私が異世界に行く方法

吉舎

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ベイルモンド砂漠編

ギルドマスター

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『恩恵(ギフト)』生まれた時に神によって与えられるもの。主に能力。魔法や武術に関わるものが多い。

『魔力高速回復』資料なし。

『自動翻訳』資料なし。

『元素魔法適性』火、水、土、風の4種の魔法を行使出来る。魔法使いの殆どが1種類、まれに2種類の魔法適性を持つ中で、4種類の魔法に適応がある者は、現在までに数人しか確認されていない。

 
 司書が持ってきた資料を漁るも、自分の恩恵関連で分かったのは、これだけだ。魔力高速回復、自動翻訳に関する資料は一切なかった。無かった、という情報も大事だ。つまり、これらはやはり特別な力なのだ。続いて、技能に関して調べていく。


『技能(スキル)』生後に得た能力。恩恵の影響を受ける。技能の代表格は魔法スキルだが、各種武術も鍛錬すればそれに関する技能が身につく。技能にはレベルがあり、現在1から8までの存在が確認されている。殆どの技能において、スキルレベル6までが一般人の努力での到達限界。7以上は選ばれた人間だけが辿り着く領域である。伝承によれば、かつて賢者たちはスキルレベル9に到達したとされているが真偽不明。

『空間収納』1万人に1人に発現するレアスキル。どんなきっかけで身につくのか分からない起因不明スキルでもある。魔法適性との関連を指摘する研究者もいる。記録にある空間収納の最大スキルレベルは2である。レベル1の空間収納では、ターバン二つほどの重さまで収納可能。レベル2では、絨毯一枚の重さまで収納可能だ。ただし、重さだけでなく体積による収納制限もあるようだ。スキル持ちが死亡すると、収納されていたものは永遠に取り出せなくなる。

『人物鑑定』いずれかの魔法レベルが5に到達すると獲得できるスキル。自身のステータスを閲覧可能になる。スキルレベルによって情報量は変わる。また人物鑑定スキル4を超えると他人のステータスも閲覧できる。ただし、相手の同意が無いと、確認出来る情報は限定される。


 空間収納、人物鑑定、どちらも書かれていることは私のステータスと合致していない。異世界人だからかな。立ち戻って、そもそも魔素とは何か調べてみよう。


『魔素』世界は魔素で出来ている。古くから言われている世界の原則だ。現在では、世界は魔素で満ちている、と言い換えられることが多い。魔素の本質は不明である。魔素は人を含む生物に多く含まれ、人はそれを利用して魔法を使い、技能(スキル)を習得しているとされる。人以外の生物も、魔素を利用した自己強化を行っている。魔物が代表的だ。


 うーん、魔素に関しては特に気になる部分は無いな。記録媒体が革だったり石だったりするせいで、ここまで調べるだけで酷く疲れた。紙の百科事典が欲しい。パソコンがあればなお良い。

続いて世界地図を司書に要求したところで、閉館時間だと退館を促された。随分と早い時間に閉まるものだと思ったが、ピラミッドの外に出て納得した。町の西側の断崖に半分埋まっているという立地のせいで、夕方になると太陽の光が入らないのだ。

眠気も強くなってきたので、討伐者向けの宿を見つけて泊まる。部屋に入ると、イズマイルへの移動の疲れもあって、泥のように眠った。


 翌朝、宿で朝食を摂る。豆の入ったナンもどきを運んできてくれたおばちゃんが声を掛けてきた。

「お客さん、討伐者っぽくないねえ。観光かい?」
「一応討伐者ですよ。今回は。観光とそれに図書館で調べものを。」
「大図書館ね!凄いだろ。あたしも時々利用するんだよ。古い冒険譚が好きでねえ。」
「立派な施設ですね。ただ壁に本を損壊したら死刑だと書かれていて、少し緊張しました。」
「へえ、そうなのかい!」
「え?」

 普段から利用しているのに気付かないのか?

「いやあ、あんな古い文字、あたしには読めないよ!お客さん、もしかして学者?」

 おばちゃんの言葉に、私は少なからずショックを受けた。古い文字?そうか、自動翻訳の恩恵(ギフト)だ。他の文字との違いが全く分からなかった。

この世界にも、当然様々な言語があるはずだ。それら全てが理解できるのは便利ではあるが、区別出来ないとなると少々厄介だ。いや、本当に区別出来ないのか?これは後で検証が必要だな。


 食後、アレーナとの約束通りにイズマイルの討伐者ギルドへ向かう。アルサーヤのものより随分と立派だ。室内には太陽と剣の紋章が入ったギルド専用絨毯が敷かれている。広めに作られた待合室には噛み煙草やお茶、それにアルコール度数の低い酒を嗜む討伐者達が歓談している。

私もその中に混じって座り、周囲の噂話に耳を傾けながら壁の精巧なモザイク絵を眺める。窓の外に見える広場中央の日時計が、約束の時間
から1時間ほど過ぎたのを示した頃に、アレーナは現れた。この地では1時間程度の遅れは遅刻のうちに入らない。

「ん、ちゃんと居た。じゃあ制度の説明を受けに行きましょ。」

 アレーナは私をギルド奥の個室へ案内する。室内には、坊主頭の40歳代男がどんと座っていた。横に長い眉毛が目立つ。体の前に組んだ指は長く、古傷が多い。身長は私と同じぐらいだが、随分と筋肉質だ。

「アレーナ嬢。今日は誰を連れて来たんだ?もうパーティー解散の苦情を聞かされるのは勘弁だぜ。」

 男は、アレーナを見た瞬間に顔を顰める。

「わたしの派閥仲間に、討伐者制度を詳しく教えてあげて欲しいの。なるべく早く砂漠迷宮深層に連れて行きたいから。」

 アレーナの後ろで私が、何それ聞いてないぞ、という表情をすると、男は色々と察したようだ。

「なるほどな。俺はアロス。ここイズマイルで討伐者ギルドのマスターをやっている。」
「アキヒコです。異国出身で、大図書館目的にイズマイルに来ています。」

 アロスはしげしげと私を眺めた。

「筋肉もねえし、アレーナ嬢が派閥仲間だと主張するくらいだから、魔法使いだよな。」
「精度はいまいちだけど、土魔法を使うわ。魔力は多い。わたしの推薦で、アルサーヤで8級討伐者になったの。」

 私が返答するより早くアレーナが答える。

「ふうん。まあ、討伐者の階級によるメリットデメリットは知っておいて損は無いと思うぜ。言っておくが、ギルドマスターの俺がわざわざ説明するのは、アレーナ嬢が偉い人の娘で、俺はその偉い人から便宜を図れと言われているからだ。普段から気軽に会えると思うなよ。」
「随分と…はっきり言うんですね。」

 私はアレーナの方を気にしながら言った。やはり彼女はいいとこのお嬢さんだったか。

「ああ。俺もアレーナ嬢も小難しいやりとりは苦手だからな。」

 アロスの言に、アレーナはコクコクと頷いた。それでいいのか?

 
 ギルドマスターの説明によると、まず昇級のメリットとして、6級以上から受けられる救助サービスがある。予め日程をギルドに申告してから迷宮に入ると、予定日時になっても戻ってこない時に探索チームが送られるのだ。また、サバンナ地方への特別通行許可を得られる。デメリットとしては、4級以上になるとギルドを通さない仕事をすることが禁じられる。

次に、昇級する方法だが、6級までは魔物討伐の依頼を一定数こなすことで資格が得られる。それ以上は、砂漠迷宮へ潜った時間と魔物討伐数療法が加味される。

「ただこれだと力のある新人も最低数年は低級でいなきゃならんことになる。そこで5級までなら、ギルドで昇級試験を受けることですぐ上がれるようになっているんだ。」
「5級まで?それ以上は?」
「それ以上はやはり地道に昇級してもらうしかないな。試験でもっと高い級へ上げられるようにすると、伯付けの為だけに賄賂で試験合格する連中が増えるからな。」
「賄賂が通用しないような仕組みを作ったりはしないんですね。」
「賄賂は社会の潤滑油だろ。そんなことはしない。」

 贈収賄ありきで作られたシステムなんだな。ちらっとアレーナの方を見る。

「私も試験は受けたけど、実力よ?」
「確かに実力で合格だったが、もし力が足りなかったとしても受かっていただろうな。まあそれはともかく、アキヒコよ。この後、試験を受けていけ。アレーナがここに連れてきた男の実力を見ておきたい。」
「やはりそういう流れですか。まあ、砂漠迷宮にはまた潜りたいと思っていたし、吝かではないですよ。」

 私が首肯すると、3人で修練用の中庭へ移動となった。

昇級試験にて、魔法使いがチェックされるポイントは二つ。攻撃魔法の威力と、防御能力だ。まずは中庭中央に立てられた複数の石の案山子に攻撃するよう指示される。

いつものように先の尖った石礫を空中に作り出して飛ばす。案山子は結構固いが、数当てれば破壊は容易だ。横殴りの石の雨は、全ての案山子を粉々にする。

「よし、中距離の魔法攻撃は悪くないな。次は、俺がお前を攻撃するから、身を守れ。」

 魔法使いは、素早い敵、背後から忍び寄るタイプの敵に接近されると弱い。これにいかに対策しているかが評価されるのだ。方法はいくつかある。強固な防具を身につける。魔法とは別に武技の鍛錬をする。接近に対応できる魔法を使う、などだ。

ギルドマスターは木剣片手に素早く近づいてくる。7級討伐者のラシェッド達も人間離れしていると思っていたが、それを上回る速さだ。魔法のスキルにより認知機能が上がっていなかったら、相手が何をしているのか気付く暇も無くやられていただろう。だが、今の私には感知できる。

風魔法で自分の周囲に高速の気流を作り出す。私がドーナツ状の気流の穴の部分に居るよう形だ。人間ならこれで弾き飛ばせるはず…だと思ったが、アロスは素早く飛び上がり上から私を狙う。なんらかの方法で落下中も加速しているようだ。撃ち落としたいが私の魔法精度では難しい。

自分の頭上に檻の鉄格子を模して、サンドカッターを発動させる。振り下ろされる木剣を切るのが狙いだ。だが、本人の落下速度と剣速が合わさって、木剣はカッターで切断されること無く守りを突き抜ける。アロス本人も当然のようにカッターを躱す。

ゴンと鈍い音で、私の頭に急減速した木剣が当たる。

「あ、すまん。寸止め失敗した。」

 痛い…が、ちょっとたんこぶが出来る程度のダメージだ。

「これだけ反応出来れば、6級でいけるだろ。」
「木剣を防げませんでしたが?」
「俺は元3級討伐者だぞ。攻撃を喰らうのは当たり前だ。」

 2級3級合わせても、10人未満だと聞く。ギルドマスターは相当の実力者だったようだ。私は自分の頭を撫でながら、一礼する。アロスは自分の木剣を眺めていた。

「む。木製とはいえ、自分の武器に傷がついたのは久し振りだ。最初は風魔法、最後のは…土魔法の応用か?初めて見る使い方だったな。」

 そう言うと、アロスはもう一度こちらの顔を眺め、しかしそれ以上は何も言わずに仕事へ戻っていった。

だが、中庭の後方で試験を見学していたアレーナは色々と言いたそうだ。

「…風魔法も使えたのね!?」
「元素魔法は全部適性がある。一番スキルレベルが高いのは土魔法だけどね。」
「!?!」

 興奮状態のアレーナによる追及は一時間以上に及んだ。  

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