人違いの婚約破棄って・・バカなのか?

相沢京

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1-4. 何でそうなった?

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「アリアっ、やめろ!」


 王子に止められたことで仕方なく姉上は殺気を静めた。

 生き絶え絶えのエリスの傍に駆け寄る王子に気付かれないようにオレは舌打ちした。

 そして、姉上がゲイル王子の婚約者だと間違われて不愉快だと表情で見て取れた。
 まあ、当然とえば当然だが、罪悪感が湧いて胸が痛くなった。

 そして小声で呟いている姉上の声が耳に入る。


「なぜ、私がゲイル様の婚約者と間違われてこんな恥をかかされなきゃいけないのよ!それになにこの女、ドレスの形だって古いし、肩を出しているなんて何て格好かしら。まるで娼婦みたいだわ。王子は本当にこの女と結婚するきなのかしら?それに、こんな騒ぎになっているのになぜ本物の婚約者は名乗り出ないの?だからといってここで誰かに聞くわけにもいかないし、そうだわアランなら何か知っているかもしれないわね。」

 顔を上げて不意に声をかけられる。


「アラン、あなた何か知っている?」

「えっ!」


 こちらに話が向くとは思っていなかったオレは動揺して体がビクッとなった。

 まさか、婚約者がオレだって気づかれた?


「アラン・・?」


 ど、どうしよう・・?

ここで婚約者がオレだって姉上にバレたら―――殺されるかもしれない!

イヤ実際そんなことはしないと思うけど、それに近いことはされるかも…

姉上をこんな目に合わすつもりはなかったけど、自分の身の安全のためにも隠し通さないと!


でも、どうやって誤魔化す?


「アラン?」



 オレが何も答えないことを不思議に思ったのか心配そうに顔を覗き込まれた。

距離が近くなったことで、オレの心臓の鼓動がドクドクと大きくなり気が遠くなりそうだった。

だが、ここでオレが倒れたら話がややこしくなるかもしれない。


しっかりしろオレ!!

今の敵は姉上だっ!

落ち着け!

姉上は気づいていない!

うん、大丈夫!


「さ、さあ~オレも、し…知らない、な」


ああーーっ!緊張して声が震えちまったあああーーーっ!!!

ああ、お願いだからそんなにじっと見ないで!


「ふ~ん……知らないのかあ?」


 怪しい笑みでオレを見つめる、いや睨んでいるといった方がいいか。

ああ、これってバレたっぽい!



「まあ、いいわ。それよりあの女のこと何か知っている?」


 追及を逃れたことのホッとしたと思ったら今度はエリス様のことを聞かれてまたドキッとした。

これは本当のことを言った方がいいなと判断する。


「エリス様は最近男爵の爵位を譲りうけたボンビ男爵の一人娘です。」

「譲りうけたっちことは、平民だったってことよね?」

「はい。ですから貴族の決まり事を知らないのかと…」

「…例えそうだとしても、王子に婚約破棄をさせるなんてあり得ないわ」


 そう、賓客を招いているこのパーティーで王子に婚約破棄をさせるなんてあってはならないことなのだ。

 しかも、人違いだときてる。

 ここで、オレが婚約者だと言えば火に油を注ぐようなもので益々言えなくて思わずため息を吐いたのだった。




ああ――誰か助けてえええ―――っ!!



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