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禁忌の恋(5)
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「ここは……」
シェムハザは、莉子を薄暗い岩場まで連れてきた。黒い羽根を背中につけた人々が、岩につながれている。
「堕天使の住みかだよ」
吐き捨てるように言うシェムハザに、他の堕天使が訊いた。
「おい、シェムハザ。せっかくルシファー様に解放してもらったのに、なんで戻ってきたんだよ。人間の娘まで連れて」
その言葉を無視して、堕天使のいない岩まで歩き、シェムハザは莉子に座るよう促した。
おそるおそる座ると、シェムハザは隣に座った。黒い羽根がないので、ただの人間にしか見えない。
「ごめんな」
ふいにシェムハザが言った。莉子は彼の横顔を見る。
「こんなところ、連れてくるつもりはなかった。ただ、ラファエルのやり方が気に入らなくて……」
莉子は首を振った。
「でもおかげで、ブレスレットが取れたし……。ありがとう」
「礼を言われるいわれはない」
シェムハザはぶっきらぼうに言った。莉子は、ずっと気になっていたことを訊いた。
「どうして堕天使になったの?」
シェムハザは莉子を見た。群青色の髪はそのままだが、瞳が赤くきらめいている。なんだか別人のようだ。
「欲に負けた、というところかな」
彼はそれ以上言わなかった。
莉子はシェムハザばかりを見ていて気づかなかった。彼が前方に視線をあげたのでようやく気づいた。
アザゼルが自分たちの前に立っている。
「ここにいたのか」
アザゼルが皮肉な笑みを浮かべた。
「聖少女と一緒に」
やゆするような口調に、莉子はアザゼルをにらみつけた。
「もう聖少女じゃないわ。ブレスレットもないし」
「そのようだな」
そうつぶやくと、彼はシェムハザを見た。
「ラファエルとウリエル。それに聖少女ひとりが俺たちを追っている。聖少女の娘は、俺たちを捕らえるのが、任務を解く条件だと言われている」
シェムハザは、
「ミカエルの策だろう。俺はいいから、莉子を解放してやらなくてはならない」
と低い声で言った。
「お優しいことで。……じゃ、このチビはどうする?」
何もない空間から、ひとりの少年が出てきた。というより、アザゼルが引っ張り出してきたのだ。
「何すんだよ! 離せ、バカ!!」
じたばたしながら悪態をつく。
「何だ、こいつは」
シェムハザが眉を上げる。アザゼルはため息をついた。
「俺たちの近くをうろちょろしていたんだ。もう一匹いたんだが、逃げられてしまった」
その言葉に、少年がかみつくように怒鳴る。
「エインセルは人間界に避難させた。ははは、ざまーみろ!」
アザゼルは不機嫌そうに眉をひそめた。そして少年の頭をばこっと殴った。
「いってーな。なにすんだ!」
少年が言う。莉子はエインセルという名前に反応した。
「エインセルの知り合い!? ということは、妖精?」
少年はしかめ面をしながら頷いた。そしてハッとする。
「あんた、エインセルを知ってるのか?」
「妹が保護してるわ」
莉子が言うと、少年はほっとした。
シェムハザは、莉子を薄暗い岩場まで連れてきた。黒い羽根を背中につけた人々が、岩につながれている。
「堕天使の住みかだよ」
吐き捨てるように言うシェムハザに、他の堕天使が訊いた。
「おい、シェムハザ。せっかくルシファー様に解放してもらったのに、なんで戻ってきたんだよ。人間の娘まで連れて」
その言葉を無視して、堕天使のいない岩まで歩き、シェムハザは莉子に座るよう促した。
おそるおそる座ると、シェムハザは隣に座った。黒い羽根がないので、ただの人間にしか見えない。
「ごめんな」
ふいにシェムハザが言った。莉子は彼の横顔を見る。
「こんなところ、連れてくるつもりはなかった。ただ、ラファエルのやり方が気に入らなくて……」
莉子は首を振った。
「でもおかげで、ブレスレットが取れたし……。ありがとう」
「礼を言われるいわれはない」
シェムハザはぶっきらぼうに言った。莉子は、ずっと気になっていたことを訊いた。
「どうして堕天使になったの?」
シェムハザは莉子を見た。群青色の髪はそのままだが、瞳が赤くきらめいている。なんだか別人のようだ。
「欲に負けた、というところかな」
彼はそれ以上言わなかった。
莉子はシェムハザばかりを見ていて気づかなかった。彼が前方に視線をあげたのでようやく気づいた。
アザゼルが自分たちの前に立っている。
「ここにいたのか」
アザゼルが皮肉な笑みを浮かべた。
「聖少女と一緒に」
やゆするような口調に、莉子はアザゼルをにらみつけた。
「もう聖少女じゃないわ。ブレスレットもないし」
「そのようだな」
そうつぶやくと、彼はシェムハザを見た。
「ラファエルとウリエル。それに聖少女ひとりが俺たちを追っている。聖少女の娘は、俺たちを捕らえるのが、任務を解く条件だと言われている」
シェムハザは、
「ミカエルの策だろう。俺はいいから、莉子を解放してやらなくてはならない」
と低い声で言った。
「お優しいことで。……じゃ、このチビはどうする?」
何もない空間から、ひとりの少年が出てきた。というより、アザゼルが引っ張り出してきたのだ。
「何すんだよ! 離せ、バカ!!」
じたばたしながら悪態をつく。
「何だ、こいつは」
シェムハザが眉を上げる。アザゼルはため息をついた。
「俺たちの近くをうろちょろしていたんだ。もう一匹いたんだが、逃げられてしまった」
その言葉に、少年がかみつくように怒鳴る。
「エインセルは人間界に避難させた。ははは、ざまーみろ!」
アザゼルは不機嫌そうに眉をひそめた。そして少年の頭をばこっと殴った。
「いってーな。なにすんだ!」
少年が言う。莉子はエインセルという名前に反応した。
「エインセルの知り合い!? ということは、妖精?」
少年はしかめ面をしながら頷いた。そしてハッとする。
「あんた、エインセルを知ってるのか?」
「妹が保護してるわ」
莉子が言うと、少年はほっとした。
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