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勇者は死にたい
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「最初からその魔法を使えば、スライムも一掃出来たじゃないですか……」
ヴラスカが小言を漏らす。
「今回の目的は、あくまでお前に強くなってもらうことだ。この魔法を使ったところで、お前の経験にはならないだろう?」
そもそも、この『エアリアル』は攻撃用の魔法ではない。
無造作に周りのものを吹き飛ばすだけで、余計に被害が広がるだけだ。
「ともかく、これで任務達成ね」
ニケがうれしそうな顔で言う。
だが、僕はそれほど陽気にはなれない。
これだけのスライムが発生していた理由がわからないからだ。ケーニヒヴァッサーがいるわけでもないというのに、なぜスライムが大量発生したのだろう。
嫌な予感がしてならない。
「まあ、そうだね。帰ろうか」
しかし、それを考えても仕方がない。僕たちの任務には、原因追及は含まれていないことだし、きっとそれを調べる専門家ぐらいは雇っているだろう。
あくまで、僕たちは討伐目的で依頼を受けたのだから、それ以上のことは勝手にするべきではない。
僕の言葉を聞いたあと、ニケとヴラスカが楽しそうに談笑を始める。
僕はというと、周囲の後片付けを始めていた。
魔法によって吹き飛ばされたスライムの死骸があちらこちらに飛散している。これをこのまま放置するわけにもいかない。
普通に通行の邪魔になるだろうし、なにより不快だ。
スライムは水に溶けるし、火で蒸発する。処理自体はそれほど難しいものではない。
ただ、量が量だけに、時間はかなりかかるだろう。できれば、二人にも手伝ってもらいたいのだが、今回は僕が無理やり二人を連れてきたわけで、手を煩わせるのも億劫だ。
仕方なく僕は一人で片づけることにした。
「火の聖霊よ、姿を現したまえ……フレイム!」
一番簡単な火属性魔法『フレイム』だ。
一度発動すると、魔力供給を停止するまで発動し続ける便利な魔法ではあるが、その反面、魔力の限界まで使用してしまう危険性がある。
便利なものは、その反面危険なものでもあるということだ。
――ともかく、僕達は小一時間をかけて、スライムたちを蒸発させた。
壁に張り付いているものはまだましだが、柱の上に乗っかってしまったものはかなり面倒くさかった。
結局、ニケとヴラスカも手伝ってくれたからよかったものの、一人でやっていたら日が暮れていたことだろう。久しぶりに仲間のありがたみってやつを感じることが出来た。
ここ最近はほとんど一人だったからな。
「今度こそ本当に帰れるわね……」
遠い目をしたニケが僕の肩をたたく。
「うん。あの村には帰れると思うけど……」
「まあ、あやしいわよね?」
ニケはこの状況を不審に思っているらしい。
「そうだな。僕的にはスライムの魔王的ななにかがいてくれるとうれしいんだけど」
もし、そんなものがいれば、僕も今度こそ死ねるかもしれない。
自分を殺す人間を育て上げるよりかは、幾分か早めに人生を終えられるだろう。
ヴラスカが小言を漏らす。
「今回の目的は、あくまでお前に強くなってもらうことだ。この魔法を使ったところで、お前の経験にはならないだろう?」
そもそも、この『エアリアル』は攻撃用の魔法ではない。
無造作に周りのものを吹き飛ばすだけで、余計に被害が広がるだけだ。
「ともかく、これで任務達成ね」
ニケがうれしそうな顔で言う。
だが、僕はそれほど陽気にはなれない。
これだけのスライムが発生していた理由がわからないからだ。ケーニヒヴァッサーがいるわけでもないというのに、なぜスライムが大量発生したのだろう。
嫌な予感がしてならない。
「まあ、そうだね。帰ろうか」
しかし、それを考えても仕方がない。僕たちの任務には、原因追及は含まれていないことだし、きっとそれを調べる専門家ぐらいは雇っているだろう。
あくまで、僕たちは討伐目的で依頼を受けたのだから、それ以上のことは勝手にするべきではない。
僕の言葉を聞いたあと、ニケとヴラスカが楽しそうに談笑を始める。
僕はというと、周囲の後片付けを始めていた。
魔法によって吹き飛ばされたスライムの死骸があちらこちらに飛散している。これをこのまま放置するわけにもいかない。
普通に通行の邪魔になるだろうし、なにより不快だ。
スライムは水に溶けるし、火で蒸発する。処理自体はそれほど難しいものではない。
ただ、量が量だけに、時間はかなりかかるだろう。できれば、二人にも手伝ってもらいたいのだが、今回は僕が無理やり二人を連れてきたわけで、手を煩わせるのも億劫だ。
仕方なく僕は一人で片づけることにした。
「火の聖霊よ、姿を現したまえ……フレイム!」
一番簡単な火属性魔法『フレイム』だ。
一度発動すると、魔力供給を停止するまで発動し続ける便利な魔法ではあるが、その反面、魔力の限界まで使用してしまう危険性がある。
便利なものは、その反面危険なものでもあるということだ。
――ともかく、僕達は小一時間をかけて、スライムたちを蒸発させた。
壁に張り付いているものはまだましだが、柱の上に乗っかってしまったものはかなり面倒くさかった。
結局、ニケとヴラスカも手伝ってくれたからよかったものの、一人でやっていたら日が暮れていたことだろう。久しぶりに仲間のありがたみってやつを感じることが出来た。
ここ最近はほとんど一人だったからな。
「今度こそ本当に帰れるわね……」
遠い目をしたニケが僕の肩をたたく。
「うん。あの村には帰れると思うけど……」
「まあ、あやしいわよね?」
ニケはこの状況を不審に思っているらしい。
「そうだな。僕的にはスライムの魔王的ななにかがいてくれるとうれしいんだけど」
もし、そんなものがいれば、僕も今度こそ死ねるかもしれない。
自分を殺す人間を育て上げるよりかは、幾分か早めに人生を終えられるだろう。
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