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23.海斗の災難6
しおりを挟むビクビクしていた拓也だったが、勇人は無反応で書類を拾いあげるとサインをして拓也に突き出した。
「・・・」
「あ、ありが・・とう」
予想外の反応に拍子抜けしつつもそれを今度は会長に渡した。
「よし完璧だな。じゃあこれを・・」
手元の書類から視線を勇人に向けるとスッとそれを差し出す。
「何・・?」
「これを風紀に渡して来いっ!」
「えっ!」
「イヤだとは言わせないぞ」
「・・・・」
「何でオレがって顔だな?」
図星だったのか夏樹をキッと睨んで口を尖らせた。
「夏兄、オレ今・・」
「原田と顔を合わせたくないっていうのか?」
「・・・だって」
「食堂でのことはお前が悪いっていうのはわかっているんだろ?」
諭すような言葉に勇人がしゅんとするのがわかった。
「うん・・」
「だったら、さっさと謝ってこい」
「・・・でも、何て言ったらいいのか・・」
「そんなの「ごめんさない」のひとでいいんだよ。ほら、さっさと謝ってこい」
「・・うん、わかった」
さっきまでの殺気だった空気はどこかへと散り、いつもの勇人に戻ってくれたことに全員ホッとして彼を見送ったのだった。
生徒会室を出た勇人はエレベーターのボタンを押そうとしてそれがこっちに向かっていることに気付いて手を止めた。
生徒会室の下は風紀室があり、それが上に向かってきているということは風紀委員の誰かが来るということである。
風紀室に行くつもりでいたが、それが向こうから来るということにちょっとばかり動揺した。
「ど、どうしよう。まだ心の準備が・・」
おろおろするも隠れるところなんてなく、ただエレベーターの扉が開くのを待つだけである。
チンっ―――
到着を知らせる音がなり、扉が開くと中から現れたのは海斗であった。彼もまた勇人と同じように高坂から生徒会室に書類を渡すように言われたのだ。
「・・・海斗」
最初に声をかけたのは勇人だ。それに気づいて顔をあげる。
「勇人・・・」
お互い言葉はなくただじっと見つめあう。
「・・・・」
「・・・・・」
き、気まずいっ!謝るにしても何を言えば・・・
クソッ!何か言えよっ
お互いきっかけをつかめなくて固まっている。その様子をドアを開けて見ていた夏樹は呆れてため息を吐いた。
「何をやっているんだ。あいつらは・・」
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