境界線の知識者

篠崎流

文字の大きさ
19 / 50

救世主

しおりを挟む
本格的な開戦前にトロントが単独決戦、兵力を五千失い共和側だけ戦力を失った、会談で決められた事前策もぶち壊し、当然、亀裂と成る

ベルーサ側はそのまま、この前哨戦を攻める口実に出来るし、もうペンタグラムも動けない

そして翌日には、軍備と追加兵一万が揃うのも待って、ベルーサ側は堂々と宣戦布告である

もうどこかに配慮する必要も無い、トロントの軍事行動で先に手を出してきたのだ、が、布告先はロベルタでは無い、トロントである

直接的に戦端を開いたのはトロントである点、そしてこの事態に成れば、共和国はトロントを捨てるのも規定路線だ、誰がトロントを援護・庇護するかと頭にあった。狙った訳ではないが、結局、「内部崩壊策」に嵌ったと云える

ロベルタ側も頭を抱える事態である、トロントを味方する選択は無謀だ、見捨てても自滅だけに不興を買う訳ではないが、ベルーサに北街道西を押えられる上に橋頭堡になる

しかしロッゼは「捨てる」選択はしなかった
「基本的にトロントは見捨てません」と会議で先に宣言した

「ここでトロントを捨てても状況が悪くなるだけです。それに責任者の領主は亡くなっています、既に、選択の責任は取っています」

が、それは「無謀だ」と意見も半数は出る

「では領民はどうなります?まだ後継者も決まっていませんし軍も敗戦で半数しかいません。使えなくなったから、共和から外して捨てるでは、民心も他の共和国も離れます」
「理屈はそうですが、それは戦って勝てるか守れるかの。前提あっての話です、一緒に自爆する事になります」
「そもそも、向こうの狙いは本格的な共和軍と戦いの前にこちらを削る意図もありますが」
「だからと言って、自分たちだけ生き残ればいいでは話に成りません、それでは次もありません、私は共和云々に関わらずこれまでの仲間を捨てません」

珍しくロッゼが引かずに堂々と反論した為、官僚、軍官一同も黙り込んだ。インファルも捨てるのには賛成だ、そもそも自国を守るのが国の役目であり無原則に過去の友人を守る事ではない。あくまで一般論ではあるが、同時に、それでこそロッゼだとも思った

そして悲観するほど勝算が無い訳ではないともあった。当初の戦略方針も間違いではない、そこで問いながら決定への誘導を行った

「では、ロッゼ様、どのような選択で戦いますか?」
「基本的に、前と同じです、トロント前に出て防ぎます。共和軍である以上その領土が侵されるを良しとしません」
「分りました、陛下の選択を尊重します」
「インファルさん‥」

唯一、そう、彼女に同意されてロッゼも半ば涙目だった

「兎に角、トロントと外交なさいませ、この際、そういう選択をしたなら、宣伝に使います」
「宣伝?」
「トロントの無策な領主は敗戦で亡くなった、反撃侵攻してくるベルーサを許さない、ロッゼ=ブランシャールは真に聖者であると。となれば、内外に印象が宜しい、ベルーサ側もこの現状でロベルタが出てくるとは思ってません、逆手に取ります」
「では、さっそくトロントと会談を」
「引き続き、共和を維持、庇護すると云えば宜しい、それだけで協力は得られます」
「はい」

が、それでもやはり反対の声は挙がる

「ちょっと待ってください、戦って勝てる現状ですか?」
「トロントが占領されても、それは自業自得です」
「分ってない様だから云っておくが、これは陛下の御意だぞお前たち?」
「‥しかし、無謀な争いに突っ込んでいくのをお諌めするのが下の者の役目です」
「負けるとは思ってない」
「そう云われますがインファル殿はこの国の者ではありません」
「が、連合の代表でもある、ロベルタの危機とあれば出る必要もある」
「‥分りました、では、どう勝つのですか?」
「作戦が決まっているならそれを成すだけだな、作戦自体も間違いではない、防いで時間を稼ぐ、遠征軍は不利が増えるは当然だし。それと、もう一つ忘れている様だが共和は共和であって初めて他国と対抗できる力を持つ」
「?」
「ここでトロントを捨てるなら、残りの兵力も捨てる事になる、それは兵力差を広げるだけよ、全体が纏まってこそ3万の兵力がある、それを解除するなら、今助かったとしても、どの道、各個撃破の対象になるだけだ」
「確かにそうですね、ロベルタだけで戦えるなら、元々共和である必要もありません」

「言葉は悪いけど寄り合い、とはそういうモノよ。この際、兵力だけ集結させるにはどうすればいいか。それを考えろ、そもそも、まだ二万五千対四万だ、劇的に兵力差が開いた訳ではない」
「そうですが」
「まあ、頭の痛い事態には違い無いが」
「具体的な策がお有りか?」
「共和は共和で協議するしかないでしょうね、グランセルナから各地の援軍がもう出ている、到着はバラバラになる、が、今五千来たから、後はフォレス次第だろうね」
「基本別行動作戦でしょうか?」
「一応、アタシとシルバはそちらと当面同行動するわ、初期兵力差は低いほうがいいし」

早速、ロベルタは周辺共和国と協議と、トロントの防衛と共和の維持で、作戦の変更は無い事を通知した

既に向こうも動いている以上、急激な作戦変更もやりにくく、不安は皆あったがロッゼの鶴の一声で最終決定された

「共和は友です、その土地が侵されるのをロベルタは見過ごしません」

という圧倒的、聖者の言を浴びせられ全軍同意した。そしてインファルは城下滞在のシルバと合流してとりあえずの挨拶と告知だけした

「明日には共和軍も出るそうだから、貴方はそっちに加わって向こうの作戦に従って、以下は自由でいいわ」
「宜しいのですか?」
「主軍自体、数負けだからねぇ、なるべく、数差を作らない事が重要ね、まだ、こっちも後ろから援軍来るだろうし、長期戦に成った方が有利だから」
「確かにそうですね、了解しました」
「基本的に守勢に徹して援軍待つ指示だから、そこをメインにやって頂戴、あたしも軍には口出ししないわ、貴方の好きに」
「ははっ!」

そして、そのまま城の私室に戻って催促である

「えんぐんまだー?」
「とりあえずハーベストも三千そっちに出した、ティアとおっさんもカハルに戻ったから休息から2,3日後には高速騎馬も一応行く」
「カルディアじゃないの?」
「行ってくれる予定だが、現状ではあまり用はないかな」
「かなり機動攻撃型だしね…」
「ああ、単体別軍で奇襲とかはありなんだけどな…まあ。向こうから予備兵の歩兵とかは出せるとは思うが」
「そうね」
「ロベルトのおっさんとこは500、補給の馬車隊も100居る、後、弓騎馬だから使えるだろ、装備品と歩兵も積んでるし換装しても戦える」
「そうね、カルディアの所はウチの装備まだ無いしね、換装で防備戦てのは向いてないかも」
「んだな」
「そんでも数の上ではまだ足りないわねぇ‥」
「本国から出すのに準備はしてるが‥まだ結構かかる、そもそも手持ちが主軍の一万五千しかねぇし、まだ訓練も終ってない新兵も半分いるし」
「出せても五千か‥」

「そうだ、それ以上薄くすると緊急事態、バルクストと、ロンドギアの情勢変化で何も出来なくなる、エミリアの主軍も動かせん。それから、歩兵と弩兵中心だ、移動も掛かるぞ」
「後は、ドネツクのおっさんか‥」
「一応伝令は送ったが通知が届いて、ソッチに着くのも6日くらいか」
「なんか‥いいニュース無いの?」
「ティアがこっち戻れば、ターニャはフリーには成る」
「‥」
「まあ、大丈夫だろハーベが着けば」
「ふーん、随分期待してんのね」
「まあな、多分だが戦術面ではオレといい勝負する程度には変態だろう」
「へぇ」

「本国からの援軍第二段は間に合うか分らん、兎に角、無駄にこっちの兵を減らすな、向こうの作戦通り守勢で耐えればアチコチからの援軍が来る、ハーベが着けば戦力と知が補充される、反撃はそこからでいい」
「そう言われても、アタシロッゼ様の補佐だし軍官でもないしねぇ、共和側じゃないからどうにも出来ないんだけど」
「とりあえず、先行して行ってるシルバを押えとけ」
「??猪突系なの?」
「うーん‥オレから見ると、最前線の指揮官て感じなんだよね、守勢に向くとも思えんし」
「もう、主軍に入れてるんだけど‥」
「マジデ?」
「だって数負けしてるし、共和軍」
「しゃーないな‥そのままにしとくしかねーな」

翌朝には待機していた共和国軍は全軍混成で収集し、ロベルタ北の街道から前進、街道「十字路」の西、トロントと南北街道の北から来る敵を中央に置いて、迎撃体勢を整えて待った、予定通りなら到着は翌日で朝である

基本方針は防御中心での戦い、現状打てる策が余り無く、ほぼ平地街道戦で、分かれ道の西にあるトロントへの攻めを防止する意味合いと、後退迎撃防衛で敵をロベルタ方面に引き込めれば、という作戦である

インファルからすれば策はあるのだが、何しろ、連合側であって、共和に全体作戦の立案など、あまり口出しは出来ない面もある、故に、最後尾のロッゼに付いて傍観するしかない、指示が出せるとしたら参加しているシルバの軍くらいだろうが、まあ、どの道、口を出せても作戦を提示出来ても無駄だろう

理由は簡単で、先にも言った通りで、共和側の統一性の問題と総司令官が「一応」ロベルタである事、正規軍もロベルタとグランセルナだけという事だ、特に他所の土地であり、グランセルナ防衛戦と違い罠やら策やらは打てないし、味方がちゃんと動くか分からない

翌朝、予定通り正面に現れたベルーサの軍と正統的な正面決戦が始められる

3万対4万

ベルーサは縦長の縦列陣
共和側は中央にロベルタ左右に共和側の各軍

最右翼にグランセルナの援軍軍である、1~5を横に並べた縦陣、並びでは、共和軍124、ロベルタ3の中央、右にグランセルナという形になる

開始から「うーん」と後方で傍観観戦していたインファルも
ほぼする事が無いと同時に既に欠点に気がついた

中央のロベルタ軍は統一軍として強く、主力大将を任された、ベッケルスも能力があるし、これまでの経緯あって兵力の増強があまりされて無い分、装備は全員騎士団が丸ごと軍になった様な重装備剣盾兵で非常に固い

数に金を掛けてない分、装備の豪華さと強力さは抜きん出ている、ハッキリ云って、「世界」でもここまで全軍に強力な装備を有しているのはロベルタとペンタグラムだけだろう、が、逆に共和の他の軍は自治軍で非常に脆い

二時間の戦闘でロベルタは中央から相手をどんどん押し返すが、逆にサイドの味方が押されて被弾する

ベッケルスもそうなるとそのまま押す訳にも行かず、左右と協調を図って陣列を整えながらの戦闘と、いわば「手加減」せねば成らなくなり力が発揮できない

それでも半日の打ち合いの後、双方左程被害が出てないうちに両軍下がって一旦再編と休憩、当日の戦闘を終えた

この時点で共和 2万8千 ベルーサ 3万8千と
兵力差の割り互角だった

「後はこのまま継続して向こうが折れるのも待つだけですかね」
「基本方針は変えようがない」

軍官会議でもこれと言って有効意見は出ない
そもそも行動選択肢が無いのも理解している為だ

この時、初めてインファルも「自分に指揮権か軍があったらなぁ」と思うようになった、たかが正面の打ち合い、でも、彼女から見れば打つ手はある、沢山。それをどうする事も出来ないのが歯がゆかった

翌日午前中から再び同じ形で開戦

が、展開はガラリと変わる、ベルーサ側は中央のロベルタ軍を無視する形を取った、ロベルタ軍に同じく防御の堅い剣盾兵をぶつけて弓を放り込み、動きを止めつつ、脆い左右友軍に徹底して騎馬突撃を掛けた

これで30分で横一線の陣形が凸凹に崩れる、そこから敵は右陣から押して共和側を左から崩した、中央陣はやむなく後退して陣形の維持を図るがここで、グランセルナから参加のシルバが逆に突出して相手の左に騎馬突撃を掛ける

丁度蛇が相手のしっぽに噛み付きながらお互いを飲み込もうとする形に成ったが、つまり/の形に上から見てこのような布陣となってしまった、状況によってはそれでもいいが、劣勢では意味が無い

中央と左翼、主力軍が後退戦の状態で行った為シルバの軍が
思いっきり前に出る形になって孤立状態になった

「何してんの‥あの、馬鹿‥」インファルも口に出た

ロッゼもどうするか聞いたが、この状態でまさか「主力があわせろ」とは言えず、やむなくそのまま「後退のままでいい、丸ごと崩れかねない」として共和軍の邪魔だけさせないようにして伝令を走らせた

つまり「全軍総後退!」である

最前線で命令を受けたシルバもようやくそこで引こうとしたがすでに自軍だけ敵中にあった、完全に孤立状態だった、グランセルナの右翼軍も命令を受けて一斉に下がるが時既に遅し

3割の被害を出して、共和軍の主力まで逃げるように下がったが、四千九百あった兵がこの急激撤退と孤立戦で三千まで減っていた、そしてシルバも戻らなかった

最前線で騎馬で剣を振るっていたシルバは命令を受けて慌てて撤退、馬を返す所で槍を受けて被弾、周りの護衛兵も巻き込まれて全員死亡である、あの状態からこの被害で済んだのは寧ろ幸運のレベルだった

そして共和側を付き合せなかった事で大きな崩れも無く、真っ直ぐ後退防衛は成功した

午後には一旦下がって再編を行ったがベルーサ側は無理押しせず、再度の攻勢は無く、午後二時には、二日目を終える、ロベルタ側に引き込まれても策に嵌るかも知れないという警戒からである

二日間のやり取りを見てもベルーサ側の将は慎重で上手かった、そもそもこの現状に至っては、無理する意味も無い

2日目終了時点で 共和 22,300 ベルーサ 36,700である、もう余計な事をしなくても「勝てる」現状だった

共和側の軍官会議にそのままインファルも出席してまず頭を下げた、こっちの指揮官が勝手な行動を取って申し訳ありませんと、が、追求の類は略されなかった

「まあ、主軍に被害が出た訳でもないし‥」
「そもそも別に命令違反があったという訳でもなくソチラの指揮官も戦死してますしね‥」

と寧ろ同情的だった

「それより、今後ですが」
「グランセルナの指揮官をどうします?」
「私が代理は出来ませんねぇ‥軍官では無いので、代わりと言っても‥」
「ふむ、困りましたな」

そこで救世主が現れる。ロベルタ本国にハーベスト指揮の王直属軍三千と、輸送馬車100が到着の通知が来た

「ああ、後ろから援軍が来たみたいです、ハーベストにそのまま指揮を移譲しますわ」
「それは良かった」
「二時間程でここにも来るそうです」
「ふむ、では会議は夕方にしましょう、全指揮官が揃ってからで」と一時解散、そのまま各軍、再編と休息についた

ハーベストとマギ、テラが早馬で先行して来た所で、再び全軍会議である、とは云え、全体方針は決まっているのだが

「基本的に防衛後退戦ですが‥」とロッゼが音頭を取った所で直ぐに続く

「向こうは慎重ですな、こちらの引きに付いてきません」
「余程の餌が無いと無理なのでは?」
「とは云え、それが出来そうなのはロベルタくらでしょう‥」

口々に意見は出るが半ばグチと感想に近い、そこでインファルは自分が口出すするのも問題なので、グランセルナ王直属軍主将という立場を活かしてハーベストに問うてみる

「ハーベストはどう思う?」
「グランセルナの将殿の意見も聞いてみたい」
「過去にあれだけの大作戦を成功させた国ですし」

そして便乗する軍官の一同である

「え?え~と‥今までの経過を見るとですが、基本的な方針、つまり引き込み策には付いてこないのでそこはもうやめたほうがいいかと‥」
「?ではどうするのか?」
「数負けですが、それほど歩兵負けしている訳でもないので、戦術面での工夫があれば、そこそこ押し返せるとか思います~‥たぶん」
「そうかのう‥実際は押され気味なのだが‥」
「えっと、それはロベルタ以外の兵と軍の問題ですので‥」
「そう云われると、一言もないな‥」
「す、すみません」

「だが、それでは打つ手が大してないのでは?」
「もし、私に任せて頂けるなら、ですが、コチラを引き続き右翼を任せていただいて、そこから崩して反撃と同時に他の軍を楽に戦わせて見せます」
「そんな事出来るのか?」
「たぶん~」
「いや、兎に角やってみよう、有効な策が無い」
「は、はい、では、作戦を説明します、皆さんは兎に角、防御主体で近接を、引かば押し、押さば引くを徹底してください」

そして説明を受けたが、策、と言っても特別なモノには見えなかった、単なる正統陣形正面決戦の方針である。そんなんでどうにかなるのか??と一同も思ったがウチから必ず崩しますと云われた為、半信半疑だが一同了承した、そもそも他の軍官、司令官に有効な策もないからだ

翌日まだ薄暗い時間に、ロベルトのおっさんの高速騎馬も来援、カハルからの予備兵も500到着、ハーベストはこれも自軍に加え、数だけは七千にした、朝の準備からグランセルナ軍は異常な武装構成を整えた

馬車軍100の内90から工作兵と後方支援が、全部武装を出して構成の変更、剣盾、藤甲、手弓、弩、連弩、そして敢えて自軍の二千を後方待機に予備兵として置き分散する

午前中昼前には三日目の開戦に突入した、が共和国軍側は、正統陣形での対峙を挑んだ

つまり中央にロベルタ軍、右にグランセルナ、左に共和のこり軍の3軍横並び陣形

ベルーサ側も驚いたがそれに付き合って同陣で挑んだ「今更正統決戦もあるまい」とは思ったがそうなれば寧ろ有り難い、もう余計な策を挟む段階にないのだから

無論ハーベストも特別な事をするつもりも無い、正統的な部分、戦術から崩す方策であったからだ

三日目の開戦は共和と連合は善戦した、開始から一時間一歩も譲らず、踏みとどまって防衛戦を展開、中央、左右陣が隙を作らず密集しながら近接戦

「引かば押し、押せば引く」を徹底して行った
「向こうも付き合ってくれましたね~、次の段階に移ります」

ここでグランセルナ軍は右翼から攻めに掛かった

藤甲と剣盾兵を並べて徹底して前線防御から、その後ろから手弓隊を横一列二段に並べて矢を絶やさず放り込む、丁度戦っている前線の直ぐ後ろに打ちかける形だ

敵も直ぐ対応しようと弓隊を出し打ち返そうとしたが、今度はそこに弩兵を出して、先に矢を放り込む

「敵の後列、弓隊を狙ってください~!」

反撃しようと弓隊を出した所に逆にそこを狙い打ちされる

「何をしてるか!向こうの打ち終りを狙って反撃しろ!
敵の右翼は五千程度こちらの半数だろうが!」

敵将も中央陣後方から指示を出したが、そもそも打ち終わりが無い

弩兵が打ち終わったら今度はグランセルナ軍のクロスボウ部隊連弩、が更に後ろから射撃、しかもわざと打ち尽くさず、一定のタイミングでバラバラ~と放り込まれる

それが終れば、また準備と装填をした弩兵が交換で前に出て射的、開始から1時間一切矢を絶やさずこれを繰り返し続けた

あっという間に敵前線後ろを一千も撃ち倒し相手左翼を後退させた

「作戦Bです~!ロベルトさんに連絡~共和味方にも陣を広げて対応を通知~」

ここで自陣右から高速騎馬弓が出撃、陣の横に広がるように配置し、一定の距離を取りながら相手と合わせず、只管相手左翼陣の左横を撫でる様に駆け抜けながら騎馬射的を行う

そのまま、共和軍左翼が左へ、ロベルタも左へ移動しながら戦闘を継続し、敵も応じて陣を広げた

「引っかかりましたね~、こちらも騎馬軍を展開して速度を上げます!」

これで相手左翼陣を崩し、正面から自軍歩兵で一気に押す50メートル後退させる

「射撃中止~!敵の弓と前線防衛隊は略叩き潰しました~、遠距離反撃は出来ません!作戦Cです!、テラさんとマギさんにれんらく~!同時陣を開いて半包囲しちゃいます!」

相手が下がった所を大きく押し込み前進しながら鶴翼にしつつ、相手の正面と左を囲うように展開、今後はマギとテラの騎馬隊100が本陣から分離して飛び出すように二隊真正面に突撃し、敵左翼を後退させると同時、グランセルナ本体から便乗して弩での遠距離攻撃、相手の後列も狙撃して崩して混乱状態に陥らせた

午後二時には敵左翼は2割近く失われ維持が難しくなり、後退、再編しようとするがそれも罠だ

「突撃隊は敵左翼を継続攻撃!我々右翼本陣は敵左陣は無視です~このまま左折突撃~相手中央も食っちゃいます~」

と右翼ハベーストの本陣丸ごと前進しながら左横にL字に折れて敵中央陣へ横突撃して食い破った、棒が真横からポッキリ折れる様に敵中央も崩れて決着である

簡単に言えば、グランセルナ右翼が対峙してるベルーサ左翼の防御線、歩兵剣盾の維持力と弓での遠距離を徹底して削り、数と前線防御で維持出来ないようにし、一時的にでも後退か撤退させる、相手の左布陣位置に速攻で強制的に軍丸ごと割り込んで半包囲状態を作ってロベルタと挟んで一気に中央も叩いた

盤面で言えば

                         〇         ◦↖。
〇 〇 〇  〇  〇   ●   〇  ◦←●
● ● ●  ●  ●       ●  ●     となる

敵も本来なら3陣を平行して保たなければならないが、それをさせなかった、接戦と見せかけての速攻での位置取りと、それが他軍味方への「押さば引き、引かば押す」の徹底

左、共和連合と中央ロベルタがそれを横に広がりながら行った事で、ベルーサ側も付いてきた為、右から崩しに援護できなかった、初めから「正面の敵をその場にひきつけておく」事が目的だったのである

ベルーサ側も全軍撤退しかなかった

午後3時には敵は防衛しながら収集、そのまま南北街道を戻って完全撤退となったが、それすらも邪魔される

向こうが逃げたのに合わせてハーベストは一定距離で、ずーと追い続けながら一切近接戦を行わず、高速弓騎馬と本陣の遠距離矢をパラパラ放り込み続けて、丸一日嫌がらせを続けて残り敵軍も3割削り倒した

ベルーサもどうにか支城まで撤退したがそこでも共和軍と共に攻め込み、残りの矢全部、火矢を城ごと打ち込んで燃やして、最後の嫌がらせを終えた後、反転撤退した

完全勝利とか言う次元じゃない勝利を収めて決戦を終えた。ベルーサ軍も訳がわからない、2日目終えた所で優位だった兵力

共和 22,300 ベルーサ 36,700 だった戦力が
共和 22,000 ベルーサ 15,700 と終戦時に成っていたのである

しかも折角こさえた支城まで放火されまくって全焼した、敵味方共にボーゼンの結果だった

ロベルタに戻って戦勝パーティーが開かれ。共和軍全部も集まって大宴会と成った、敗戦濃厚だったあの状況から、いきなり来て初陣で相手を叩き返して

あわや全滅まで追い込んだハーベストは当然武功一番である、賞賛と握手を求める軍官がひっきりなしになって大変な事になった

「何故あのような魔法が使えるのです?」
「え~と‥こちらは武力の将と、特殊装備が多いので~戦術面だけで勝てると思いました、それから相手将が誘いに乗らないタイプなので、逆に相手を後手後手に引っ掛けられるかと」
「どういう事です?」
「それは~、こちらが奇抜な事をすれば必ず合わせて対応してきます、教科書どおり将なので、つまり事後対応型なんです、だからこっちの打つ分りやすい手を先に出して教科書どおりの、その、対応すること前提で裏をかきます、そうすれば全部相手の逆を取れるので~」
「なるほど‥ワザと「分りやすいカード」を先に出してそれを返す事前提で裏を取るのですね?」
「はい~」

「しかし、どうして相手がそのタイプだと分ったのですか?」
「前二日の対応と、三日目のこちらが正統戦法を出した際、同じ形を取った事、三日目開戦の皆さんに指示してた「押さば引き」「横に広がりながら継続」に付いて来たことですね、慎重で相手に対応するタイプだと思いました。正統的な、基礎忠実な将は隙が無い様に見えますが奇計、奇策、に嵌り易く、マニュアルから外れる事への対応が貧弱です」
「ふむ‥」
「で、相手ベルーサの将は有能ですが、中・大隊指揮官が少なく思いました、あの大軍を動かすには行動が遅いように思いました、一方こちらは軍を分けて対応しても各陣、軍に将官クラスが居り、別々に動いても応変な対応が可能だと考えます」
「確かに…共和三国、ロベルタ、グランセルナと別々参加しておりますからな…」
「左様です、場合に寄っては不利に動く事もありますが、作戦が明確で「これをすべし」と確定されていれば長所にもなります、纏めると、敵の欠点は数が多いに比して統率が足りない事、対応力が劣る事です、故に三陣を広げ、個別対応を迫り、局地戦的に速攻を意図して仕掛けました」
「だから横からの対応が遅れて崩れたという訳ですか…」
「結果論的にはそういう事になります、それに三日目開始時点で兵力差が大きく有利になったので、こちらの陣分け戦法に合わせる必要はありません、一か所に纏めて縦列陣や鶴翼陣などを敷いて、数と集団力と展開力を活かせば良かったのです、此方に付き合って自分で命令系統を分散したのですから、ああなります」
「長所を自ら削って弱点を強化した、という事ですか…」
「はい~」

「それと、ウチの軍は武装と遠距離の優位性が極めて高いので。一旦裏を取ってしまえば、先手を取れれば反撃手段があまりありません、こっちに対応しようとしたのが向こうの敗因ですね~」
「?」
「え~と、つまり例えばですが、こちらが陣形を広げて三種の弓で仕掛けます、これを対応反撃せずに只管盾等、あるいは密集防御かで陣形と位置取りを崩さずに耐えれば良かったのです、で、敵は軍力と錬度で劣る共和側、を突けば良かった訳です、弱い所から崩すが最も勝率が高い」
「な、なるほど、それで出来る限り兵力差を広げる、ですね?」
「はい、兵は水を象るとも言います、弱い所を攻めるという兵法の基本です、ベルーサはこちらの誘いに乗った、其れを怠った、引っかかってしまったという事です」
「なるほど…聞いた事があります、水は高きから低きへ流れる、同じように軍事は主力を避けて手薄を打つ。確か孫子でしたな…」
「そゆ事ですね~、で、あればロベルタとグランセルナだけでは一万二千しかありませんし、継続維持は難しくなります、私に構った事、が全ての間違いです」

周りで聞いていた将、官も唖然である

「流石にフォレスとメリルが選んだだけの事はあるわねぇ、大した知将だわ」
「ええ、呆れた戦術家ですね、兎に角助かりました」
「二連続で自爆があったからどうなる事かと思ったけど良かったわ」
「インファルさんにもお世話に成りまして」
「いえいえ、特に何もしてないわよ」

インファルとロッゼも交し、パーティーを楽しんだ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...