境界線の知識者

篠崎流

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第一次ロベルタ防衛戦

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建国から二年半過ぎの時期

ヴァイオレットをペンタグラムに送り入れ替えにターニャが帰還、シルバと入れ替えにトリスが本国騎士団に戻る、どちらもあまりやる事は無かった感はある

二人を夕食に招いて雑談でも見て取れる

「正直カルディア様が居る限り乱れは無いですね」
「だろうな、あれ程の人物も早々居ないだろうし、ただ人材の輩出は宜しくないな」
「そのようですね、探してはいた様ですが」
「まあ、それは仕方無い基礎教育機関やシステムが導入できんしやっても時間が掛かる」
「同感です」
「こっちで人材部を作ったからソレの派遣も検討しとこう」
「しかし、基本暇でしたね」
「トリスが後ろに居る事は結構デカイさ、カハルは軍力が少ないし、機動速攻軍だからな、専門滞在の防衛軍が有ると無いとでは動き易さに雲泥の差がある」
「はい、所で今後ですが」
「クローゼを北関所の駐留をやってるので、数日休暇取ったらそっちへ、軍自体一万置いてあるので、こっちから持っていくモノはないな」
「了解です」
「ターニャはどうだった?」
「基本的に暇だよ?会議も何時も同じだし、教皇様と話してる事が多かった」
「疫病は?何か不審な点はあったか?」
「うーん‥特に無いかも、向こうに着いた時には収まりかけだったし。ペンタグラムの住民でも出たから少し混乱はあったけど重病な人も少なかったし」
「そっか、ならいい、当面別の者を交代で中央に送るからターニャは首都で遊んでていいぞ」
「はーい」

そこから一ヶ月くらいはフォレス自身も手が空く様になった、今までやっていた人事と軍に関わらなくて済む様になった事と下が充実した事で本来の「何もしなくても回る様に」がそれなりに出来る様になった為だ

殆ど毎日魔法具の研究と開発、発明の類だけしていればよかった、偶に散策兼視察と、街のあちこちで掘り出し物を探すという、本来の生活に戻っていた

軍力も既にバルクストに一万、北関所砦に一万、本国に一万五千、予備兵と屯田兵三千と、直属軍も二千組織した、カハルへの派兵二千と元族の頭領の騎馬軍五百と、総軍も四万と成って中堅~大国の様相を呈した

国内の調査完了と領土の人口も合わせて三百万とはじき出されたので、この規模の軍でも、ここまでは大丈夫、という人口比率の5%もまだまだ余裕がある所での

維持も達成していた、後は安定治世と時間が解決するだろうと考えて自身も余裕だった、そこで「また」新たな軍武装を考案した

「木材がまだ余る感じなんで輸出中心で、んで自走式バリスタもやろう」
「自走式??」

軍官会議で一斉に返された

「これ、設計図と計画書」
「ふむ‥車輪を付けた射台ですな」
「そうだ、人力で乗って漕いで移動出来るな、おっそいだろうけど、街の職人連中と話したけど作るのは出来るそうだ」
「ほほう‥」
「投石はデカイし邪魔だし、攻城戦はあんま無いだろうから、対人と施設攻撃、防御。両方出来る仕様にする、矢は射程300メートルくらいだな、石に換装しても200はいける、普段の移動は牛馬で引っ張って行けるのと、各地の防衛拠点に置いておける」
「面白そうだな」
「だろ?、まあ、ただ量産は出来んと思う、とりあえずこことバルクストに1門据える」
「了解しました」

「もう一つが鉄鋼関係と木材もまだ余り気味なんで剣盾兵も追加する。鉄、木両方用意して全員に好きに使わせる、兵の錬度に関わらず防御力があるし、これを将、後方支援部隊の護衛に使う」
「これは普通ですね」
「うむ、壁盾と合わせて使う、基本攻は弓と騎馬で、防は盾、壁、元々歩兵の殆ど全員に藤甲があるんで応答性は高いだろう」
「そうですね、我軍は武装の面で後方支援部隊の規模が大きいですからな」
「その意味でそこを叩かれると痛いので全軍防御力が高いに越した事はない、矢もそうだが、持ってく物が多いからな、それの訓練も通常の全体錬に加えてくれ」
「矢に至っては「弩兵」と「連弩」ですからね‥普通の弓と違って3段装填で使う矢が多いし、弩兵も特殊な矢を使います」
「そういうこっちゃな、ま、そういう訳で頼む」
一同 「分りました」

次に私室にアノミアを呼んでの告知と相談である

「んで、アノミアにはやっぱり斥候隊の類を任せる」
「そうだな、どういう形にする?」
「ローラにもう話しは通してある、ヘッジホッグの支店が略南東地全体、グランセルナ、ロベルタ、カハル、バルクスト、ロンドギア、で出来てるので、店、商人隊の護衛、用心棒、任務をしながらの情報収集だ 双方メリットが大きいのでこの形で」
「成る程な、一石二鳥だな」
「人員はバルクストに元々ある冒険者の組合、ギルドから完全移籍したいていう冒険者剣士やら、用心棒やらハンターやらをウチの国の「公人」として雇った、とりあえず十人程だな、ここは結構重要なので、国とヘッジホッグから二重に給与を出す」
「待遇で優遇しての二重スパイの防止か」
「そうだ、んで、一応初期メンツはサーチ面接してある、その可能性は元から極めて少ない奴を集めてある、ただ、これでは全然足りないと思うので人の集め方はアノミアに以降は任せる、一応、人材部にも伝達はしてあるので微増はするだろうが」
「分った、混ざり物の連中を出してもいいのか?」

「構わんよ、全部任せる、基本的なシステムは既に構築してあるし運用は自由にしていい」
「了解した」
「中央庁舎に部署を作るのも問題なので、街の方に古物商を用意した、十五~二十人は滞在できる程度の大きさだ、必要なモノがあれば申請してくれ」
「ああ、ならば、軍から人を欲しい、公人として雇うならその方が早い、適正がある者を私が選ぶ、それから、初期資金だな金,500、伝心も必要だが、無理なら伝書の鳥だな、足の速い馬も要る」
「分った、用意する、伝心は正直量産出来んな手元に二個あるので、とりあえずそれで」
「ふむ、分った、ま、無きゃ無いでもいいさ、術士を探す、アテはそれなりに居るし、それから軍の上層部とも面通し、本部施設以外のも偽装店が要る、ローラ殿とも話しを」

アノミアは早速、中央に移住した元の森住人らとも連絡を取り、裏に向く人材も二人確保して与えられた古物商の偽装商いを始めた

そこから森住人にも話を通し、術や特殊能力がある者で、希望する者を高待遇で招き、あっという間に本国本部に27人集めて、土台を固めた

これを開始から三日後には各地のヘッジホッグの支店に2,3人組みで送りつつ、フォレスから話を通させて連合国の首相周辺にも置いた、混ざり物、人魔の類も相手がフォレス王なら、という事で協力はスムーズだった

今の平和や国内での争いが無いのも彼のお陰でもあるし、既に国家としての協約書も書いて保障されている故である、アノミアに能力があるのは知っていたが正直ここまで手際が良いと驚きである

「人材に恵まれるてのは有り難いなぁ」

事の起こりの最初がそこからである
フォレスの手が空いた、のは本当に丁度一ヶ月だけだった

私室で相変わらず研究と道具の作成に勤しんでたいた時
最初の報が飛び込んでくる

「自然災害??」

連絡を受けて通知を持ってきたメリルも頷いて伝聞を渡した

「また、中央です、王様とカルディア様の意見、そうなったのかも?」
「うーん‥一概には云えんなぁ、偶然かもしれんし雨からの中央大河の氾濫だからなぁ、これを陰謀に結びつけるのは無理があるな」
「確かに‥過去にも長雨から洪水は中央でありましたし‥」
「うむ、被害は?ヴァイオレットは無事か?」
「はい、そのようです、ただ、ペンタグラムの山岳都市でも一部がけ崩れの類の被害あって詳細はまだです、通行が寸断されている様で、河川に隣接している都市では過去の事例から考えて、それなりの被害はあるかと」
「分った、兎に角、逐次連絡を」
「はい」

そして急報は続くものである。午後の遅い昼食を皆で取っている頃、今度はバルクストから伝心が届くティアからだった

「東に不穏の気配有りだと」
「エルフ集落から私に連絡が入った、森に軍の斥候隊が入ったらしい」
「森の北というとセレニティランド地域辺りか‥」
「だろうな、そこで直接話したいのだが」
「分った直ぐ行く」

一緒に食事を取っていたターニャやメリルにもそのまま伝えて、早めに食事を切り上げ直ぐにバルクストへ飛ぶ事となった、御付にそのままターニャとメリルで

中央庁舎とバルクストの城の裏に作った簡易転移陣で跳躍、直ぐに城に上がってティアと面会した

「どういう事だ?」
「あっちから使い魔での連絡だ、かなりの数の人間兵だそうだ、そこでなんだが‥」
「ああ、心配だろう、行ってきていいぞ?」
「しかし、統治だが」
「だからターニャも連れて来たターニャに代行させる、メリルもこっちの補佐に付ける」
「有り難い、では行って来る」
「まて」
「?」
「転移陣を使え、ロベルタまで跳べる」
「すまぬ」

「それと、もし、事がお前や集落の手に負えない場合、連合側に言え、住民も移動させていい、一時避難だな」
「いいのか?」
「ああ、それに、人外の者を受け入れられるのはペンタグラムとウチだけだ、どうなるかは分らんが、頭には置いておいてくれ」
「了解した、重ね重ねすまぬ」

ティアはそのまま単身で城を出て
早速代理統治にターニャを充てて任せた

「実務的な事はメリルに任せる、ターニャはメリルの意見を聞いて裁定を出せばいい、YES,NOだな、二人の判断でも分らない事は伝心でオレに、ターニャは道具無しで伝心が使える、大丈夫だな?」
「うんだいじょうぶ」
「王様、東に動き有りと成れば、連合ですが」
「そうだな、ロッゼの所にインファルが居るし、カルディアにも一応伝えておく」
「はい」
「情勢が動くと成ると、本国での裁定が要るだろう、こっちの負担は出さない様に動く、オレは直ぐ戻らねばならない」
「大丈夫だよパパ」
「ああ、頼むぞ」

フォレスはそのまま城を出て街を単身出た所で跳躍、取って返して本国へ戻った

そして直ぐにフォレスの直属軍指揮官に任命したハーベストをメリルの代わりに置いて小会議、エミリアと騎士団らとの高官会議である

「今の所まだ中央も東も情報が少ないので決定は無いが、何かあるか?」
「中央は情報待ちでいいだろう、どうせ軍を送れる訳でもないし、冷たい様だが、こっちがどうにかする問題ではないな」
「司令に同感です、ヴァイオレット殿と連絡が取れないと話しになりませんし」
「伝心も持ってないしなぁ」
「そうですね」
「では、こちらの連合領内では?」
「うーん、北は大人しくしてるだろう、東が動くなら事前に人を追加しても、いいかな」

「そうですねカルディアさんの所からロンドギアもロベルタも行けますし」
「そうだな、よかろう、兵を少し足すか、そこで」
「人選だな?」
「陛下のお考えは?」
「オレ的にはハーベストを将に、オレの直軍で行ってもらう」
「ええ??」

云われた当のハーベストが一番驚いた

「いやしかし、陛下の直軍ですよね?」
「ここにはオレらしか居ないから言わせて貰うが、オレら連合は「守る」が身上だ、軍官僚連中には悪いが援軍軍の主将にシルバは少し不安もある」
「ふむ‥、押せる戦場ではイケルと思うが‥」
「もう一つは連合の性質上、他所の軍との合同戦になる、ここでバランスを取る意味、ハーベストか、あるいは彼女を補佐に充てる援軍を構築したい」

フォレスの意向だがテラもエミリアも反対した

「僕は反対ですね、シルバ殿は先の選抜で8割方の軍官僚に選ばれています。そしてハーベスト殿は陛下とメリル参謀長だけにです、にも関わらず立場上、陛下の直軍に充てられています」
「私も同感だ、シルバも面白く無いし、官僚もだろう、ここでハーベストを送ると信頼されて無いと思うかも知れんし、立場上ハーベストが上に成ってしまうし、指揮権も自動的に、シルバからハーベストに移ってしまう」
「そうか‥心理的な面はあるなぁ‥」
「へ、陛下、私は行かないほうが~‥」
「そうだな、身内で要らぬ火種を起こす事も無かろう、か、では予備兵だけ追加で送ってシルバの好きにさせるか」
「それでいいと思います」

そう決定されて、とりあえずの予備兵二千を追加してカハルの駐留基地に送られる、が、この配慮選択が後々響いてくる事になった

そこから十日後

中央、ペンタグラムに派遣されていたヴァイオレットから連絡が来る、川の氾濫とペンタグラム城下のがけ崩れはそれ程大事では無く、中央の人間も一部、8人ほど死傷者が出た程度で

河川の氾濫も数十人の被害は出たが各国の派兵と復興にかなりの人数が共同で出され、被害から五日後には改善に向かっているとの事だった、問題なのは東で、セレニティランド地域の強国

「ルーチベルーサ」から南街道への進軍

南北街道の途中で支城、陣の建築が行われているという連絡が、ティアから届いた

「ウチの森の南西で木材を調達して街道に基地を作っている、森にも侵入してきているのでそっち側に住民を退避させたいのだが」という事だった

「敵は多いのか?」
「3万は居るなぁ‥、おそらくロベルタ方面が狙いかと」
「そっちの人数は?」
「222人」
「南に逃れられるか?」
「夜なら大丈夫だろう」
「分った、こっちから輸送軍を出す距離の関係から時間が掛かるだろうから二日後の夜にそっちは出てくれ」
「了解した」

連絡を切って即座にカハルとロベルタにも通知
アノミアも呼んで事態を伝えた

当日にはカハル駐留の軍から輸送馬車軍30と、護衛のおっさん指揮の高速騎兵500も出陣する

同時アノミアもロンドギアのヘッジホッグ支店に飛んで
前線との密な連絡体制を取った

無論混乱したのはロベルタの軍会議である

「相手はベルーサだと??」
「軽く共和国の二倍は兵があるが‥」
「直ぐに外交の用意が必要だ!」
「軍事行動をウチに起こすとは限らん、まずは情報収集を‥」

と、慌てた会議となった。一応ロッゼも出ているのだが、事軍事面に関しては意見出来る知識も無い、軍指揮権限もあるクロスと女王の補佐でもあるインファルがとりあえず納める

「まだ直接的にどうこうと言うのは確定ではない、落ち着かれよ」
「斥候と同時、外交を推奨します、何れにしろ軍事基地を南北街道に建てている事への説明を求めましょう」

そのままロッゼも承認して北への外交の探りが始まった
更に三日後には早馬で外交折衝が北に走り、連絡のあったベルーサの建設途中の基地の陣に入った

「これはどういう事ですか?」とロベルタの外交官も問いただしたが
「南北街道は長い割りに間に町も集落も無い、移動の際何かと不自由だろうと思ってな」

と相手代表者に返された

「明らかに軍の滞在施設を作っておいて、まさか軍事行動では無い等と仰いますか?ここは中立地に等しくあります」
「だからこそ、どちらの所持でも無い、こちらが滞在施設を作っても問題ないハズだが?」
「中立地は、新たに街や軍事施設を作るには間の国での協議や裁定が必要です、ペンタグラムの国号、地域名の授与などあります、明らかに世界法に反します」
「一時施設だ、永続的なモノではない、集落以下のモノは裁定は必要ない、法的にキャンプを張っているのと変わらん」
「軍隊と成れば違います」
「では、ペンタグラムに裁定を頼もう、そもそも「間」というからには我々が協議すべきは、ロベルタでは無く、ロベルタ北の領主国である」
「ですが、我々は協和形態を組んでいますが?」
「だとすれば、ロベルタが協議すべきは、我々で無く、北の領主国、トロントだまずそちらで話し合うがいい」

そこまで云って相手は会談を切って陣幕から退出した
そこで終りだと云う事だ。これらの会談の内容も鳥を使って直ぐにロベルタに通知される、これを聞いたロベルタの官僚らも不快だった

「ふざけた事を‥」
「軍施設を作って置いて、この言い草は無かろう‥」

と口々に皆呟いた
軍官や主軍大将も当然怒った

「明らかに南進する意図です、対応準備を!」
「直ぐに防衛の準備を!」

と主張する、ロッゼやシンシアらも困っていたので門外漢ではあるが、インファルが分析と助言をして皆を落ち着かせる意図で前に出て発言した

「向こうの時間稼ぎと、共和の内部分裂を図っての事、それから脅迫の意図です、まずは落ち着いてください、我々が混乱してどうします?」
「う、うむ」
「申し訳ない」

混乱するのも仕方無いと云えば仕方無い、何しろ、相手は現状だけでも軍勢3万、共和国側の兵力と既に互角であり外交の類も結論有りきに等しい対応だった

「では、とりあえず、軍の用意は何れにしろ必要ですね、クロス、ベッケル、お願いします」
「はっ!」
「それから‥」とロッゼがチラとインファルに目配せした

「何れにしろ、ペンタグラムへの裁定と連絡、おそらく無意味でしょうが」
「無意味?」
「もうペンタグラムの云う事は聞かないでしょう、中央もまだ災害からの混乱はあります、何時来るかも分ったもんじゃないわね」
「なるほど‥」
「けど、コレ自体、外交官と通知を送るだけで済むので無駄でもやっておいていいでしょう。牽制にはなりますし、こっちの手間が少ない、それより、コチラが優先すべきは共和との連携です、即、共和との会談を開いた方が宜しいでしょう」
「わかりました」
「敵の意図は、この話し合いでの国内混乱と分裂を意図しています、同時に、滞在施設の建設と、本国からの追加兵を送って軍事条件を整える事にあります、このままでは、兵力は互角ですし、出来ればこちらを分断したい」
「はい」
「あの、では向こうの整いが出来る前にこちらから仕掛けますか?」
「本来ならそれがいいんですが‥」
「こっちの連携が完璧ならそうでしょうが、味方がバラバラでは流石に無理です、それからロベルタ単体では兵力が少なすぎます」
「ですねぇ‥」
「今は兎に角、共和と一本になっておく事です、攻めるにしても守るにしてもそれが優先です」
「わかりました、直ぐにペンタグラムへの使者と、共和国への呼びかけを、会議も開きます」
「ははっ!」
「フォレスにはこっちから連絡しときます、南から兵を持って来れますし、人材もです、早ければ早い程良い、兎に角可能な限り最短行動を」
「了解しました」

全員言ってそれぞれの行動を行った。この会談の夜には外世界を大回りしてグランセルナの輸送軍が森手前に到着、ティアら、住民を回収して同じルートで撤退を始めていた

同日同時にロベルタ側で各国代表者を招いての会議となったが、意見が既に真っ二つ割れた

「向こうの兵力は全体で6万を超える!守勢では勝ち目は無い直ぐに電撃作戦を取るべきだ!」と
「ここは守るに固い地形だ、守勢に徹して敵を撤退させればいい」に

どちらも間違いではない、相手の建設と軍備、兵の収集が達成されれば軽く、4万にはなる。そうなると兵力が逆転する、ゆえに電撃作戦も間違いではない

そして守勢に徹して追い返すのも間違いではない、この南北街道は、縦に距離が長い、軍でも軽く一週間は北と南の国の移動が掛かる

つまり一度防ぎ止めるか、膠着させれば敵は戦闘維持出来なくなる可能性がある、兵糧も余程用意しないと数と距離の上で長期戦は無理だ

一番問題なのは戦略と地形条件である、共和国北の領主国、トロントは本来の「周りを山岳に囲まれた地」の外側にあり、真っ先にそこから攻められる、ゆえに防御線と言ってもソレより前で敷かなければならないのである

故に共和の北側国ではコチラから攻める主張をし、そうでない側は守勢を主張する、一本化が既に図れない事態がある

結局ロッセが北側に配慮して自国から兵を出して街道北、つまり壁の山の前での防衛戦を行う事を主張して、一応の同意を得て早めの防衛戦に決定される

そこで戦いながらの防衛で街道十字路西にあるトロントと後ろの国に、攻めさせないという選択である

ここで引き込み防衛戦を主張した場合、北国を捨てる事と捉えられるし、そもそもトロントは単身兵力が一万近くある。連携や配慮を欠けば、参加しない可能性、諸手を挙げて中立化すらあるからだ

優位に進めるだけなら、先のグランセルナ防衛戦のように、ロベルタまで相手を引っ張って時間を使わせて膠着化させ、罠や伏兵を掛ける方が勝率は上がる、敵から把握し難い高地、急角度な山、森、川、谷などがロベルタ方面に進む程多くなるからだが、グランセルナと違って防いでも引き込んでも途中で罠に掛けるも伏兵も多分難しい、大作戦を立案する知も、実行する将も、連動する軍も、乏しく計算が立たない。故にシンプルな全体方針しか出せないともいう

会議が終って既に深夜だったが、即座にインファルも私室に戻りフォレスらに連絡を取った

「状況は分った、が‥これはまずいな」
「だねぇ‥前に出て防衛でその後後退釣り戦は防御力のある軍隊ならいけるけど‥」
「ああ、達成する前に削り倒される可能性もある、そっちの軍隊はどうなんだ?」
「うーん、ロベルタは強いだろうけど、他は私兵とか自治軍に近いし、見た感じ固くは無いね錬度も並みより下かも」
「‥数程の働きはしない、か」
「合同訓練してる訳でもないしねぇ、正直きっついわ」
「オレもミスったな‥カハルの派兵軍はそのままトリスに任せるか、無理矢理でもハーベストにさせるべきだった‥」
「今誰がいるの?」
「登用して上に上げたばかりの将だ、多分守勢ではキツイ」
「まあ‥状況を嘆いても仕方無いわ、カルディアとロベルトも居るっしょ」
「が、カルディアは頻繁には動かせん、現地の統治は政治力も居る」
「しゃーないわねぇ、兎に角援軍ちょうだい、数負けもそうだけど、このままだと戦術面で力負けするわ」
「わかった」

一夜明けて、フォレスは事態を告知
簡単な会議の後、其々指示を出した

カハルへの追加派兵に直下軍を動かし、出立、首都の守りを、騎士団とエミリアに任せて予備兵を加えた3千で出立

ハーベストを主将に、テラ、マギも加えた。同時にカハル滞在軍からシルバの軍も全軍5千北に出る

この現状に至っては配慮等と言っておれず、直属軍を構わず出した

カルディアはハーベストの入れ替わり駐留軍待ちで状況を見ながら動く事を進言して了承を取った

そこから三日後にはシルバがロベルタに到着五日後にはハーベストの軍がカハルへ到着から補給

ここで本国での状況の変化を待っていたフォレスの元に次々急報が届くのである、まず、ロンドギア南街で情報中継をしていたアノミアからだ

「おい、トロントが勝手に動いてるぞ?」
「どういう事だ?」

現地、に独自斥候を放っていたアノミアの召喚が。トロントの軍が単身動いているのを確認。そのまま北へ出撃したのを先に掴んだ

「電撃作戦を、と主張してたらしいから、先にやってしまおうというのか‥」
「が、単身一万ある、成功する可能性もある」
「正規の軍隊ならそうだろうが‥そもそもまともな将が居るのか?」
「シラン、領主様自らでとるが?」
「‥」
「で?どうする?」
「ロベルタにも告知してくれ」
「了解した」

勿論通知されたロベルタの官僚一同も「は!??」としか云えなかった

ロッゼの配慮も事前作戦も意味を成さなくなったのだ、しかもペンタグラムの外交官がベルーサ本国と交渉中である、ロッゼも思わず「どうしましょう‥」と出てしまう、ここでインファルは見切った

「もう、出ているなら呼び戻すのも間に合うのか‥そもそも聞くとも思えません‥」
「で、では??」
「申し訳ありませんが、トロントは不確定要素でしかないので」
「え?!」
「一応、停止命令を出しますが多分無駄なので、このままだとペンタグラムと交渉中の騙し討ちに成ります。相手の中間支城の連中にも告知してトロントが勝手に動いたという、実績作りと周知で、こっちまで不興を買いますので、向こうへの寝返りにしろ、電撃作戦の奇襲にしろ先にバラせば動けなくなります」
「‥仕方無い、ですね‥」
「直ぐに支城とトロントへ伝令を」
「はい、直ぐに使者を出して、トロントを何が何でも止めてください」
「ははっ」

と兵らも走った

一日後にトロントの軍には追いついて交渉を図ったが
ほぼ門前払いに等しかった

「我らは奇襲戦で唯一の勝機を掛ける!」だけだった
「直線の街道のどこで奇襲を掛けるのか!ペンタグラムがベルーサ本国と交渉中ですぞ!?騙し討ちにする気ですか!?」
「それでも勝てばいい!一度撤退させれば、次までの時間が稼げる!、邪魔をするなら帰れ!」

それ以上の交渉は出来ずロベルタの外交官もそのまま戻るしかなかった、もう一方の伝令もベルーサ側の支城に更に1日後には到達

外交交渉では無く、インファルの用意した手紙を渡しただけだった、文面を読んだ敵司令官も頷いた

「そちらに騙し討ちの意図が無いのは分った、トロントが勝手に動いているのも理解した」

とだけ返して戻った、伝令はそのまま街道を南に戻り、正面から来るトロント軍にも合流、さっさと同じく、手紙だけ渡した

「トロントが北に動いた情報はベルーサにも告知した、奇襲は無駄、戻られよ」だった。勿論トロント領主は激怒したが「戻る」という選択はしなかった

「構わん、向こうの準備が整っていない事は同じだ強撃して、手痛い一撃を加えてやる!」

構わず前進したのである、勿論、相手にも情報が行っている、一日後にはベルーサの支城での開戦と成った、アノミアから連絡を受けたインファルもフォレスも唖然だった

「なんで‥ばれてるのに進むのよ‥」
「信じられんアホだな」

としか言いようが無い、正直、行動をばらされて尚進むとは思ってなかった、諦めて撤退すれば良し、兵力が失われなければ、再戦の機会はある

トロント領主と争っても、インファルの進言として自分が説得すればいい、と思ったがそういうレベルですらなかったのである

無論「準備が整っていない内」にでも、事前告知されたのでベルーサ側も迎撃体勢のまま、街道で正統決戦となった、数の上でも3対1、正規軍でも無ければ、有力な将すら居ない

僅か一時間でトロントは敗戦して撤退、領主も被弾して街に戻る前に亡くなったのである、幸いトロントは軍は半数は残ったが、兵も領民も混乱の極みと成った

トロント領主の暴走に近く、しかもそのまま敗戦して亡くなった、後継者も1から選ばなければ成らない

それ以上に、共和の事前決定策をぶち壊しにした上、騙し討ちには辛うじて成らなかったが、独断での行動と失敗と被害と汚名も全て着る事になった

そして裁定に訪れていたペンタグラムにしろ最悪の事態は回避されたが、交渉所ではなくこれ以上は留まれず本国へ引く事になった、結局、全てベルーサ側を利する結果になった
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クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
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妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
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いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

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シマセイ
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大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

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