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婚約者エレン3
しおりを挟む「あ・・」
「え・・?」
男は魔法陣の発動を察知したので確認しに納屋に来たのだが、そこに見知った顔があって驚いていた。
「え・・エレン様?」
「バス・・」
彼の名はバス。太い眉にごわごわの長い白髪を後ろで束ね、顎には同様の長い髭も持つ腕利きの鍛冶屋だった。
バスはなぜここにエレンがいるのか戸惑ったが、魔法陣が発動したことでその疑問はあっさり解決した。
「えっと、もしかして学園の魔法陣を使ったんですか?」
「え、ああ・・・使ってというか、その・・」
まさか、不審者に嵌められたとは言えず、口ごもる。
「ダメですよ、あれは道具を運ぶために設置された特別の魔法陣なんですから・・」
「設置された・・・」
「ええ、オレが毎日学園まで行くのが難しいから何とかしてくれって学園長にお願いしたら、あれを設置してくれたんですよ。いや~おかげで仕事がはかどって助かってます」
嬉しそうに言うバスにエレンは苦笑する。
エレンを襲った奴らは、あれがどことつながっているのか知らなかったかあるいは勘違いした可能性があった。
「バス、この魔法陣を設置したのを知っている人間は学園長の他に誰がいる?」
「え、知っている奴ですか?」
「ああ、そうだ」
「ん~と、教師は全員知っていると思いますけど、その他となると・・」
バスはなぜそんなことを聞くのかと不思議そうに首を傾げたが、秘密にしているわけでもないので答えた。
エレンはバスの口から出た名前に驚き、城へと急いで戻ったら広間でダグラスの断罪が始まっていた。
そこには国王も王妃も側室のクリスも集まっていると聞き、ひと足遅かったかとため息を吐いた。
宰相に誘拐されたが無事に戻ったと陛下に報告するようお願いして自室に戻った。
そして、食事をしているところにカインが来たのである。
カインはエレンのこの話と広間でのことを照らし合わせて違和感いっぱいになった。
そもそも、ダグラスが自身の立ち位置を知らされてなかったのもおかしいし、父親がアルバ伯爵で名乗り出たのも変だ。不敬であり国家転覆罪で死刑になるのを分かっているはずなのに・・
そう、全てが穴だらけなのだ。
「これって、誰かが後にいるよな?」
「ええ、オレもそう思います。」
「でも、魔法陣を仕掛けたのはあの人なんだろ?関係あるのかな?」
「それなんですよね。あの人がオレたちにそんなマネをする必要はありませんよね。」
「う~ん・・・もしかして誰かに脅されている・・とか?」
「・・・その可能性はありますね。呼び出しておきながら不在でしたし・・」
「それにエレンを襲った奴らだけど、魔法陣のことを知ってたわりにはヌケているし・・」
「それなんですよね。もしかしたら仕掛けた魔法陣を間違えたのかも・・」
「・・・でも、襲われたのって倉庫の近くなんだろ?」
「ええ・・」
「何だろ、何か引っかかる・・」
「何かのピースが欠けているんだと思う・・」
二人で唸りながら考えるが欠けているピースが何なんか分からず頭を抱えるのだった。
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