41 / 89
41魔女の円卓
しおりを挟む
がさりと茂みが揺れる音に、わたしは息をのんだ。
ここまで近づかれて、気づかなかった。それはつまり、わたしよりもよほど隠密行動に秀でた相手だということ。
生粋の猟師。あるいは、魔法で気配を隠していた?
「いらっしゃい……新入りね」
現れたのは、真っ白な仮面で顔の上半分を隠した女性だった。
身に着けているのは、のっぺりとした、顔に張り付くような仮面。
鼻の上までを覆っているそれに開けられた目穴からは、髪と同じ黒色の、まるで黒真珠を思わせる瞳が覗いていた。
さらされた口元には真っ赤なルージュが引かれ、鼻梁やあごのラインは彼女の顔立ちの美しさを強調する。
胸が無ければ好青年にも思えるのはきっと、女性にしては高身長で、かつ筋肉質だからだろう。
「さ、行きましょうか。私たち魔女の円卓へ」
手を出して、と言われるままに彼女へと手を伸ばす。
真っ白な、シミはもちろん日焼けしている様子もない白い手。
どこかひんやりとしたその手をつかめば、一瞬にして視界が切り替わる。
「……え?」
「さ、着いたわよ。ここが魔女の円卓の会場よ」
瞬きを繰り返す。
夢でも見ているのかと思って頬をつねる。
「……痛い」
「そりゃあそうよ。これは現実なのよ。たとえ、夢のような世界であったとしても、ね? もちろん幻惑じゃないわよ? まあ、魔法を使って同じようなことをできなくもないけれど」
くすくすとおかしそうに笑う彼女の声に顔が熱くなる。
ああもう、恥ずかしい。
生温かい視線から逃げるように周囲を見回す。
曲がりくねった巨木がいくつも立ち並ぶ森のどこか。
けれどそこに闇はなく、無数のカボチャランプと、積みあがったお菓子と、木々の枝にかけられた緑色のガラスで覆われたランプが並び、怪しく世界を照らし出す。
切り株の形をしたテーブルとイスには、黒目黒髪の彼女と同じように仮面を身に着けた人たちの姿があった。
その中には、おそらくはハンナらしい姿もあった。
……いや、よく見るとハンナとは少し違う。仮面で顔を隠した老齢の魔法使いだから似ているように感じただけ、だと思う。
あいにくと、一度会っただけのハンナを仮面有りで見分けることはできそうになかった。
まあ、わたしに招待状を渡してくれたのだから、きっとこの中のどこかにいるはず。
顔見知りが一人でもいるとわかれば、恐怖よりも好奇心が勝り、そわそわと落ち着かない気持ちになった。
「ここでは現実の身分も立場も顔も、すべて隠してただ一人の魔女として交流できるのよ。だから、あなたにも仮面を用意するわね」
「あ、はい」
圧倒されるわたしは、ただうなずくしかできなかった。
よろしい、とばかりにうなずいた彼女は、歌うように精霊への祈りを紡ぐ。
「精霊さん、どうか私の頼みを聞いて。この子に見合った、美しい仮面を、顔を隠し、神秘性をもたらす仮面を、作り上げてくださいな」
歌うように唱える彼女が甘味を取り出す。
きれいなバラの形をした飴細工。
青いバラ。
それに歓喜するように、精霊たちが動き出した――のだと思う。
あっという間に、私たちの目の前、虚空で仮面の細工が始まる。
地面から伸びたひょろりとした植物。
つる草のように伸びたように見えるそれは、下の植物を栄養にして成長する、無数の植物の連なり。
絡み、形を成していく緑。
伸びた植物はその頂につぼみを生み、それは瞬く間に開花して、小さな花弁を揺らす。
淡い、紫の花がいくつも揺れる。
「スミレね。家屋や石畳の隙間に根を張る、小さくも力強い花」
その花を巻き込むように菫の草葉がうごめき、絡み合い、そうして黒髪の女性とよく似た、目元を隠す植物の仮面が出来上がる。
ふっと飴のバラが消えたのと同時に、スミレの仮面が彼女の手の中に納まる。
わたしの顔と同じ高さに仮面を持ち上げた彼女は、わたしの目のあたりと視線を行き来させ、納得したようにうなずく。
「あなたの目と同じ色ね」
「そう、ですね。……精霊は、この目を見てスミレで仮面を作ったということでしょうか?」
だとすれば精霊は色を把握しているということ。そこでどうしてスミレを選択したのかという疑問は生じるけれど、わからなくはない。
もっとも、彼女はすぐに首を振る。
そのどこか怪しげな白の仮面と、その奥に揺れる黒々とした瞳をみて、目の色の仮面が一致することは無いという例に気づいた。
「どうかしら。さすがの精霊も、目の色だけでスミレを連想することはないんじゃないかしら。誰かに、スミレ色の目だ、とか、スミレに関連した呼び方をされたことはないの?」
「……ああ」
いる。
わたしのことを、スミレの乙女なんて呼ぶ男の人が。
わたしなんてどうでもいい存在としか思っていないはずなのに。
スミレの乙女と呼ぶその声には、深い思いと熱がこもっているのだ。
思い出しただけで嫌な気持ちが胸の中で膨らむ。
陰鬱とした気持ちを吹き飛ばすように首を振り、差し出された仮面を受け取り、身に着ける。
しゅるる、と目元で仮面が動いて、スミレの茎で編まれたひもが仮面を頭に固定する。
顔の上半分を隠す、スミレの仮面。女性が手鏡で見せてくれたわたしの姿は、なるほど、この顔と王子妃としてのわたしを連想させるのは困難なほどに別人に見えた。
顔の上部だけを隠して印象が変わるのかと思っていたけれど、自分でもびっくりするくらいに違う。
瞳と同じ色の花弁であるせいか、あまり他人に見たことが無い珍しい薄紫の瞳が花に埋没し、印象が薄れているのだ。
何より、植物でできているからか仮面は軽く、そしてつけていても少し視界が狭くなるだけで、違和感はほとんどない。
おそらく、わたしが仮面を作ったところでこうはならなかった。
流石、おそらくは何度も仮面を作っているだけはある。
「ありがとうございます」
「精霊にとっても楽しい魔法になったみたいね」
楽しい……とはいえ、この女性もおそらく精霊は見えていない。
けれどこう、直感が働いたというか、何となく女性が言っている「精霊が楽しんでいる」というのが少しわかった気がした。
わたしもどことなく楽し気な空気を肌で感じることができた。
「……ああ、自己紹介がまだだったかしら」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめて、彼女はこほんと咳払いをする。
「初めまして。私はフォトス。名前の通り、この魔女の円卓の運び屋をしているわ」
「ええと、わたしは……スミレ、です」
「そうね。その仮面も相まって、あなたにぴったりの名前だと思うわ」
おそらくは本名を口にしないで正解だった。
楽しそうに笑うフォトスを見ていると、わたしのほうも笑顔になる。
そうして気持ちが落ち着いたからだろう。
いろいろな驚愕で流れていた先ほどの一番の驚きの現象が思い浮かぶ。
「あの、そういえばさっきの魔法って……」
「ああ、ごめんなさいね。あなたで最後だとおもっていたのだけれど、まだお客さんが来たみたい」
一瞬にして移動する不思議な魔法について聞こうと思ったのだけれど、フォトスは首をひねりながら告げる。
彼女の視線を負った先、テーブルを囲む魔女たちは、すでに大いに盛り上がっている。
なんだか身内ばかりの入りがたい空気があるように思えるのは、わたしが見ず知らずの人と交流することが少ないからだろうか。
「ここでは基本的に何をするかは自由よ。どこかのテーブルに加わって魔法談義をしてもいいし、会場に飾られた甘味を使って魔法の練習をしてもいい。あるいは甘味の作り手として時間を過ごすのもいいわ。みんな、新しい人に飢えているから、すぐに歓迎されるでしょうね」
「そう、なんですか」
「ええ、今もぎらぎらと目を輝かせているわ」
言われていくつかのテーブルを見れば、魔女たちが会話を止めてわたしたちの方を見ていた。
わたしの視線に気づいてひらひらと手を振る人達は、当然のころながら男性もいれば女性もいる。その年齢も、まだ十歳にも届かないかもしれない子から、髪が真っ白になって腰が曲がったお年寄りまで幅広い。
「改めて、ようこそ魔女の円卓へ。歓迎するわ、スミレ」
ここは、わたしを受け入れてくれる。
わたしが誰であるかも、立場も、何もかもを気にすることなく。
心からわたしを歓迎してくれているとわかるフォトスの言葉に、こみ上げるものを感じた。
胸の温かさに、自然と笑みがこぼれる。
そんな感動をよそに、フォトスはあっさりと魔法でわたしの前から姿をくらませる。
わたしが彼女の魔法について考察するのに夢中になったのは言うまでもない。
おかげで、あまり緊張しすぎることなく魔女たちの話の輪に入ることができたのだけれど。
ここまで近づかれて、気づかなかった。それはつまり、わたしよりもよほど隠密行動に秀でた相手だということ。
生粋の猟師。あるいは、魔法で気配を隠していた?
「いらっしゃい……新入りね」
現れたのは、真っ白な仮面で顔の上半分を隠した女性だった。
身に着けているのは、のっぺりとした、顔に張り付くような仮面。
鼻の上までを覆っているそれに開けられた目穴からは、髪と同じ黒色の、まるで黒真珠を思わせる瞳が覗いていた。
さらされた口元には真っ赤なルージュが引かれ、鼻梁やあごのラインは彼女の顔立ちの美しさを強調する。
胸が無ければ好青年にも思えるのはきっと、女性にしては高身長で、かつ筋肉質だからだろう。
「さ、行きましょうか。私たち魔女の円卓へ」
手を出して、と言われるままに彼女へと手を伸ばす。
真っ白な、シミはもちろん日焼けしている様子もない白い手。
どこかひんやりとしたその手をつかめば、一瞬にして視界が切り替わる。
「……え?」
「さ、着いたわよ。ここが魔女の円卓の会場よ」
瞬きを繰り返す。
夢でも見ているのかと思って頬をつねる。
「……痛い」
「そりゃあそうよ。これは現実なのよ。たとえ、夢のような世界であったとしても、ね? もちろん幻惑じゃないわよ? まあ、魔法を使って同じようなことをできなくもないけれど」
くすくすとおかしそうに笑う彼女の声に顔が熱くなる。
ああもう、恥ずかしい。
生温かい視線から逃げるように周囲を見回す。
曲がりくねった巨木がいくつも立ち並ぶ森のどこか。
けれどそこに闇はなく、無数のカボチャランプと、積みあがったお菓子と、木々の枝にかけられた緑色のガラスで覆われたランプが並び、怪しく世界を照らし出す。
切り株の形をしたテーブルとイスには、黒目黒髪の彼女と同じように仮面を身に着けた人たちの姿があった。
その中には、おそらくはハンナらしい姿もあった。
……いや、よく見るとハンナとは少し違う。仮面で顔を隠した老齢の魔法使いだから似ているように感じただけ、だと思う。
あいにくと、一度会っただけのハンナを仮面有りで見分けることはできそうになかった。
まあ、わたしに招待状を渡してくれたのだから、きっとこの中のどこかにいるはず。
顔見知りが一人でもいるとわかれば、恐怖よりも好奇心が勝り、そわそわと落ち着かない気持ちになった。
「ここでは現実の身分も立場も顔も、すべて隠してただ一人の魔女として交流できるのよ。だから、あなたにも仮面を用意するわね」
「あ、はい」
圧倒されるわたしは、ただうなずくしかできなかった。
よろしい、とばかりにうなずいた彼女は、歌うように精霊への祈りを紡ぐ。
「精霊さん、どうか私の頼みを聞いて。この子に見合った、美しい仮面を、顔を隠し、神秘性をもたらす仮面を、作り上げてくださいな」
歌うように唱える彼女が甘味を取り出す。
きれいなバラの形をした飴細工。
青いバラ。
それに歓喜するように、精霊たちが動き出した――のだと思う。
あっという間に、私たちの目の前、虚空で仮面の細工が始まる。
地面から伸びたひょろりとした植物。
つる草のように伸びたように見えるそれは、下の植物を栄養にして成長する、無数の植物の連なり。
絡み、形を成していく緑。
伸びた植物はその頂につぼみを生み、それは瞬く間に開花して、小さな花弁を揺らす。
淡い、紫の花がいくつも揺れる。
「スミレね。家屋や石畳の隙間に根を張る、小さくも力強い花」
その花を巻き込むように菫の草葉がうごめき、絡み合い、そうして黒髪の女性とよく似た、目元を隠す植物の仮面が出来上がる。
ふっと飴のバラが消えたのと同時に、スミレの仮面が彼女の手の中に納まる。
わたしの顔と同じ高さに仮面を持ち上げた彼女は、わたしの目のあたりと視線を行き来させ、納得したようにうなずく。
「あなたの目と同じ色ね」
「そう、ですね。……精霊は、この目を見てスミレで仮面を作ったということでしょうか?」
だとすれば精霊は色を把握しているということ。そこでどうしてスミレを選択したのかという疑問は生じるけれど、わからなくはない。
もっとも、彼女はすぐに首を振る。
そのどこか怪しげな白の仮面と、その奥に揺れる黒々とした瞳をみて、目の色の仮面が一致することは無いという例に気づいた。
「どうかしら。さすがの精霊も、目の色だけでスミレを連想することはないんじゃないかしら。誰かに、スミレ色の目だ、とか、スミレに関連した呼び方をされたことはないの?」
「……ああ」
いる。
わたしのことを、スミレの乙女なんて呼ぶ男の人が。
わたしなんてどうでもいい存在としか思っていないはずなのに。
スミレの乙女と呼ぶその声には、深い思いと熱がこもっているのだ。
思い出しただけで嫌な気持ちが胸の中で膨らむ。
陰鬱とした気持ちを吹き飛ばすように首を振り、差し出された仮面を受け取り、身に着ける。
しゅるる、と目元で仮面が動いて、スミレの茎で編まれたひもが仮面を頭に固定する。
顔の上半分を隠す、スミレの仮面。女性が手鏡で見せてくれたわたしの姿は、なるほど、この顔と王子妃としてのわたしを連想させるのは困難なほどに別人に見えた。
顔の上部だけを隠して印象が変わるのかと思っていたけれど、自分でもびっくりするくらいに違う。
瞳と同じ色の花弁であるせいか、あまり他人に見たことが無い珍しい薄紫の瞳が花に埋没し、印象が薄れているのだ。
何より、植物でできているからか仮面は軽く、そしてつけていても少し視界が狭くなるだけで、違和感はほとんどない。
おそらく、わたしが仮面を作ったところでこうはならなかった。
流石、おそらくは何度も仮面を作っているだけはある。
「ありがとうございます」
「精霊にとっても楽しい魔法になったみたいね」
楽しい……とはいえ、この女性もおそらく精霊は見えていない。
けれどこう、直感が働いたというか、何となく女性が言っている「精霊が楽しんでいる」というのが少しわかった気がした。
わたしもどことなく楽し気な空気を肌で感じることができた。
「……ああ、自己紹介がまだだったかしら」
少し恥ずかしそうに頬を赤らめて、彼女はこほんと咳払いをする。
「初めまして。私はフォトス。名前の通り、この魔女の円卓の運び屋をしているわ」
「ええと、わたしは……スミレ、です」
「そうね。その仮面も相まって、あなたにぴったりの名前だと思うわ」
おそらくは本名を口にしないで正解だった。
楽しそうに笑うフォトスを見ていると、わたしのほうも笑顔になる。
そうして気持ちが落ち着いたからだろう。
いろいろな驚愕で流れていた先ほどの一番の驚きの現象が思い浮かぶ。
「あの、そういえばさっきの魔法って……」
「ああ、ごめんなさいね。あなたで最後だとおもっていたのだけれど、まだお客さんが来たみたい」
一瞬にして移動する不思議な魔法について聞こうと思ったのだけれど、フォトスは首をひねりながら告げる。
彼女の視線を負った先、テーブルを囲む魔女たちは、すでに大いに盛り上がっている。
なんだか身内ばかりの入りがたい空気があるように思えるのは、わたしが見ず知らずの人と交流することが少ないからだろうか。
「ここでは基本的に何をするかは自由よ。どこかのテーブルに加わって魔法談義をしてもいいし、会場に飾られた甘味を使って魔法の練習をしてもいい。あるいは甘味の作り手として時間を過ごすのもいいわ。みんな、新しい人に飢えているから、すぐに歓迎されるでしょうね」
「そう、なんですか」
「ええ、今もぎらぎらと目を輝かせているわ」
言われていくつかのテーブルを見れば、魔女たちが会話を止めてわたしたちの方を見ていた。
わたしの視線に気づいてひらひらと手を振る人達は、当然のころながら男性もいれば女性もいる。その年齢も、まだ十歳にも届かないかもしれない子から、髪が真っ白になって腰が曲がったお年寄りまで幅広い。
「改めて、ようこそ魔女の円卓へ。歓迎するわ、スミレ」
ここは、わたしを受け入れてくれる。
わたしが誰であるかも、立場も、何もかもを気にすることなく。
心からわたしを歓迎してくれているとわかるフォトスの言葉に、こみ上げるものを感じた。
胸の温かさに、自然と笑みがこぼれる。
そんな感動をよそに、フォトスはあっさりと魔法でわたしの前から姿をくらませる。
わたしが彼女の魔法について考察するのに夢中になったのは言うまでもない。
おかげで、あまり緊張しすぎることなく魔女たちの話の輪に入ることができたのだけれど。
2
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる