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辛子明太子のようにホットな駅(3)(最終話)
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~まもなく、博多、博多です。鹿児島線はお乗り換えです~
何か聞こえている。気のせいかな。
そんなことよりも、ケイくんに会ったときのことを考える。
許してくれるとは、言っていた。けど、ホントかな。
ケイくんの住んでいるところについて、そういえば聞いたことなかったなぁ・・・
アパートなのか、マンションなのか、会社の寮なのか。
寮だったら、会社のひとたちにも挨拶することになるのかなぁ・・・
ケイくんは、私のことをどう紹介するんだろう・・・
「彼女」かな、もしかしたら「嫁」?早すぎるよね、ない、ない!
もしそんなことがあれば、私はばっちりファッション決めて、恥ずかしくないようにしなくちゃ。
ケイくんに恥をかかさないように・・・うん、うん。
少し未来のことを考えるのは楽しい。顔が火照ってくる。
~チンコン、チンコン。プシュー~
そんな音が聞こえる。あれ・・・?
私は、目線を左に向ける。左にある、窓の外の様子を伺う。
真横に銀色の柵が見える。動いていない。駅のホーム?
続いて、右を見た。通路には、出口に続く長い列ができていた。
これって・・・駅・・・博多に到着したってこと?
ヤバイ、気がついてよかった。降り忘れたら大変なことになる。
私は、慌てて立ち上がる。右手には、ハンドバッグを持っている。
席を離れて、列の最後尾に続く。溜息を1つ。油断してた。
ホームに降り立つ。同じように降りたひとの後ろに続く。
あと少しで、ケイくんに会える。
彼の前では・・・彼の前では・・・冷静な行動をしないと・・・
本当は、すぐにでも抱き着きたい。でも、彼は、ベタベタしてくるのは嫌い。
抱き着いたら・・・冷静でいないと・・・せっかく許されたのに、また嫌われる・・・
でも、私自身の感情を、押さえつける自身がないよー
そんなことを考えている最中に、目には黒と黄色の動く階段が映っていた。
動きに身を任せて、階下に降りていく。
この時間でも、ひとの多さは地元並みだ。目には映っているけど、気にならない。
ケイくんともうすぐ対面する。緊張してきた。
今日、名古屋で久しぶりに会ったとき以上のドキドキ感。
彼の態度が予想できないからなの?・・・安心感がないから?
彼は許してくれる・・・はず。それに関しては自信がある。
自信があるなら、堂々とできるはずなのに、そこは無理だという私自身がいる。
もう1つの階段を下る。地元の大学の広告が目に映る。
自動改札が見える。切符を用意しないと。
階段を下り切った私は、財布を取り出しながら、改札に向かっていった。
★★★
博多駅筑紫口。
腕時計を見る。9時40分過ぎか。
未だに里美から「乗ったよー」という連絡はない。
博多に着いて、里美とメールをやり取りしてしばらくは、考え事をして時間を潰せていた。
会ったときにどんな行動を取ろうか、そんなことを考えていた。
怒ったふり?無視を決め込む?抱きしめる?
今回はいろいろ振り回されたので、それくらいは許されるだろう。
だが、結論が出なかった。そして、時間潰しにも向かなかった。
仕方がないので、スマホでネットサーフィンをして過ごしていた。
ただし、改札前で待っていると、先に見つかる。
そうなると、先手を取れないので、若干移動している。
筑紫口を少し外に出た、郵便ポストがある辺りだ。
壁に背を預けて、ふう、とため息をつく。
この連絡無精なところは、指摘した方がいいかなと、苦笑する。
スマホでの時間潰しにも限度がある。最後のメールがあって1時間少し。
乗ったら早いはずなのだが・・・鈍行に乗ってないよな?
メールや電話をしてみるか。
ふとそう思いつく。そして、自分に苦笑い。
今までなぜ、それを思いつかないかな・・・俺。
それも余裕がなかったからなのか。
今日はつくづく自分に自信を無くす日だな、そういう日もあるってことなんだろうか。
自分自身に苦々しく思いながら、メール画面を開く。
操作を始めたのと同時に、着信画面!里美からである。
会ったときにどんな態度を取ろうか、そう悩んでいた相手からの、いきなりの電話である。
俺は、気分を落ち着かせるために、一息をついた。落ち着け、俺。
よし、大丈夫だ。スマホを操作し、電話をつなげる。
「里美?」
「ケイくん・・・えっとね、あのね」
電話から聞こえる、彼女の声。何か慌てている。
これは、何かあったのだろうか。彼女を落ち着かさないと、何も聞けないな。
「・・・どうしよう、ケイくん、どうしたらいい?」
「落ち着け、落ち着いて」
「あ!・・・うん、わかったよ、ケイくん・・・」
「で、どうしたんだ?」
彼女が落ち着いてきたみたいなので、質問してみる。
「あのね、新幹線の切符がないのー!どうしよう・・・」
そういうことかー・・・と、言うことは、今はこっちにいる!
「・・・今はどこにいる?」
「改札の前!どうしよう・・・」
「あー、わかった。そこから外は見える?」
俺は電話をしながら、筑紫口から駅ビルに入り、近くの改札口方面に向けて歩く。
「うん、見える・・・あ、ケイくんが見えたー!」
「じゃあ、改札の横にある、案内所に向かって。俺も行くから」
「わかったー助かったよ、ケイくん」
電話を切る。改札の向こうに見慣れた茶髪の女性の姿が見える。
俺は、改札の隣の、案内所に向かった。
★★★
無事に清算を済ませた2人は、筑紫口付近にいた。
1人は茶髪でセミロングの女性。もう一人は、黒髪短髪の男性。
「ケイくん、本当にごめんね・・・」
女性は、男性に向けて一生懸命謝っている。男性は、無言である。
「・・・怒ってる・・・?」
「ああ。」
女性の問いに、短く答える男性。シュンとなる女性。
それを見て、男性はニヤッとしている。女性に見えないように。
女性の方は、ものすごく落ち込んでいる。
その様子を見て、男性は小さく、そして聞こえるようにつぶやく。
「本当にな。」
さらに言葉を続ける。
「顔合わせたときにどうしてくれようかと、こっちはいろいろ考えていたのにな」
女性は男性の方を見る。男性はなおも続ける。
「それが全部無駄になってしまった。ホントにお前ってヤツは」
そう言いながら、男性は女性を捕まえて、正面に向き合う。
女性は全く抵抗をする素振りもない。
「見ていて飽きないよ、存分に頼ってくれ、俺を」
そんな言葉を吐き出して、両手で抱きしめる。彼女も抱きしめ返す。
「ようこそ、博多へ。俺も里美が来てくれて、嬉しい」
彼女の耳元で囁く。
彼は照れくさいのか、そっぽを向いた。顔が赤くなっている。
彼女は、呆然としていた。しばし無言だったが、ぼそっと彼に問う。
「私、ケイくんのそばに、ずっと居て、いいのかな?」
「ああ、ずっと、隣にいてくれ」
彼は答える。彼女はニコッとして、彼から離れる。
「ミッション、コンプリート!」
彼女は叫んだ。彼は驚いた顔をしている。
「えっ?どういうこと?」
さっきまでの雰囲気がどこかに行ってしまった。彼は慌てている。
「ふふん、私、ケイくんのお嫁さん。ふふん」
「・・・え?どういうこと?」
「ふふふ・・・」
博多の夜はまだ始まったばかり。
2人の博多での生活は始まってもいない。
様々な人の生活を眺めてきたであろう、駅前の郵便ポストだけが、新たな2人のスタートを見守っていた。
何か聞こえている。気のせいかな。
そんなことよりも、ケイくんに会ったときのことを考える。
許してくれるとは、言っていた。けど、ホントかな。
ケイくんの住んでいるところについて、そういえば聞いたことなかったなぁ・・・
アパートなのか、マンションなのか、会社の寮なのか。
寮だったら、会社のひとたちにも挨拶することになるのかなぁ・・・
ケイくんは、私のことをどう紹介するんだろう・・・
「彼女」かな、もしかしたら「嫁」?早すぎるよね、ない、ない!
もしそんなことがあれば、私はばっちりファッション決めて、恥ずかしくないようにしなくちゃ。
ケイくんに恥をかかさないように・・・うん、うん。
少し未来のことを考えるのは楽しい。顔が火照ってくる。
~チンコン、チンコン。プシュー~
そんな音が聞こえる。あれ・・・?
私は、目線を左に向ける。左にある、窓の外の様子を伺う。
真横に銀色の柵が見える。動いていない。駅のホーム?
続いて、右を見た。通路には、出口に続く長い列ができていた。
これって・・・駅・・・博多に到着したってこと?
ヤバイ、気がついてよかった。降り忘れたら大変なことになる。
私は、慌てて立ち上がる。右手には、ハンドバッグを持っている。
席を離れて、列の最後尾に続く。溜息を1つ。油断してた。
ホームに降り立つ。同じように降りたひとの後ろに続く。
あと少しで、ケイくんに会える。
彼の前では・・・彼の前では・・・冷静な行動をしないと・・・
本当は、すぐにでも抱き着きたい。でも、彼は、ベタベタしてくるのは嫌い。
抱き着いたら・・・冷静でいないと・・・せっかく許されたのに、また嫌われる・・・
でも、私自身の感情を、押さえつける自身がないよー
そんなことを考えている最中に、目には黒と黄色の動く階段が映っていた。
動きに身を任せて、階下に降りていく。
この時間でも、ひとの多さは地元並みだ。目には映っているけど、気にならない。
ケイくんともうすぐ対面する。緊張してきた。
今日、名古屋で久しぶりに会ったとき以上のドキドキ感。
彼の態度が予想できないからなの?・・・安心感がないから?
彼は許してくれる・・・はず。それに関しては自信がある。
自信があるなら、堂々とできるはずなのに、そこは無理だという私自身がいる。
もう1つの階段を下る。地元の大学の広告が目に映る。
自動改札が見える。切符を用意しないと。
階段を下り切った私は、財布を取り出しながら、改札に向かっていった。
★★★
博多駅筑紫口。
腕時計を見る。9時40分過ぎか。
未だに里美から「乗ったよー」という連絡はない。
博多に着いて、里美とメールをやり取りしてしばらくは、考え事をして時間を潰せていた。
会ったときにどんな行動を取ろうか、そんなことを考えていた。
怒ったふり?無視を決め込む?抱きしめる?
今回はいろいろ振り回されたので、それくらいは許されるだろう。
だが、結論が出なかった。そして、時間潰しにも向かなかった。
仕方がないので、スマホでネットサーフィンをして過ごしていた。
ただし、改札前で待っていると、先に見つかる。
そうなると、先手を取れないので、若干移動している。
筑紫口を少し外に出た、郵便ポストがある辺りだ。
壁に背を預けて、ふう、とため息をつく。
この連絡無精なところは、指摘した方がいいかなと、苦笑する。
スマホでの時間潰しにも限度がある。最後のメールがあって1時間少し。
乗ったら早いはずなのだが・・・鈍行に乗ってないよな?
メールや電話をしてみるか。
ふとそう思いつく。そして、自分に苦笑い。
今までなぜ、それを思いつかないかな・・・俺。
それも余裕がなかったからなのか。
今日はつくづく自分に自信を無くす日だな、そういう日もあるってことなんだろうか。
自分自身に苦々しく思いながら、メール画面を開く。
操作を始めたのと同時に、着信画面!里美からである。
会ったときにどんな態度を取ろうか、そう悩んでいた相手からの、いきなりの電話である。
俺は、気分を落ち着かせるために、一息をついた。落ち着け、俺。
よし、大丈夫だ。スマホを操作し、電話をつなげる。
「里美?」
「ケイくん・・・えっとね、あのね」
電話から聞こえる、彼女の声。何か慌てている。
これは、何かあったのだろうか。彼女を落ち着かさないと、何も聞けないな。
「・・・どうしよう、ケイくん、どうしたらいい?」
「落ち着け、落ち着いて」
「あ!・・・うん、わかったよ、ケイくん・・・」
「で、どうしたんだ?」
彼女が落ち着いてきたみたいなので、質問してみる。
「あのね、新幹線の切符がないのー!どうしよう・・・」
そういうことかー・・・と、言うことは、今はこっちにいる!
「・・・今はどこにいる?」
「改札の前!どうしよう・・・」
「あー、わかった。そこから外は見える?」
俺は電話をしながら、筑紫口から駅ビルに入り、近くの改札口方面に向けて歩く。
「うん、見える・・・あ、ケイくんが見えたー!」
「じゃあ、改札の横にある、案内所に向かって。俺も行くから」
「わかったー助かったよ、ケイくん」
電話を切る。改札の向こうに見慣れた茶髪の女性の姿が見える。
俺は、改札の隣の、案内所に向かった。
★★★
無事に清算を済ませた2人は、筑紫口付近にいた。
1人は茶髪でセミロングの女性。もう一人は、黒髪短髪の男性。
「ケイくん、本当にごめんね・・・」
女性は、男性に向けて一生懸命謝っている。男性は、無言である。
「・・・怒ってる・・・?」
「ああ。」
女性の問いに、短く答える男性。シュンとなる女性。
それを見て、男性はニヤッとしている。女性に見えないように。
女性の方は、ものすごく落ち込んでいる。
その様子を見て、男性は小さく、そして聞こえるようにつぶやく。
「本当にな。」
さらに言葉を続ける。
「顔合わせたときにどうしてくれようかと、こっちはいろいろ考えていたのにな」
女性は男性の方を見る。男性はなおも続ける。
「それが全部無駄になってしまった。ホントにお前ってヤツは」
そう言いながら、男性は女性を捕まえて、正面に向き合う。
女性は全く抵抗をする素振りもない。
「見ていて飽きないよ、存分に頼ってくれ、俺を」
そんな言葉を吐き出して、両手で抱きしめる。彼女も抱きしめ返す。
「ようこそ、博多へ。俺も里美が来てくれて、嬉しい」
彼女の耳元で囁く。
彼は照れくさいのか、そっぽを向いた。顔が赤くなっている。
彼女は、呆然としていた。しばし無言だったが、ぼそっと彼に問う。
「私、ケイくんのそばに、ずっと居て、いいのかな?」
「ああ、ずっと、隣にいてくれ」
彼は答える。彼女はニコッとして、彼から離れる。
「ミッション、コンプリート!」
彼女は叫んだ。彼は驚いた顔をしている。
「えっ?どういうこと?」
さっきまでの雰囲気がどこかに行ってしまった。彼は慌てている。
「ふふん、私、ケイくんのお嫁さん。ふふん」
「・・・え?どういうこと?」
「ふふふ・・・」
博多の夜はまだ始まったばかり。
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