52 / 225
8-5
しおりを挟む落ち着け!
落ち着け・・・!
胸に手を当てて深呼吸をする。
昔から緊張を解くにはこうやって対処していた。
鼻から息を吸って口からゆっくりと吐く。
何度もしていると段々と気持ちが落ち着いて来る。
目も閉じたほうがいいがここではそれは止めておく。
よしっ!
もう大丈夫だ。
気合を入れて先に行った高坂の後を追うと、彼の視線が幸村に向いていることに気づいた。
しかも、よく見れば周りは親衛隊ばかりだ。
中心にいる幸村と佐川がイチャイチャしている?
会長は親衛隊に気づいてないのか?
いや、でも・・・
会長は時々、周りをチラッと見ているようで気づいてないわけがない。
何か考えがあるのか?
何か、違和感ありまくりで目が離せない。
高坂さんもそうみたいだし・・・
あれ・・?
もしかして、このデートって・・
「高坂さん、もしかしてこのデートって・・」
「ん・・やっと気づいたか」
やっぱり・・元々おかしいと、何かあるのではと思っていたがまさかこんなことだとは・・
「このデートって、会長の護衛ですよね?」
「・・・中々、勘がいいな」
何だよ~オレのウキウキドキドキを返せっ!
デートだっていうからすげえ楽しみにしてたのに・・
「ハハハ・・拗ねてるのか?」
ニヤニヤしてオレの反応を楽しんでいやがるっ!
「拗ねてなんかいませんよっ!」
まったく、好きだと自覚した途端のこの仕打ち・・
タイミングが悪すぎる!
はあ~・・・
悔しいけど・・見抜けなかったオレが悪い
兎に角、今日は親衛隊の動きに注意しよう。
グルグル唸る勇人を微笑ましいと笑みを浮かべていると、会長と佐川が動き出した。
貸し切りとはいえ参加人数が多い。
だがらこんな大勢のいる場所で仕掛けてくることないと油断していたのもあったが
二人に気づかれないように距離を取っていたのが災いして途中二人を見失ってしまった。
「高坂さんっ!」
「・・慌てるな!外には出ていないはずだ。手分けしてさがすぞっ!」
「はいっ!」
オレは手掛かりを探すため、二人を見失った場所まで戻っていた。
人が多いとはいえ、いなくなるなんてことはないはずだ。
必ず、どこかにいる!
誘導通路にはいなかった。だったらそこから外れたと考えた方がいい。
見回すと視界に入ったのは売店だ。
中に入らず外から様子を窺うと二人はいた。
「よかった~・・」
だが、見つけたのもつかの間、佐川が会長と離れてレジの方に行く。
手にはクジラのぬいぐるみ・・・
あんなのが好みなのか・・まあ、オレには関係ないけど・・
佐川から会長へと視線を向けると誰かと電話をしているようだ。
相手は誰だろ?
晴広兄さん?それとも父さんか?
時々、嬉しそうに笑っている。
あんなふうに笑うんだな・・
何回か笑顔を見たことはあるが、それとは全く違うような気がする。
はあ~・・オレにもあんな笑顔を向けてほしいな・・
おっと、いけねえ・・今は・・あれっ!
視線をレジに戻すと、そこに佐川の姿がない。
護衛を忘れて会長を見ていたせいで
今度こそ完全に佐川の姿を見失ってしまったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,149
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる