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「2人とも、樹氷石補充しておこうよ。…あ、これが最後だ」
生ぬるい風が吹き抜ける禁足地の斜面を歩きながら、カバンから最後の樹氷石を取り出して腰にぶらさげた靴下の中にいれる。樹氷石のひんやりした空気が一瞬体を包んでくれるけど、吹き抜ける風で全部流されちゃう…。
「もうすぐ…だと、思うんだけど…」
ミーちゃんも体力の限界が近そう…。斜面を登る姿は少し辛そうだ。
「エリーちゃん、私、あの斜面の上まで行って様子を見てくるよ。それでだめなら引き返そう。ミリアーメルも限界が近いし、樹氷石がなくなってしまったらこの先進めないよ。井戸の水がなくなっちゃったら終わりだし」
「で、でも、アトリエにも樹氷石がもうないなら、これが最後のチャンスじゃないの?これで帰っちゃったら、もう…」
ルーシーちゃんの言ってることは正しいと思う。身を守る樹氷石はこれ以上持ってないし、カバンに入ってる井戸の水も、無限ではないし、帰りに飲む分を考えないとこの間倒れた男の子みたいになってしって最悪全員死んじゃう。でも、ミーちゃんの言い分もわかる。お店に樹氷石は残っていない。今私たちが持っているのが最後。あと残っているのはレオさんがくれた大きめの樹氷石が1つ。ここで引き返して、残った大きめの樹氷石でこの暑さの解決策が見つからなければ村の被害はかなり大きくなってしまうだろう。
ミーちゃんは最後のチャンス、とわかっていたのだろうけど、最後まで言うことなく言葉を止めてその場にすわりこんだ。ルーシーちゃんは私をみて小さくうなずくと先に傾斜の上の方へ進んでいった。私はミーちゃんに水を飲ませて一緒に先へ進むルーシーちゃんを見つめた。
「ねぇ…」
いつもより力なく、弱弱しい口調でミーちゃんは私を見上げてスカートを引っ張っていた。
「どうしたの?お水いる?もう少し頑張ってね」
「ちがうの、そんなにお荷物い扱いしないで。…エリナは、これでもし引き返したらどうなると思う?残ってる樹氷石でどうにかできそう?大きな氷枕を錬成して、村や山全部冷やすとか」
「う、それは無理かなぁ。基本的にあまり大きなものって作れなくて、村に大きな氷の塊を置く、とかは無理なんだよ。効力が長く続く氷枕を作ることはできると思うけど、それで村の人全員を助けるのは難しいかも…氷枕以外にも何か作れるかもしれないけど、今は思いつかないし…」
「そうだよね…」
スカートから手を放すと力なくその場にうなだれてしまう。
「エリーちゃ!」
私がミーちゃんに、『だいじょうぶだよ、きっとあるから、ルーシーちゃんを信じよう』と言いながら手を繋いで一緒に座っていると、斜面の上でこちらに手を振るルーシーちゃんの姿があった。
「え、エリナ。あれは…どっち?」
「どっちって、あれは『あったよ!』のサインだよ!行ってみよう!」
私はミーちゃんの手を引いて斜面を登りだした。2人で登りだしたときに、最後の樹氷石が溶け切ってしまったようで、生ぬるい風がモロに私たちへ襲い掛かる。暑い空気を吸い込むと肺が熱くなるのがわかる。残された時間はもうそれほど多くなさそうだった。
生ぬるい風が吹き抜ける禁足地の斜面を歩きながら、カバンから最後の樹氷石を取り出して腰にぶらさげた靴下の中にいれる。樹氷石のひんやりした空気が一瞬体を包んでくれるけど、吹き抜ける風で全部流されちゃう…。
「もうすぐ…だと、思うんだけど…」
ミーちゃんも体力の限界が近そう…。斜面を登る姿は少し辛そうだ。
「エリーちゃん、私、あの斜面の上まで行って様子を見てくるよ。それでだめなら引き返そう。ミリアーメルも限界が近いし、樹氷石がなくなってしまったらこの先進めないよ。井戸の水がなくなっちゃったら終わりだし」
「で、でも、アトリエにも樹氷石がもうないなら、これが最後のチャンスじゃないの?これで帰っちゃったら、もう…」
ルーシーちゃんの言ってることは正しいと思う。身を守る樹氷石はこれ以上持ってないし、カバンに入ってる井戸の水も、無限ではないし、帰りに飲む分を考えないとこの間倒れた男の子みたいになってしって最悪全員死んじゃう。でも、ミーちゃんの言い分もわかる。お店に樹氷石は残っていない。今私たちが持っているのが最後。あと残っているのはレオさんがくれた大きめの樹氷石が1つ。ここで引き返して、残った大きめの樹氷石でこの暑さの解決策が見つからなければ村の被害はかなり大きくなってしまうだろう。
ミーちゃんは最後のチャンス、とわかっていたのだろうけど、最後まで言うことなく言葉を止めてその場にすわりこんだ。ルーシーちゃんは私をみて小さくうなずくと先に傾斜の上の方へ進んでいった。私はミーちゃんに水を飲ませて一緒に先へ進むルーシーちゃんを見つめた。
「ねぇ…」
いつもより力なく、弱弱しい口調でミーちゃんは私を見上げてスカートを引っ張っていた。
「どうしたの?お水いる?もう少し頑張ってね」
「ちがうの、そんなにお荷物い扱いしないで。…エリナは、これでもし引き返したらどうなると思う?残ってる樹氷石でどうにかできそう?大きな氷枕を錬成して、村や山全部冷やすとか」
「う、それは無理かなぁ。基本的にあまり大きなものって作れなくて、村に大きな氷の塊を置く、とかは無理なんだよ。効力が長く続く氷枕を作ることはできると思うけど、それで村の人全員を助けるのは難しいかも…氷枕以外にも何か作れるかもしれないけど、今は思いつかないし…」
「そうだよね…」
スカートから手を放すと力なくその場にうなだれてしまう。
「エリーちゃ!」
私がミーちゃんに、『だいじょうぶだよ、きっとあるから、ルーシーちゃんを信じよう』と言いながら手を繋いで一緒に座っていると、斜面の上でこちらに手を振るルーシーちゃんの姿があった。
「え、エリナ。あれは…どっち?」
「どっちって、あれは『あったよ!』のサインだよ!行ってみよう!」
私はミーちゃんの手を引いて斜面を登りだした。2人で登りだしたときに、最後の樹氷石が溶け切ってしまったようで、生ぬるい風がモロに私たちへ襲い掛かる。暑い空気を吸い込むと肺が熱くなるのがわかる。残された時間はもうそれほど多くなさそうだった。
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