インフルエンサー

うた

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インフルエンサー 2

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修学旅行の班分けを決めている時に事件は起こった。
「おい、小山。お前俺らの班に入れよ」
大衡が突然そんなことを宣った。俺は耳を疑い、思わず彼の顔を凝視してしまった。
「え……俺?何で?」
「どうせ余ってるんだろ。こっちは半端に一人足りねえんだよ」
見ると大衡はいつもの取り巻き連中である上野と下田の二人を引き連れていた。二人とも大衡ほどではないがそれなりにイケメンで、俺とは正反対の陽キャ軍団の一員だ。えー小山入れてやるの?優しい~なんて笑いながら言っているけれど入れてくれなんて頼んだ覚えはない。俺は適当にどこかの地味メンツの中に入れてもらおうと思っていたのに……。しかし慌てて教室内を見回しても俺と波長が合いそうな地味メンツ達はすでに班を組み終えていた。あんまりだ。
「ほら、他の奴らはもう決まってるって。それに小山、友達いないだろ?」
「い、いるわ!隣のクラスに!」
確かにこのクラスには特別仲が良い人はいない。一年の時に仲良くなった友達とは二年で離ればなれになってしまった。こんなにクラス替えを憎んだことはないかもしれない。
「俺らが嫌なら女子の班に入れてもらうか?」
「……うぐ……それは……」
そんなの無理に決まっている。だってこの班分けは当日の宿泊先の部屋割りにもなるからだ。そうでなくても女子と気軽に会話出来るほど俺のコミュ力は高くない。もはや選択肢はなかった。

ああ……そこそこ楽しみだった修学旅行が一気に憂鬱になってしまった。




魔の班分け事件から一ヶ月。二泊三日の修学旅行の行き先は京都だ。班別の自由行動がメインになっており、つまり俺はずっと大衡達と一緒に行動しなければいけないわけで……正直気が重い。
しかしひとつだけ良いこともあった。今朝更新されたTakaくんのSNSには『今日から修学旅行で京都に行きます』という記事がアップされていたのだ。確かに今は修学旅行シーズンだが、まさか同じ日に同じ場所に行くなんて思わなかった。彼の顔は知らないけれど、もしかしたらどこかですれ違うかも……なんて思ったら少しだけ夢があるような気がした。


自由行動の行き先は事前に決めていた。俺の希望は陽キャどもに聞き入れてもらえずにほとんど無視されたわけだけど……でも何だかんだで無難な観光地を回ることになり安心した。流石に修学旅行でいかがわしい店やら心霊スポットやらには行けないということはアホの陽キャでも弁えているようだ。とりあえず心を無にして一人旅のつもりで楽しもう。そう思っていたのだが……。
「あれ……上野と下田は?」
京都駅から嵐山に移動し、散々カメラ係をやらされた俺がトイレから戻ると、そこには大衡の姿しかなかった。大衡は俺を待っているだけの短時間で他校の女子から逆ナンされていて、いやこいつ本当はめっちゃ性格悪いんですよと教えてあげたくなったが、まあそれはそれとして。
女子達の誘いを断ったらしい大衡は俺の方に向き直った。
「ああ、あいつら彼女と待ち合わせしてるから」
「え……聞いてないんだけど……」
「わざわざお前に言う必要あるか?」
いやあるだろ、一応同じ班なんだから……ていうか勝手な別行動って許されるのか?これだからアホの陽キャは嫌なんだ。
「集合時間までに合流すればいいだろ。じゃあ行くぞ」
そう言うと大衡は俺に背を向けてさっさと歩き出してしまった。もしかしてこれ、二人で回る流れ……?
「ちょ、ちょっと待って……それなら大衡も彼女と回ればいいじゃん」
「は?そんなんいねえし」
え、嘘だろ。しょっちゅう告白されてるくせに。モテすぎて逆にいないとか?何が逆なんだかよく分からないけど。
「ごちゃごちゃ言ってないで早く来いよ。お前チビだから見失いやすいんだよ」
う、うっざ……。お前みたいな無駄にデカい奴、待ち合わせの目印にされちまえ。
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