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勇者は死ねない
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恨みつらみ、それは人間の感情において、最も下らないものだと、僕は確信を持って言える。
僕の両親は魔物に殺された。
その恨みの結果、生まれたのが僕だ。
――恨みとは、さらなる恨みを生む。
負の連鎖、それは終わることのない輪廻で、何も残らない終焉に等しい。
狩る側だったはずの人間が、狩られる側になるのは至極当然で、覚悟もなく狩る人間はいないだろう。
もっとも、恨まれる覚悟を持つものはそれほど多くない。
「かかってこい」
恨まれるのは慣れている。
だからこそ、僕はいつものように剣を構える。
見えないが相手は、ずりずりとにじり寄って来ているようだ。
姿が見えないせいで、どのように対応すべきかはわからない。そんな不利な戦いは、今まで何度も行って来た。
「まるで隙がない……近寄れば間違いなく、私なんてひとたまりもないだろう」
相手にはまるで油断というものがないらしい。
今回は楽しめそうだ。
「ちょっとまって……」
ニケが僕の肩を叩く。
ちょうどいいところだというのに、一体なんだというのだろう。
「なんだ?」
「わかってるでしょ? こんなところであなたが戦うと、洞窟は絶対に崩落する」
なるほど、そうだ。
幾たびも行った過ちをまた行ってしまうところだった。
「あー、悪いんだけど……外でやらない?」
僕は一応、相手に提案してみる。
こんな提案に乗るバカはいない。どこに、相手の得意なフィールドで戦おうとする。
暗闇をシールドとして戦う。それは卑怯なことでもなんでもない。特に格上相手に手心を加えるなんて、ある意味失礼というものだ。
僕なら絶対に乗らない。
危険な状況だと知っていたとしても、少しでも勝てるほうを選ぶ。
それが戦いの基本だ。
「いいだろう……死ぬよりはずっとましだ」
相手は僕の予想を裏切った。
おかしい、死は救済であるはずだ。死よりましなことなど一つもない。
――死こそが、一番楽な逃げ道なのだ。
だけど、相手にとっては違うらしい。
人の考え方など、百人十色なのだ。
「ありがたいけど……いいのか?」
予想外な戦闘力の差、相手が弱すぎる。
全力の僕とでは戦いにすらならないだろう。錆びた剣を持った僕とならいい勝負をするかもしれない……だが、それは現状叶わない。
手加減などしたならば、ニケにどんな嫌味を言われることだろう。
だから、できることなら、僕の気持ちを察して、この洞窟の中で戦うことを選んでほしい。
「外に出よう。洞窟が崩れたら、私は死んでしまうからね」
現実とは思い通りにならないものである。
僕の両親は魔物に殺された。
その恨みの結果、生まれたのが僕だ。
――恨みとは、さらなる恨みを生む。
負の連鎖、それは終わることのない輪廻で、何も残らない終焉に等しい。
狩る側だったはずの人間が、狩られる側になるのは至極当然で、覚悟もなく狩る人間はいないだろう。
もっとも、恨まれる覚悟を持つものはそれほど多くない。
「かかってこい」
恨まれるのは慣れている。
だからこそ、僕はいつものように剣を構える。
見えないが相手は、ずりずりとにじり寄って来ているようだ。
姿が見えないせいで、どのように対応すべきかはわからない。そんな不利な戦いは、今まで何度も行って来た。
「まるで隙がない……近寄れば間違いなく、私なんてひとたまりもないだろう」
相手にはまるで油断というものがないらしい。
今回は楽しめそうだ。
「ちょっとまって……」
ニケが僕の肩を叩く。
ちょうどいいところだというのに、一体なんだというのだろう。
「なんだ?」
「わかってるでしょ? こんなところであなたが戦うと、洞窟は絶対に崩落する」
なるほど、そうだ。
幾たびも行った過ちをまた行ってしまうところだった。
「あー、悪いんだけど……外でやらない?」
僕は一応、相手に提案してみる。
こんな提案に乗るバカはいない。どこに、相手の得意なフィールドで戦おうとする。
暗闇をシールドとして戦う。それは卑怯なことでもなんでもない。特に格上相手に手心を加えるなんて、ある意味失礼というものだ。
僕なら絶対に乗らない。
危険な状況だと知っていたとしても、少しでも勝てるほうを選ぶ。
それが戦いの基本だ。
「いいだろう……死ぬよりはずっとましだ」
相手は僕の予想を裏切った。
おかしい、死は救済であるはずだ。死よりましなことなど一つもない。
――死こそが、一番楽な逃げ道なのだ。
だけど、相手にとっては違うらしい。
人の考え方など、百人十色なのだ。
「ありがたいけど……いいのか?」
予想外な戦闘力の差、相手が弱すぎる。
全力の僕とでは戦いにすらならないだろう。錆びた剣を持った僕とならいい勝負をするかもしれない……だが、それは現状叶わない。
手加減などしたならば、ニケにどんな嫌味を言われることだろう。
だから、できることなら、僕の気持ちを察して、この洞窟の中で戦うことを選んでほしい。
「外に出よう。洞窟が崩れたら、私は死んでしまうからね」
現実とは思い通りにならないものである。
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