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しおりを挟む真田とおしゃべりをしながら勇人は体育館をめぜしていた。その会話の中で入隊が激増していることを初めて知った。
「・・・え、マジで?」
「はい、これもあの例の件が影響していると思います」
・・例の件・・・って、あれか。あれだな・・うん、あれしかない、なっ!
あのコスプレのせいで激増していると聞いて勇人は死にたくなった。あんな醜態をさらしたせいて入隊が増えているなんて認めたくはない。
片手を額に当てて落ち込む勇人に真田はかける言葉がない。
本来こういうかたちでの入隊は望ましくない。それが生徒会のメンバーならなおそらだ。集団レイプに発展する可能性もあるからだ。しかも対象を守ろうとして巻き込まれることもあり問題になっていた。
今日の顔あわせは単なる顔合わせだけではなく、各自この問題を自覚させ徹底されることだった。
未だに親衛隊を嫌悪する生徒がいるのは確かで、入隊したばかりの隊員は自慢してそのターゲットになりやすい。だから、情報の共有と隊員だと名乗らないようにさせていた。
だか、それには限界があり、対象者の協力が不可欠だった。
体育館に着くと中から大勢の人の気配があった。
確かに、声を聞く感じではあの部屋には入りきれないようだな。
しかし、何人いるんだ?
キー―ンっ
マイクの反響音の後、真田は話始める。
「みなさん、親衛隊総隊長の真田です。今日は勇人さま親衛隊の隊長のお披露目と勇人さまのご挨拶を頂きます」
檀上から現れたのは、なんと遠山だった。
「えー、この度勇人さまの親衛隊の隊長の指名を受けました、遠山湊です。勇人さまのため私の力を尽くしますのでご協力お願いします」
キリっとした態度の遠山にみんな笑顔で拍手を送る。そして、勇人が顔を出すと歓声があがった。
「キャアアアアア―――勇人さまあああ――っ!」
「素敵ィいいいい――っ」
黄色い歓声に未だ慣れないこともあるがそれでも随分ましになったと思う。
「えーっと、オレの親衛隊に入ってくれてありがとう。これからもよろしく頼む」
ニコッと笑って挨拶したら、ぶはっと鼻血を出す者が多数。
顔を赤くする隊員たち。
えっ?て思ったらあっという間に外へと運び出された。
なんて手際のいい隊員たちだろう。
勇人さまの笑顔はもはや凶器になりつつあることを自覚してほしいと思う遠山だが、肝心の勇人と言えば
「・・・貧血か?」
なんて、ボケを呟いていた。
え、いや勇人さまそれは違います。あなたの笑みで興奮した輩が鼻血を出しただけです。
それを勇人本人に言うべきがそうでないかで葛藤する遠山に対し、
就任早々、こんな問題にぶち当たるとはご愁傷様ですと一部の隊員が苦笑した。
そして―――
「遠山、よろしくな」
と、先ほどより何倍もの笑顔を向けられて、まあいいかと絆されて彼も自然と笑顔になるのだった。
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