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クリス
しおりを挟む牢屋に入れられたクリスは自信に起こったことを信じられず自問自答を繰り返していた。
なぜ、こんなことになった。
何を間違えた?
なぜ、陛下の名前がルーベルトではばくエリックなのだ?
『クリス・・愛している』
『殿下・・私もです』
庭園のベンチで受けたプロポーズ。ピンク色の花びらが舞う中恥ずかしそうに微笑んでくれた陛下の顔を今でも鮮明に覚えている。
『クリス、殿下ではない。ルーベルトと呼んでくれ』
『はい、ルーベルト様』
あの頃は幸せだった。陛下の何もかもが私に向けられいた。
それが狂ったのはイアンが現れてからだ。
『ルーベルト様・・』
『・・その名を口にするな』
『な、なぜですか?』
『それを余に聞くのか?』
今までの寵愛がウソのような態度に私は悲しみにくれた。それでも婚約者という立場から王妃へと就くことで殿下の心は戻ってくると信じていた。
なのに・・・
「王太子妃にイアン様が選ばれました」
その知らせを聞いて足元からなにかが崩れていくのを感じた。
なぜ、なぜですか?殿下の婚約者は私ではなかったのですか?
その日を境に殿下は私と会うことがなくなった。
完全に見捨てられたのだ。
国中が王太子の婚約にお祭り騒ぎになった。
ただ一人、私だけが悲しみに暮れ心が壊れていくのを止められなかった。
正妃候補から側室へと落とされた悔しさは憎しみへと変わっていった。
そんな私に声をかけてきたのがアルバ伯爵だった。優しさに飢えていた私は彼の誘惑に負けてこの身をゆだねた。
そして出来た子が、ダグラスだった。
側室でありながら不実の子を孕んだが、アルバ伯爵の策略でダグラスは第一王子として誕生。
その地位を固めることに成功した。
だが―――
『ダグラスは王太子にななれぬ』
陛下のそのひと言に又しても絶望へと落とされた。
『王位には正妃の子しかなれない』
そんなバカな仕来りがあるあんて知らなかった。
『王太子はイアンの子と決まっている』
そう聞かされて、悔しくてたまらなかった。
『また、お前は邪魔をするのかっ』
イアンさえ消えてしまえば、私が正妃になれるのではという恐ろしい考えが頭の中をいっぱいにしていく。
だが、今はまだダメだ。ダグラスが成長して誰からも認められる王子にならなければ
そんな危険な考えを秘めたまま月日が流れていった。
そして、現在―――
クリスは後悔していた。
「なぜ、陛下はあんなことを?陛下の名前はルーベルト様ではないのか?」
ポロりとつぶやいた言葉に返事をする者がいた。
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