人違いの婚約破棄って・・バカなのか?

相沢京

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5-7.甘々ムードは大切に

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 湯舟から抱き上げられたまま洗い場の床にレイルが腰を下ろす。オレはレイルが胡坐を組んだその上に座っている状態だ。

 何か、子供のころ父上の膝に乗ったことを思い出して懐かしくなった。

もちろん、今はそんな状況ではないが……


「頭は洗ったから、体を洗ってやる……」

「え、いつの間にそんなこと?」

「眠っている間にした……イヤ、だったか?」

「え、いや……うん、ありがとう。おかげでさっぱりしてる」


 サラサラになった髪に満足しているとレイルの泡だらけの手が脇から胸へと伸びる。


「お、おい……また」

「ん……こうしないとお前のキレイな肌に傷がつく」

「は?そんなの気にしないけど……」

「ダメだ!オレは気にする!」


 少し強い口調でそういわれたら何も言えなくなる。

 まあ、オレのためっていうし……

だけど、肌に触れるか触れないかで洗うそのもどかしさがわかるだろうか?

さっき湯舟でお預けを食らったオレにはこの時間が拷問に等しい。

敏感な乳首は特に念入りに触れないように洗われて股間がゆるゆると象徴し始める。


 触ってほしい―――

 
 淫乱ではないと思うけど、こんな触り方をされたら誰だって我慢できないと思う。


「レイル……」


 体をくねくねさせながら快感に耐えるオレの姿にレイルが息を呑むのが聞こえた。

息も荒くなっているし、彼の股間も立ち上がっている。


後から顎を掴まれて唇を重ねる。


「うむ、ん――んんん……」


 体を洗っていたはずのレイルの手がオレの股間に触れる。


舌が絡みあうのが気持ちがよくて再び夢中になった。
















「それでもういい加減に教えてくれてもいいだろう?」

「何がだ?」

「何がって、とぼけるつもりか?」


 レイルは右手を顎に触れて唸るとやっと思い出したようで声をあげた。


「ああ、あれか。いつからアランが好きだったかってやつだよね?」

「……そうだよ」


 何か忘れてたっていうより、この話題を避けてたって感じだな。

何かあるのか?

気になってじーっとレイルを見ていると、プクっと頬を膨らませた。


「初めて……だよ」

「は……?」

「だから初めて会ったときから好きだったんだよ」


 少しいじけながら話すレイルの顔が赤いのは気のせいではないようだ。


「それって……つまり」

「そうだよっ!一目惚れだったんだよっ!」

「―――っ!」


 ビックリして固まるオレにレイルは「恥ずかしいから見ないでくれ」と後を向く。


初めて会った時といったら、ゲイルがオレのズボンを下ろしたあの事件だよな?

恥ずかしさからオレが座りこんでいるのをレイルが心配してきてくれた。


「あの時って、オレ泣いてたと思うんだけど?」

「ああ、その泣き顔に惚れたんだ……」


 泣き顔に惚れたって……もしかしてS気があるのか?

セックスしてた時もじらすし、口調は上から目線だったし。

本人に自覚がないけど、その気はあるかもしれないな。


「そうか……お前、あれからずっとオレのことを」

「ああ、だからあきらめたくなかったんだ……」


 そう言われて嬉しくないわけがない。


「ありがとうな……」


 嬉しくなって満面の笑みをむけるとレイルの顔が赤くなる。


「その笑顔、他の奴にはするなよ」

「はあ?何で?」

「何でもだよっ!」

「意味がわからないけど、お前がそういうならわかった」


 ここでケンカするのはごめんだったのでオレはおとなしく頷いておいた。


「この話は終わりだ。食事にしよう……」

「そういえば、パーティから何も食べていなかった……」

「部屋に持ってこさせるからそのままでいてくれ」


 そう言って部屋を出ていくとすぐに戻ってきた。

体調も戻ったし食事をしたら屋敷に帰ろう。


「レイル、オレの服はどこだ?」

「ああ、クローゼットの中のを使ってくれ」


 バスローブのまま言われたクローゼットを開けると、見たこともない服がずらりと並んでいた。


「おい、オレの服はどこ?」

「え、ああ……それ全部だ」

「……は?ええっどういうこと?」


 戸惑うオレにレイルは嬉しそうに答える。


「ここは王太子妃の部屋だからアランの服があるのは当然だろう?」

「えっ!ええ―――っ!!」

「何を驚いているんだ?」

「王太子妃の部屋だとっ!それにこれ全部オレの服なのかっ?」

「アランはオレの婚約者だし王太子妃になるんだからこれくらいは当たり前だ」


 驚いて固まるオレにレイルは「まだ少ないか……」と呟いた声が聞こえて慌てる。


 クローゼットの中の服は少なく見積もっても数百着服あった。

一か月毎日何着も着替える貴族でもこれは数か月分ある。

いくらオレのためとはいえこれはやり過ぎだと思った。





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