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北の獅子編
戦略と戦術の包囲戦
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その通知と情報を受け取ったアリオスは歯をギリッと噛んだ
「何事だアリオス」とロベールは陣幕での簡易軍議の場で聞いた
「大陸連合の西、銀の国のマリアが動きました。デルタ砦への進軍です」
「ぬ‥」
「な?!」
「恐らく、それでは済みますまい‥」
「どういう事だ?」
「大陸連合と成った今 全国で連動した動きになります、恐らく南も危ない‥」
「お前の悪い予感が当ったな」
「ええ、向こうの欠点は各国がバラバラであった点です、それが解消され、国境が取り払われるとこちらも各個撃破が出来なくなります‥フラウベルトの南方地の強さは逆にそこにあります、周辺国と連動した為強敵だったのです。これを全国でやられるとなると‥」
「とは言え、こちらで出来る事も無いだろう、まさか北攻めを止める訳にもいくまい」
「左様、全体的な戦略は陛下の御意で決まっている」
「‥一応、陛下に再考を仰ぎます‥このまま北攻めをして、よしんば獅子の国まで噛み付けたとしても我々が孤立死しかねません‥」
「うん?イマイチ分からんな‥北を抑えれば抑えたで優位には展開せんか?」
「それは完全支配出来ればの話だ。南も西も攻められると成ると、兵も将もそっちに分散される。兵力分断、分散の憂き目に合う上に本国から中央街道を通ってのこちらへの援軍派兵や補給も減らされる事になる、余程最速で獅子の国王都まで落とさんと、兵の補充も出来ず、兵糧も足りず、という事に成りかねん、現状でも距離の長さから要請しても来るのは二ヶ月先だ」
「む!?、成るほど‥それは無茶だな‥」
「更に北地域後ろ3つの街では物資は兎も角、兵力の現地調達等出来ません無人ですから‥」
「マリア軍にやられた焦土戦法か‥」
「意図してやった物では無いのでしょうが、結果的にそうなります‥」
「それに東のメルトや獅子の国周辺国も、かなりの軍力を保持しています、そこから派兵等北に送られれば攻め落とす日数の目算が立ちません」
「ぬう‥」
「難しいな、現状、戦力を維持して引いて守るのが良いのだろうが。陛下がお怒りになるかもしれん」
「はい、故に再考を願うのです‥正直全体戦略と成れば独断で動けません」
「とりあえず、維持防衛を街まで引いて行うのがベターだろう、最初の街、ラエルで押さえて他も維持出来れば不興を買う物でもないはず」
「同感です、一旦引きましょう」
大陸全体の情勢が変わった事により、この様な判断をせざる得ない状況にベルフ側が追い込まれた故の後退である
同時に用意した「策」がアリオスの物だけ殆ど潰される事になった。攻めから守勢に回らなければ成らない為である
ベルフ軍の後退は意外であった、この時点でアレクシアの打った手も半分潰れるが、その変化は総合的にはマイナスではないので大した問題ではない
一連の情報自体、銀の国、マリアから直通通達によってアレクシアに伝えられ獅子の軍の軍議で一同に説明される
「そうか‥、南も西も反転攻勢に転じたのか」
「そうなるとアレクシアさんの策も無駄になりますね」
「それは別に構いません、あくまで一部戦略の話であって大陸全体の戦略が動いて有利になったのなら、それに勝る事はありません、敵が引いたのもそのおかげですし」
「そうだなぁ」
「それにまあ、半分は生きてます、まだ使い道はありますよ」
「うん、向こうはラエルに防衛線を張るみたいだしね」
「左様です陛下、向こうの動きの今後の展開次第ですが、今度はこちらから向こうを突けます」
「守勢に徹するなら攻めてつつけるからね」
「とは言え、一応砦の防衛線も維持しない訳には‥これ自体、罠という点も考えたほうが宜しいかと」
「そうだなぁ、今の所、様子見かな、一応出撃準備だけしておいてくれ、何か新たな展開があればまたその時話し合おう」
「分かりました」
そこから5日、皇帝の再考を求めたアリオスの下へ返答書が届く、これを会議の場で内容を他将に通達して方針を決める会議へとそのまま移行する
「北ルートの維持、他は任せる、との事です」
「最悪、森街だけは押さえておけ、という事か」
「一応妥協案、て事か?」
「そうだ」「左様です」
「しかしそうなれば、こっちも単純な手で戦えますね」
「防衛しつつ後退すればいいだけだからな」
「もう、集積する物資も無い事だし」
「ええ、もうやる事は決まってますが、細かい策を打ちますというより、基本方針ですかね?」
「聞こう」
翌日、アリオスらは軍の移動準備を進めた、装備や兵装で重い物、の撤収、物資の搬送中心である。これら情報を受け、獅子の軍側が動く事となる
早い話、撤退する相手への追撃戦、並びに占拠された街の奪還である
「可能性として、こちらを引き込んでの反転攻勢、擬態の後退戦も有り得ますが、ただ、全方面の情報から見るに、確率は低いです」
「うーん、なら例の策から出てくれているサイオウの国の軍に本隊の後詰と街道の監視をお願いしよう。向こうのが策だとすれば背後を突くか街道の分断が考えられる、もう出てきているのだろう?」
「ええ、策自体止まっているので西森で待機してもらってます、さっそく連絡します、半日お待ちください」
ただ、アレクシアは敢て言わなかったが
初動から両者共に策の打ち合いはあった
アリオスが打った策の下準備を準備段階で潰すという裏での攻防である
翌朝
一応の砦防衛兵1千とダブルAを残しつつ、他の全軍もって出撃する、二日後には「ラエル」に到着、どう反応するかとも思ったが、ベルフ側はロベール、アルベルトが街を背にして構え軍展開
肝心のアリオスは自軍の内1千だけ二将の後ろに予備兵として付け、残りの四千は物資、装備の撤収配送にフル回転で街道を南進する
「どうやら偽情報での「釣り」とかでは無いようですね」
「皇帝自身が北伐の一時放棄を指示というのは当たりらしい」
「うーん‥向こうの輸送軍の規模が思ったより大きいですね、これは打った策の使いどころが難しい‥」
「無理にやらせる必要も無い、主軍の攻めと連動して引きやすいタイミングで仕掛けさせよう」
「そうですね、了解です」
両軍、正面決戦となるが、どちらも「受け」に配分した戦線になる。数ではロベール、アルベルトが左右配置で五千づつ予備兵1千
獅子の軍は ロルト3千、ロラン3千を前に 銀の国の軍二千が中段
様々な兵装を状況によって投入すべく混成軍が後方に二千と兵力自体は拮抗するが、この時点で武芸者の数と兵装、打つ手の豊富さが既にベルフを上回っていた
獅子の軍に対する前進攻撃に対して、防衛線を展開するベルフ軍だがこの時、それら上回る「手」を徹底して使い優位に展開する
800近い騎馬隊も100名ずつに分け、武器もランス、弓、剣兵、剣盾と装備換装、防御、突撃、遠距離、移動を分けた部隊事に分割してメリハリを付け、更に高速度を生かしてぶつかり合う主軍のサイドや後背を制しつつ徹底して押し引きを繰り返す
主軍に置いては、ロルト、チカ、ベルニール姉妹、ロラン、バートの重装剣盾兵らが入れ替わりながら火力を絶やさない連続戦闘を行い相手の余裕と防御、精神的、物質的な部分両面から削り取る
こうなるとロベールと配下の武芸者でも対応し切れない。この時は流石に遊ばせておく余裕も無くアルベルトもアグニを引っ張り出して前線対応するが
騎馬隊に関しては、兵装の貧弱さと馬その物の性能、数も半数強しか無い為苦戦する事になる
どうにか半日凌いだ後、アリオスの見切り指示で街内に後退して防衛戦を展開するが
街内施設や地形を盾に相手の足と馬を動き難くするのが精々の効果で後退後も苦戦を誣いられる。ここでほぼ物資運び出しを終えたアリオスが対応に出る
アリオスはスヴァートをあるだけの500を出して「元々が隠密部隊」である特徴を生かして、街内施設を利用して全方位からの少数連続伏兵での反撃を行う
元々強力な部隊だけにこの地形だと効果が高い。一時獅子の軍を後退させるが、ここでそれすら対応の用意をしていた武器に換装して更に反撃して迎撃した
前線兵に「普段戦場で見る事が無い武器」メイス、ピッケル、モーニングスター、大型クラブ等。鎧ごと叩き潰す装備を剣の代わりに持たせて反撃撃滅を行ったのだ
更にバートら剣盾兵も交互に押し出し防御戦を張り、数の多い換装打撃の兵でたたき返し3時間の戦闘の後、スヴァートすらも200以上潰して撤退させる
やむなくアリオスは更に防御力の高い重装突破兵を押し立て、防御線を張りつつ敵の進撃を制限して鈍らせ、足が止まった所で一気に反転して後退。全軍街を放棄して街道を撤退した
ここで獅子の軍は街を奪還して一時休息と再編
ハンナとアレクシアの指示で、撤退した敵軍に斥候を付かせ、更に街内に工作員の類が居ないか徹底して探した。こちらが街を確保した所での焼き打ち等もさせない為である
獅子の軍は、精強ではあるがそれ以上に「もしもの時」の準備を疎かにしない点が何より強い。相手がやりうる事を全て潰した上で戦闘に望む、という結果になりアリオスの打つ手も殆ど潰される事となる
完全に安全を確かめた後再編、初動の策で協力を願い、西の森に大規模伏兵として待機させた
隣国「サイオウ」の軍勢を呼びラエルの維持、街道の監視維持を任せた
「半分潰された」アレクシアの策自体も偶然の好転で上手く行っていた、もはや流れが完全にこちらに来ていたのだ
大陸情勢と同様に、ここでも複数連動に寄る包囲戦の様相を呈していた
「困りましたねぇ‥敵が街に入った所での反転攻撃も、引き込んでの後背襲撃や補給戦、街道分断もダメですか‥」
「細かな策は全部読まれている、といより「そう成らない為」の手を先に打たれているな」
「晴れの日に雨具を用意する様な軍師だな」
「手段を厭わない手しかありませんね‥想像を上回る事をしない限り、嵌ってはくれません」
「となると次の街「ラドル」は捨てるか」
「ですね、私は先に向かいますので街道で一戦して時間稼ぎを」
「分かった」
が、アリオスの次に打つ手も防止される事になる
後発してベルフ軍本隊を追って街から出撃した獅子の軍ロランの下に予め斥候として配置されていたエリがアリオスの行動を掴み、すっ飛んでくる
「陛下!!アリオスの軍一部が本隊を離れて「ラドル」の街に向かいます!人数は200!」
「これは物資搬送ではありませんね」
「ああ、人数が少な過ぎる」
「まさか焼き討ちか破壊工作でしょうか」
「その可能性はあるな‥よし、チカと姉妹を付ける、数が多い必要は無い、ゴラート!ラドルに向かった敵の策を防ぐ!君の高速騎馬で対応を!」
事態を把握したゴラートは即応、街道を外れて二つ目の街に向かう
「私達も行きますわよ!」
「了解!」
とロランの護衛官も馬を駆って飛び出す
此処まで来るともう、双方、打つべき手の出し所も少ない、そこで温存する意味も無く。アレクシアも残った手を打つ
「伝令を出して他の先行部隊へのゴーサインを出してください、それと向こうの打つ手で考えられるモノを潰していきます、例の物と対人投石器の用意、この先で敵の迎撃軍と対峙するはずです」そう指示を出した
翌日朝にはラドルの街に先にアリオスの別働隊が到着。よし!と思ったが街の背後の山岳から敵と思われる伏兵40程度だが現れ街の入り口を先に封鎖する構えと共に迎撃体勢を整える
20分遅れで、ゴラートの騎馬隊が到着遭遇。それら北連合側との混成軍と合流
200対360の出入り口の奪い合いの戦闘が開始されるが、30分遅れでチカとベルニール姉妹が到着して加勢してアリオス側が維持出来なくなる
「!ッ‥これもダメですか‥しかたない引きます」とアリオスは撤退を指示して諦めた
同時刻
獅子の軍とベルフ軍が街道で対峙して決戦
数でも先の戦争で差がつまっており苦しい状況にベルフ側は成りかけていた
そこでアレクシアは「もしもの手段」も取らせない様に開戦直後、対人投石器でベルフ軍の中段に石の変わりに油壺の弾を5発叩き込んだ
「な?!」とベルフの二将も驚いた
「いよいよと成ればここは草原、次期も冬と秋の境目、火計が使えるな」
と頭には有ったのだがやるかどうもかも決まって居ないタイミングで先に油を打ち込まれた。そうなると「火」を放つと間違いなく焼かれるのは自分らであり、それすら先行して止められたのだ
しかもそうなると逆に火計の餌食に成りかねない為、正面決戦自体も停止、後退せざる得なかった
「手段を選んでいる場合ではない」となればより過激な手段が選択される恐れがある。アレクシアは心理面に置いての行動も全て把握していた、その上でそれらの「可能性」を一つずつ潰していった
そもそも北軍はここ中央道地域を守る立場であり破壊工作や火計で自然や家屋の破壊をされても困るのだ「戦争だからある程度の犠牲はしかたない」等強弁を垂れる事は出来ない
ロランを筆頭に下の者は皆同じ様な考えである
「何れ取り返し、人を戻す地域」でもあるのだ
無論ベルフ側が実際「ソレ」をやるとは限らないのだが、アレクシアの軍師の立場からもしても「お見通しよ」と初動から見せ付ける事も大いに意味があったからでもある
アリオスもロベールらも後退して再び合流するが
「ダメですね、これは‥」
「無意味に小技を使うと逆用されかねんぞ、王道で行く森街とラドルの領土境界線で当るぞ」
双方そう言って、アリオスも同意森街の領土を背にした正面決戦を挑む
こうなればアリオスも「後背の分断や襲撃」への対処で「森街」近辺に配置して任せた「姫百合」も呼び戻して参戦させようと連絡を取るが。同時その姫百合から通達が来る
「な?!森街に伏兵の襲撃?!」思わず声を挙げる
「敵の数は1200と少なくありますが尋常でない強さの将兵、主軍からの援軍が必要と思われます」
そう報告を受け、アリオスはロベール、アルベルトにも通知
自身の軍から2千ここに予備兵として残し。自らは後背襲撃の伏兵の対処に向かうと言って主軍を離れた。人材面で不足が出るので、せめてと「女人隊」も残した
それでも主軍兵力は双方、まだ互角近いのではあるが、開戦前に分断策を掛けられる事になってしまった
「ふん、まあいいさ、別に劣勢な数でもない」とロベールは涼しい顔だった
同日、獅子の軍と、ベルフ、ロベール、アルベルト軍は決戦
ベルフ側は左右に五千配置して後背にアリオスの予備兵を置いたまま迎撃、ほぼ同数で獅子の軍側は四角陣で突撃開始となる
獅子の軍側はこれまでと同じく、徹底して有利な部分を使って攻める、兵装、武器、武芸者を高回転稼動で間断なく火力を絶やさず攻める
ベルフ軍側も突破兵、スヴァートも全て投入して防御戦線を維持しつつ、反撃と個人戦であたる
比較的守勢に強いアルベルトは工夫を凝らし、弓、盾、剣兵を分担させ。遠距離、防御、移動を細かく展開して向こうに崩す隙を与えず両軍、戦線が膠着した
そこで当日を凌ぎ二日目に突入、昼から再戦となるが
「ここで守勢に徹しても状況に変化が生まれんな」とロベールが前に出て。徹底して自己の武力を持って兵装、流れの不利を補う
大将首であるが故にそれに、腕に自信のある者も我こそはと挑む者が後を絶たないが誰が相手でも一撃で突き殺される
特にこれまでの様な「戦いを楽しむ」という思考がロベールに無く最初から最後まで全力での本気、自軍に余裕が無く
「自己の武力を活かす」という方針を取った時点で、それを最大限に発揮して一切の無駄を排して挑んだのだ、誰が相手になるだろうか
実際このロベールの最前線戦闘で一時獅子の軍の前線を突き崩し後退させるという凄まじい力を発揮した
「化け物だな‥」
「とは言え放置も出来ませんね」
「正直俺でも止められるか分からんな‥」
アレクシアとロルトが言った後
「じゃあ、私がやってみて良いですか?‥」とチカが聞いて一同ギョとした
「向こうは遊びは無いぞ‥手加減してくれる相手でもないが‥」
「失礼ですねロルト大将、私なら手加減してくれる等初めから思ってないですよ‥」
「そうだったな‥分かった任せる」
「はい」
見た目に騙されるが、チカは間違いなくトップ武芸者だ。相手か相手と成れば、むしろチカが適任ではあるはずだった
前線に馬を駆って向かったチカは、只管突き進むロベールの前に立ちはだかった
ロベールは鬼神の如き強さであるが、心は山の流水の如き静けさだった
他の武芸の将と違うのはこの点である「勇と知、静と動」の完璧な共存がロベールである
大陸での頂上武芸者で比較しても
ライナ=ブランシュですら「勇」の攻め
ジェイド=ホロウッドですら「静」の守に僅かに傾倒するのである
故に、チカの姿を見ても意外ではあったが、武芸の相手として問うた
「このロベールの前に立つ意味を理解しているか、少女」
「当たり前です、女子供だからとなめないでください」
「名を聞こう」
「チカ=サラサーテ」
「ほう‥意外だな、たしか稀代の天才槍士と噂があるが」
「偽者じゃないですよ」
「フ‥そうか、ロベール=メイザースだ、参る」
と双方一切手加減なし、最初から全力で当った。実際、ロベールにチカを当てたのは正解だった
お互い一歩も譲らず、互角の打ち合いを魅せた。特に両者共「武の質」が似通っていた、武器も技も「槍士」だ恐ろしく噛合う
しかも、チカは、3無原則の武芸者「無理、無駄、ムラ無し」攻守共に満点であり、ロベールの攻めにも守りにも一切譲らず全て互角で凌いだ
攻めに置いては「針の一刺し」の異名の通り、正確で早く機械の様な精密さ
守りに置いては相手に一切崩す隙を与えず、敵の攻めに対して先出ししてその糸口すら掴ませない程の完璧さ
まさかこの場面、この様な時に、これほどの相手と出会えるとは思わずロベールも「楽しみ」を覚えた
10分も打ち合い、双方一つのキッカケも作れず凌ぎあい、戦線自体も膠着する
が、ここで、その10分の後次第にチカの動きが落ちる、一方ロベールは衰えず
ロベールも「ム?」と思ったが理由は明白だった「スタミナ切れと疲労」だ、特にチカは若い上に小柄、打ち合いでの肉体への負担がまだロベールと比べて大きい「その為の体が出来上がっていない」のだ
それを瞬時に見抜いたロベールはジリジリ馬を下げて自然な形で個人戦を終わらせる様に仕向け、その「配慮」が分かるチカも一旦下がった
「惜しいな‥、後2,3年待てば俺も凌げるだろうに‥」チカにだけ聞こえるように言った
肩で息するチカも眼を細めて悔しそうな表情を僅かに見せた
「悔しいです‥」
が、ロベールは口の端で僅かに笑った
「そう欲張るものではない、技術は俺と同等、才は俺より上、「時」が足りなかった、それだけだ」
「また、相手してくれますか?‥」
「ああ、もちろんだ‥」
とだけ交わし、ロベールは馬を返して引いた
チカを認めたロベールはそうして前に出るのを自重した、こちらが引かねば向こうも引かない。そして彼女を失うのはロベールにとっては、国宝を失うのと同じだ、だから引いたのだ
一方チカは自身の足りなさに唇を噛んだが、それと同時に余りにも 心技体共に「完璧」なロベールに好感を持った、まるで「父」に教えを受けたかのような清清しさでもあった
双軍それ以上の戦闘を継続せず、一旦軍を引いて、休息と再編を行い翌日に持ち越した
「何事だアリオス」とロベールは陣幕での簡易軍議の場で聞いた
「大陸連合の西、銀の国のマリアが動きました。デルタ砦への進軍です」
「ぬ‥」
「な?!」
「恐らく、それでは済みますまい‥」
「どういう事だ?」
「大陸連合と成った今 全国で連動した動きになります、恐らく南も危ない‥」
「お前の悪い予感が当ったな」
「ええ、向こうの欠点は各国がバラバラであった点です、それが解消され、国境が取り払われるとこちらも各個撃破が出来なくなります‥フラウベルトの南方地の強さは逆にそこにあります、周辺国と連動した為強敵だったのです。これを全国でやられるとなると‥」
「とは言え、こちらで出来る事も無いだろう、まさか北攻めを止める訳にもいくまい」
「左様、全体的な戦略は陛下の御意で決まっている」
「‥一応、陛下に再考を仰ぎます‥このまま北攻めをして、よしんば獅子の国まで噛み付けたとしても我々が孤立死しかねません‥」
「うん?イマイチ分からんな‥北を抑えれば抑えたで優位には展開せんか?」
「それは完全支配出来ればの話だ。南も西も攻められると成ると、兵も将もそっちに分散される。兵力分断、分散の憂き目に合う上に本国から中央街道を通ってのこちらへの援軍派兵や補給も減らされる事になる、余程最速で獅子の国王都まで落とさんと、兵の補充も出来ず、兵糧も足りず、という事に成りかねん、現状でも距離の長さから要請しても来るのは二ヶ月先だ」
「む!?、成るほど‥それは無茶だな‥」
「更に北地域後ろ3つの街では物資は兎も角、兵力の現地調達等出来ません無人ですから‥」
「マリア軍にやられた焦土戦法か‥」
「意図してやった物では無いのでしょうが、結果的にそうなります‥」
「それに東のメルトや獅子の国周辺国も、かなりの軍力を保持しています、そこから派兵等北に送られれば攻め落とす日数の目算が立ちません」
「ぬう‥」
「難しいな、現状、戦力を維持して引いて守るのが良いのだろうが。陛下がお怒りになるかもしれん」
「はい、故に再考を願うのです‥正直全体戦略と成れば独断で動けません」
「とりあえず、維持防衛を街まで引いて行うのがベターだろう、最初の街、ラエルで押さえて他も維持出来れば不興を買う物でもないはず」
「同感です、一旦引きましょう」
大陸全体の情勢が変わった事により、この様な判断をせざる得ない状況にベルフ側が追い込まれた故の後退である
同時に用意した「策」がアリオスの物だけ殆ど潰される事になった。攻めから守勢に回らなければ成らない為である
ベルフ軍の後退は意外であった、この時点でアレクシアの打った手も半分潰れるが、その変化は総合的にはマイナスではないので大した問題ではない
一連の情報自体、銀の国、マリアから直通通達によってアレクシアに伝えられ獅子の軍の軍議で一同に説明される
「そうか‥、南も西も反転攻勢に転じたのか」
「そうなるとアレクシアさんの策も無駄になりますね」
「それは別に構いません、あくまで一部戦略の話であって大陸全体の戦略が動いて有利になったのなら、それに勝る事はありません、敵が引いたのもそのおかげですし」
「そうだなぁ」
「それにまあ、半分は生きてます、まだ使い道はありますよ」
「うん、向こうはラエルに防衛線を張るみたいだしね」
「左様です陛下、向こうの動きの今後の展開次第ですが、今度はこちらから向こうを突けます」
「守勢に徹するなら攻めてつつけるからね」
「とは言え、一応砦の防衛線も維持しない訳には‥これ自体、罠という点も考えたほうが宜しいかと」
「そうだなぁ、今の所、様子見かな、一応出撃準備だけしておいてくれ、何か新たな展開があればまたその時話し合おう」
「分かりました」
そこから5日、皇帝の再考を求めたアリオスの下へ返答書が届く、これを会議の場で内容を他将に通達して方針を決める会議へとそのまま移行する
「北ルートの維持、他は任せる、との事です」
「最悪、森街だけは押さえておけ、という事か」
「一応妥協案、て事か?」
「そうだ」「左様です」
「しかしそうなれば、こっちも単純な手で戦えますね」
「防衛しつつ後退すればいいだけだからな」
「もう、集積する物資も無い事だし」
「ええ、もうやる事は決まってますが、細かい策を打ちますというより、基本方針ですかね?」
「聞こう」
翌日、アリオスらは軍の移動準備を進めた、装備や兵装で重い物、の撤収、物資の搬送中心である。これら情報を受け、獅子の軍側が動く事となる
早い話、撤退する相手への追撃戦、並びに占拠された街の奪還である
「可能性として、こちらを引き込んでの反転攻勢、擬態の後退戦も有り得ますが、ただ、全方面の情報から見るに、確率は低いです」
「うーん、なら例の策から出てくれているサイオウの国の軍に本隊の後詰と街道の監視をお願いしよう。向こうのが策だとすれば背後を突くか街道の分断が考えられる、もう出てきているのだろう?」
「ええ、策自体止まっているので西森で待機してもらってます、さっそく連絡します、半日お待ちください」
ただ、アレクシアは敢て言わなかったが
初動から両者共に策の打ち合いはあった
アリオスが打った策の下準備を準備段階で潰すという裏での攻防である
翌朝
一応の砦防衛兵1千とダブルAを残しつつ、他の全軍もって出撃する、二日後には「ラエル」に到着、どう反応するかとも思ったが、ベルフ側はロベール、アルベルトが街を背にして構え軍展開
肝心のアリオスは自軍の内1千だけ二将の後ろに予備兵として付け、残りの四千は物資、装備の撤収配送にフル回転で街道を南進する
「どうやら偽情報での「釣り」とかでは無いようですね」
「皇帝自身が北伐の一時放棄を指示というのは当たりらしい」
「うーん‥向こうの輸送軍の規模が思ったより大きいですね、これは打った策の使いどころが難しい‥」
「無理にやらせる必要も無い、主軍の攻めと連動して引きやすいタイミングで仕掛けさせよう」
「そうですね、了解です」
両軍、正面決戦となるが、どちらも「受け」に配分した戦線になる。数ではロベール、アルベルトが左右配置で五千づつ予備兵1千
獅子の軍は ロルト3千、ロラン3千を前に 銀の国の軍二千が中段
様々な兵装を状況によって投入すべく混成軍が後方に二千と兵力自体は拮抗するが、この時点で武芸者の数と兵装、打つ手の豊富さが既にベルフを上回っていた
獅子の軍に対する前進攻撃に対して、防衛線を展開するベルフ軍だがこの時、それら上回る「手」を徹底して使い優位に展開する
800近い騎馬隊も100名ずつに分け、武器もランス、弓、剣兵、剣盾と装備換装、防御、突撃、遠距離、移動を分けた部隊事に分割してメリハリを付け、更に高速度を生かしてぶつかり合う主軍のサイドや後背を制しつつ徹底して押し引きを繰り返す
主軍に置いては、ロルト、チカ、ベルニール姉妹、ロラン、バートの重装剣盾兵らが入れ替わりながら火力を絶やさない連続戦闘を行い相手の余裕と防御、精神的、物質的な部分両面から削り取る
こうなるとロベールと配下の武芸者でも対応し切れない。この時は流石に遊ばせておく余裕も無くアルベルトもアグニを引っ張り出して前線対応するが
騎馬隊に関しては、兵装の貧弱さと馬その物の性能、数も半数強しか無い為苦戦する事になる
どうにか半日凌いだ後、アリオスの見切り指示で街内に後退して防衛戦を展開するが
街内施設や地形を盾に相手の足と馬を動き難くするのが精々の効果で後退後も苦戦を誣いられる。ここでほぼ物資運び出しを終えたアリオスが対応に出る
アリオスはスヴァートをあるだけの500を出して「元々が隠密部隊」である特徴を生かして、街内施設を利用して全方位からの少数連続伏兵での反撃を行う
元々強力な部隊だけにこの地形だと効果が高い。一時獅子の軍を後退させるが、ここでそれすら対応の用意をしていた武器に換装して更に反撃して迎撃した
前線兵に「普段戦場で見る事が無い武器」メイス、ピッケル、モーニングスター、大型クラブ等。鎧ごと叩き潰す装備を剣の代わりに持たせて反撃撃滅を行ったのだ
更にバートら剣盾兵も交互に押し出し防御戦を張り、数の多い換装打撃の兵でたたき返し3時間の戦闘の後、スヴァートすらも200以上潰して撤退させる
やむなくアリオスは更に防御力の高い重装突破兵を押し立て、防御線を張りつつ敵の進撃を制限して鈍らせ、足が止まった所で一気に反転して後退。全軍街を放棄して街道を撤退した
ここで獅子の軍は街を奪還して一時休息と再編
ハンナとアレクシアの指示で、撤退した敵軍に斥候を付かせ、更に街内に工作員の類が居ないか徹底して探した。こちらが街を確保した所での焼き打ち等もさせない為である
獅子の軍は、精強ではあるがそれ以上に「もしもの時」の準備を疎かにしない点が何より強い。相手がやりうる事を全て潰した上で戦闘に望む、という結果になりアリオスの打つ手も殆ど潰される事となる
完全に安全を確かめた後再編、初動の策で協力を願い、西の森に大規模伏兵として待機させた
隣国「サイオウ」の軍勢を呼びラエルの維持、街道の監視維持を任せた
「半分潰された」アレクシアの策自体も偶然の好転で上手く行っていた、もはや流れが完全にこちらに来ていたのだ
大陸情勢と同様に、ここでも複数連動に寄る包囲戦の様相を呈していた
「困りましたねぇ‥敵が街に入った所での反転攻撃も、引き込んでの後背襲撃や補給戦、街道分断もダメですか‥」
「細かな策は全部読まれている、といより「そう成らない為」の手を先に打たれているな」
「晴れの日に雨具を用意する様な軍師だな」
「手段を厭わない手しかありませんね‥想像を上回る事をしない限り、嵌ってはくれません」
「となると次の街「ラドル」は捨てるか」
「ですね、私は先に向かいますので街道で一戦して時間稼ぎを」
「分かった」
が、アリオスの次に打つ手も防止される事になる
後発してベルフ軍本隊を追って街から出撃した獅子の軍ロランの下に予め斥候として配置されていたエリがアリオスの行動を掴み、すっ飛んでくる
「陛下!!アリオスの軍一部が本隊を離れて「ラドル」の街に向かいます!人数は200!」
「これは物資搬送ではありませんね」
「ああ、人数が少な過ぎる」
「まさか焼き討ちか破壊工作でしょうか」
「その可能性はあるな‥よし、チカと姉妹を付ける、数が多い必要は無い、ゴラート!ラドルに向かった敵の策を防ぐ!君の高速騎馬で対応を!」
事態を把握したゴラートは即応、街道を外れて二つ目の街に向かう
「私達も行きますわよ!」
「了解!」
とロランの護衛官も馬を駆って飛び出す
此処まで来るともう、双方、打つべき手の出し所も少ない、そこで温存する意味も無く。アレクシアも残った手を打つ
「伝令を出して他の先行部隊へのゴーサインを出してください、それと向こうの打つ手で考えられるモノを潰していきます、例の物と対人投石器の用意、この先で敵の迎撃軍と対峙するはずです」そう指示を出した
翌日朝にはラドルの街に先にアリオスの別働隊が到着。よし!と思ったが街の背後の山岳から敵と思われる伏兵40程度だが現れ街の入り口を先に封鎖する構えと共に迎撃体勢を整える
20分遅れで、ゴラートの騎馬隊が到着遭遇。それら北連合側との混成軍と合流
200対360の出入り口の奪い合いの戦闘が開始されるが、30分遅れでチカとベルニール姉妹が到着して加勢してアリオス側が維持出来なくなる
「!ッ‥これもダメですか‥しかたない引きます」とアリオスは撤退を指示して諦めた
同時刻
獅子の軍とベルフ軍が街道で対峙して決戦
数でも先の戦争で差がつまっており苦しい状況にベルフ側は成りかけていた
そこでアレクシアは「もしもの手段」も取らせない様に開戦直後、対人投石器でベルフ軍の中段に石の変わりに油壺の弾を5発叩き込んだ
「な?!」とベルフの二将も驚いた
「いよいよと成ればここは草原、次期も冬と秋の境目、火計が使えるな」
と頭には有ったのだがやるかどうもかも決まって居ないタイミングで先に油を打ち込まれた。そうなると「火」を放つと間違いなく焼かれるのは自分らであり、それすら先行して止められたのだ
しかもそうなると逆に火計の餌食に成りかねない為、正面決戦自体も停止、後退せざる得なかった
「手段を選んでいる場合ではない」となればより過激な手段が選択される恐れがある。アレクシアは心理面に置いての行動も全て把握していた、その上でそれらの「可能性」を一つずつ潰していった
そもそも北軍はここ中央道地域を守る立場であり破壊工作や火計で自然や家屋の破壊をされても困るのだ「戦争だからある程度の犠牲はしかたない」等強弁を垂れる事は出来ない
ロランを筆頭に下の者は皆同じ様な考えである
「何れ取り返し、人を戻す地域」でもあるのだ
無論ベルフ側が実際「ソレ」をやるとは限らないのだが、アレクシアの軍師の立場からもしても「お見通しよ」と初動から見せ付ける事も大いに意味があったからでもある
アリオスもロベールらも後退して再び合流するが
「ダメですね、これは‥」
「無意味に小技を使うと逆用されかねんぞ、王道で行く森街とラドルの領土境界線で当るぞ」
双方そう言って、アリオスも同意森街の領土を背にした正面決戦を挑む
こうなればアリオスも「後背の分断や襲撃」への対処で「森街」近辺に配置して任せた「姫百合」も呼び戻して参戦させようと連絡を取るが。同時その姫百合から通達が来る
「な?!森街に伏兵の襲撃?!」思わず声を挙げる
「敵の数は1200と少なくありますが尋常でない強さの将兵、主軍からの援軍が必要と思われます」
そう報告を受け、アリオスはロベール、アルベルトにも通知
自身の軍から2千ここに予備兵として残し。自らは後背襲撃の伏兵の対処に向かうと言って主軍を離れた。人材面で不足が出るので、せめてと「女人隊」も残した
それでも主軍兵力は双方、まだ互角近いのではあるが、開戦前に分断策を掛けられる事になってしまった
「ふん、まあいいさ、別に劣勢な数でもない」とロベールは涼しい顔だった
同日、獅子の軍と、ベルフ、ロベール、アルベルト軍は決戦
ベルフ側は左右に五千配置して後背にアリオスの予備兵を置いたまま迎撃、ほぼ同数で獅子の軍側は四角陣で突撃開始となる
獅子の軍側はこれまでと同じく、徹底して有利な部分を使って攻める、兵装、武器、武芸者を高回転稼動で間断なく火力を絶やさず攻める
ベルフ軍側も突破兵、スヴァートも全て投入して防御戦線を維持しつつ、反撃と個人戦であたる
比較的守勢に強いアルベルトは工夫を凝らし、弓、盾、剣兵を分担させ。遠距離、防御、移動を細かく展開して向こうに崩す隙を与えず両軍、戦線が膠着した
そこで当日を凌ぎ二日目に突入、昼から再戦となるが
「ここで守勢に徹しても状況に変化が生まれんな」とロベールが前に出て。徹底して自己の武力を持って兵装、流れの不利を補う
大将首であるが故にそれに、腕に自信のある者も我こそはと挑む者が後を絶たないが誰が相手でも一撃で突き殺される
特にこれまでの様な「戦いを楽しむ」という思考がロベールに無く最初から最後まで全力での本気、自軍に余裕が無く
「自己の武力を活かす」という方針を取った時点で、それを最大限に発揮して一切の無駄を排して挑んだのだ、誰が相手になるだろうか
実際このロベールの最前線戦闘で一時獅子の軍の前線を突き崩し後退させるという凄まじい力を発揮した
「化け物だな‥」
「とは言え放置も出来ませんね」
「正直俺でも止められるか分からんな‥」
アレクシアとロルトが言った後
「じゃあ、私がやってみて良いですか?‥」とチカが聞いて一同ギョとした
「向こうは遊びは無いぞ‥手加減してくれる相手でもないが‥」
「失礼ですねロルト大将、私なら手加減してくれる等初めから思ってないですよ‥」
「そうだったな‥分かった任せる」
「はい」
見た目に騙されるが、チカは間違いなくトップ武芸者だ。相手か相手と成れば、むしろチカが適任ではあるはずだった
前線に馬を駆って向かったチカは、只管突き進むロベールの前に立ちはだかった
ロベールは鬼神の如き強さであるが、心は山の流水の如き静けさだった
他の武芸の将と違うのはこの点である「勇と知、静と動」の完璧な共存がロベールである
大陸での頂上武芸者で比較しても
ライナ=ブランシュですら「勇」の攻め
ジェイド=ホロウッドですら「静」の守に僅かに傾倒するのである
故に、チカの姿を見ても意外ではあったが、武芸の相手として問うた
「このロベールの前に立つ意味を理解しているか、少女」
「当たり前です、女子供だからとなめないでください」
「名を聞こう」
「チカ=サラサーテ」
「ほう‥意外だな、たしか稀代の天才槍士と噂があるが」
「偽者じゃないですよ」
「フ‥そうか、ロベール=メイザースだ、参る」
と双方一切手加減なし、最初から全力で当った。実際、ロベールにチカを当てたのは正解だった
お互い一歩も譲らず、互角の打ち合いを魅せた。特に両者共「武の質」が似通っていた、武器も技も「槍士」だ恐ろしく噛合う
しかも、チカは、3無原則の武芸者「無理、無駄、ムラ無し」攻守共に満点であり、ロベールの攻めにも守りにも一切譲らず全て互角で凌いだ
攻めに置いては「針の一刺し」の異名の通り、正確で早く機械の様な精密さ
守りに置いては相手に一切崩す隙を与えず、敵の攻めに対して先出ししてその糸口すら掴ませない程の完璧さ
まさかこの場面、この様な時に、これほどの相手と出会えるとは思わずロベールも「楽しみ」を覚えた
10分も打ち合い、双方一つのキッカケも作れず凌ぎあい、戦線自体も膠着する
が、ここで、その10分の後次第にチカの動きが落ちる、一方ロベールは衰えず
ロベールも「ム?」と思ったが理由は明白だった「スタミナ切れと疲労」だ、特にチカは若い上に小柄、打ち合いでの肉体への負担がまだロベールと比べて大きい「その為の体が出来上がっていない」のだ
それを瞬時に見抜いたロベールはジリジリ馬を下げて自然な形で個人戦を終わらせる様に仕向け、その「配慮」が分かるチカも一旦下がった
「惜しいな‥、後2,3年待てば俺も凌げるだろうに‥」チカにだけ聞こえるように言った
肩で息するチカも眼を細めて悔しそうな表情を僅かに見せた
「悔しいです‥」
が、ロベールは口の端で僅かに笑った
「そう欲張るものではない、技術は俺と同等、才は俺より上、「時」が足りなかった、それだけだ」
「また、相手してくれますか?‥」
「ああ、もちろんだ‥」
とだけ交わし、ロベールは馬を返して引いた
チカを認めたロベールはそうして前に出るのを自重した、こちらが引かねば向こうも引かない。そして彼女を失うのはロベールにとっては、国宝を失うのと同じだ、だから引いたのだ
一方チカは自身の足りなさに唇を噛んだが、それと同時に余りにも 心技体共に「完璧」なロベールに好感を持った、まるで「父」に教えを受けたかのような清清しさでもあった
双軍それ以上の戦闘を継続せず、一旦軍を引いて、休息と再編を行い翌日に持ち越した
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