約束のまもり方

かつお

文字の大きさ
5 / 7

第5話

しおりを挟む
 マンションに着いた頃、心身ともに、と言うよりかは、精神的に僕はかなり疲弊していた。それもそのはず、今日はあまりにも不思議な出来事が多すぎた。色々やらなければいけない気もするが、明日の僕が頑張ってくれることだろう。

 エレベーターに乗り、10階に着いた。

「部屋はどこなの?」

 自分の部屋の前まで辿り着いた僕は、リサに尋ねる。

「お兄ちゃんのお部屋は?」

 逆に聞き返されてしまった。
 僕は自分が住んでいるのは1003号室だよ、と教えてあげると、りさは何故か

「わかった!」

 と少し嬉しそうだった。

 りさは一向に帰る気配を見せない。そういう僕も、未だに部屋に入らずにいた。僕はもう一度彼女に聞いた。

「りさの部屋は?帰らないの?」

「どうしてそんなに知りたいの?」

「ちゃんと家に帰るか心配なだけだよ!」

 りさが可笑しそうに笑うので、たちまち、僕は恥ずかしくなってしまった。

「そんなに笑うならもういいよ!僕帰るからね!」

 彼女はふふっと笑うだけだ。

 いい加減、中に入ればいいのに、僕は未だ動かずにいた。明日になれば、今日あった事を、彼女と過ごした時間を忘れてしまう気がして……

「ねぇ、お兄ちゃん……」

 りさが呼びかけた。

「私、まだ言ってなかったよね……ママを一緒に探してくれて、ありがとう。」

 彼女の笑顔を見ると、暗い気分もパッと明るくなるようだった。

「別に……というか、君が強引に連れてっただけだし……」

 何故だろう。鼻の奥がツンと冷たくなる。

「ふふ……そうだね。」

 やはり彼女は笑うだけだ。

「ほら!早くお家帰ろ?帰って寝ないと!明日も学校だしね。」

 確かに、明日は平日だ。そろそろ寝ないと、寝坊してしまうかもしれない。

 僕はドアノブをゆっくり回しながら、顔だけふりかえってみた。依然としてニコニコ顔の、彼女の名前を呼ぶ。

「りさ、おやすみ。。」

 ぎこちなく微笑む僕を見て、彼女はとても嬉しそうに満面の笑みで答える。

「うん!!」

 中に入り扉を閉める直前まで、彼女は大きく手を振っていた。僕も小さく手を振り返し、扉を閉めて、僕の今日がようやく終わりを迎えた。


 朝7時。目覚まし時計の音で目が覚めた。全く寝足りない。眠すぎる。もう少しだけ、と僕は布団に潜り込んだ。そして、昨日の出来事を思い出していた。工場での出来事や、りさの母親の事。そして、りさ本人の事や彼女と話した事など。もう暫く、布団で暖まっていたかったけれど、昨日の僕が全てを投げやりに、今日の僕に押し付けたので、仕方ないな、とぼやきながら、ようやく僕は体を起こしたのだった。


 放課後、僕は家に帰らず、そのまま部品工場に向かっていた。ずっと考え事をしていたせいで、授業の内容は、あまり頭に入ってこなかった。先生にも、集中しなさい、と叱られたくらいだった。だけど、授業どころではなかったので仕方がない。

 学校からはだいたい30分位で、目的の工場に辿り着いた。時間を見ると16時半と、太陽も傾きかけで、ちょうど夕方と言った感じだ。それなのに、工場内は昨日と変わらず、照明もついていないどころか、人1人いない状態だった。

 調べたとおり、この工場は今は閉鎖されているようだ。と言っても、簡単に侵入出来るくらいなので、そこまで厳重ではないのだろう。ネットの記事によると、ここが閉鎖された理由は、事件に巻き込まれた、というものだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...