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真相2
しおりを挟むシンと静まり返った広間で、これからなされる断罪に貴族たちは息を呑んだ。
本来なら祝いの席ですべきことではないが、王位継承権が絡んでいてはやむを得ないと――。
「ダグラスよ。貴様、エレンに何をした・・?」
いつもと違う低くてドスの利いた声にダグラスの体は恐怖で縮こまった。
「そ・・それは・・」
全身から冷や汗が流れ鼓動が大きくなり心拍数が上昇していく。
なぜ、バレた?
なぜ、エレンは生きている?
なぜ、オレに王位継承権が、ない・・んだ?
――――なぜっ?
色んなことが頭の中を巡り混乱する。
何をしても上手くいかず、周りから遠巻きにされ劣等感の塊の私に優しく接してくれたのは母上とフランだけだった。
国王になってバカにしている奴らを見返してやりたかった。
母上を喜ばせたかった。
フランと幸せになりたかった。
だた、それだけだった。
そのために邪魔者は排除してきた。
それの何が――――いけなかったんだろう?
絶望して肩の力が抜けていく。
「私は・・ただ、フランと結婚したかった。」
「ほう、それで?」
「王太子の婚約者であるエレンが邪魔だった。だから・・」
「うむ、貴様のさっきの言動から自身が王太子だと思い込んでいたようだな。」
「はい、でも・・・私は王太子ではなかった。」
「そうじゃ。そもそもカインが王太子だということは王族と貴族なら誰もが知っていること。それを貴様はなぜ知らぬのだ?」
「えっ?」
王族と貴族なら誰でも・・・?
驚くダグラスに国王は何かがおかしいと感じた。
「王太子には、カインが生まれた時から決まっておる」
「生まれた時からっ!!」
そ、そんなの・・聞いたことがない。
でも、少なくてもここにいる者は知っているということになる。
「は、母上も知って・・」
「勿論だ。あやつには余が直接伝えておる・・」
「―――そ、んな」
母上も知っていた。
ならどうして私には教えてくだされなかったのだ。
信じていたのに、裏切られたような気持ちになった。
「聞いてなかったのか?」
ショックで言葉が出なくて、ただ頷いた。
国王は側室であるダグラスの母親のクリスが、知らせなかったことに疑問を抱いた。
こんな重要なことを息子であるダグラスに伝えないのは明らかにおかしい。
頭に過るのは、調査中の案件だ。
『ダグラスは不実の子』―――と、いう・・・
あってはならないもの―――・・・。
「宰相、クリスを呼べっ!」
「はい、承知致しました。。」
騎士を連れて離宮に走る宰相を見送りながら、国王はクリスを迎えた時のことを思い出していた。
「陛下、お腹にお子ができました・・」
そう言ってきたクリスは嬉しそうに笑ったのを今でも覚えている。
国王は正直、たった一回でできたことに驚いていた。
王妃を迎え入れ数年。
あの時まだ二人の間には子は出来ておらず、側室であるクリスが第一王子の母となった。
そして、三年後に王妃にもやっと子ができて、国中が祝福の嵐となった。
待ちに待った王太子の誕生である。
我が国では正妃の子にしか王位継承権は与えられず、第一王子ではあるが側室の子であるダグラスにはその権利がなかった。
それを知ったクリスはおおいに悲しんだ。
なぜ、私は正妃でないのか?
なぜ、自分の子が王太子になれないのか?
悔しくて悔しくて、王妃を呪った。
そして、第二王子さえいなければ王太子になれるのではいか?
そんな恐ろしい考えに何時しか支配されていった。
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