剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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竜騎士ジェイド編

終戦

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味方兵と彼の隊は「彼を援護しろ」とばかりに飛び出し彼の左右に展開して対峙する

2将の後方で見学を決め込んでいたエリザベートは自らの特注武器「槍斧」の武器を咄嗟に取り、馬にまたがり単身最前線に走る

彼女の百人騎馬隊もそれを見て皆馬に飛び乗り遅れて彼女を追いかける

土煙を上げて接近する馬と将、エリザベートは最前線に近づくと大声でうろたえる味方兵を一喝する

「どけー!馬鹿共!私がこいつを止める!!」と叫び。

馬に乗ったまま、ジェイドの前で転進。横から駆け抜けざまに馬上から彼に一撃を加える。ジェイドはそれを刀で受けエリザベートはその反動で引っ掛かかるように馬から飛び降りる

二人は刀と槍斧の先端を合わせた姿勢のまま立ち、対峙した

その光景を見て両軍。「うお‥」と思わず声が漏れ数歩離れ、二人から徐々に後ずさり離れ。二人を挟んで輪のようになった

「ベルフ、五大将の一人、エリザベート=フィフス=エンデルト あんたは?」と問いかけた

「ジェイド、ジェイド=ホロウッド‥」

五大将の一人エリザベート、メルト軍側は初めて見る大陸的な名士に「あれが‥」と注目する

彼女は長い金の髪をなびかせた、整った、美しいというより男性的な「精悍」な顔立ちを持った女性騎士だった

白と黒のコントラストの軽装気味の鎧を纏い、170後半の身長、不釣合いとも思える二メートルの大型で槍と斧の中間の武器を携えていた

お互い合わせた武器を離し、数歩下がって構える、エリザベートは上に武器の先端をやや持ち上げるようにジェイドは中段正中線に

「聞かない名だね。どこから出てきた化け物だ?」
「ただの雇われ用心棒、みたいなもんさ。武者修行の途中でフラリとここに立ち寄った旅人でね」
「へぇ、そりゃ立ち寄る場所を間違えたね」
「俺にとってはそうでもないさ、お前にとってはどうかしらんが」
「そういう「立場」には興味無し、てかい?」
「あまりな」
「残念だねぇ、ならしかたない、か!」

と言うが早いかエリザベートは踏み込んで「槍斧」の先制の一撃を叩き付ける

ジェイドはそれを、剣を手元で10センチ程動かし最小限の動きで刃を合わせる様に槍斧を弾く

即二撃を放ち、3、4と撃ちつけるが同じく弾く エリザベートは目を少し細めたがそれを続ける、エリザベートの一撃一撃で空気が振動するような錯覚、打ち合う武器から火花が飛び散るような苛烈なやり取り

その場にいる殆どの者がおそらく生まれて初めて見るであろう「最強クラスの武人同士の戦い」に目を奪われた

20合ほどそれを続けた後エリザベートは手首を返して胴を払うような横切りに変化させる

ジェイドはそれを僅かに前進して刀の中ほどで弾く様に合わせる。その直後、お互いの武器と体が反発する磁石の様に離れて距離を取った所で止まった

両者構え直す

「いやな奴だ‥簡単に弾くんだから」
「簡単‥ではないがな」
「ついでに嫌味な奴だ」
「そりゃすまんね」

エリザベートは離れた距離を一気に縮める様に大きく前に踏み出し両手で握った槍斧を背中か遅れて出てくるような形で大円を描いて地面ごと叩き潰すような振り下ろしの一撃を放つ

同時にジェイドはすり足のまま前に跳ぶように前進して振り下ろしの槍斧の一撃を懐に潜り込みながら刀を下から上に出して受けた、それが合わさった打撃音と衝撃で爆発したかのような錯覚を周囲は覚える

一瞬二人は鍔迫り合いのような体制になるが即座ジェイドは軽くその体勢のままエリザベートを押しのけた

「軽く」に見えたがエリザベートの足は地面を離れ、体ごと後ろに飛ばされる

彼女は「つっ!‥」と声を小さく挙げ、両手で持った武器の左手を離しサッと引く、ふわりとそのまま後方に着地したが顔を歪めてジェイドを睨んでその左手を三度、開いて閉じた

「名人芸の様な技を使うかと思えば‥‥」と憎らしそうに呟く。が笑っていた
「悪いな、色んな剣法が混じっててね」

ジェイドは鍔迫り合いのような姿勢から押したのと同時に自分の剣のグリップの余り下部分でエリザベートの武器を握る左手「手の甲」に打撃を加えたのだ。 

彼女の左手甲の篭手の金属部分が少々へこんでいた、負傷するほどではないが、痛みと痺れがしばし残った

だが残念ながらこのやり取りが理解できたのは、見ていた観衆の中ではマリーとエリザの百人騎馬隊の中でも2,3人という僅かな人数だけだった

お互い構えを又取って対峙したがここでエリザベートは。一度「すー」と大きく息を吸い込み。そして

「全軍!自陣まで後退する!急げ!!」と重たい声で叫ぶ

一瞬「え?」となったが即座にエリザベートは

「命令が聞こえんか馬鹿共!「この」エリザベートが命令しているのだぞ!」

と怒号を発すると。味方兵は即座に逃げる 軍の撤退というより大人にしかられた子供の様に

一瞬。それを見てメルト側の兵が逃がすか!と駆けようとするがジェイドはそれを片手で制する

「我らは「守る」が方針だ、無駄に「逆撃」を受けて犠牲をだすな」と言って止めた

全軍はわらわと逃げ出したが、エリザベートの背後には百人騎馬隊がそのまま残った、彼女はジェイドを見据えながらゆっくりと後退し、自らの馬に乗って言った

「フン‥しかも可愛げが無い。‥隙が無さ過ぎてうんざりするわ」と言ったがその言葉とは裏腹に顔は笑っていた

「重ね重ねすまんな」
「まあいい、貴様とはまたいずれどこかで‥」

と彼女はいい、腰に差した短剣を鞘ごとジェイドに投げた。それを彼は左手で受け取る、視線だけ動かしそれを見てまた彼女に視線を戻す、かなり高価な物だ。

「この手の求愛は受けないんだがな」と返し、それを聞いたエリザベートは「フフ‥」と笑う

「そういうのは嫌いか?」
「俺には「妻」がいるんでね」

エリザベートはハハハッと愉快そうに声を出して笑った

「それは二重に残念だな。」

言って馬を返し腹を軽く蹴って走り出す

「さらばだ、またな!」と

それに続いて百人騎馬隊も後退した

それを呆然と見送ったメルトの兵士の一人がジェイドに、何故止めたのか?と問うた

「アレの最初の目的は崩れかかった味方への渇と維持。後のやつはこっちを「平地」によしんば引きずり出したかっただけだ。平地であの騎馬隊と戦うのは反撃してくださいと言ってる様なもんだそもそも数は向こうのが多い」と分かるように説明した

だがとりあえず、ジェイドの活躍で突破を押し返した、更に言えばここでほぼ後の勝敗も決していた、両者軍を引きその日の戦闘は終了した


その後ジェイドは賞賛を受け、しばらく取り囲む人は絶えなかった。

街に雪崩れ込まれかけた重装突破兵を押し返し更に大陸でも名を馳せる、ベルフの五大将で「武」に置いて1,2を争うエリザベートと互角の戦いを見せればそうもなる

ジェイドが「強い」のは皆の共通認識だったが、まさかここまでとは誰も思わず驚愕と敬意でいっぱいだった

マリーだけはエリザベートとのやりとりのおかげかジト目を向けてきたが

「ずいぶん気が合う相手のようで」

と開口一番皮肉られた、無論本気言ってるわけではないが

「どっちかって言うと男同士の拳を交わした後の認め合いだと思うが‥」
「向こうもずいぶん貴方をお気に入りみたいに見えたけど?‥美女ってほどでもないけど。中々いい女だったしね~」
「だからそーいうんじゃねぇての!」

先ほどまで戦争していてその張り詰めた緊張感と緊迫感との余りに逆方向の二人のやり取りが妙におかしく周囲の人達は笑いを堪えて震えていた

2人「あーすいません、とりあえず解散で」


夕刻、彼のらの隊で集まりさながらパーティーの様な明るい食事会が開かれた

何時に無くセシルは静かで置物の様になってお茶を啜っていたので声をかけてみる

「どうしたセシル疲れたのか?」と
「あ、いや、ちょっと考え事を‥」

割と深刻な感じだったが、空気をよまない、すでに「できあがっていた」マリーがつっこむ

「あんたでも難しい事考えたりするのね~」
「あのよっぱらいの事は気にするな、で、話せない事か?」と
「いや、そういう事でもなくて」
「?」
「俺ってすげー人の弟子だったんだなって‥」

なるほど、と合点がいった 今日の2戦の事を思い出していたのか

「重装兵に関してはあれに有効な武器を俺が持ってたってだけだし、あの女が世界最強ってわけじゃないどっちも名前が知られてたから「実像」よりでかく見てしまうだけさ」
「そういうものなのか‥」
「お前だって「その武器」があったから最強兵とやれたんだろ?お前だって「すげー弟子」だよ」
「お、おう‥そ、そうだよな!」

「そうです!」と対面に座ってたウェルチが立ち上がる勢いで言う

「セシル兄さんとジェイドはとってもすごかったです!私なんか、あんな時に何もできなくて!‥」
「に、兄さん!?」
「あ、その同期ですけど、兄弟子ような立場だと聞いたので‥」
「あ、いや、兄弟子か、なるほど」
「別に気にする必要はないぞ、マリーの代わりの教師などウェルチにしか出来ないんだ、何でも出来なくてはいけない事はないんだ」

一度咳払いをしてジェイドは続けた

「世の中には、名前は知れ渡ってないけど。凄い奴なんていっぱい居るもんさ。誰誰が一番なんて決め付けられないのさだから面白いし見てみたくなる」
「そっかー‥だから師匠は旅を、俺も何時かやってみたいな~」
「ついでに言うとだな。その知られてないけどすげー奴はここにももう一人いる」

セシルとウェルチは「え?」とマリーをチラッと見た

「正解。マリーは剣でも俺といい勝負するくらい強いぞ」
「ま、マジすか‥初耳だ」
「うううううそでしょ!?そんな風に、ぜ、ぜ全然見えません!」

酔っ払いと化していたマリーはテヘヘと笑って

「2年前の話よぅ~もう間違ってもダンナにはかてないよ~」とエヘエヘと言った

一同のやりとりを聞いていた若い兵士が口を挟んだ

「いや、ほんとですよ。マリー先生とジェイド先生は前に広場で試合して引き分けました」

彼はあの場に居た「そのときのジェイドの教え子」の一人だったらしい

「マジかよー」と隊のメンツ含めセシルとウェルチが彼を囲んでその話を求めた、彼は自分の事の様にドラマティックにリアクションを加えて話まくった

「勘弁してくれよ‥」とジェイドは呟いて、「おいマ‥」と言いかけ

マリーを見たが彼女は既にテーブルに顔を突っ伏して寝ていた

このようなメルト側の和気藹々とした空気とは逆にベルフ軍側の陣営は暗く士気もかなり低く葬式のようであった

さらに空気が悪かったのはその軍議の場だった、テーブルを叩き潰すかのような勢いで2将は声を挙げた

「全軍撤退ですと!?」

エリザベートは一々説明するのも面倒だったが、納得しないだろうとやむなく返す

「士気がもう戻らん、このまま続けてもこっちの被害だけ増大するだけ。向こうは守勢に徹する方針を変えん。これ以上は無意味だ」
「な、しかし!あのような弱国に我らベルフが後ろを見せるなど」
「二度とメルトとやらない。とは言ってない、このままでは無理だと言っている」
「で、では?」

「そうさね。ガレスのじじいを呼んで2正面攻めか、アリオスに協力してもらい「策」を貰うか。あるいは向こうの「あの剣士」を切り離すか、何れにしろ私ともう一人くらいはあの化け物と剣を合わせられる将が2人は必要だ。だから引く」
「しかし皇帝陛下の御意が‥」2将は呟くように言う
「陛下は(相打ちにしてもメルトを落とせ)等言っておらぬ。あくまで《任せる》だけだ」

しかしあくまで「陛下の御意が」「陛下の威光が‥」と繰り返す2将に「貴様らの功だろう」と感じ、引かないならばとエリザベートは考慮してから

「分かった、ここは貴様らに全権委任する。好きにしろ。が百人騎馬隊と私は下がる、それから重装突破兵も全軍引かせる。あれは補充に金と時間が掛かりすぎる、これ以上無駄にされてはかなわんからな。それでよいか?」と

2将は「それで結構です!後はお任せください!」と言うが

その返事を聞くか聞かないかの時に既にエリザベートはさっさと陣幕を出て、そのまま夜の南の森に歩いて入った

しばらくしたところで彼女を待っていた青年騎士は、彼女の心情を理解していたかのように話す

「大変でしたな姉上」と

彼はエリザベートの実の弟でクリストファー、通称クリス
彼女の百人騎馬の副長。姉程ではないが中々武勇にも秀でた人物である

「馬鹿な味方程迷惑な物は無いな」と溜息交じりに返す
「彼らは兎も角、他の残り1万の一般兵はそういう訳ではありますまい。どうします?」

その意味を瞬時に理解したエリザベートは

「馬鹿二人が死ぬのは構わんが巻き込まれる者はたまったものではないな」
「左様ですな」
「間に合うとは思えんが陛下に書状を出し「勅命」を持って馬鹿二人を止めてもらう。他の軍を呼んでも最速でも15日は来るまでかかるが、早馬を出して命令書を貰うだけなら上手くすれば6日‥鳥なら2,3日それでも間に合うとは思わんが」
「やらないよりはやったほうがいいですな」
「そうだ、書簡を頼む、それと騎馬隊と突破兵の撤収準備。すぐ出る」
「ハッ!」と彼は命を受け取り、即座に走る

一人残されたエリザベートは空を見上げて星を見た

そこで「何か」を感じた彼女は「その方向に視線を飛ばす」すると草を掻き分け黒猫が姿を現しエリザを見上げてしばらくすると

力なく「にゃ~」と鳴いた
「なんだ‥」とホッとした後優しい笑みを作って
彼女は無言のまま、ポケットから携帯保存食を取り出し、味の無い肉を一枚取り出し猫の前に投げてよこした

しばらく猫はそれを匂いをかいでいたがやがてガツガツとかじり始める、彼女はそれを確認してから口で笑ってその場を去った

その夜の内にエリザベート達は自部隊を率いて明かりを挙げたまま出立クリスとエリザは馬上雑談しながら道を進んだ

「で、あの《化け物》とやらは如何でした?ジェイドとか言いましたか」
「そうだな、比べる者が余り居ないのでなんとも言えんが‥」

と前置きしたあと

「ガレスの爺やロベールに対峙している気分だった」
「それは‥嫌な相手ですなぁ‥」
「あんな武器を使うから私と同質な奴かとおもったが、アベコベだった。やたらと守備に強く、だが攻撃も嫌な感じだった」
「といいますと?」

「あの打ち合いの中私が少しでも「力」の配分を乱すとその打撃の受けを微妙にずらして、こちらのバランスの崩れを広げる、更に、隙あらばそこから反撃の「意思」をチラチラと捻じ込んでくる。高級な精密仕掛けの様な静かさと精密さで心理戦を仕掛けてくる。心技体共にまるで隙が無うえ、時間を掛けるほど相手を、精神、肉体の両方から追い込み逆転を計る」
「‥それはまた‥」
「更に、だ。ガレスのじじいと違って喧嘩技も平然と使う。あの篭手打ちだ」
「まさに化け物ですなぁ‥」

「あんなのがこれまで無名で、あんな国に居るとはね。だが‥自分を武者修行中の旅人と言う」
「地位や権力にも靡かないですか」
「ああいう面倒で崩しようの無い相手は、敵にするものではない‥と、思ったんだが‥」
「姉上の誘いや釣りにも一切かかりませんでしたな‥」

「剣に置いても同じだろう、たぶんだが、相手が倒れても近づかず観察してから絶対の確認をもって、肉を食らう獣のように慎重だ「勝った」と思わせて誘うような策も利かんだろうな‥」
「姉上ならどうにかなりますか?」
「無理だろうな。命を捨てる覚悟を持ってしても「痛い目に会わせる」が精精だろう」
「なら相手にしないが一番ですな‥」
「そうだ。それにああいう奴は同じ所に留めて置くのは難しい。災害が通り過ぎるのを待つのが一番楽だろう」

「まあいいさ、戦うにしても「誰か」に押し付けておけばいいし、あいつの体は一つしかないからな。軍の戦いならどうにかなる、その意味で「剣を合わせられる将が最低二人必要」と言ったんだが‥」
「それを理解出来る者はあそこには居りますまい‥」
「仕方の無い事だ。ヒントはやったんだ後はもう知らん」
「そうだ、奴の情報を調べてくれぬか。もう一度会うとは思えんが」
「私も興味がありますからやりましょう」と締めくくった

二人が帰路でそういった話をしていた、同刻マリーは「緊急の事」として城に訪れ、軍将と王に面会する その会談の場で「策」を進言する

「何?百人騎馬と重装突破兵が撤退!?まことか?」
「ハイ「斥候」を放って調査、更に監視させておりましたが、離脱を確認。また、エリザベートと2将の間で仲違いのようになりエリザベートの部隊は南の街へ、残った2将は指揮を取りおそらく戦闘と続ける事になりましょう」
「しかし、擬態の恐れは?」
「ありません、私の「斥候」は向こうに術士が居ない限り気づかれません。それに擬態ならこちらに情報が流れてくるハズです」

「たしかに何の情報も出てきて居りませんな」
「しかしながら‥、このまま向こうが散発的な攻略戦を続けるなら、こちらの被害もまだ続きます。故に奇襲作戦を持ってして明日一日でこの戦を終わらせたく存じます」
「それは?」
「では、その策の概要を説明します。奇襲のこの部隊には私とジェイドの隊のみで敢行します」

明けて翌日

予想した通り、ベルフ軍と残った2将は、有効な策も無く、城下壁の突破を試みる、突っ込んでは打ち倒され、弓で撃たれ、無策の極みでベルフ軍だけこの朝から昼までの攻略戦で千人弱失った

ベルフ軍の「兵」は昨日の終戦時点。重装突破兵でなんとかならなかった事、相手に「あの大刀の将」が居り、止められる人間がエリザベートしか居ない事を誰もが知っており無謀な戦いであることを知っていた

更に昨日の夜には重装備兵と主将エリザベートの2つの頼りが消えたため今朝の戦いは士気が低かった、突っ込んでは跳ね返されの繰り返しで死傷者だけは増えていった

午後三時頃、それすらも崩れる。

メルトの軍は防御から攻撃に転じた、重装剣盾兵を押したて押し返し。平地まで出て、全軍出撃、左右に場所を確保して陣形を展開した、これには指揮を取っていたベルフ軍2将は驚く

「野戦を挑むというのか!?何を考えている?」と
「だか野戦というならまだなんとかなる、向こうは援軍合わせて六千こちらはまだ八千五百、数では有利」

と思い戦闘開始されたが、メルト軍は剣盾兵と弓、槍を交互にぶつけ入れ替わりながら付かず離れずに戦う。野戦に持ち込んだのに攻めないメルト軍に気分の悪さを感じた

そのほんの僅かな後。なんとベルフの背後の指揮陣を敷いていた後方の森から敵の伏兵が現れ本陣に突撃してきたのだ

数は百、ジェイドとマリーの隊の護兵などを合わせた奇襲部隊である、これがベルフ本陣になだれ込む

「敵は少数だ!落ち着いて対処せよ!」と指示したが

既に士気も低く、心身共に疲労の極みであったベルフ本陣の護兵や近衛は脆かった

特にその奇襲部隊の殿を務めるのは「あの男」である。戦わずに逃げる者まで出た

たかが百と言ってもこの百は並の百名ではない。彼らの弟子、生徒達、セシル、ジェイド、マリーも剣を取って戦った

ジェイドの強さは尋常ではなくもはや相手と剣を交わすというレベルでなく泥を切り捨てているように人が倒される

彼の生徒や弟子達も皆「自分に合わせた個性的な戦い」が出来る者たちで並の兵など簡単に倒し、味方が危険を思えば、セシルは魔法と剣で援護する

更にマリーの「対軍」における魔法は強力だった、弓を空気の壁で防ぎ突然背後が爆炎に包まれたかと思えば、まるで舞うように瞬く間に5,6人切り倒される

が。彼らの目的はただの奇襲ではない
そしてそれは直ぐ成される

ジェイドとマリーはその目的の2将を左右から挟みこんで追い込む

「化け物か‥」と将は呟いたが、ジェイドとマリーの二人は相変わらず軽口だった

「こんな美しい化け物が居ますか、失礼な」
「見た目はともかく化け物には違いないと思うが‥」
「ひど!?」

2将はワナワナと震えていたが剣を抜いてそんな二人にそれぞれ

「ふざけるな!」と飛び掛るが 剣を振り上げる、前に2将の首は取られていた

ジェイドは転がった首を髪を掴んで拾い上げる

「きもちわりぃ‥」とジェイドが言う
「これっきりにしたいわね‥」とマリーは返した

ジェイドは首を高く上げ、ありったけの大声で

「貴様らの司令官は死んだ!この戦いは終わりだ!降伏せよ!」と

元々「嫌々やらされていた」戦闘であり。
ベルフの兵の半数は逃げ、半数は降伏し。
一日で終わらせると宣言通り

午後四時過ぎに終戦した

前日夜半、マリーの提言した策の概要はこうだ

夜の内に軍船を城下の東港から出し、気づかれぬ様に沖に出る、そのまま相手の目に触れないよう大回りで南の森に侵入、かなり慎重にこれを行ったため海に出てから森に入るまでに10時間かかった

準備が整った所で指示を受け取りメルト軍は反転攻勢。野戦に持ち込み防御に徹し敵、前線を引きつける、タイミングを計って奇襲部隊で敵本陣を急襲、敵大将の首を挙げるというものだ

エリザベートの撤退時点で勝敗はほぼ決していたが、あえて奇策を弄したのは作戦説明会で、マリーはこういって認めさせた。

「敵も味方もこれ以上無駄な戦いを続けて死者を増やさないためです」と

明確な意図を持って進言し王もそれを認めた

こうしてメルト国、並びその後ろの周辺国につかの間の平和が戻った。ベルフが東回りルートを諦めるかどうかは分からないが、メルトに再侵攻は、当面ありえない状態に追い込んだのは間違いなかった
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