オレが受けなんてありえねえ!

相沢京

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みんなと別れてから時計を見ると約束の時間まで二時間あった。

あのあと、約束通り時間をつくってくれたのだ。

留守にしていた部屋の窓を開けて空気を入れ替えて掃除と片付けをした後、シャワーをして会いにいく準備をした。

それでもまだ三十分余裕があったけど、待ちきれなくて部屋を出た。


待ち合わせは学校の屋上だ。

寮でもよかったけど、高坂さんはまだ忙しそうだったので学校にした。

オレは二学期から風紀委員に復帰するつもりだ。

校内ではまだ生徒もまばらで部活をしている奴ぐらいしか残っていないようで静かだ。

校舎に入るとシンと静まっていて聞こえるのはオレの足音だけ。

ギィーと音をたてて屋上のドアを開けると、そこには眩しい太陽の光と青い空が広がっていた。

吹き込む風と眩しさに手をかざしながら中へと踏み出すと地面に反射して熱風に襲われる。


「暑いな・・」


あまりの暑さに場所の選択を誤ったかなと思った。


「教室のほうがよかったかな」



でも、今更変える気にはなれずこのまま高坂さんを待つことにした。

フェンスに手をかけて見える景色は何度目だろう。誘拐されてあんな目にあったせいか見るもの全てに安心というか変に懐かしさみたいなものを感じる。


―――ギィー


ドアの音に振り返るとそこには高坂さんの姿があった。

誘拐されたときはもう会えないと思った。


それがこうやってまた会えることができて嬉しくてたまらない。

気が付けば自然と足が動き、その勢いでそのまま抱き着いた。


胸が苦しかった。

ノーマルだったオレはこの気持ちに気づくまで時間がかかった。


「勇人っ!うおあっ!」


衝撃で唸るのをお構いなしでギュッと背中にまで手を回す。

懐かしい高坂さんの香りにドキドキした。


「勇人、どうした?」

「・・・・」

「おい・・やっぱりどこかケガを・・」


いつもと違う勇人に高坂は動揺した。

何だどうした?何で急に抱き着く?

おい、クンクンするな。何だその緩んだ顔は?

嬉しい反面、やはり何かあったのではと心配になる。

頭を撫でてやると勇人の手に益々力が入りちょっと苦しくなってきた。


「勇人、ほんとどうした?」


優しく声をかければ、ゆっくりと顔を上げてくれたが、目が潤んで顔も赤い。

ゴクリと喉がなる。

これは誘われているのか?いや、でも勇人はノーマルだし・・?

甘えている、のか?

だったらどうすればいい?


「高坂さん、オレ・・オレ・・高坂さんが・・す・・す・・」


決心したはずの告白に心臓が破裂しそうで怖くなった。


「勇人・・?」


「す・・す・・「何してるの?」き」


せっかく勇気を振り縛って告白したのに、突然の乱入者のせいで途切れてしまった。


はっ!え、ええーーっ!!誰だ、邪魔した奴は?


この場合、オレは怒ってもいいと思う。あれだ、わざわざ人気のないここを選んで告白したっていうのに何で邪魔するんだよ!

高坂さんから離れて声がしたほうを見ると彼はオレたちを見下ろしていた。

この暑い中給水塔に上っていたらしい。

乱入者は生徒のようで短髪で銀色の髪をしていた。

その髪がキラキラと太陽に透けていて思わず見惚れてしまった。



キレイな髪だな・・

あれ?


あの髪、どこかで見たような気が・・・


どこだっけ・・・?






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