんない。
「あなた、何者なの?」
 生来の気の強さで莉子が尋ねると、啓史は薄く笑った。
「俺は堕天使のアザゼル。堕天使の意味くらいわかるだろう? お嬢さん」
 堕ちた天使―。この前観た映画が思い起こされる。悪魔と同じではないかもしれないが、似たようなものだろう。

「その堕天使さんが、私に何の用?」
「シェムハザのことさ」
 莉子は眉を上げた。
「シェムハザ?」
「またの名を山口要」
 アザゼルは微笑んだ。莉子は知らず後ずさった。脳裏に、エインセルを殺そうとする要の姿が浮かんだ。
 要は人間ではないのか。そんな、まさか。
「奴はシェムハザといって、グリゴリのリーダーなんだ」
「グリゴリ?」
「人間を『見守る者』『見張る者』。……そう呼ばれる堕天使集団のことだよ」

 その時、バタンとドアが開いた。
「アザゼル!!」
 あせった様子の要が、アザゼルをにらみすえた。
「よけいなことを言うな」
 しかしアザゼルは肩をすくめただけだった。
「莉子、行くよ」
 呼び捨てにされたことに驚きつつ、莉子は教室から出る要の後を追った。
「待って、山口くん!」
 しかし要は待ってくれない。足の長い彼が大股で歩くものだから、莉子は小走りになる。
 するとふいに要が立ち止まった。莉子は彼の背中に顔をぶつける。
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