聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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禁忌の恋(4)

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 シェムハザは、かつて救いの天使だった。
 シェムハザとアザゼルを始めとする『見守る者』たちは、人間の美しい娘たちを見て自分のものにしようと考えた。罪への耐性がなかったのだ。
 しかしシェムハザは考えた。地上に降りて娘たちを妻にすることは大罪に値する。神に言い訳する責任を自分だけが負わされやしないかと。
「やっぱり、やめておこうぜ」
 シェムハザが言うと、他の天使たちは口々に言った。
「大丈夫だよ。俺たちも一緒に責任を負うからさ」
 それでもためらっていると、アザゼルがシェムハザの肩を抱いた。
「みんなでやれば怖くない。だろ?」
 シェムハザは渋々頷いた。
 そして天使たちは地上に降り、人間の娘たちと結婚した。それだけではなく、医学、呪文、武器の製造、錬金術などの知識を人間に教えたのだ。
 それまで人間は平和に平等に暮らしていた。しかし天使たちが教えた知識により、地上に罪や腐敗、弾圧などがはびこるようになる。おまけに天使と交わった女性からは、ネフィリムと呼ばれる巨人たちが生まれた。
 ネフィリムは、地上のさまざまなものをすべて喰いつくした。地上は乱れに乱れた。

 一方、その様子を天界から見ていたミカエルとガブリエルは、それを嘆いた。そして、地上に介入することを神に申し立てる。
 善良な人間・ノア一家にいろんな動植物の一組のつがいを連れてこさせ、箱舟をつくらせた。ノアの家族と動植物が箱舟に入ると、大洪水を起こしてそれ以外を一掃した。
 シェムハザは、ミカエルに捕らえられた。
「俺の消滅を望んでいるんだろう。消したければ、消せ!」
 シェムハザは叫んだが、ミカエルは無表情だ。
「貴様には審判が待っている。それまで、岩の下で繋がれていろ」
 ミカエルは自分の部下である天使たちに合図をした。シェムハザは体を拘束され、地下へ堕とされた。
 そして、堕天使シェムハザが誕生したのだ。

 陽菜は黙ってラファエルの話を聞いていた。
「その人が……、りこちゃんに……」
 彼女はつぶやき、
「助けに行こう!」
 と立ち上がった。しかしラファエルは首を横に振った。
「莉子が自ら、シェムハザと共にいることを選んだ。僕としては、彼女の意志を無視したくない」
「何言ってるの!?」
 陽菜は怒鳴った。顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「それでも連れて帰るのが天使ってもんでしょ。あたしが行くわ、聖少女として!」
「陽菜……」
 苦しげにラファエルはつぶやいた。その時、彼の傍らにガブリエルが現れた。
「ガブリエル……」
 2人が同時に言うと、ガブリエルは頷いた。
「陽菜。聖少女の任務を解きましょう」
「本当!?」
「しかし、交換条件があります」
 陽菜は身構えた。ガブリエルは2人を見つめる。
「捕らえられているはずの堕天使・シェムハザとアザゼルを連れてくること」
「ガブリエル! それは無茶だ!!」
 ラファエルが叫んだ。ガブリエルは微笑む。
「ええ。なにも1人で行けというのではありません。ラファエル、あなたと」
 そこへウリエルが現れた。
「遅いですよ」
「……悪い」
 ガブリエルにたしなめられ、ウリエルはぼそっと謝った。
「ウリエルが一緒に行きます」
 陽菜は頷いたが、ふと気づく。
「りこちゃんたちがどこにいるかわかるの?」
「ブレスレットがあるでしょう。……ああ、もう莉子の手首から離れているのでしたね」
 ガブリエルの言葉に、ラファエルが頷く。そして言う。
「莉子とシェムハザが消える間際に、本物の天使でなければわからない粉を、彼女の服につけた。さすがに服が莉子から離れるとは、考えたくないが……」
「……アザゼルはどうする?」
 ウリエルが尋ねる。
「アザゼルはシェムハザの親友ですから、傍にいるでしょう。四大天使のうちの2人が動いているというなら、なおさら」
 ガブリエルが言った。
「じゃ、行くか」
 ラファエルの言葉に、陽菜とウリエルは頷いた。
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