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前編
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異世界転移した黒須あずみ23歳。
突如知らないところに来て最初は困ったけど、今はなんとか暮らせている。
こちらの世界では発音の都合上、アシュリー・クロスという名前になった。元の名前より可愛くて、案外気に入っている。
自分の容姿は周囲の反応を見るに、なかなか良い方らしく、ちょっとラッキー。どうやらこの世界では、日本人の小柄で童顔な外見は“若くて可愛い”と見なされるらしい。ただ……たまに、褒められすぎてるような気もする。違う文化圏で生きてるような、そんな違和感がある。
そして、異世界人の容姿の良し悪しがイマイチよくわからないのだ。
あの人かっこいいよね~の話題に入れない。美人だよね~もよくわからない。だいたいみんな可愛いし美人に見える。そんな人達が褒めてくれるからちょっと、いやかなり嬉しい。
私は普段、冒険者として、薬草など森で取れるものの採取や道具作成の手伝い、集団依頼の下働きとして細々働いていた。まわりの冒険者もそんなアシュリーを馬鹿にすることなく、むしろよく働いていると内助の功を評価してくれていた。
そんな小間使い冒険者として働いていると、いくらか顔見知り、親しい人もできてきた。その中でも優しく親切にしてくれる、ロロシュというおそらく年の近い青年が大好きになった。
なぜかいつも仮面をつけているけど、柔和な口元は見えてるし、言葉遣いも優しく丁寧だ。あと、一度仮面を外したところを偶然見てしまったが、かっこよかった。
まさかあんなに整ってるなんて……仮面、意味あるのかなってちょっと思っちゃった。
ロロシュも冒険者として活動していて基本はソロらしい。大型レイドやギルドの大人数募集のときはお互い参加しているので幾度か顔を合わせて、アシュリーの働きにお礼を言ってくれたことで親しくなった……と、少なくともアシュリーはそう思っている。
何度か果敢に話しかけて最初はロロシュが戸惑って引き気味だったかもしれないけど、今はたまに一緒に採取もする仲だ。
「あ、ロロシュ!今日はなんの依頼受けたの?」
「アシュリー、こんにちは。今回は討伐なんだ。街道沿いの魔物の数を減らすんだよ。」
「え!ひとりで?大丈夫?…って言っても私戦闘なんもできないんだけど…良かったら軟膏持ってって!」
「え、悪いよ…」
「いいから!」
「……ありがとうアシュリー」
ロロシュは行ってしまった。何日か会えないのかな、と少し落ち込む。私も戦えたらな~お金貯めて講習受けてみようかな。と考えていると、近くにいた女冒険者に声をかけられた。
「あんたよくあの仮面と話せるわね。」
「え?」
「ソロの仮面と仲良くしてなんになるってのよ。」
「なんにって…そんな」
意味がわからず戸惑うアシュリー。この人はいったい何が言いたいのだろう。
「お優しいことね~。勘違いされるからやめた方がいいわよ。」
と言うだけ言って去ってしまった。「もう、なんなのよ。」ぶつくさ言いながらアシュリーもいつもの採取に向かう。
ロロシュは普段から仮面を着けてるけど、それは何か意味があるのかな?採取をしながら、ぐるぐると想像をめぐらせる。
けれど、考えたところで異世界の事情にてんで疎いアシュリーには何も思い浮かばなかった。
今度誰かに聞いてみようかな、と思ったが、女冒険者の口ぶりから良い話だとは思えなかった。
ロロシュはロロシュなんだから周りがなんと言おうがいいじゃないか、と思い直してその日は帰った。
それからしばらく経ったあるとき、ロロシュと話してたら突然彼が言った。
「アシュリーは、なんで僕と話してくれるの?」
意味がわからなかった。
「え?なんで?…え?ダメ?」
「いや!ダメとかじゃなくて…僕は仮面だから。」
尚更よくわからない。そういえば先日、仮面と話すことを揶揄われたっけ。
「仮面だとなんかあるの?」
「それは……」
ロロシュの歯切れが悪い。しばらく口ごもったあと、彼は小さい声でつぶやいた。
「か、顔が…悪いから…」
「え?」
聞こえなくて聞き返したら今度は大きな声で言った。
「か、仮面なんかつけてるってことは!不細工ってことじゃないか!……なんでそんな僕と話してくれるの?」
「ぶ、不細工?ロロシュが?」
ロロシュが仮面を外したところを偶然見てしまったときのことを思い出す。何日も大型討伐が続き、泊まり込みになったときに顔を拭いているところを見かけたのだ。そのときに水桶を渡してあげたら大層びっくりしてたのを覚えている。
でも……。
「ロロシュが不細工だなんて思ったことないよ。」
「……え?アシュリーは僕の顔を見ただろ?」
「見たけど、別にそんなこと思わなかったよ?」
むしろ、かっこいいけどなと思い、続けてなんでそう思うの?と言うと、ロロシュは完全にフリーズしてしまった。
「な、なんで…」
「なんでって言われても」
お互いに困っているが、どうしていいかわからない。
「とにかく!私はロロシュの顔が悪いとか思ってないし!普通に仲良くなれたと思ったから話しかけてるの。ロロシュは私と話すの嫌?」
「いやなわけ、ないよ。」
ロロシュの声は震えていた。
「そう?じゃあ今まで通り、仲良くしよ。」
あと今日の採取一緒に行こう、と言うとロロシュは返事をするもののその日一日、心ここに在らずといった具合にぼんやりしていた。
……なんだか、逆に私のほうが気になってきた。
それから、なんとなくニコイチみたいに採取やおつかいの依頼をこなし、お金がある程度貯まったのでアシュリーは戦闘の講習を受けていた。
「お、アシュリー!戦闘訓練やんのか?」
顔馴染みの冒険者が話しかけてきた。
「うん!簡単な討伐に参加できるようになりたいの。」
「そっか。でも危ないからやるときはどっかのパーティに入れてもらえよ。なんなら俺らのところでもいいぜ。」
「ありがとう。でも私、ロロシュと一緒に討伐依頼受けたいんだあ。」
アシュリーがにっこり笑ってそう言うと冒険者の男は固まった。
「え、アシュリー、あの仮面野郎と組むのか?」
仮面野郎とは随分な言い草だなと思ったが、言い返せなかった。
冒険者としてはまだ半人前の自分が何を言っても、説得力はない気がした。
「うん。今も採取は一緒にやってるよ。討伐は行けないから一緒に行けるようになりたくて。」
「へー…あ、そうなのか、ふーん。」
「なあに?」
「いや、まあ人それぞれだからな。なんか困ったら言えよ。」
「ありがとう!がんばるね!」
歯切れ悪く去っていく。前にも仮面のことでとやかく言われたが、そんなに顔の良し悪しが関係あるのだろうか。(あとロロシュの顔、そもそも悪くないし!)というか異世界人の顔の良し悪しがわからない…何故ロロシュがそんな不細工だと判定されなければならないのかもさっぱりだ。
仮に不細工だとしても別にいいじゃないか。顔が冒険者に関係あると思えない。だんだん腹が立ってきたアシュリーは短剣を力いっぱい振り回す。教官に「お、なんだ気合い入ってるな。」なんて言われたけどあまり身になった気がしなかった。
そんな講習を続けていたら、いつの間にか卒業する頃になっていた。「討伐頑張れよ。」なんて教官に言われたけど、本当に私にできるのか不安になる。でも、なにはともあれ無事卒業だ。
「ロロシュ~!講習全部受かったよ!討伐も行けるようになったの!」
だから討伐の依頼も一緒に行きたいと言うとロロシュは嬉しいような少し困ったようなはにかんだ顔をした。
「最初は簡単な依頼で慣れるまでやった方がいいね。」
「ロロシュはもっと大きな依頼受けたい?私とも弱そうな依頼もやってくれる?」
ロロシュの負担になるかもしれない。でもアシュリーはこれから上手くなって、ちゃんと役に立てるように頑張るから一緒に行って欲しかった。
「もちろん。僕でよければ。」
「ロロシュと一緒に行くために講習受けたんだから!ロロシュじゃないと意味ないじゃない。」
我ながら図々しいと思ったが、事実そうなので正直に言った。
「……そ、そっか。嬉しいな。」
ロロシュが嬉しいって言ってくれたので良しとする。
何回か討伐を繰り返すうちに、なんとかコツをつかんできた。まさか短剣や弓をなんなく敵に当てられるようになるなんて――
「アシュリー随分手慣れてきたね。」
「本当?うれしい!」
出来るようになったことも嬉しいけれど、ロロシュに褒められるのは、それ以上に胸が弾んだ。
「……アシュリーならどこのパーティ入っても、やっていけるだろうね。」
「え?」
「僕とじゃなくても……その、もっと強い人たちと一緒でも、ちゃんと活躍できると思うよ。」
「え?えっ?なんでそんなこと言うの……?」
急にそんなことを言うロロシュに驚いたのと、言われた内容がショックで声が震える。
もしかしてロロシュは、前みたいにソロで活動したいのだろうか。自分がいることで受けにくい依頼があるのだろうか。これでも結構役に立てるようになってきたと思っていたのは思い上がりだったのか――
「僕と、組んでくれる奇特な人はまずいないからさ……僕と一緒だと、これ以上の依頼を受けるのは難しいと思う。でも、もっと強い討伐も簡単にこなせるパーティにも、アシュリーならきっと入れるよ。報酬だってもっと貰えるだろうし、強い人との繋がりもできると思う。」
ロロシュは何かを堪えるように、視線を伏せた。
どうしてそんな顔をして、そんなふうに言うのか。どうして、苦しそうに、自分を手放そうとするのか。
「わ、私……私は、ロロシュと一緒がいいよ……。ロロシュが嫌じゃなければ、だけど……。
強いパーティに入りたいとか、思ってないし……私は、今のままでいいの。」
一瞬、ロロシュは言葉を失った。
まっすぐなその言葉が、胸の奥に静かに沁みていく。
「……ありがとう、アシュリー。そう言ってくれて、嬉しいよ。でも──他のパーティに参加してみてから決めた方が、きっと後悔しないと思う。」
まるで、これでお別れのように語るロロシュ。
不安になり縋るように服の端を掴んだ。
「他のパーティで経験積んだら、またロロシュは私と、組んでくれる?」
ロロシュは「アシュリーがそのとき、また組みたいって思ってくれるなら」そう寂しそうに微笑んでいた。仮面の下はどんな目をしていたんだろう──
私は何も返せなかった。あのとき胸の奥に生まれたものが、まだ名前を持っていなかったから。
突如知らないところに来て最初は困ったけど、今はなんとか暮らせている。
こちらの世界では発音の都合上、アシュリー・クロスという名前になった。元の名前より可愛くて、案外気に入っている。
自分の容姿は周囲の反応を見るに、なかなか良い方らしく、ちょっとラッキー。どうやらこの世界では、日本人の小柄で童顔な外見は“若くて可愛い”と見なされるらしい。ただ……たまに、褒められすぎてるような気もする。違う文化圏で生きてるような、そんな違和感がある。
そして、異世界人の容姿の良し悪しがイマイチよくわからないのだ。
あの人かっこいいよね~の話題に入れない。美人だよね~もよくわからない。だいたいみんな可愛いし美人に見える。そんな人達が褒めてくれるからちょっと、いやかなり嬉しい。
私は普段、冒険者として、薬草など森で取れるものの採取や道具作成の手伝い、集団依頼の下働きとして細々働いていた。まわりの冒険者もそんなアシュリーを馬鹿にすることなく、むしろよく働いていると内助の功を評価してくれていた。
そんな小間使い冒険者として働いていると、いくらか顔見知り、親しい人もできてきた。その中でも優しく親切にしてくれる、ロロシュというおそらく年の近い青年が大好きになった。
なぜかいつも仮面をつけているけど、柔和な口元は見えてるし、言葉遣いも優しく丁寧だ。あと、一度仮面を外したところを偶然見てしまったが、かっこよかった。
まさかあんなに整ってるなんて……仮面、意味あるのかなってちょっと思っちゃった。
ロロシュも冒険者として活動していて基本はソロらしい。大型レイドやギルドの大人数募集のときはお互い参加しているので幾度か顔を合わせて、アシュリーの働きにお礼を言ってくれたことで親しくなった……と、少なくともアシュリーはそう思っている。
何度か果敢に話しかけて最初はロロシュが戸惑って引き気味だったかもしれないけど、今はたまに一緒に採取もする仲だ。
「あ、ロロシュ!今日はなんの依頼受けたの?」
「アシュリー、こんにちは。今回は討伐なんだ。街道沿いの魔物の数を減らすんだよ。」
「え!ひとりで?大丈夫?…って言っても私戦闘なんもできないんだけど…良かったら軟膏持ってって!」
「え、悪いよ…」
「いいから!」
「……ありがとうアシュリー」
ロロシュは行ってしまった。何日か会えないのかな、と少し落ち込む。私も戦えたらな~お金貯めて講習受けてみようかな。と考えていると、近くにいた女冒険者に声をかけられた。
「あんたよくあの仮面と話せるわね。」
「え?」
「ソロの仮面と仲良くしてなんになるってのよ。」
「なんにって…そんな」
意味がわからず戸惑うアシュリー。この人はいったい何が言いたいのだろう。
「お優しいことね~。勘違いされるからやめた方がいいわよ。」
と言うだけ言って去ってしまった。「もう、なんなのよ。」ぶつくさ言いながらアシュリーもいつもの採取に向かう。
ロロシュは普段から仮面を着けてるけど、それは何か意味があるのかな?採取をしながら、ぐるぐると想像をめぐらせる。
けれど、考えたところで異世界の事情にてんで疎いアシュリーには何も思い浮かばなかった。
今度誰かに聞いてみようかな、と思ったが、女冒険者の口ぶりから良い話だとは思えなかった。
ロロシュはロロシュなんだから周りがなんと言おうがいいじゃないか、と思い直してその日は帰った。
それからしばらく経ったあるとき、ロロシュと話してたら突然彼が言った。
「アシュリーは、なんで僕と話してくれるの?」
意味がわからなかった。
「え?なんで?…え?ダメ?」
「いや!ダメとかじゃなくて…僕は仮面だから。」
尚更よくわからない。そういえば先日、仮面と話すことを揶揄われたっけ。
「仮面だとなんかあるの?」
「それは……」
ロロシュの歯切れが悪い。しばらく口ごもったあと、彼は小さい声でつぶやいた。
「か、顔が…悪いから…」
「え?」
聞こえなくて聞き返したら今度は大きな声で言った。
「か、仮面なんかつけてるってことは!不細工ってことじゃないか!……なんでそんな僕と話してくれるの?」
「ぶ、不細工?ロロシュが?」
ロロシュが仮面を外したところを偶然見てしまったときのことを思い出す。何日も大型討伐が続き、泊まり込みになったときに顔を拭いているところを見かけたのだ。そのときに水桶を渡してあげたら大層びっくりしてたのを覚えている。
でも……。
「ロロシュが不細工だなんて思ったことないよ。」
「……え?アシュリーは僕の顔を見ただろ?」
「見たけど、別にそんなこと思わなかったよ?」
むしろ、かっこいいけどなと思い、続けてなんでそう思うの?と言うと、ロロシュは完全にフリーズしてしまった。
「な、なんで…」
「なんでって言われても」
お互いに困っているが、どうしていいかわからない。
「とにかく!私はロロシュの顔が悪いとか思ってないし!普通に仲良くなれたと思ったから話しかけてるの。ロロシュは私と話すの嫌?」
「いやなわけ、ないよ。」
ロロシュの声は震えていた。
「そう?じゃあ今まで通り、仲良くしよ。」
あと今日の採取一緒に行こう、と言うとロロシュは返事をするもののその日一日、心ここに在らずといった具合にぼんやりしていた。
……なんだか、逆に私のほうが気になってきた。
それから、なんとなくニコイチみたいに採取やおつかいの依頼をこなし、お金がある程度貯まったのでアシュリーは戦闘の講習を受けていた。
「お、アシュリー!戦闘訓練やんのか?」
顔馴染みの冒険者が話しかけてきた。
「うん!簡単な討伐に参加できるようになりたいの。」
「そっか。でも危ないからやるときはどっかのパーティに入れてもらえよ。なんなら俺らのところでもいいぜ。」
「ありがとう。でも私、ロロシュと一緒に討伐依頼受けたいんだあ。」
アシュリーがにっこり笑ってそう言うと冒険者の男は固まった。
「え、アシュリー、あの仮面野郎と組むのか?」
仮面野郎とは随分な言い草だなと思ったが、言い返せなかった。
冒険者としてはまだ半人前の自分が何を言っても、説得力はない気がした。
「うん。今も採取は一緒にやってるよ。討伐は行けないから一緒に行けるようになりたくて。」
「へー…あ、そうなのか、ふーん。」
「なあに?」
「いや、まあ人それぞれだからな。なんか困ったら言えよ。」
「ありがとう!がんばるね!」
歯切れ悪く去っていく。前にも仮面のことでとやかく言われたが、そんなに顔の良し悪しが関係あるのだろうか。(あとロロシュの顔、そもそも悪くないし!)というか異世界人の顔の良し悪しがわからない…何故ロロシュがそんな不細工だと判定されなければならないのかもさっぱりだ。
仮に不細工だとしても別にいいじゃないか。顔が冒険者に関係あると思えない。だんだん腹が立ってきたアシュリーは短剣を力いっぱい振り回す。教官に「お、なんだ気合い入ってるな。」なんて言われたけどあまり身になった気がしなかった。
そんな講習を続けていたら、いつの間にか卒業する頃になっていた。「討伐頑張れよ。」なんて教官に言われたけど、本当に私にできるのか不安になる。でも、なにはともあれ無事卒業だ。
「ロロシュ~!講習全部受かったよ!討伐も行けるようになったの!」
だから討伐の依頼も一緒に行きたいと言うとロロシュは嬉しいような少し困ったようなはにかんだ顔をした。
「最初は簡単な依頼で慣れるまでやった方がいいね。」
「ロロシュはもっと大きな依頼受けたい?私とも弱そうな依頼もやってくれる?」
ロロシュの負担になるかもしれない。でもアシュリーはこれから上手くなって、ちゃんと役に立てるように頑張るから一緒に行って欲しかった。
「もちろん。僕でよければ。」
「ロロシュと一緒に行くために講習受けたんだから!ロロシュじゃないと意味ないじゃない。」
我ながら図々しいと思ったが、事実そうなので正直に言った。
「……そ、そっか。嬉しいな。」
ロロシュが嬉しいって言ってくれたので良しとする。
何回か討伐を繰り返すうちに、なんとかコツをつかんできた。まさか短剣や弓をなんなく敵に当てられるようになるなんて――
「アシュリー随分手慣れてきたね。」
「本当?うれしい!」
出来るようになったことも嬉しいけれど、ロロシュに褒められるのは、それ以上に胸が弾んだ。
「……アシュリーならどこのパーティ入っても、やっていけるだろうね。」
「え?」
「僕とじゃなくても……その、もっと強い人たちと一緒でも、ちゃんと活躍できると思うよ。」
「え?えっ?なんでそんなこと言うの……?」
急にそんなことを言うロロシュに驚いたのと、言われた内容がショックで声が震える。
もしかしてロロシュは、前みたいにソロで活動したいのだろうか。自分がいることで受けにくい依頼があるのだろうか。これでも結構役に立てるようになってきたと思っていたのは思い上がりだったのか――
「僕と、組んでくれる奇特な人はまずいないからさ……僕と一緒だと、これ以上の依頼を受けるのは難しいと思う。でも、もっと強い討伐も簡単にこなせるパーティにも、アシュリーならきっと入れるよ。報酬だってもっと貰えるだろうし、強い人との繋がりもできると思う。」
ロロシュは何かを堪えるように、視線を伏せた。
どうしてそんな顔をして、そんなふうに言うのか。どうして、苦しそうに、自分を手放そうとするのか。
「わ、私……私は、ロロシュと一緒がいいよ……。ロロシュが嫌じゃなければ、だけど……。
強いパーティに入りたいとか、思ってないし……私は、今のままでいいの。」
一瞬、ロロシュは言葉を失った。
まっすぐなその言葉が、胸の奥に静かに沁みていく。
「……ありがとう、アシュリー。そう言ってくれて、嬉しいよ。でも──他のパーティに参加してみてから決めた方が、きっと後悔しないと思う。」
まるで、これでお別れのように語るロロシュ。
不安になり縋るように服の端を掴んだ。
「他のパーティで経験積んだら、またロロシュは私と、組んでくれる?」
ロロシュは「アシュリーがそのとき、また組みたいって思ってくれるなら」そう寂しそうに微笑んでいた。仮面の下はどんな目をしていたんだろう──
私は何も返せなかった。あのとき胸の奥に生まれたものが、まだ名前を持っていなかったから。
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