聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

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禁忌の恋(6)

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「で、おまえはなんで俺たちを見張っていたんだ?」
 シェムハザの問いに、少年は答えない。シェムハザは息をつくと、質問を変えた。
「おまえの名は?」
「パック」
 今度は即答だ。
 シェムハザとアザゼルは顔を見合わせた。アザゼルは少年を放り投げる。
「いてっ」
「誰に頼まれたか知らないが、俺たちを監視するのは無意味だ。とっとと失せろ」
 冷たい声音でアザゼルが言うと、パックは立ち上がった。

「そうだね。あんたらがここに戻ってきたなら、ぼくの用も済んだってことだから。お姉ちゃん、人間界に帰ろう」
「ちょっと待て。お姉ちゃんって、莉子のことか?」
 シェムハザが言うとパックは、
「はあ? 当たり前じゃないか。あんたのわけないじゃないか」
 とふてぶてしい態度で答える。
「俺も莉子が人間界に戻るのは賛成だ」
 シェムハザの言葉にパックが目を見開く。
「だけど」
 シェムハザは一言区切った。
「おまえ、どこまで知ってる」
 凄みをきかせて、彼はつぶやく。
「何が?」
 それでもパックは平然としている。
「莉子と、その妹のことだ」
「彼女たちが『聖少女』だと知ってる。……それを言わせたいわけ?」

「おまえ……!」
 シェムハザがパックの胸ぐらをつかむ。ギラギラと赤い瞳が燃えている……ように見える。しかしパックは動じない。
「ミカエル様に頼まれたんだ。聖少女を見張ってろってね。だからって堕天使のあんたたちを見ていたわけじゃない。あんたたちが、こっちのエリアに入ってきたんだ」
 シェムハザは、パックをつかむ手を離した。
「妹の方は知らないが、莉子はもう聖少女じゃない。俺がブレスレットを壊したからな。それがわかったら、ミカエルに伝えろ。莉子は俺が必ず人間界に戻す」
 きっぱりとシェムハザが言った。するとアザゼルが感心したように口を開いた。

「このまま、ここに莉子を閉じこめることだってできるんだぜ?」
「そういうわけにはいかないだろう」
 アザゼルとシェムハザの話を聞きながら、莉子は自分がどうしたいのか考え、そして驚いた。
 自分がすべきことは1つしかない。人間界に戻り、それまでの生活を続けることだ。
 なのに、迷っている。シェムハザは堕天使だ。その理由は「欲に負けた」からだという。本当に欲に負ける人だったら、莉子を自分のもとに置いておくのではないか。
 愛情はなくても、独占欲はあるだろうと、短い間だがシェムハザと過ごして感じたことだった。
 けれど、彼は莉子と距離を置こうとしている。それはきっと、彼女のために。
 だから、知らなければならない。
「シェムハザ。あなたが堕天使になったいきさつを教えて」
 驚いた表情をするシェムハザを、莉子はじっと見つめた。                                         
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