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クリス2
しおりを挟むどこから入ってきたのか、ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべながら男はクリスを見つめていた。
あの場に居なかったリム男爵だ。
「貴様、なぜそこにいる?」
アルバ伯爵と同じように罪を犯していた彼が、牢屋ではなく外にいることを不審に思った。
「なぜ、ですか?」
何がおかしいのか笑い出す。
「クククク――っ・・アハハハハハっ―――!」
「何がおかしいのだっ!無礼であろうっ!」
牢屋の格子を叩いて威嚇するが、益々相手は嘲わらうだけだ。
クリスはそんな態度のリム男爵に対して顔を歪め怒りを表した。
リム男爵はそんなクリスを見て嬉しそうに眼を細めた。
「これはこれは失礼しましたクリス様。いえ、もうただの罪人するから様はいりませんね。フフフ・・」
「貴様・・」
「フフフ・・本当のことでしょう?はあ~・・これでやっと苦労が報われる。」
「・・どういう意味だ?」
「おや・・まだお分かりになりませんか?」
「何を・・だ?」
こんな状況だというのにリム男爵の妙な落ち着きぶりにイヤな予感がして額から汗が流れた。
さっきの陛下の言葉を思い出す。
『余の名前はエリックだ』
クリスが愛した陛下の名前はルーベルトだったはず。なのになぜ名前が違うのかそれがわからないでいた。
「あなたの婚約者はルーベルト様で結婚して国王陛下となりあなたは王妃殿下となるはずだった。なのに国王陛下となったのはエリック様で王妃殿下にはイアン様がなられた。ルーベルト様はどうされたんでしょうね?」
そうだ。もし本当に陛下がエリックだというならルーベルト様はどうしたのだ?
『クリス、そなたを愛している―――』
『クリス、私と結婚してくれるか』
ズキンーーー!
『ルーベルト様・・』
ズキン―――!!
頭が割れるように痛い!
だけど、何か大事なことを忘れていたような気がする。
それが今、記憶の奥深くから沸き上がってくるのを感じた。
『クリスっ危ないっ!!』
急に叫んで倒れてきたルーベルトを慌てて支えようと背中に回した手の感触に、恐る恐る確かめようと手を見た。
視界に入ったのは真赤な血だ。
それがポトポトと手の平から滴り落ち息を呑んだ。
「で、殿下・・?」
最初何が起きたのか分からなかった。
この赤いのは・・何だ?
なぜ、殿下が私に身体を預けている?
「ク、クリス・・・無事・・か?」
「殿下・・?」
「よ・・か・った・・・」
クリスの無事を確認して安心したのかルーベルトはそのまま目を閉じそして動かなくなった。
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