聖少女(セイント・ガール)

野宮雪菜

文字の大きさ
23 / 27

禁忌の恋(7)

しおりを挟む
 陽菜はラファエル、ウリエルの力で地下深くの岩場に来た。湿ったなんともいえない空気に、彼女は顔をしかめた。
「本当にこんな所にりこちゃんがいるの?」
 そう言いながら、陽菜は不安に思った。それを消そうとするかのように叫んだ。
「りこちゃーん! どこにいるのーっ!!」
 しかし何の音も声もしない。陽菜はラファエルとウリエルを振り返った。
「ここで間違いないの?」
「間違いないよ」
 ラファエルは頷いた。

 3人は歩いていく。途中で岩に縛りつけられた者、岩の下に吊り下げられている者が何十人もいた。彼らはラファエルとウリエルを見ると、恨みがましい目でこちらをにらみつけてくる。
「……堕天使だ」
 ウリエルの言葉に、陽菜は目をみはる。
 地上の快楽に負けた、かつての天使たち。
 じろじろ見るのも何か嫌で、陽菜は目をそらした。
  
 その間にも、どんどん奥に入っていく。思わず陽菜はラファエルの手を握った。彼は驚いていたけれど、いたずらっぽく笑った。
「怖いの?」
「……少し」
 手が震えているのを、陽菜は自覚していた。こんな所、人間が来るべき場所ではない。
 莉子は平気なのだろうか。それとも、シェムハザと共に行動することは決めても、この地下牢に連れてこられるとは思っていなかったのかもしれない。
 人影が見えた。赤いメッシュの入った黒髪と赤い瞳をもつ美青年だ。
 彼に近づくごとに、他の人物も見えてきた。群青色の髪と、これまた赤い瞳の美青年。白髪と大きな青い瞳の少年。そして見知った女性がひとり。
「りこちゃん!」
 飛び出そうとする陽菜の肩を、ラファエルは止めた。止められたことで、冷静になった。
 だから気づいた。莉子が複雑な表情をしているのを。自分たちが来たのだから、もっと喜んでくれてもいいのに。
「莉子、帰るよ」
 ラファエルが言った。すると莉子は、はかなげな雰囲気をまとって群青色の髪の青年を見上げる。
 そんな顔、15年生きてきて初めて見た。陽菜の知っている莉子は気が強く、何事にも動じない姉なのに。
 でも、それでわかった。莉子を庇うように隣にいる、群青色の青年こそ、堕天使シェムハザなのだと。

 陽菜は何も言わずにシェムハザを見たが、すぐに莉子に視線を戻した。
「りこちゃん、帰ろう」
 しかし莉子は首を横に振る。
「帰らない」
 陽菜はカッとした。
「なんで!」
 するとシェムハザが口を開いた。
「人間界に帰るべきだ、莉子。ここにいるべきじゃない」
「でもあなただって、ここにいるべきじゃないわ。救いの天使なんでしょ?」
 莉子の言葉に、シェムハザは顔をしかめた。
「同情はいらない。それに昔の話だ」
 それを見た赤メッシュの青年が言った。
「カッコつけてんじゃねーよ。おまえだって、莉子に一緒にいてもらいたいんだろ?」
「アザゼル……」
 シェムハザが苦しげにうめく。
「アザゼル!?」
 陽菜は叫んだ。シェムハザとアザゼル。この2人を連れていけば、聖少女の任務が解かれる!
 陽菜は、2人の堕天使の腕をそれぞれつかんだ。
「なんだ?」
 アザゼルが眉を上げて問う。
「あんたたちをガブリエルのもとに連れていけば、あたしたちは自由になれるのよ! だからもう大丈夫よ、りこちゃん。あたしたちと一緒に帰りましょう」
 陽菜が言う。その時、
「その必要はない」
 声と同時に現れたのはミカエルだった。ガブリエルと共に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...