よみがえりの一族

真白 悟

文字の大きさ
80 / 109
2.4 正体不明

警鐘

しおりを挟む
 あれから何時間かを経て、ようやくサンクチュアリへと帰ることが出来た。もちろん敵対していたはずのサルガタナスも引き連れて、街の何処ともしれぬ場所へと追いやられつつも、僕はどうしてこのような状況に陥ってしまったのかを真剣に考えたが、その答えは出るはずもなかった。

「これ以上、予備知識のない僕がどんなことを考えようときっとお前たちの話にはついていけそうもない」
 堺によって隠れ家と呼ばれたその廃屋に設置されたベンチと言うなの粗大ごみに腰を据えるとともに、僕は3人にそう告げる。
「それもそうやな、でもだからと言ってお前に一から全まで教えてる時間はない。――なんてったって、早くしないと世界が終わってしまうからな……一応相手は悪魔でも上位に位置する悪魔やし、それはわかってくれるよな?」
 慌てる様子もなく、堺はくたびれたベットに腰を掛けて冷静にそう僕を諭した。
「は? どうして、ベルゼブブとやらを暗殺する話から世界の命運がかかっているような話になるんだ?」
 そもそも、僕はサルガタナスを対処するために外に出たわけで、ベルゼブブとやらの情報は殆ど無い。そんな状況下でなんの説明もないとなると相当厳しいわけだが……。

「そんなことはどうでもいいです。堺さんもアモンさんも私を敵とするのかどうか、ここではっきりしてほしいです!」

 しびれを切らしたのか、道中全く無言だったサルガタナスがそう怒鳴りつける。二人を警戒してのことか、ドアの前から一向に動こうとはしない。
 その態度に僕は憤りを覚えた。
「何が言いたいのかわからないけど、崩壊した世界が終末を迎えようとしているんだろう!? だったら尚の事僕たちは協力しあうべきだ。堺は納得しているはずだし、アモン? っていうのか……とにかく、その悪魔の飼い主は僕だ。だったら、こいつが何を言おうが僕が協力するといっているのならそれでいいだろ!」
「いいえ、良くないです……信頼という言葉を知らない悪魔だからこそ、口先だけの信頼は重要なんです。それすら、口にすることが出来ないというのであれば、アスタロト陣営はお二人、いえ、御三方を抜いてやらしてもらいます」
 そういい切る彼女は、どうしてだか人間味あふれているようにも感じられたが、彼女はあくまであるはずだ。
「じゃあ、悪魔にとって徒党を組む理由は利用価値だけだとでも言うのか?」
 もしそうだとするのであれば、人間と悪魔は最初から相容れないというわけだが……。

「そんなん私が知るはずないでしょ? 私は人間なんですから」

 彼女は大声でそういい切る。その間にも微動だにすることはなかったが、顔だけはこっちを向けて思いっきり睨んでいる。
 まさか、彼女がサルガタナスの宿主だなんて一ミリたりとも思ってなかったわけだし、そこまで怒らなくてもいいと思うが……。
「……お前、サルガタナスの人間の方だったのか」
「最初から悪魔やって名乗った覚えはありませんけど?」
 確かに……僕の早とちりだった。
「そうか……それは失礼なことなのか? いや、失礼なことなんだろうな。とにかく非礼を詫びるとしよう」
 僕はゆっくりと頭を下げた。
 それと同時に彼女は激しい音を立てながら、ドアの近くから僕の方へとよってくる。
「そんなことで頭なんて下げなくていいです。それよりももっと他のことで、あなたは私に頭を下げる必要があるんじゃないですか?」
 と言われても、僕は今までの記憶が無いわけで彼女に対して何を詫びるべきなのか分からない。だが、それを口にすると更に彼女の怒りをかうような気がしてならない。
 僕は助け舟を求めるため、視線だけ堺の方に向ける。だが、彼は僕と目を合わせようとはしない。

(おい、悪魔。ずっと俺と一緒にいたお前なら分かるだろう?)
 本当は助けを求めたくはないが、最終手段として頭の中で悪魔に問いかける。
(まあここまで来たのなら、お前のために情報を提供せざる負えないというわけだが、多分お前後悔することになるが……それでも知りたいのか?)
 やけに勿体つける悪魔だが、今知らずにいつ知るのか……。
(いいからさっさと教えてくれ)
(……あいつはお前が探していた女だ)
(……はい?)
(だから、あいつはルナ? だとかいう女だって)

 いやいや、ちょっとまってくれ。――ルナって誰だ?

 僕の思想を読んだのか、悪魔は大きくため息を吐いた。だが分からないものは分からない、その女も僕の記憶が無い3年間の中で出会った人物なのだろうか? それにしても、どこかで聞いたことがあるような懐かしい気分に包まれる。
 だが、決してそのような女性にあった記憶はない。
 ただ、悪魔の言う探していた女性という言葉には心当たりがあった。僕が今日思い出したかつての記憶の中に何者かは忘れたが、少女に合わなければならないと言うような感覚があったということだ。
 もしそれが、僕の記憶の断片の一部だとするのであれば、僕はこの3年の記憶を思い出すことが出来るはずだ。

 ふとそんな思考を張り巡らせていると、不思議と目から水が溢れ出してきた。それと同時に今まで感じたことのないような感情。『絶望』に近い何かが僕の中を蹂躙した。

「ふえっ、そこまで罪悪感にかられる必要はありませんよ。涙など流さないで下さい」

 僕の涙を見た途端、彼女は先程までの冷淡な口調とは打って変わり、女性らしい感情豊かな口調で僕にそう易しい言葉を放つ。
 何か言葉を返すべきだと言うことはわかったが、涙が溢れてくるばかりでうまく言葉がまとまらない。
「幼馴染との再開がそんなに嬉しいんやったら、なんで最初から素直に喜ばへんねん」
 堺は僕と方を組んでそう嬉しそうに笑った。

 だからだろうか、僕の中にある『罪悪感』が本当のことを言ってはいけないと警鐘を鳴らしている気がしてならなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...