42 / 57
第3章 陰謀と裏切り
第40話 追跡の影
しおりを挟む影の組織の拠点である地下室から脱出したマリアンヌたちは、すぐに王宮へ戻るため馬車を走らせていた。
だが、背後には黒装束の追跡者たちの気配があった。
「やはり、簡単には逃がしてくれないわね。」
マリアンヌは剣を握りしめながら、窓越しに追跡者たちを見やった。
「このままでは王宮まで追われる可能性があります。」書記官が冷静に分析する。
「どこかで彼らを撒く必要がある。」
リナが不安げに言う。
「でも、どうやって……?」
マリアンヌは考えを巡らせたあと、力強く答えた。
「私たちが二手に分かれればいい。私は彼らを引きつけるわ。あなたたちはこの書類を持って、王宮へ戻って。」
「マリアンヌさん、一人で行くなんて危険すぎます!」リナが叫んだ。
書記官も眉をひそめる。「いくらあなたでも、敵が多すぎる。」
「大丈夫よ。」マリアンヌは微笑んだ。「私は剣士だもの。むしろ、あなたたちのほうが狙われる可能性が高いわ。」
短い沈黙の後、書記官が頷いた。「……分かりました。必ず王宮に証拠を届けます。」
馬車が森の分岐点に差し掛かった瞬間、マリアンヌは素早く飛び降り、別の方向へ走り出した。
追跡者たちはそれを見逃さなかった。
「奴だ!追え!」
数人が馬を駆けさせ、彼女を追いかける。
「ふふ……まんまと引っかかったわね。」
マリアンヌは林の中へと入り込み、木々の間をすり抜けながら進んだ。だが、すぐに気づいた。
(敵の動きが早い……ただの兵士ではないわね。)
振り返ると、すでに数人の影が間近に迫っていた。
「仕方ないわね……。」
彼女は立ち止まり、剣を抜いた。
追跡者たちはマリアンヌを取り囲んだ。
「さあ、大人しく降伏しろ。」
「そんなつもりはないわ。」
一瞬の沈黙の後、マリアンヌは素早く動いた。
剣が光を反射し、一人の敵の剣を弾き飛ばす。その隙に身を翻し、別の敵の足を狙った。
「くっ……こいつ、ただの貴族じゃない!」
敵たちは動揺したが、すぐに体勢を立て直し、さらに攻撃を仕掛けてくる。
「さすがに数が多いわね……。」
マリアンヌは息を整えながら周囲を見渡す。敵を一人ずつ倒していては時間がかかる。
(この場を抜ける方法を探さないと。)
そのとき、遠くから馬のひづめの音が聞こえた。
「そのまま伏せろ!」
聞き慣れた声にマリアンヌは即座に反応し、地面に伏せた。
次の瞬間、矢が放たれ、敵の一人が剣を落とす。
「何!?」
驚く追跡者たちの間を縫うように、馬に乗ったロイとカインが駆け込んできた。
「お前、また無茶をしたな。」
ロイが馬を降りながら言い、カインは剣を抜いたまま笑う。
「危ないところだったな、公爵令嬢。」
「来るのが遅いわよ。」
マリアンヌは立ち上がりながら、剣を再び構えた。
「ここから一気に片付けるわよ!」
ロイとカインの助力を得たことで、形勢は逆転した。
「ちっ……ここまでか!」
敵の一人が叫び、残った追跡者たちは素早く退却していった。
「逃げるのね……。」
マリアンヌは剣を収めながら深く息をついた。
ロイが近づき、「さて、詳しく話を聞かせてもらおうか。」と問いかける。
マリアンヌは頷き、「影の組織の拠点を突き止めたわ。証拠も手に入れた。でも、それ以上に重要なことがある。」と答えた。
「王宮内の裏切り者の正体が、もうすぐ明らかになるわ。」
夜の森の静寂の中、マリアンヌは決意を固めた。
「この戦いの終わりが、もうすぐ見えてくる……。」
彼女の言葉は、冷たい夜風の中に消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる