永劫回帰の黙示録(レヴェレーション)

真白 悟

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5章 智の魔王

1.報酬金

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 報酬金を受け取ったルシフ一行は、借金を一括で返金しただけでなく金貨二万枚という大金を手にしていた。これはつまり小規模な教会が40個も建てられる程で、りんごに例えるならおそらく一生食べきれないほど買うことができるだろう。
 そんな大金を手にしてもなお、ルシフの心の傷は癒えることなどない。金貨二万といえば、王国騎士団の初任給の1,200倍程の大金だ。もはや働く必要などないのだというレヴィアの力説すら耳に入らないようだ。

「ちょっと聞いてるの? あれからもう3日たったのよ……早く立ち直りなさいよ……」

 レヴィアが心配そうにルシフの顔を見つめていた。
「もう大丈夫だよ……」
 ルシフの気のない返事も聞き飽きたように、レヴィアはため息をついた。
「アリサ達だって王都に帰ってしまったのよ? 私だって約束を守るためにずっとここには居られないわ……ダンダリオンがいつ王都を襲ってくるかわからないし…………」
 弱っているルシフをほっとくわけにはいかないが、彼女も聖者の一人である。ダンダリオンの軍勢を撃退する防衛戦には加わらなければならないのだ。
「だから、大丈夫だって何回も言ってるだろう……? 早く王都に帰れよ……」
 その言葉を吐き出している最中でも一度もルシフはレヴィアのほうを見ない。
「もう…………」
 この三日間毎日そうしたように、彼女は説得を諦めてルシフの部屋から出ていった。

 一人取り残されたルシフは、ベットの脇に置いてある写真を持ち上げる。写真に写るのは、生まれたばかりの自分と両親。
 20年間ずっと眺める事しかできなかった父親とはじめて会話をすることができた。だがそれが、最初で最後の会話となってしまったのだ。それはずっと父を恨んでいたルシフにとってこれほど残酷なことはなかった。
 結局父に文句の1つも言ってやることが出来なかったのだ。最後は結局、あの悪魔のことを父として死んで欲しくないと思ってしまった。自身では恨んでいたと思っていたからこそ、自分の嘘が剥がれ落ちた時の衝撃は大きい。
 それは、自分の心を守るために作り出した嘘の怒りで、父がいなくなった不安を緩和していただけだということにようやく気がついたのだ。

 ルシフは自分の本当の気持ちに気が付いて涙を流した。この心の傷は二度と癒えることはないだろう。だが、ルシフはまた少しだけ成長することが出来ただろう。
 それは、どれほどの大金を手にしても得られることの出来ない大切なもの、だがそれを得るために時として人は命を落としてしまうこともある。それだけ、価値のあるものを得られたのだが、ルシフがそれに気が付くのはもう少しあとのことだった。


 三日間部屋にこもり、後悔と絶望に打ちひしがられていたルシフだが、ようやく外に出る決心ができた。
 部屋のドアノブに手をかけ、ゆっくりとひねる。廊下に誰かがいないか神経を研ぎ澄ませながら、ゆっくりとドアの向こうを覗き込む。
「よし! 誰もいないな……」
 ゆっくりと部屋から出るルシフ―――
―――「なにがよしなの?」
 背後からの声に仰け反るルシフ。ドアの横で座り込んでいたのはレヴィアであった。
「……うわっ! どうしてレヴィアがこんなところに!?」
 レヴィアはゆっくりと立ち上がった。そして、ヌルヌルとルシフの方へ近づいてくる。
「ルシフ! ようやく出てきてくれたのね!」
 この街に来てはじめて、レヴィアは喜びをあらわにした。その様子にルシフは罪悪感がます。
「悪かったな……迷惑かけた……」
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