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しおりを挟むこの状況を陰から見守っていた園田は苦笑しながらもまだ空手着のままの勇人を見つめていた。
先代の幸村コンツェルンの理事長の経営方針は金さえ払えばどんな問題児でも受け入れていた。おかげでこの学校は不良グループに乗っ取られそうになっていた。それにメスを入れ改革したのは晴広だ。彼はクラスの振り分けを行い、不良クラスを別の校舎に追いやって隔離した。これで解決したわけではないが、他の生徒たちの身の安全は確保できたと思っている。
その不良クラスは今ここにいない。でも時々、潜り込んで悪さをする生徒がいたので警戒を行ってはいけない。
「では、次の競技に移ります。次は綱引きです。出場する生徒は入場門に集合してください」
アナウンスが流れて、拓也と和也がイスから立ち上がる。
「オレたち出るから行ってくるね~」
笑顔を振りまくのを忘れずに。
「ああ、行ってこい」
「負けるなよ!」
「フフフ・・・もちろん、全力をつくすよ」
「勇人、応援してね」
「ああ、和也がんばれよ」
「勇人~オレには~?」
「・・・・死んでこい」
「ええーっ、酷い」
「うるせー、早く行けっ!」
背中を蹴られてつんのめるがそれでも笑顔で入場門へと向って行った。
入場門には大勢の生徒が集まっていた。各クラスの半分はここにいるのではないだろうか。そのおかげて、テント内はスカスカだ。
オレの出番はこの次の借り物競争。空手着のままで出るわけにはいかず、着替えに戻る。
更衣室はすぐ近くのテントだしみんな応援に夢中になっていたので、声をかけずにテントを出た。
今日の天気は快晴で雲一つない。日差しが強くて日蔭から出るとじりじりと肌を焼く尽くす。
「はあ~・・暑い、な。シャワーを浴びたい」
出ずっぱりだったせいで、肌がべとべとして気持ち悪い。
濡れタオルで身体をふいたほうがいいか。そう思いながら水道のある方へと足を向ける。テントから少し離れてしまうが問題はないだろう。
校舎の近くにある水道まであと少しというところで、話声が聞こえて来た。
サボりか?
そう思ってゆっくり近づいていくと、見たこともない生徒が数人たむろしていた。
金髪に赤い髪の生徒と青い髪の生徒が地面に座ってタバコを吸っていた。
あいつら、どこの生徒だ?
体操服ではなく、色とりどりのTシャツの制服のズボンを着崩していて見るからに不良だとわかった。
しかも勇人が目指していた水道はその先にあった。
困ったな・・どうしょう。
このまま行けばいやでもあいつらと顔を合わせることになる。しかも、この恰好のせいで絡まれるのは決定だ。
諦めて帰ることにするか。
クソっ!スッキリしたかったのに・・
そう思って引き返そうとしたとき、奴らの背後から飛び出した生徒が目に入った。
「お前ら、ここで何をしている?」
「ゲッ!」
不良たちは慌ててタバコを隠すが既に遅く、一人は腕を掴まれていた。
「痛てえーっ!」
「おい、離せよ」
「まだ、何もしてねえだろ!」
冷酷な目で見下ろしながら、彼はそいつの手を離した。
「ここはお前らは立ち入り禁止のはずだが・・?」
「知ってる・・だけど楽しそうな声が聞こえて来たからつい・・」
「・・つい、だと?」
金髪が口を滑らせて言葉に彼の顔が歪む。
「―――っ!」
「ひっ――!」
「―――っ!」
三人とも蛇に睨まれた蛙のように身を縮こまらせ恐怖で顔を歪ませた。
「お前らに、楽しむ権利はないっ!」
「でも・・」
怒りのオーラを放ち不良たちに向ける彼に勇人は息を呑む。
今まででも彼が怒っている姿は何度も見て来た。しかし、これほどの姿は見たことがない。
それにあいつらは一体・・?
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更新お休みしてすみません。
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