公爵令嬢の選択

つきほ。

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プロローグ

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 王宮の大広間には、冷たい緊張が漂っていた。

 豪華なシャンデリアの下で、絹織物に身を包んだ貴族たちが固唾を呑む中、ひとりの令嬢がひざまずいていた。

 「マリアンヌ・エストレル。お前との婚約を、今この場で破棄する。」

 王太子レオンの言葉が響き渡ると、ざわめきが広がった。

 だが、誰よりも動揺するはずのマリアンヌは、顔色ひとつ変えなかった。

 「承知いたしました。」

 その声は、凛としていた。貴族令嬢としての矜持を最後まで保ち、嘲笑の中をゆっくりと立ち上がる。

 婚約破棄という言葉が彼女を縛ることはなかった。

 (ならば、私は私の道を行くだけ。)

 己を貶めた王太子を睨むことなく、彼女はその場を立ち去った。
 ――このとき、誰も気づかなかった。

 冷酷と呼ばれた令嬢が、やがて王を守る剣となることを。

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