剣雄伝記 大陸十年戦争

篠崎流

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北の獅子編

個性

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その後10日動きが無かった
アルベルト自身も街まで下がって維持、防御に徹した点

そうした理由は3つ

一つに皇帝からの出撃前の勅命である「北を抜いて周辺国の占領維持をせよ」という命令を守った事

2つに草刈り軍としては街道を北に抜けて3地域を押さえたは良い。集積、徴収する物資もあった。だが、無人であった点

そうなると兵の現地調達が出来ず、戦うのは良いとして。失った兵を補充のし様が無い事、故に無駄な攻めは出来ない

3つに、待てば何れ後発軍のアリオスやロベールが来援する点

この制約、条件がある為動かなかった。故に先の戦いでも抑え気味の手合わせではあった

この辺りで北の連合他国から総軍2000が獅子の国に来訪、西からもマリア軍の援軍2000が来訪、しかも将二人付きである

この時点で北連合、オルレスク砦の兵力だけで一万を超えた

数日遅れて、ベルフ側も予備兵と物資、装備等が追加で1000ほど来て森街に結集

こうなると戦力で圧倒的に上回る為、獅子の軍でも積極策が出されるが。先の軍議でも言われた通り「盾の砦がある為」こちらから進軍するのも効率が悪い。したがって先の開戦と似た様な方針

「攻めて敵を削る、領土の奪還はしない」という方針が示され

ロラン王も同意することになる、本格的決戦前に兵力差を更に広げるのは。方針、戦略としては正しい

また、一戦目での力量を測り得た事での、次戦での戦局がある程度計算できる点である

獅子の軍は援軍に来た銀の国の軍二千を左翼 ロルトの主軍を右翼として二千を出し。王子らと剣聖の部隊の直属軍50も主軍後方で観戦参戦

状況に応じた参戦の立場を取って出撃

南に進発してアルベルトが滞在防衛する最初の街「ラエル」前での戦いを挑んだ。わざわざ同数を揃えて挑んできた事自体、獅子の軍の目的は明確であるが。街を譲る訳にもいかず、アルベルト軍も受けざる得なかった

街、街道、草原、なだらかな丘が交差する地点であり。街の出入り口付近の納屋、施設も利用して徹底して防御を敷いて耐える姿勢をとった。実際開戦するとアルベルト軍は動かず防御接戦を繰り広げた

特に街内から土嚢や木材、家具まで持ち出し、盾に利用した為非常に硬く、半日近く一進一退の攻防が続いた

元の街の住民からしたらいい迷惑だが、方法手段を選ばないアルベルトらしい戦いとも言えた

そうなると先の戦いでの機動戦も挑めず、歩兵中心での突破戦になる。が、逆に言えば、歩兵クオリティの差が出る為、王もチカ、ベルニール姉妹を前線に預け戦わせる

アルベルトもスヴァート、重装突破兵も有るだけ投入し徹底して戦線維持を図るが、武芸者の差が激しく、どうしても押される

やむを得ず、自身が武に自信が有るわけでもないがアルベルトも最前線で槍を取って戦うが

ここで「次は出てやる」と言ったアグニが30人の手勢武芸者と共に前線に出てくる

全くアテにしてなかったのだが意外ではあったが今の状況では死ぬ程有難かった

「まったくアンタはあたしが居ないと何にも出来ないんだねぇ~」

と皮肉られたが今それが心強く感じる程である

「さあ!誰かあたしの相手をする奴は居ないかい!」と叫び
「個人戦を挑む奴が居るとは驚きですわね」とベルニール姉妹の姉ジュリエッタが受けた

この一戦は近年稀に見る、個性派の戦いと成った

ジュリエッタは巨大盾を攻撃にも使うベルニール家独自の「オフェンシブシールダー」

アグニは鉄糸に刃を繋いだ、鞭と剣の中間の様な武器を使う武芸者

武器の射程が長く、ヘタな受けをすると巻きつかれて切り裂かれる為ジュリエッタが相手なのはある意味正解であった

防御力が高く、受けも反撃も上手い、打ち合いの中から鞭剣を跳ね返しつつ、盾を構えて突撃打撃、一度接近戦に持ち込めば有利、かと思われたがアグニの武器はいくつもあった

接近されたジュリエッタに「蹴り」を放ち横に飛びながらいなしたのだ。アグニは接近戦に持ち込まれるのを承知の上で「足癖の悪さ」も使って「蹴り用の具足」も履いている、それで打撃を返しつつ反動で距離を取ったり転ばせたりする超個性的スタイルだ

むしろ正統的な剣士が挑んでいればやられていたかもしれない。相手にするのが難しいトリックスターである。故にこの個人性は噛合って全軍前線も膠着した

ここで双軍無理をせず、一旦後退して陣形を再編、休息してその日は停止した

一晩休んで昼頃、再戦と成るが、アグニが前線維持を受け持った為またも個人戦と前線の打ち合いになり獅子の軍の前線を防ぎとめ翌日も凌ぐ事になった

その日の個人戦はチカが相手をしたが、正直相性が悪いのとアグニが「こいつのが上だな」とあっさり見切って距離を取って投げナイフすら使って逃げ撃ち、更に自前の部下にすら邪魔させるという

「負けなければ何でもいい」というおおよそ武芸者とも思えぬ戦いを展開してのらりくらりの逃げ戦法を行った為、決着が付かなかった

こういったタイプの相手だとチカも対応し難く、正直「面倒くさい」のもあって。お互い引いて翌日の防衛戦に持ち越した

後でアグニはアルベルトの下に来て手を出して
「いくら出す?」と聞いて来たが
「後で皇帝陛下に要求してやる」と返して黙らせた

後日三日目と成るかと思いきや。ここで森街から後発で送られた予備兵1000がアルベルトの下に来援

更に、先行して機動中心の100名でとりあえず中央街道出口にアリオスらが辿り着いて。書が送られてきた為アルベルトも戦闘継続せず、街の中央まで引いた為。獅子の軍も一旦砦に総撤退して再編を行った

ベルフ側 被害400 獅子の国側 300とややこちらが優勢とも言えたが劇的な結果でも無かった

砦で軍議を開き、以後の対応を話し合った

「向こうも後発組が来援したようだね、今後の意見を聞きたい」
「ハ、状況が変わったのなら、もう当初の砦を盾に使って徹底して迎撃で良いとおもわれます」
「砦に射撃大型弓や、対人投石器も整いました、それと先の二戦の隙に斥候を展開しました、のち向こうの細かい情報が出るかと」
「流石ダブルAだね」
「有り難うございます」
「この状況に成ってはもうアレクシア様も召還しても宜しいのでは?」
「そうだね、さっそく通達を」
「ハハ」
「他に何かあるかい?」

「そうですね、意外な程、と言っては何ですが向こうが固いですね、もう少し削れると思ったのですが」
「武芸者も居たんですね‥」
「というか、めんどくさいですアレ‥」
「後ろで見てても嫌な相手だったね、実戦慣れが異常というか」
「ですね」

「まあ、兎に角、次の戦いまで時間もありそうだし。策を打つにしろアレクシアが来てからでもいいだろう。引き続き準備を」とロランは解散させた

その会議の後自室にエリを呼んで聞いた
「南方3地域、並びに周辺の細かい地図は出せるかい?」と

「この辺りは何時も配達で歩き回ってますからかなり細かく出せます、けど、どうするんですか?そんなもの」
「地の利はこちらに有り、なのでアレクシアが来る前に精密且つ、地元民しか分からない様な場所、道、何かを知りたい、策を差し挟む余地があるなら役に立つ」
「なるほど~!。全部頭に入ってますから直ぐ書きます!」

「頼む、出来たら、そのままアレクシアに付いて伝達も」
「はいー!」と言って何時もの様にすっ飛んでいった

北方地域の強みの一つがこの地形である。兎角自然が多く、策の打てるポイントが多い、特に「伏兵」「奇襲」「情報工作」である

もう一つが北地域の情報の少なさ、ベルフにとっては初の北伐であるという点である

向こうはアリオス、こちらがアレクシアと成れば策の打ち合いになる展開も予想されるが、予め情報が有るのと無いのでは優位性がまるで違う、故にロランはこの指示を出した

求めに応じてアレクシアが砦に着任したのは三日後、そのまま出来上がった地図と共にエリが付いて細かい場所、地図に表示されない場所、地形、等の説明を全て受けた

一方、アルベルトの防衛する、最北ラエルの街に先行して来たアリオスらが合流する

「何だ、100名だけか」
「後からどんどん来ますよ。とりあえず私が先行して来ただけです人材差が苦しいでしょ?」
「‥たしかに、その通りだな、兵で劣る訳では無いが、向こうは人材の揃えが異常だ」
「ええ、なので、まず私が」

「と言っても武芸者の数も質も異常だぞ向こうはアリオスの所も武芸者は居らんだろうが」
「そうでもないですよ「女人隊」で防げなくもありませんし、キョウカさんやイリアさんも武芸が出来ます、それなりにやれますし、この一年で更にそう言った武芸者も探してましたし」

「相変わらず若い女ばかり集めおって、胸糞悪い人事だ」
「人事は八将の自由権がありますから、アルベルト様もそうなさっては如何ですか?」
「知ってて言ってるのかお前は、集まる訳なかろうが」
「そういうつもりで言った訳でもありませんが、まあいいでしょう。とにかく、先二戦の情報をください策を練るにも情報です」
「分かった来い」

とアルベルトの陣幕に招かれ、細かい情報伝達を受けた

「うーん‥、しかしこれは困りましたね、住民の総撤退とは‥」
「ああ、引き出す情報の先がそもそも無い、南森の敵兵捕虜は居るが、そこまで有益な物は持って居なかった」
「しかも向こうの数だけいち早く揃ってしまいましたね‥」
「向こうの連合としての連携率も高い、ハッキリ言って厳しい」

「‥帰りましょうか?‥あんまりやりたくないですね」
「んな訳に行くか!」
「しかしねぇ‥あの砦を打ち抜いて、北に雪崩れ込んでも更に獅子の国の王都でしょう、無茶苦茶厳しいんですが‥。いっそ被害が出る前に帰って南か東攻めた方が楽なんですがね他の地域軍と連携出来ますし‥」

「愚痴ってもしかたなかろう、御意が北を落とせなんだから。それだけの戦力もそのつもりで投入されているんだ」
「ハァ‥嫌だ嫌だ‥」

アリオスは街の宿から「とりあえず充てられた司令部」に席を置き嫌々ながら策を練った

が、この時のアリオスは本当に嫌そうだった、何時も嫌そうだが。付き合いの長くなっていたイリアにもキョウカにもその違いが分かった

「ほんとに厳しそうですね」
「ええ、まあ、北攻め自体完全に間違いですし‥大陸連合に成った以上、余った地域から兵がどんどん来ますし‥無理押ししても全勝するくらいの勢いが無いと無理なんですよね」
「なるほど」

「やるにしても、南で王子とシャーロットさんがやった様な削り戦法を間断なく繰り返して向こうを削っていくしか無いんですがね、しかも北はそれを許してくれる地形と人材じゃありませんし。他の支配地域からの連携した攻めも出来ませんし。ハァ‥帰りたい」

とずっと嫌そうにしていた。当然だろう、戦略ミスを逆転する戦術や策等普通はありえないのだから

とは言え命令とあらばやらないわけにもいかないのが下の者の辛さである、ここまで間違いの少なかった皇帝ベルフの戦略眼も急激に衰えを見せた様にもアリオスには見えた

実際北伐自体もその北援軍もアリオスは説明し、無謀に近いとの見解を出立前に皇帝に披露したのだが全く聞き入れられなかった

「後の頼りはロベールさんの武力くらいですかね‥援軍兵も更に欲しい所です」

アリオスの見解は尤もである、そもそも包囲されているのに逆反撃して包囲陣を突き崩せと言われてるのと同じである

それにはもう、それを突き崩す火力くらいしか思い当たらない、あるいは、敵王を暗殺するくらいしか手が無いのだ

5日後にはアリオスの遅れてきた主軍4千と補充予備兵2千が森街に到着、この時点で。後方二地域に置いた維持兵の1000も大方アルベルト本軍に収集した

数の上だけでは総軍1万二千に成って、北連合と戦力は拮抗するがアリオスは全く喜べない、無論アルベルトは喜んだが

この情報は斥候を展開した獅子の軍もいち早く掴み再び軍議を行うが軍師に着任したアレクシアは方針を変える事も無かった

「ここを盾にして守るのは有効です、一つ策はあるのですが何れにしろ敵が全部集まるまで待ちます」と示した

「そこで、陛下にお願いしたい事が二つ」
「参加して頂いた剣聖様の部隊にもお願いがあります」

そして具体的な策が伝えられた

その準備は更に10日で整えられる、後は敵が揃うのを待つ方針を貫いた

だが、同時に、アレクシアが最後まで口にする事は無かったのだが「裏での攻防」も展開していた

アレクシアの策を聞いて、ロランらは認め、まず書状を連合周辺国に出すと共に、送られた援軍半数を一旦当事国に戻す

その後、主軍をロルトに任せ、ハンナを補佐はそのまま状況の対応にロランは後方にと当初からの人事と同じになる、銀の国の援軍には主軍と同時行動の立場に

最早本国に防衛兵を置く意味も薄く、殆どの残り兵も召還して戦力を結集した

そこから1日、ロベール率いる主軍5千が北に到達、即時そのまま北伐してアルベルト、アリオスに合流を図ろうと動く。この時点でアリオスがまず手を打った、街に結集した戦力を予備兵合わせて再編

アルベルト、アリオス共に5千の軍を作り、残りを街へ置いて、更に二将の背後に二千の軍を作る、この司令官にアリオスが新たに登用した将

姫百合(もちろん若い女性、偽名)を充てて任せた

彼女は22歳。大陸戦争中年に攻め落とされた、没落王族の親族でその名の通り「姫」であったが

ベルフの捕虜として扱われていたが、ライナらと同じく、既に国も無く、賠償金の払い先も既に無い為、処遇に困り罪人島に送られた一人でもある

ただ、その先で10勝して生き残り、アリオスが「もったいない‥」と思い金を払って身請けした

元々才能があったのか、キョウカに預けて本格的に武芸の指導をしたがあっという間にキョウカを追い抜き、八重等にも追いつく才を見せた

元が国の一族である為、「学」にも明るく、アリオスが指導したが、軍指揮や戦術、戦略への適正を見せた事により登用されて前線に使われる事になった

ベルフに対しての恨みはあるが、逆にその中にあってアリオスの優しさや施しによる感謝がありその身を捧げるという程の忠誠があった

また、アリオスの「裏」を知っている数少ない1人でありそれにも同意して尽くした、ベルフへの忠誠でなく、アリオス個人への忠誠である

ただ、元が姫な割り、見た目は兎も角、男勝りな女性である元々なのか厳しい生活での中での結果なのかは分からない

アリオスの元に偽名の若い女性が集まっている理由は同様に、アリオスに身請けして助けられた女性が多い故である

ロベールが一同に加わる前に「攻めの軍」を整えたのは無論「策」の為である。一週間後にロベールらが加わると即時迎え軍議を開いた

「砦攻めにしては数が多いな」先ずロベールはそう言った

当然だろう、そこまでの人数の展開するような場面ではない

「あの砦を攻めて打ち抜く等無駄もいい所ですからね」
「では、野戦をやるのか?と言っても引っ張り出すには餌が要るが」
「左様です、まあ、色々考えたのですが‥、向こうを引っ張り出すのは並大抵の事ではないので‥」
「だろうな、で、どうする気だ」

「後方三地域に住民なり領主なり居れば「人質」というのもあったんですが無人ですからね」
「となると街の破壊工作でもするか」
「ええまあ、ですが余りにセコイので保留で。まあ、当初は普通に攻めてみましょうかと」
「俺としてはそれでもいいがな、下らん策の打ち合いはつまらん、が、意外だな。お前が策の打ち手が無いとは」

「一応パチンコは2個ありますから、どうにかなるでしょう。と言っても何れにしろロベールさん頼みですけど」
「が、無謀な砦攻めもこっちが痛いだけじゃないか?」とアルベルトが口を挟む

「ええまあ、ただ、一応策らしき物は考えてありますので、相手が相手ですし上手く行くとは限りませんが‥様子を見ながら展開できれば、ですが」
「聞こう」

とアリオスは「策」を二人に説明する

そして後日には三将は北伐、翌日にはオルレスク砦で対峙となる

ベルフ軍は投石器を二機用意してまず打ちかけて来るが、砦にも反撃用の対人投石器が用意石の打ち合いになる。

「なんとまぁ‥、向こうも反撃武器を用意したんですか‥」
「準備する時間はあったからな、しかし読まれてるな」
「相手が相手ですからね、コレまでの様な楽な戦いには成りませんよねぇ‥」

更に獅子の国の軍は砦に用意した遠距離大型弓も加えて反撃してくる

「道具での打ち合いでも向こうは倍ですか‥、一旦下がりましょう」とアリオスは指示して一度距離を取る

そこで意外な事に獅子の軍が出撃してくる、野戦を挑んで来たのだ

「ほう‥、野戦をやるか、手間が省けたな」

とロベールは言いつつ軍の展開を図り対応姿勢を即座に整える、ロベールの主軍5千が前に立ちはだかるように最速展開、彼にしてみれば「待ってました」の事態であり真っ先に動いたのだ

対して獅子の軍はまずロルトの主軍が二千に、右、銀の国の援軍軍が左に分かれて展開、後方に二千をロランが指揮で出た

が、単なる野戦軍では無く、様々の兵装の軍である

数はベルフ側のが明らかに多いがこの様な展開であればとロベールは

「一戦当ってみようというつもりなら俺が相手する。二人の軍は予備軍として控えろ」と告知して正面決戦で挑んだ

双方正統的な正面決戦でそのまま打ち合う、軍としてのクオリティも互角で接戦となった。

ならばと、ロルトは最前線に出て自ら剣を振るう
そこにロベールが槍を取って出て受ける

一騎打ちではなく双軍の打ち合いの中での戦いだが、その中で個人戦の打ち合いもあり、お互いの力を見せ合った

ロベールは槍の名手、ロルトは長剣の名手であり中々の戦いを魅せる、両者共、正統、王道の技の持ち主で戦争の中にあって互いが互いに好意を覚える程の噛合った戦いであった

そのつもりも無かったのだが二人の打ち合いで自然と輪が出来個人戦舞台となっていた

30合打ち合って譲らず、ロベールは「ほう‥」と呟いて。少しずつ攻守の配分を変えて戦う

そこから少しずつ、展開が変わる。第三者から見ても分からないのだがお互い同士の中でロベールが優勢に傾く

(ここまでか)ロベールは心で呟いて少しずつ引いて、個人戦と軍戦を入れ替えつつ最後には引いた、あくまで冷静、客観的でありそれが分かったロルトも下がって味方に譲った

「智勇の均衡の取れた名将だな、俺と同タイプか」とお互いが同じ感想を洩らした

ただ、これもお互い認知したが、個人の武では僅かにロベールが上回った、無論それを口にする事は無かったが

その後3時間の戦闘の後、一旦ロベールは軍を下げ再編を行う

代わって前に出るのがアルベルトの軍、ただ、ロベールの時と違い前を支える武芸者が居ない

故に同じく三時間の打ち合いの後ベルフ側は全軍ジリジリ街道線を下がって後退する

なにしろ頼れるアグニが「めんどうくさい」と言って後方観戦したからだ。本当にアテにならない気分屋である

翌二日、そのまま野戦を挑んだが獅子の軍が先に動く。後背展開していたロランの軍が前に出て所謂正統基本陣形、中央、左右への陣形展開して前進攻撃を図る

更に砦にあったはずの移動式遠距離機械弓、小型バリスタのような物も投入して高い火力を展開して押してきた為。一時ベルフ側は後退する

何しろでかくて威力が大きい、まともに食らうと人を貫く

こうなると、悠然と軍の交換戦法を続ける訳にも行かずロベール、アルベルトの両軍が前線展開投入して押し返し。機械弓周辺に弓を浴びせて使えない様に図って止める

ここで前線兵力差が一万対六千に開き半包囲して押し返す形になるが右翼担当したロランの軍は

自身らの武芸者と共に前進突撃、対するアルベルトの左翼は数の差があったが武力差で下げさせられる

止む無く、アリオスが「女人隊」を援護派遣してそれを食い止め支え凌いでその日の戦闘は一旦引いて終わるが

直後ベルフ側の情勢が変わるのである

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