公爵令嬢の選択

つきほ。

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第1章 婚約破棄と転落

第3話 騎士団の洗礼

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 訓練場に響く金属音。

 汗と土の匂いが混じる中、マリアンヌは必死に剣を振り続けていた。

 「そこだ!遅い!もっと速く動け!」

 エリック団長の怒声が飛ぶ。

 マリアンヌは額に汗を滲ませながらも、木剣を握る手を緩めなかった。

 周囲に立つ他の騎士たちは、冷ややかな視線を向けていた。

 「公爵令嬢様の剣術って、見世物か?」
 「どうせすぐ辞めるさ。」

 囁きが耳に入る。だが、マリアンヌはそれを気にすることなく目の前の敵に集中した。

 目の前には屈強な騎士——ロイ・バーク。

 巨体を活かした強烈な突きが、マリアンヌの腹をかすめる。

 「ぐっ…!」

 バランスを崩し、膝をつくマリアンヌを見て、ロイは鼻で笑った。

 「へぇ~、公爵令嬢様はこんなもんか?」

 その言葉に、周囲の騎士たちからも嘲笑が漏れる。

 だがマリアンヌはゆっくりと立ち上がった。

 「いいえ。まだ終わっていません。」

 彼女は再び剣を構えた。その瞳は揺らいでいない。




 「まだ立てるか。」

 エリックが腕を組みながら見下ろしていた。

 「騎士団では貴族の地位も、名誉も通用しない。使えるのは剣だけだ。」

 マリアンヌは息を整えながら、視線を団長に向ける。

 「心得ています。」

 エリックはニヤリと笑った。

 「なら、証明してみろ。」

 試練は終わらなかった。




 訓練後、マリアンヌは手のひらの皮が剥けたことに気づいた。血が滲む傷に布を巻きながら、ふと視線を感じた。

 訓練場の隅に立つ男。

 ――あの男は…?

 鋭い目つきでこちらを見つめる姿は、明らかに他の騎士とは異質だった。

 「お前のことを気にしてる奴がいるみたいだな。」

 背後からエリックが声をかける。

 「何者ですか?」

 「シリウス・ヴァンデール。外部の調査役だ。」

 名前を聞いた瞬間、マリアンヌの背筋に冷たいものが走った。

 「敵かもしれないぞ。」

 エリックの言葉に、マリアンヌは無意識に剣を握りしめた。




 傷ついた手に布を巻きながら、マリアンヌは鋭い視線を感じた。

 訓練場の隅、影に紛れるように立つ男。

 (誰?)

 背筋に微かな寒気が走る。だが、それを振り払うように、マリアンヌは剣を握り直した。

 (私はもう逃げない。)

 彼女は男をまっすぐ見返した。

 その視線に気づいた男が、口元に薄く笑みを浮かべる。

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