剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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傭兵団編

連戦

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ベルフのカリス王子の軍は、クルベルを南東に出立、恐らく南方連合の防波堤たる2国のどちらかに向かうのだろうと思われる、が、同時にベルフの中級指揮官と軍の1つが手勢を三千率いてクルベルを真南に進軍

自治区テイブを挟んだ領土境界線に布陣し、フラウベルト直通の南街道で牽制する動きを見せた

どうせ牽制だからと無視も出来ずフラウベルトは自治区への援護軍を二千出し、対峙、自治区の軍と合わせ同数を揃えて封鎖の構えを見せる

カリスの軍が実際、南方連合領土に現れたのは2日後の事である。最初に現れたのはフラウベルト北にある二国の内の小国カサフ、兵力は四千対三千、お互い出撃して正面決戦を仕掛ける

ここは平地が多く広さもそれなり故、自軍をお互い千づつ、中央、左翼、右翼に分けた正統戦法で野戦を挑む

カリスとシャーロットは残り1千を後方主力として配置し指揮の立場を取る、あまりに正統的、ベターな戦法を敷いてきたのでカサフ軍側も驚いたがそうなれば潔し、とそれを受け

後方観戦の位置で馬上から観戦するカリスとシャーロット

「向こうは受けてくれたね、篭城じゃないんだ‥」
「城壁を挟んだ戦い、というのも案外厄介な物ですからね、やれるうちに野戦を挑むというのは間違ってはいませんよ」
「そうなのか」

「はい、大軍同士と成ればお互い出せる兵も壁を挟んでだと出せる戦力に限りがありますし一言で城壁と言っても壊れもしますからね、この費用と補修の手間が案外馬鹿にならないんですよね、そもそも策を挟む余地が少ないですし。援軍待ち、或いは露骨に戦力差、もう手が無いという以外ではあまりやらないですね」
「ふむ‥」
「特に篭城となれば動けない事になりますし、どこかから援軍のアテが無い場合、こちらとしては包囲して封鎖してしまえば嫌がらせもし放題ですね」
「ところで僕達は何もしないのかな」

「向こうがあの形を受けてくれた以上はあまり無いですね、こちらとしてはゆっくりいじめさせていただきますわ」
「というと?」
「アリオス程精密にはいきませんが、前線と主力の10名単位の交換戦闘を繰り返しましょう、王子の「敵全体の兵力、威勢を削ぐ」という戦略方針は正しいと思いますので、こちらの被害を少なく向こうを削り取る方法を取りましょう」
「こちらも色々用意したんだけどね」

「まあ、一戦目ですし、基本的なやり方にアレンジを加えていくのが良いでしょう。それにこの戦法でも火力差でこちらが大分有利ですしね」
「想像以上にやるねあの三姉妹」

そう言ったとおり。中央左右に其々前線配置されたロズエル家の三姉妹はどこから崩すという事も無く最前線指揮しつつ刀を振るい、正面突撃からどんどん敵陣を三軍共に押し込んでいく

カサフ側にそれを止める武者が居ない訳でもなく幾人か当てられたが、ほぼ10合交わせず三姉妹に叩き切られたのだ

「まあ、あれは特殊な例ですから、普通は左右中央を全部押すなんてありませんから‥」
「伊達にうちの古参武家じゃないね」

3時間もするとそのままベルフ軍は押し込み続けるようになる

「ああ、これはよくないですね、王子、三人に交換指示を」
「分かった」

カリスは前線の三姉妹に交代と休息指示を出し下がらせた

「ではわたくしが前線に行ってきます」

シャーロットは自分の騎馬と弓を細かく分けた混成部隊を引きつれ前線に出た、入れ替わりに戻ったロズエルの三姉妹の妹二人が猫なで声で

「王子~私たちまだ戦えますよ~」
「あいつら弱いし余裕ですよ~」と立て続けに上目遣いで言った

「ああ、御免よカレンにフレア、これも作戦でね。あまり一方的に勝たれても困るんだ。それに僕へのレクチャーでもあるからね。今回は付き合ってよ」

元々ロズエル家と言えばベルフ代々の名家で王に対する忠誠心が非常に高い、しかもその帝国次期当主でもある王子で性格も良く、世間の覚えも良い、プラス、若くて優しいイケメンと成れば実像以上に輝いて見える物だ、その王子にそう言われると「じゃじゃ馬三姉妹」もあっさり

「は~い、わかりました~」と服従する

事実この三姉妹がこれまで使われなかった一つの理由が、個々の我の強さで基本的に命令を聞かない。

そもそもこのロズエル家と成れば、ここ以上の名家はそう無く命令できる者も居ない、3人娘も普段から高飛車で横暴だ。

故に非常に使い難く、今回王子が七将に充てられたと同時に登用して下に付けられたのは人事の妙とも言える

まるで王子の一ファンの様に目を輝かせ、ルンルンで従う状況に成っていたのである

ただ、長女は比較的マトモな人物で冷静だったのでそこまでには成らないが。妹達の普段とのギャップに「単純馬鹿コンビ」と心で呟いていた。尤も長女にもとんでもない悪癖があるのだが‥

「兎に角、つかず離れずの戦闘の繰り返しになる、次の出番までゆっくり休んでくれ」
「は~い」と三姉妹は後方陣に下がる

一方、三姉妹に変わって前線に出たシャーロットは「戦闘を続けさせる」工夫をした

自らも前線と指揮に立つが、時に槍、時に盾と剣、時に弓、攻撃と防御、前進と後退のメリハリを付け敵の前線を誘いながら
「大将首」という餌の匂いをかがせ続けた。

自己の編成した部隊の騎馬と弓も攻撃力に強弱をわざとつけ、押されて後退した様に見せたり、集中火力で強いと見せかけたりと心理的に様々な効果を相手に与え続けた

要は「ここなら押し切れる」という弱さを一定のタイミングでチラチラ見せて、向こうの弱気を出させない様に且つ戦闘継続させる様にしたのだ

しかもこの時全軍前線に「盾」を持たせ、動きが鈍くなるもの承知で皮服の厚重ね着。もしくはチェインメイルを鎧の下にすら着させて徹底して被弾を減らした。個々の動きにくさや重量の負担により疲労が早いが、交代人員が豊富な故可能な戦法だった

結局シャーロットの、それが誘いだと気がつかず、当日「見せ掛け接線」を続けた

更に狡猾だったのが、向こうの兵の減りに合わせて、交換休息と見せかけて自軍の前線から少しづつ人を減らし

「数でも互角」と向こうに見せかけたのである

実際この時、開戦前の兵力三千対四千が 3300対3900まで広がっていたがカサフ側は一方的な被害に殆ど気がついた者は居なかったほどだ

翌朝、ここで疲労が蓄積されカサフ側は一旦軍を後退させようとしたが、そこで交換で入ったロズエル家三姉妹が中央から一斉突撃を敢行。

シャーロットの時と違い引くとそのまま打ち崩される様な火力だった為後退を中止して必死の迎撃戦となり打ち合いになる

しかも知らず知らずの内に自軍は疲弊していた為思った以上に脆く、たった数十分で更に200名もの負傷者を出した

が、ここで幸か不幸かフラウベルトの援軍1千が、ライティスの矛50名フリット、グレイ、バレンティアの指揮で来援

状況を知ったフリットはカサフの司令官に打診して中央突破をかけて来る敵に対する

過去のクルベル防衛戦の教訓から、軍その物の入れ替え連携訓練をしていた為。連合軍側でそれは上手く連動して中央陣をそっくり援軍と入れ替える

左右翼が大きく開き中央にスペースを作る、その後援軍部隊は縦長の陣形で中央に割り込み

戦闘を継続しながら主力を入れ替えるという名人芸的な軍運用をやってのけた

中央左右に分けた基本陣形というのはかなり大規模な戦闘でも用いられる事が多々ある。それは大規模である程、応答性が高い為そうなっている。

1・2・3の其々縦列に様々な兵装の部隊を配したり、前後に壁と射手の部隊を置いたり、別々に指揮官を置いたりが可能で中長期戦では用いらる事が多い。更に三陣の間に基本的に四本の縦に道が出来る為、此処を通路に使い、別部隊や後方予備兵などの投入や後退等も可能など、ベターだが使い易い面がある

兎に角中央から突撃を敢行して突き崩してくるロズエル三姉妹にグレイとフリットが立ちはだかる、これを止めなければ致命的な一撃になるからだ

「こいつらが例の三姉妹か!」
「応!いくぞ!」

当然「武」には自身のある三姉妹、これはいい獲物が来たと集団戦の最中の個人戦も受ける

「あ、この騎士二人、緑軍服だよ!」
「例のライティスの矛のメンバーだな!」
「抜かるな妹ら!」と最前線で激しい打ち合いになる

二対三だが、無理に勝とうと思わなければどうにかやれる差だった、三姉妹の剣撃を受けつつ中央軍の進撃を食い止める

フリットもグレイも過去の経験から、自分達が達人や名人では無い事を悟っていた為

複数陣の様な互いの連携によって大物に対する練習を重ねた為、三姉妹相手にも一歩も引かなかった

特に三姉妹は「武」は上だったかも知れないが、兎角自己中で攻守共にバラバラでこのコンビを崩せず10分以上打ち合って膠着した

そこに代理指揮を取っていた団のバレンティアはライティスの矛の50人部隊を率いて左回りで敵右翼側面から突撃を敢行して崩しに掛かった

流石にこれは黙って見ておれん、とシャーロット=バルテルスが馬を駆って出撃。最前線でバレンティアと対峙して剣を交わす

この部隊同士の戦闘も苛烈で名勝負だった。兎に角両者剣撃が早い。相手がレイピア使いならとシャーロットもレイピアを持ち出し受けた事にある

お互い髪の先と鎧をかすめながら神速で斬り合う。シャーロットもほぼ名人の域だが、バレンティアも過去の苦い経験から厳しい修練を積み自らを引き上げ続けた。その戦いは全く互角で一歩も譲らなかった。

が、王子は「このままでは無駄な被害が出る」とし、前線の4人に後退を指示

正直、うんざりな相手だったので三姉妹の妹二人と、シャーロットは引いたが長女のコーネリアは悪癖が出て引かなかった

「後退だと!ふざけるな!!このまま引き分けになどさせるか!」と継続したのだ

彼女の悪癖は熱くなると全く自制が利かない事にある、特に「武」の相手にはそれが出る。仕方なくカリスが前線に出て

「個人的な拘りで味方を巻き込む気か!引けコーネリア」そう叱って止め彼女を抱きかかえて無理やり自分の馬に乗せて一緒に後退した そこまでしてようやく正気に戻って

「申し訳ありません‥カリス様‥」と自分の今の状況を把握した彼女は彼の腕の中で頬を染めて言った

その状態のまま戻った二人を見て妹達が

「あ~あ~ずるい~」
「なんでお姉さまだけカリス様に抱っこされて帰ってくるの~」と割と本気で言った

「ふ、ふざけるな!そんなんじゃない!!」そう否定したがその後も妹達のブーブーは続いた

本陣に戻って即座、王子は全軍後退を指示、これをシャーロットも支持して戦闘は三日目で終了し

両軍、後退した、後。ベルフ軍は半日後総撤退して自国支配地に引いた。どうにか撃退したとカサフは安堵したがこれ自体完全に乗せられていた。それは被害状況にも出ていた

終戦後戦力、カサフ2020 ベルフ3700となっていた尤もその現状を連合国側は知る由も無かった、ただ撃退したとしか思っていないのだ

王子カリステア=ベルフの戦略方針をシャーロットは完璧に把握して完璧に実行して見せた。この協力関係はこの上なく強力と言えただろう

カリスは軍を自国支配地に戻し、補充と休息を取らせ、クルベルに早馬を出して当初、南進させ牽制に置いた軍も一戦もさせずに引いた、一方フラウベルトは南進をちらつかされた為軍部は自治区に、その半数を残したまま撤退

シャーロットもカリスも狙いは明確で2つ

1つこの方面で最も厄介なのが「フラウベルトからの援軍」である

その為同時南進をちらつかせて戦力分断を図る事

2つに、そのフラウベルトの援軍を援軍先に一定数縛り付けておく事。また、ライティスの矛の武芸者も分散させる事

フラウベルト自体、総軍は八千で王都の守りに一定数必要であり多方面侵攻となれば援軍の兵の数を削らざる得ない

更に何時どこから侵攻してくるか分からなければ戦力分断が愚作と分かっていながらやらざるを得ない事である

実際、自治区に1千、先ほど終戦したカサフにも一千そのまま置いて、フリットとグレイもバレンティアと団だけ本国に後退させ、カサフにそのまま残った

撃退したのはいいが、カサフの戦力の低下が大きく、再侵攻を牽制しなければ成らなかった故だ

ただ、お互い予想外だったのが。ライティスの矛の武芸者が想像より強いと言う事、カリスの軍の武芸者も相当強いと言う事だろう、今回剣を交わした相手同士が
「なんて面倒な相手だ‥」と洩らしたことでもよく分かる

ベルフ側に問題があったとすれば、三姉妹が本当にカリスにしか止められないという事だろうか、こうなると3人を別々の軍に充てて多方面指揮等論外になってしまう事だ

かといってシャーロットを離脱させ別軍指揮につけるにはカリスはまだ頼りないうえに、三姉妹は分けられない、と結局

将は増やしたが台所事情は大して改善してないという事態に変わりなかった

この頃の皇帝は其の点の改善に苦慮した、人材の収集に様々な分野から探したが、流石に8将目等易々と見つかる訳もない

特に戦略的に困ったのが、銀の国だ。アルベルトの失敗により兵を4万失う、捕虜交換と賠償で1万戻したが1万は向こうの兵として吸収された為、マリアの軍の総兵力が1万8千に膨れ上がった事にある

マリアの知略にそれだけの数の兵が絡むとなると逆侵攻される恐れもあり、西を守って固めるにも一将では防げない上に知略でマリアと対するにアリオスを動かせなくなった

そこで皇帝は一見無謀と思われる人事を決め実行する。娘のロゼットを将に任命した事だ

姫は兄の二歳下の16、アリオスやシャーロットに教えを受けて育てられたので剣も知略も出来るかもしれない、が将としての才があるとは言いがたい

特に彼女は兄以上に控えめで大人しく、優しい人なので「戦い」等論外と思われた

いくら手駒が足りないと言っても流石に無謀だと、アリオス、シャーロット、王子共に反対したが、皇帝はそれを聞き入れなかった、以降のやり方を見て一同は黙認するしか無かった

まず、皇帝直属軍の半数五千を割いてロゼットに、同時期に組織した「スヴァート」と呼ばれる特殊部隊200

皇帝の側近で術者のビンスバロンと
近衛副長からカーネルを充て「知」「武」を補い

且つバロンは姫のじいやの立場であり、カーネルは姫の幼馴染でありその点の相性等も考慮された人事の妙が発揮された

皇帝の本国軍は敵国隣接地があるわけでも無く、過大兵力を置く必要もなかったので、自分の手元からこの様な人事に当てても問題なかった故だ

更にロゼットは八将目に当てられ、任地に西方面を任され、アリオスの上に付けられた、西の全軍総司令官という立場で、余人は「何と酷い」と思った者も出る

当然だろう、何の実績も無く、経験も無いのにいきなり西方面司令官でアリオスの上とは非常識にも程がある。だが、一方でシャーロットもアリオスも反対はしなかった

この人事と任地が戦略的に大きな意味があったからだ。そしてそれが「ロゼットを戦わせるつもりが無い」と分かり黙認した。強硬に反対していた王子カリスもそれに驚いて

「な!どういう事だよ!シャーロット」とクルベルの会議室で怒鳴った、が

「これはいわゆるマリア封じです」
「え?‥」
「考えても御覧なさい、皇帝の愛娘、臣下や民からも好かれる、控えめで大人しく美しい彼女、そこを侵攻して倒すとなるとどれだけベルフの怒りを買うか」
「盾に利用しようと言うのか!‥」
「表面上はそうですが、効果的には貴重な宝石で作られた盾です、誰が剣を突き立てたいと思いますか?更に言えば、ロゼット様は慎重な方、挑発や外交での誘いにも乗りません、矢面に立っていますが安全な立場と言えるでしょう」

「相手が相手なればこそ‥か‥」
「他の連中ならどうか分かりませんが、女王マリアは極めて戦略眼に優れた方です、この様な状況下で自分達だけがリスクを取る様な選択はマリアだけになさらないでしょう」
「僕も似た様な立場なんだろうか‥」
「武門の男児が武で命を落とすのとは効果が比較になりません」
「そうか‥すまぬ、少し頭を冷やしてくるよ‥」

席を立って部屋を出た。冷静に考えればシャーロットの言は正しいのだ


一方任地に赴いたロゼットはアリオスとクロスランドで面会する

開口一番ロゼットは「申し訳ありませんアリオス。邪魔をするような事になって‥」とほんとにすまなそうに言ったので

「いえいえ、皇帝陛下は寧ろ楽にしてくださる様にしてくれましたから」そう返し

先ほどのカリスとシャーロットの話した内容と似た様な見解を示して説明した、それが分かる聡明なロゼットも

「では、私は神輿の上に乗っていればいいのですね」と言い同意と理解の意思を見せた

「流石はロゼット様、慧眼です。それで前線に封をして「時間」を稼ぎ、軍備の再編と人事の育成、という意味合いでしょう」
「とはいえ、遊んでいる訳にもいきませんね、バロンが付いてくれたのでアリオスの内政面の負担を下げられましょう」
「これはありがたいですね。内政担当官が少な過ぎますので助かります」

ロゼットは自分の立場と現状を完全に理解していた。その上でその役割を果たそうとした。お飾り将なりの役割を彼女は決して無能な人物では無かったのだ

この一件について氷の女王マリアは

「両軍睨み合っている戦場の間に裸体の女神が降臨したようなもんじゃな、石を遠くから投げつけるのが精精じゃ」と言って不貞寝した

カリス軍の2度目の開戦はフラウベルト東の自治区砦の街であった

元々ロックの出向任地でありこの時もロックが援護に回り、フラウベルトも一千の援軍を出そうとしたが

ロックは無駄だから準備だけでいい、とフラウベルトから東への道の境界線で主力は待機させた

その通りで、カリスの軍はロックが一歩も動かず砦から出てこない為しかたなく遠めから遠距離弓、大型装填式ボウや火矢で突く事を繰り返した、単なる嫌がらせである

ロックもそれは承知していて、無人盾を城壁に並べて、隙間からバリスタに近い固定砲台で反撃しかえすだけだった

ここでの開戦は過去に幾度かあったが、やはり境涯な砦で且つ海と森に囲まれた場所故大軍攻めは難しく小競り合いで終わっている

「向こうは動かないね‥」
「こういう策を差し挟む余地の無い所な上狭いとなれば、そういう選択でしょうね」
「攻城兵器でも無いときついな」
「相手の司令官もこっちが何をしてるか把握しているみたいですね、こちらもヘタな行動は取れません、しばらく嫌がらせを続けたら帰りましょう」

「見切りが早いなぁ」
「基本方針はこっちが被弾せず、相手を削るですからね、攻めてもいいんですが、そうなるとこっちの損害が増えますから」
「たしかに」
「それに向こうの指揮官の対応を見ると、恐らく戦術や戦略を学んだ人間なのでしょう。向こうも可能な限り人を使わず、射手だけ出しての対応ですから、物の分かった人物ですね。そういう、手ごわそうな相手に無理に挑まない方がいいです」

「という事はこっちが無理攻めしないのを把握済みって事かな」
「ええ、無理攻めすればするで、それなりの対応もしてくるでしょうね」
「分かった、ではシャーロットの言う通りにしよう」
「そうですね、まあ、10日も遊べば十分ですね、後は譲って貰った一軍を呼んで牽制だけさせておきますか。向こうの指揮官だけここに縛り付けて置きましょ、えーとそれから、アレをそろそろ使ってみましょうか」

「ああ、ならクルベルに戻ろう、けど、アレの指揮を誰にやらせるか‥」
「困りましたね‥」

きっちり、十日後カリス軍は撤退してクルベルまで下がる、別軍の中級指揮官と入れ替わりに睨みだけ利かせる様に動いた

3千モノ兵を置いての牽制であるだけにシャーロットも言ったとおりロックは砦街から動けなかった。分かっていても無視出来ないのがこの策の嫌らしさでもある

また、南方連合側のフラウベルトに庇護を受けている、自治区や小国の問題点は一度被害を出すと、軍備の再編が難しく時間が掛かる点にある

したがって、減った分、回復するまでフラウベルトが補わなければ成らない点にある、人口も経済力も小さいから小国なのだ

その点はフラウベルトの軍官会議でアンジェも指摘したが、具体的な対応策が出ず現状維持しか出来ないのが問題である

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