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5.風紀委員長
しおりを挟むあれだけざわついていたのがウソのように室内が静まり返っていた。
コツ、コツ・・
彼の足音だけが響き渡る。
艶やかな黒髪に凛々しい目元、彼に見つめられたら落ち着いていられないだろう。
彼の後から続いては言ってきたのは、副委員長の松本郁そして、
大野拓海。
彼らはこの学校の風紀委員である。
「幸村・・・説明しろ」
眉を寄せて幸村夏樹を責めるように睨みつける。
また、幸村も同じように高坂を睨んだ。
バチバチと火花が散るような空気にみんな息を呑み様子を窺う。
一触即発かと思われたが、この場の責任を感じたのか小さく息を吐いて立ち上がる。
「ここで、か・・?」
さすがにこの場での説明はマズいと思ったのか高坂もアゴを振り歩き出した。
悔しそうにその後に続く幸村に、勇人は呼び止めた。
「待ってください・・・」
「何だ?・・」
不愉快そうな態度に勇人も呼び止めたことに躊躇するが、騒ぎが起きたは自分の責任でもある。
「その人をどこに連れて行くんですか?」
彼の正体を知らない勇人はこのままだと会長の身が危ないと思ったようだ。
「・・・お前は?」
「今日転校してきた、相良勇人です・・」
「転校生・・・」
転校生と聞いて何か思うことがあったのか
「お前もいっしょに来い・・」
そうひと言いって歩き出した。
その後をついて行く勇人に、早瀬も「私も行きます」と追いかけて行った。
廊下を歩きだして数分後、中庭を出て校舎から離れて来たのは別館だった。
出入口でカードをスキャンさせてロックを解除して中へと入ると、意外にも小さめのエントランスからエレベーターに乗って降りたところには一つだけのドア。
見ればプレートには『風紀委員室』と記載されていた。
そこで、初めて彼の正体を知った。
風紀委員って・・・
海斗ともはぐれてしまい、状況をうまく理解できていない勇人は困った。
ついて来たのはいいが、どう説明したらいいんだ?
早瀬が来て、あいつらが来て知らねえ生徒が絡んできて、周りから文句を言われて・・・
確かに、騒ぎになったけど・・これってオレらがだけが悪いのか?
部屋の中の通されて、ソファーに座ると正面のはさっきの男。
「で・・何があった?」
机の上にパソコンやレコーダーを置いて真剣な眼差しで幸村を見る高坂に勇人は緊張した。
「・・私から話ます。原因は私ですから・」
「早瀬・・」
「・・・そうか、それで・」
「実は・・・」
早瀬は隠すこともなく食堂での出来事を高坂に話した。
「そうか・・わかった」
「すみません・・」
頭を下げる高坂にやれやれという顔をして、今度は勇人を見る。
「そういうことでで、お前は釈放だ。帰っていいぞ」
「え、あ・・いや、でも・・」
「何か聞きたいことでもあるのか?」
「あの、こうなったのはオレにも責任があります。もし早瀬に何なかの処罰があるなら」
情けないことだか心配になってつい、庇うようなことを言ったら鼻で笑われてしまった。
「大丈夫だ。特に誰かが危害を加えられたわけじゃないし、こいつらにとってこんなの日常茶飯事だ」
「そうそう・・気にするな」
「生徒会メンバーである限り逃げられない問題だ・・」
食堂での威圧的なものとは違う優しい言葉に驚いた。
あれって、もしかして・・
「ならいいです。・・・ところであんた達の名前、教えてくれますか?」
『演技』だったんだよな・・
だとしたら・・それにまんまと騙さたオレって・・
モヤモヤした気持ちを抱えたまま、余計な心配かけたんだから名前くらい教えやがれっ!
と、叫びたくなった。
「そういえば名乗っていなかったな。オレは高坂理人三年で風紀委員長を務めている。」
「オレは副委員長の松本郁だ」
「オレは大野拓海だ。よろしくな」
にこやかに自己紹介をされて、へえ~・・そうですか、風紀委員長だったんですか。
だからあんな態度だったのかとやっと納得した。
甘い態度だと舐められて行使できないからな。
「よろしく、です」
やるじゃねえかと思いながら愛想笑いをしたのだった。
誤解ができたところで改めて高坂の顔を見ると、さっきはかけていなかった金縁のメガネが良く似合っている。
生徒会とはまた違ったオーラ
生徒会が『王子様』なら・・
この人たちは・・・『騎士』・・みたいだなと思った。
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