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15「魔物討伐」
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「魔物!?」
「きゃああああ!!」
絹を裂くような悲鳴と共に、中庭がパニックに陥る。
生徒たちは蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げてしまい、その行く手を遮るように猪の魔物の群れが現れた。
「こんなにたくさん……!?」
ありえない、とは言い切れなかった。
ここはかつて魔王が支配していた土地。瘴気はほかの地よりも濃く、充満している。
それを魔物に変えることで魔王は各国を蹂躙していたのだ。
瘴気は黒い心に反応してしまう。マルグリッド嬢の、プライドを傷つけられた哀しい気持ちが魔物を呼び寄せてしまったのだろう。
「うわあああっ!!」
そして連鎖する混乱が余計に魔物を引き寄せる。恐怖・混乱・怒り・哀しみ……そんな人が持っていて当然の気持ちを糧にして、魔物はより凶悪になっていく。
「みんな! こっちに来て!」
バラバラになった生徒ひとりひとりに守護の魔法を張るのは至難だ、一所に集まってほしいと声をかけるが、パニック状態に陥った彼らの耳には届かないらしい。
「……仕方ない」
こういう時こそ冷静に。魔王討伐にかけた10年で私が学んだことの一つだ。
手に魔力を込めて、聖剣を顕現させる。そして地面を踏みしめ――蹴った。
キィイイン!
まずは一匹。猪の魔物を両断すると同時に、パニックになっている生徒の首根っこをつかんで放り投げる。
「ぐえ」と声がしたけど、緊急事態だし耐えてもらうわ。
彼が私に助けられたと気づくころには、私は瞬時に次の魔物のところに向かっていった。そして同じように猪を両断し、生徒を同じところに集める。
時間にしてほんの数秒。それを繰り返して猪の数を減らした時だった。
「こっちだよ――」
ヴェルグの声が聞こえた。
彼は中庭に一人で立ち、魔法陣を展開する。
(ダークマター!?)
その魔法陣には見覚えがあった。かつての仇敵、魔王が使用していた、瘴気を操る技。
猪たちは瘴気に戻り、形を変える。今度は1体のゴーレムのような巨大な形に変わると、ヴェルグめがけて巨大な腕を振り落ろした。
「薔薇の舞!!!」
標的は巨大になったが、ひとつにまとまったことで魔法が当てやすくなる。
私は魔法を唱えて妖精を放つ。巨大な腕がヴェルグに振り下ろされる瞬間、魔物は薔薇の花弁に形を変えてヴェルグに降り注いだ。
「ああ。綺麗だよ、ティア」
薔薇舞う庭で、ヴェルグは優しく微笑んだ。
その美しさを、私は生涯忘れることはないと思う。
「ティア先生!」
魔物が消えた途端、生徒たちは安心しきって私に飛びついてきた。
子供たちにタックル同然で飛びつかれて体が吹き飛びそうだったけど、鍛え上げた体幹で耐える。
「先生……わた、わたくし……」
一番泣いていたのは、マルグリッド嬢だった。
公爵家の彼女は瘴気と魔物の発言についての知識があるのだろう。自分が魔物を呼び寄せたのだと知って震えている。
「大丈夫。何度だって、先生が守るからね」
「ごめんなさい。ごめんなさい……!」
私は彼女の暗い気持ちを否定しない。それは誰にでもあるもの。誰だって、魔物を呼び寄せてしまう可能性があり、だからこそ瘴気は恐ろしい。
「先生、まるで聖女様みたいですわ」
ぎくっ。
マルグリッド嬢の言葉に心臓がはねる。
(ば、ばれてないわよね……)
ごまかすように折れてしまいそうな細い肩をぎゅっと抱きしめる。
さっきの大立ち回りで私の体は泥だらけだったけど、マルグリッド嬢は嫌な顔をせず、私を抱きしめ返してくれた。
「……女の子でも、浮気だからね」
「そう拗ねないで」
ヴェルグは私たちの間に入り込みたそうな顔をしているが、師弟の感動劇を見てぐっとこらえてくれている。
「助けてくれてありがとう、ヴェルグ」
白薔薇が、ふわりと私たちの間に舞っていた。
「きゃああああ!!」
絹を裂くような悲鳴と共に、中庭がパニックに陥る。
生徒たちは蜘蛛の子を散らす様にバラバラに逃げてしまい、その行く手を遮るように猪の魔物の群れが現れた。
「こんなにたくさん……!?」
ありえない、とは言い切れなかった。
ここはかつて魔王が支配していた土地。瘴気はほかの地よりも濃く、充満している。
それを魔物に変えることで魔王は各国を蹂躙していたのだ。
瘴気は黒い心に反応してしまう。マルグリッド嬢の、プライドを傷つけられた哀しい気持ちが魔物を呼び寄せてしまったのだろう。
「うわあああっ!!」
そして連鎖する混乱が余計に魔物を引き寄せる。恐怖・混乱・怒り・哀しみ……そんな人が持っていて当然の気持ちを糧にして、魔物はより凶悪になっていく。
「みんな! こっちに来て!」
バラバラになった生徒ひとりひとりに守護の魔法を張るのは至難だ、一所に集まってほしいと声をかけるが、パニック状態に陥った彼らの耳には届かないらしい。
「……仕方ない」
こういう時こそ冷静に。魔王討伐にかけた10年で私が学んだことの一つだ。
手に魔力を込めて、聖剣を顕現させる。そして地面を踏みしめ――蹴った。
キィイイン!
まずは一匹。猪の魔物を両断すると同時に、パニックになっている生徒の首根っこをつかんで放り投げる。
「ぐえ」と声がしたけど、緊急事態だし耐えてもらうわ。
彼が私に助けられたと気づくころには、私は瞬時に次の魔物のところに向かっていった。そして同じように猪を両断し、生徒を同じところに集める。
時間にしてほんの数秒。それを繰り返して猪の数を減らした時だった。
「こっちだよ――」
ヴェルグの声が聞こえた。
彼は中庭に一人で立ち、魔法陣を展開する。
(ダークマター!?)
その魔法陣には見覚えがあった。かつての仇敵、魔王が使用していた、瘴気を操る技。
猪たちは瘴気に戻り、形を変える。今度は1体のゴーレムのような巨大な形に変わると、ヴェルグめがけて巨大な腕を振り落ろした。
「薔薇の舞!!!」
標的は巨大になったが、ひとつにまとまったことで魔法が当てやすくなる。
私は魔法を唱えて妖精を放つ。巨大な腕がヴェルグに振り下ろされる瞬間、魔物は薔薇の花弁に形を変えてヴェルグに降り注いだ。
「ああ。綺麗だよ、ティア」
薔薇舞う庭で、ヴェルグは優しく微笑んだ。
その美しさを、私は生涯忘れることはないと思う。
「ティア先生!」
魔物が消えた途端、生徒たちは安心しきって私に飛びついてきた。
子供たちにタックル同然で飛びつかれて体が吹き飛びそうだったけど、鍛え上げた体幹で耐える。
「先生……わた、わたくし……」
一番泣いていたのは、マルグリッド嬢だった。
公爵家の彼女は瘴気と魔物の発言についての知識があるのだろう。自分が魔物を呼び寄せたのだと知って震えている。
「大丈夫。何度だって、先生が守るからね」
「ごめんなさい。ごめんなさい……!」
私は彼女の暗い気持ちを否定しない。それは誰にでもあるもの。誰だって、魔物を呼び寄せてしまう可能性があり、だからこそ瘴気は恐ろしい。
「先生、まるで聖女様みたいですわ」
ぎくっ。
マルグリッド嬢の言葉に心臓がはねる。
(ば、ばれてないわよね……)
ごまかすように折れてしまいそうな細い肩をぎゅっと抱きしめる。
さっきの大立ち回りで私の体は泥だらけだったけど、マルグリッド嬢は嫌な顔をせず、私を抱きしめ返してくれた。
「……女の子でも、浮気だからね」
「そう拗ねないで」
ヴェルグは私たちの間に入り込みたそうな顔をしているが、師弟の感動劇を見てぐっとこらえてくれている。
「助けてくれてありがとう、ヴェルグ」
白薔薇が、ふわりと私たちの間に舞っていた。
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