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第2話. 鬼姫降臨!
しおりを挟む姉上の言葉に驚いたのはエリスだった。
「え……?」
しばらくポカンとしていたが、ハッと我に返ると顔を真赤にして喚き散らし始めた。
「はあ?帰って来たのが昨日ですって!」
「ええ、そうです…」
「そんなウソ誰が信じるものですかっ!」
「そ、そうだ。アリア見そこなったぞ!」
キャンキャンと喚く2人にオレはもうどうこうできる状況ではないと悟ってしっまった。
「ウソをつくならもっとまともなことを言えっ!留学していたなんて聞いてないぞ!」
「王子が知らないのは当然ですわ。このことを知っているのは家族と陛下だけですもの…」
家族だけでなく陛下もという言葉に反応いたゲイル王子は顔をしかめた。
「父上が…?」
「ええ、私に留学を勧めてくださったのは陛下ですから」
「フン!例え留学していたとしても誰かにやらせていたのだろう?この卑怯者めっ恥を知れっ!!」
「そうです、自分でしなくても突き落とすなんてできますものねっ!」
「そうだ。父上の名まで出すなんて正気のさたとは思えん!」
自分が有利だと思っているのか2人は姉上にどんどん言いがかりをつけていく。
「はあ……私が誰かにやらせたというなら証拠はありますの?」
「証拠など、エリスがこう言っているのだからそんなもの要らぬっ!」
「―――っ!」
この人たちはちゃんとした証拠もなしに姉上に罪をきせようとしているのか?
『冤罪』―――
その言葉が頭に浮かんだと同時に、最近このパターンをどこかで聞いたような気がした。
「………」
姉上のオーラ―に変化が起こった。
無言で亜空間倉庫からあるものを取り出す。
それは黒くて怪しい光を放つ扇だ。これはいつも姉上が戦闘準備に入るときに使う鉄扇だった。
「あ、姉上…」
「………」
その威力を知っている貴族たちがゲイル王子の周りから勢いよく離れてオレたちの背後に回る。
何が起ころうとしているのか知らない2人は慌てた。
「な、何よ!何でみんな離れるのよっ!」
「お前たちどういうつもりだ。王族の私ではなくその女につくというのか?」
オレには鉄扇から魔力があふれていくのがわかる。
「これ以上私を怒らせないでいただけません?」
「は、何を言っておる」
「どうやってその人達を仲間にしたのか知らないけど、みんな騙されないで!その女は私を殺そうとした罪人なのよっ!」
「黙れっ!」
我慢できなくなったオレは叫んでいた。
「姉は昨日戻ったばかりだって言っているだろう。疑うなら隣国に確かめてみろっ!」
大声を出したせいで息が上がる。だけど、そんなことどうでもいい。こうなったのはオレにも責任はある。
見過ごすわけにはいかなかった。
「貴様、庇いだてするなら同罪だぞっ!」
「ああ、いいさ。だけど無実だとわかったらどう責任を取るつもりなんですか??」
「はあ、無実だと。そんなことはあり得ぬ。」
「―――っ!あなたは王族だというのに無責任だ」
「うるさい!そこを退けっ!」
オレは情けないが王子に突き飛ばされて床に身体を打ち付けた。
「ガハッ!」
貧弱なオレにはそれは堪えた。だが、その王子の行動がこのあと大問題となる。
「アランっ!」
駆け寄ってくれた姉上の顔色は悪い。そしてそれが二人に最悪の事態を招く結果となる。
「フン!罪人を庇い建てするからだ」
ドヤ顔で言い放つが―――
次の瞬間ゲイル王子は床にひれ伏していた。
「ガハッ!―――グっ……な、何…っ?」
辺り一帯を覆うようにビリビリと空気が揺れる。その威力は凄まじい。
床に這いつくばっている様子は潰れたカエルのようだと誰もが思った。
ゲイル王子は自分の身に何が起こっているのか理解できていないようだ。
背中から感じるのは凄まじいほどの重力波で、立ち上がろうとしても指一本動かすことができない。
「私の弟に手を出すなんて、死にたいのかっ!」
鉄扇を片手で振りかざすのは頼もしい姉上の姿だった。
『鬼姫降臨』―――誰もがそう思っただろう…
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