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1.2 仕事をしよう
7.成果の余韻
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初出勤からの初報酬で最高の余韻に浸っているはずの僕だったが、1つだけ気になることがある。
「ここって酒場なのに、この時間になっても誰も来ないんですね?」
まあ、理由は明確だと思う。
「ここは社員酒場ですからねー……」
「社員酒場?」
……彼女は本当にそれが問題だと思っているのか?
「まあ、主に社員である冒険者がクエストを受けたり、報酬を受け取ったり、食事やお酒をお出しするところですからね。だから一般の方には入り辛いのでしょう……」
なるほど……そうきたか…………どうやら思っているよりも遥かに事態は深刻らしい。たぶんだが、彼女は商売にむいていないな……
こんな調子では、この寂しさでも納得だ。こんな酒場は不必要なんじゃないのかという考えまでも浮かんでくる。。
「イグニスさんが考えていることは私にも分かりますわ! どうして、こんな美人がいるのにこの酒場が廃れてしまっているのだ! ってことですわよね?」
「いえ、全然違います……」
「いいえ、いいの…この店の利益が全くないどころか、むしろ赤字だとしても私は一向に構いません!!」
話を聞け! ていうか、構えよ!!
僕の魂の叫びが、頭の中を長い間こだまし続ける。
さすがに赤字の店をずっと置いているぼどこの会社に利益があるはずないだろう。なのになぜ店を潰さないのか、その理由はすぐに判明した。
「———私のお金でやっているだけですし、多少赤字であってもこの趣味はやめるつもりはありませんわ! それに、運営費なんて大したお金もかかりませんし!」
まさか、会社から支給されているどころか、自腹だった。これじゃテレビでやっていたブラック企業よりも悲惨だ。
「本当にお嬢様だったんですか?」
「私はどちらかといえば成金の娘ね。」
成金といった彼女はどこか自虐的なような気もしたが、そんなことはなかった。
「私の父が武器商人なのです。一年前までは貧乏だったんですが、モンスターが出現するようになってからというもの武器が売れに売れて働く必要すらなくなってしまいました。」
「では、どうしてここでこんなことを?」
働く必要がないならなぜこんなことをしているのか、さっぱり理解出来ない。
「さっきも言った通り、趣味でやっています。何もしないということは思っているよりも辛いものなのです」
そんな彼女の言葉で僕は思い出した。確かに僕が騎士を引退した後何もしていなかった時は非常にしんどかった。
「……そう言われればそうかもしれませんね」
僕が同意すると、彼女は嬉しそうに笑った。
————いつの間にか、時間も11時を回っている。居心地がいいからずっと居たい気持ちがなかったわけではないから、帰るのが名残惜しくないといえば嘘になる。
だが、そういう訳にはいかない。なぜならニヒルが待っているからだ……!
今日の報酬をくれたのはニヒルといっても過言ではないし、彼女に心配をかける訳にも行かない。
ノウェムとの約束もあるが、どう考えても今から武器を探しに街に繰り出すのは非効率だろう。
「ノウェムさん、今日はもう遅いですし装備はまた明日でもいいですか?」
彼女もどうやらそうするつもりであったらしい。
「馬鹿なのか君は? こんな時間に女性が外をうろつくわけがないだろう?」
確かにごもっともないけんだ。元来、女性が夜中に人気のない場所を歩くことは危険だし、今はシリアルキラーがこの街をさまよっていると聞けば誰だって警戒するだろう。
それは、いくら強いものと言えども変わりわないのだ。
「僕が馬鹿でした……」
ノウェムは何やら悪事を考えてるように、片目だけ開いてこちらを見ている。
「————悪いと思うなら、我を家まで送り届けてくれるなら許してやらんでもないぞ!」
彼女の後ろには堺。堺が背後からノウェムに強力なチョップを脳天めがけて振り下ろす。
「馬鹿言うな、お前の家はすぐそこやろ? イグニスをからかうなってなんどいわせる?」
堺の脳天かち割りチョップは、その名の通りの威力らしい……ノウェムが頭を抑え屈み込んだまま立ち上がらない。
いつもの威厳など失われ、悲しくも目をウルウルさせている。
「さーかーいー!! もし馬鹿になったらどうしてくれる!」
依然として屈み込んだままのノウェムは、小さくなって全く凄みなど感じられないその体勢で堺に異議申し立てる。
「お前は元々馬鹿やから大丈夫や!」
僕は2人のそんな喧嘩する様子を眺めながら、今日の余韻に浸っていた。
……ニヒル、ホントにありがとう! 僕きっと最高の会社員になるよ! いや、これマジで!
「ここって酒場なのに、この時間になっても誰も来ないんですね?」
まあ、理由は明確だと思う。
「ここは社員酒場ですからねー……」
「社員酒場?」
……彼女は本当にそれが問題だと思っているのか?
「まあ、主に社員である冒険者がクエストを受けたり、報酬を受け取ったり、食事やお酒をお出しするところですからね。だから一般の方には入り辛いのでしょう……」
なるほど……そうきたか…………どうやら思っているよりも遥かに事態は深刻らしい。たぶんだが、彼女は商売にむいていないな……
こんな調子では、この寂しさでも納得だ。こんな酒場は不必要なんじゃないのかという考えまでも浮かんでくる。。
「イグニスさんが考えていることは私にも分かりますわ! どうして、こんな美人がいるのにこの酒場が廃れてしまっているのだ! ってことですわよね?」
「いえ、全然違います……」
「いいえ、いいの…この店の利益が全くないどころか、むしろ赤字だとしても私は一向に構いません!!」
話を聞け! ていうか、構えよ!!
僕の魂の叫びが、頭の中を長い間こだまし続ける。
さすがに赤字の店をずっと置いているぼどこの会社に利益があるはずないだろう。なのになぜ店を潰さないのか、その理由はすぐに判明した。
「———私のお金でやっているだけですし、多少赤字であってもこの趣味はやめるつもりはありませんわ! それに、運営費なんて大したお金もかかりませんし!」
まさか、会社から支給されているどころか、自腹だった。これじゃテレビでやっていたブラック企業よりも悲惨だ。
「本当にお嬢様だったんですか?」
「私はどちらかといえば成金の娘ね。」
成金といった彼女はどこか自虐的なような気もしたが、そんなことはなかった。
「私の父が武器商人なのです。一年前までは貧乏だったんですが、モンスターが出現するようになってからというもの武器が売れに売れて働く必要すらなくなってしまいました。」
「では、どうしてここでこんなことを?」
働く必要がないならなぜこんなことをしているのか、さっぱり理解出来ない。
「さっきも言った通り、趣味でやっています。何もしないということは思っているよりも辛いものなのです」
そんな彼女の言葉で僕は思い出した。確かに僕が騎士を引退した後何もしていなかった時は非常にしんどかった。
「……そう言われればそうかもしれませんね」
僕が同意すると、彼女は嬉しそうに笑った。
————いつの間にか、時間も11時を回っている。居心地がいいからずっと居たい気持ちがなかったわけではないから、帰るのが名残惜しくないといえば嘘になる。
だが、そういう訳にはいかない。なぜならニヒルが待っているからだ……!
今日の報酬をくれたのはニヒルといっても過言ではないし、彼女に心配をかける訳にも行かない。
ノウェムとの約束もあるが、どう考えても今から武器を探しに街に繰り出すのは非効率だろう。
「ノウェムさん、今日はもう遅いですし装備はまた明日でもいいですか?」
彼女もどうやらそうするつもりであったらしい。
「馬鹿なのか君は? こんな時間に女性が外をうろつくわけがないだろう?」
確かにごもっともないけんだ。元来、女性が夜中に人気のない場所を歩くことは危険だし、今はシリアルキラーがこの街をさまよっていると聞けば誰だって警戒するだろう。
それは、いくら強いものと言えども変わりわないのだ。
「僕が馬鹿でした……」
ノウェムは何やら悪事を考えてるように、片目だけ開いてこちらを見ている。
「————悪いと思うなら、我を家まで送り届けてくれるなら許してやらんでもないぞ!」
彼女の後ろには堺。堺が背後からノウェムに強力なチョップを脳天めがけて振り下ろす。
「馬鹿言うな、お前の家はすぐそこやろ? イグニスをからかうなってなんどいわせる?」
堺の脳天かち割りチョップは、その名の通りの威力らしい……ノウェムが頭を抑え屈み込んだまま立ち上がらない。
いつもの威厳など失われ、悲しくも目をウルウルさせている。
「さーかーいー!! もし馬鹿になったらどうしてくれる!」
依然として屈み込んだままのノウェムは、小さくなって全く凄みなど感じられないその体勢で堺に異議申し立てる。
「お前は元々馬鹿やから大丈夫や!」
僕は2人のそんな喧嘩する様子を眺めながら、今日の余韻に浸っていた。
……ニヒル、ホントにありがとう! 僕きっと最高の会社員になるよ! いや、これマジで!
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