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おまけ 海に捧げる 〜次は幸せになれ〜 four
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海ってこんなに広いのね、潮の香りがするのね、風がべたべたするのね、潮水はしょっぱいのね。
日焼け防止の大きなつばの帽子をかぶったソコロは、昨日の不機嫌さが嘘のように始終ご機嫌だ。何かあったのだろうか。
岩場の先端に立ち、そこから壺を海に向かって傾けると、さらさらと風が海に砂を運んでいく。四人で砂が空中に舞うのを静かに見守った。
――エルノーラよ、次は魅了の力などもたずに生まれておいで。そして好きな人を見つけてその人と幸せになってね。
アンバーはさらさらと舞う砂を見ながら、エルノーラに対して願いや祈りを捧げた。
しばらくの間そうしていたが、誰かの提案で浜辺へいく。壺はあの場所へおいてきた。――エルノーラの墓標として。
裸足で砂浜を歩くのは想像してたより気持ちよく、アンバーもソコロもはしゃいだ。ちょっとスカートを摘み海水に足をつけては、海水の冷たさにきゃっきゃっと声を上げた。
特にソコロのはしゃぎっぷりにはアンバーですら驚いた。いつもアンバーが目にしていたソコロは、完璧な淑女で王太子の婚約者で公爵令嬢だったから。その姿を知っていたら、今のこの姿は想像できないだろう。
浜辺で貝殻を拾った。初めての海記念で自分達へのお土産。
そんな二人を砂浜から目を細めて見守る二つの影。
どこからどう見ても二組の恋人同士。実際は違うけど。
昼食は海の町の食堂で。町で食事する機会などほとんどないアンバーやソコロは、目を輝かせてメーニューを眺めた。
ワインで乾杯(アンバーはジュース)して食事をする。昨日とは打って変わっていい雰囲気で会話も弾む。
「父はいくら馬鹿をした息子でも、私がかわいいのだろう。伯爵位と領地を賜れてね、その領土は今は荒れてはいるが、正当に管理すればいい土地になりそうなんだ。だから暫くは領地経営に力を注ぐつもりだ」
食事も中盤になった頃に、スチュアートの今後の話になる。常に穏やかなスチュアートは静かにそう語った。
「それに、国庫の件もある。少しでも税収を上げて国に恩返しをしないと」
やや自嘲気味にスチュアートは笑う。
「ストゥーには向いてるよ、割とコツコツ一つのことに取り組むのが、昔から好きだっただろ」
「そうね。国の経営もストゥー様には向いてたけど、領地のが小さい分、努力した結果が目に見えそうよね。うん。やり甲斐があって面白そうだわ」
さらっとソコロ『国を経営』って……だけどアンバーの右斜め前の人は、国を経営してたかもしれない人で、右横の人はその隣にいたかもしれない人なのよね。アンバー、人生とは分からないものだと、しみじみ思う。
「そうだな。まずは領地へ行き一通り見て回って、それから短期的計画と長期的計画をたてるつもりだ。」
「そうだな。鉱山などある可能性もあるから、並行して調査したいとこだな」
デイブの言葉にスチュアートはああと言って頷いた。
「それと農作物の実験もしたいですわね。きっとその土地でよく育つものが、あるはずですわ」
次から次へと領地改革の提案がされていき、アンバーは幼馴染っていいなと、様子を眺めて微笑んでいた。
「こうやって考えてみると、出来ることがたくさんあるな」
スチュアートが、穏やかに口元を緩め微笑えむ。
ぴくっとソコロが反応する。そしてソコロも穏やかに微笑んだ。
酔いも手伝ってか、さっきよりもはしゃぐソコロはお土産を買い、帰りの馬車に乗るとあっという間にスチュアートに寄りかかり寝てしまう。
スチュアートは苦笑いをしながら、苦労して上着を脱ぐとソコロにかけた。
馬車はゆっくりと宿屋へ向かっている。車内は無言で話す者はいないけど、昨日の馬車内とは違って穏やかな雰囲気だ。
アンバーもはしゃぎ過ぎたのか、うとうとしかけた時だった。
「アンバー嬢」
とスチュアートから声をかけられ、アンバーはビクっとし目が覚めた。今は一ミリも眠くない。
「はっはい」
つい大きな声がでる。しまったとアンバーはソコロを見るが、すやすやと寝息をたてて寝ている。
「アンバー嬢はよほどソコロに信頼されているんだな。」
「ああ確かに。ソコロは信用のない者の前では、どんなに疲れていても寝たりしないな」
「だろデイブ。それが寝息をたてて寝ている」
スチュアートは隣で寝るソコロを愛しそうに見る。
「えっあ、信用とかは分からないけど、仲良くして貰えて嬉しいのは私の方で……だからジョイ嬢のことは……はっすいません」
アンバー、寝ぼけているのか、目は覚めていても頭は寝ているのか、要らないことを言う。
「ははっ――アンバー嬢は手厳しいな。――ジョイとは軽い遊びのつもりだった」
ちらっとスチュアートはアンバーを見る。
「まぁ女性の前で話すのもどうかと思うが、男には男の生理があってね……ジョイは遊ぶには都合のいい相手だったんだ」
「爵位が低く男慣れしていて、あと腐れががない相手か」
「まぁそんなとこだ。ソコロは知らないだろうが、そんな相手はそれまでにも何人かはいたんだ――……ソコロが相手をしてくれるなら他には要らなかったが、そうはできないだろ?」
アンバーがじとっと睨んだせいか、スチュアートはそんな言い訳をした。
「実際、長い間婚約してたのに、こんなに近い距離なのも今日が初めてなんだ」
寝落ちしたソコロはスチュアートの胸を枕にすやすやと寝ている。スチュアートの腕はソコロの背中にありソコロを支えるように添えられていた。
「おかしくなったのは体の関係ができた頃か。『ジョイの願いは叶えなくてはいけない』そんな強迫観念があって、常に霧の中にいる感覚だった」
ステイシーが言ってた『願えば叶えなくてはいけない』は魅了がかけられた人にも自覚があるのか。しかも強迫観念。
「あの、ソコロに手を上げてしまったときも、ソコロと話しているが現実味がなく、いつも以上に曖昧で夢の中にいる感覚だった。だけど婚約解消と不幸になる結婚とソコロに言われ、激昂してしまったんだ」
「それなら何故、卒業パーティーで婚約破棄など計画されたのですか?」
「ジョイは望んでいたな。だが私は一度も頷いたことはない。側近達とは何やら計画をたてていたらしいが、私は関わらなかった」
『願えば叶えなくてはいけない』と強迫観念をもちながら、ソコロとの婚約破棄には抵抗していたのか。それだけソコロに対して想いがあったと解釈していいのだろうか。
「どう説明すればいいかな。ソコロが成長して美しい娘なのは、頭では理解はしているが、ソコロは私にはいつまで経っても、私とデイブのあとを追いかけてきて、転んで泣く少女だった」
「あったなそんなこと。負けず嫌いだからな、ソコロは」
「ソコロは守らなくてはいけない存在で、私の一方的な欲求を、解消する相手にはしてはいけない。そんな思いがあった。だが」
スチュアートは横で寝ているソコロの頭を空いている手で優しく撫でる。
「手離すことになるなら、もっと距離を縮めておけば良かったかもな。ジョイの件では苦しめてしまったが、そうしていたらもう少しだけ、我慢して隣に居てくれたかもしれない」
ソコロの頭の天辺に口付けをスチュアートは落とした。
スチュアートの後悔とも懺悔ともとれる告白は、アンバーにはスチュアートのソコロへの告白に聞こえた。
今だってスチュアートがソコロへする行為は、とても婚約解消した相手にするものではない。
きっと自然と……自然と愛しいと思う気持ちがさせるのだろう。本人も、もしかしたら自分の行動に気づいていないかもしれない。
アンバーは急に切なくなって、泣きそうになった。
そんなアンバーをデイブは優しく引き寄せると、アンバーの髪をぽんぽんと撫でた。
「未来があるのが羨ましいよ。デイブもアンバーも仲良くな」
スチュアートは目を細めてデイブがアンバーの頭を撫でるのを見てそう言うと、ソコロに視線を移した。
馬のいななく声が聞こえ、馬車が止まった。宿屋に着いたようだ。
スチュアートがソコロを起こすと、ソコロは目を擦り、眠そうに伸びをする。
一同は宿屋の中に入り、それぞれの部屋へと消える。
最後の夜が幕を開けるのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
スチュアートさんを浮気者と思わないでね~。婚約者に触れなれない……若いし男の生理ゆえの行動と理解してください。
ソコロちゃんとの結婚後は浮気はありませんよ~たぶん。(しても完璧に隠しそうだけど……)
日焼け防止の大きなつばの帽子をかぶったソコロは、昨日の不機嫌さが嘘のように始終ご機嫌だ。何かあったのだろうか。
岩場の先端に立ち、そこから壺を海に向かって傾けると、さらさらと風が海に砂を運んでいく。四人で砂が空中に舞うのを静かに見守った。
――エルノーラよ、次は魅了の力などもたずに生まれておいで。そして好きな人を見つけてその人と幸せになってね。
アンバーはさらさらと舞う砂を見ながら、エルノーラに対して願いや祈りを捧げた。
しばらくの間そうしていたが、誰かの提案で浜辺へいく。壺はあの場所へおいてきた。――エルノーラの墓標として。
裸足で砂浜を歩くのは想像してたより気持ちよく、アンバーもソコロもはしゃいだ。ちょっとスカートを摘み海水に足をつけては、海水の冷たさにきゃっきゃっと声を上げた。
特にソコロのはしゃぎっぷりにはアンバーですら驚いた。いつもアンバーが目にしていたソコロは、完璧な淑女で王太子の婚約者で公爵令嬢だったから。その姿を知っていたら、今のこの姿は想像できないだろう。
浜辺で貝殻を拾った。初めての海記念で自分達へのお土産。
そんな二人を砂浜から目を細めて見守る二つの影。
どこからどう見ても二組の恋人同士。実際は違うけど。
昼食は海の町の食堂で。町で食事する機会などほとんどないアンバーやソコロは、目を輝かせてメーニューを眺めた。
ワインで乾杯(アンバーはジュース)して食事をする。昨日とは打って変わっていい雰囲気で会話も弾む。
「父はいくら馬鹿をした息子でも、私がかわいいのだろう。伯爵位と領地を賜れてね、その領土は今は荒れてはいるが、正当に管理すればいい土地になりそうなんだ。だから暫くは領地経営に力を注ぐつもりだ」
食事も中盤になった頃に、スチュアートの今後の話になる。常に穏やかなスチュアートは静かにそう語った。
「それに、国庫の件もある。少しでも税収を上げて国に恩返しをしないと」
やや自嘲気味にスチュアートは笑う。
「ストゥーには向いてるよ、割とコツコツ一つのことに取り組むのが、昔から好きだっただろ」
「そうね。国の経営もストゥー様には向いてたけど、領地のが小さい分、努力した結果が目に見えそうよね。うん。やり甲斐があって面白そうだわ」
さらっとソコロ『国を経営』って……だけどアンバーの右斜め前の人は、国を経営してたかもしれない人で、右横の人はその隣にいたかもしれない人なのよね。アンバー、人生とは分からないものだと、しみじみ思う。
「そうだな。まずは領地へ行き一通り見て回って、それから短期的計画と長期的計画をたてるつもりだ。」
「そうだな。鉱山などある可能性もあるから、並行して調査したいとこだな」
デイブの言葉にスチュアートはああと言って頷いた。
「それと農作物の実験もしたいですわね。きっとその土地でよく育つものが、あるはずですわ」
次から次へと領地改革の提案がされていき、アンバーは幼馴染っていいなと、様子を眺めて微笑んでいた。
「こうやって考えてみると、出来ることがたくさんあるな」
スチュアートが、穏やかに口元を緩め微笑えむ。
ぴくっとソコロが反応する。そしてソコロも穏やかに微笑んだ。
酔いも手伝ってか、さっきよりもはしゃぐソコロはお土産を買い、帰りの馬車に乗るとあっという間にスチュアートに寄りかかり寝てしまう。
スチュアートは苦笑いをしながら、苦労して上着を脱ぐとソコロにかけた。
馬車はゆっくりと宿屋へ向かっている。車内は無言で話す者はいないけど、昨日の馬車内とは違って穏やかな雰囲気だ。
アンバーもはしゃぎ過ぎたのか、うとうとしかけた時だった。
「アンバー嬢」
とスチュアートから声をかけられ、アンバーはビクっとし目が覚めた。今は一ミリも眠くない。
「はっはい」
つい大きな声がでる。しまったとアンバーはソコロを見るが、すやすやと寝息をたてて寝ている。
「アンバー嬢はよほどソコロに信頼されているんだな。」
「ああ確かに。ソコロは信用のない者の前では、どんなに疲れていても寝たりしないな」
「だろデイブ。それが寝息をたてて寝ている」
スチュアートは隣で寝るソコロを愛しそうに見る。
「えっあ、信用とかは分からないけど、仲良くして貰えて嬉しいのは私の方で……だからジョイ嬢のことは……はっすいません」
アンバー、寝ぼけているのか、目は覚めていても頭は寝ているのか、要らないことを言う。
「ははっ――アンバー嬢は手厳しいな。――ジョイとは軽い遊びのつもりだった」
ちらっとスチュアートはアンバーを見る。
「まぁ女性の前で話すのもどうかと思うが、男には男の生理があってね……ジョイは遊ぶには都合のいい相手だったんだ」
「爵位が低く男慣れしていて、あと腐れががない相手か」
「まぁそんなとこだ。ソコロは知らないだろうが、そんな相手はそれまでにも何人かはいたんだ――……ソコロが相手をしてくれるなら他には要らなかったが、そうはできないだろ?」
アンバーがじとっと睨んだせいか、スチュアートはそんな言い訳をした。
「実際、長い間婚約してたのに、こんなに近い距離なのも今日が初めてなんだ」
寝落ちしたソコロはスチュアートの胸を枕にすやすやと寝ている。スチュアートの腕はソコロの背中にありソコロを支えるように添えられていた。
「おかしくなったのは体の関係ができた頃か。『ジョイの願いは叶えなくてはいけない』そんな強迫観念があって、常に霧の中にいる感覚だった」
ステイシーが言ってた『願えば叶えなくてはいけない』は魅了がかけられた人にも自覚があるのか。しかも強迫観念。
「あの、ソコロに手を上げてしまったときも、ソコロと話しているが現実味がなく、いつも以上に曖昧で夢の中にいる感覚だった。だけど婚約解消と不幸になる結婚とソコロに言われ、激昂してしまったんだ」
「それなら何故、卒業パーティーで婚約破棄など計画されたのですか?」
「ジョイは望んでいたな。だが私は一度も頷いたことはない。側近達とは何やら計画をたてていたらしいが、私は関わらなかった」
『願えば叶えなくてはいけない』と強迫観念をもちながら、ソコロとの婚約破棄には抵抗していたのか。それだけソコロに対して想いがあったと解釈していいのだろうか。
「どう説明すればいいかな。ソコロが成長して美しい娘なのは、頭では理解はしているが、ソコロは私にはいつまで経っても、私とデイブのあとを追いかけてきて、転んで泣く少女だった」
「あったなそんなこと。負けず嫌いだからな、ソコロは」
「ソコロは守らなくてはいけない存在で、私の一方的な欲求を、解消する相手にはしてはいけない。そんな思いがあった。だが」
スチュアートは横で寝ているソコロの頭を空いている手で優しく撫でる。
「手離すことになるなら、もっと距離を縮めておけば良かったかもな。ジョイの件では苦しめてしまったが、そうしていたらもう少しだけ、我慢して隣に居てくれたかもしれない」
ソコロの頭の天辺に口付けをスチュアートは落とした。
スチュアートの後悔とも懺悔ともとれる告白は、アンバーにはスチュアートのソコロへの告白に聞こえた。
今だってスチュアートがソコロへする行為は、とても婚約解消した相手にするものではない。
きっと自然と……自然と愛しいと思う気持ちがさせるのだろう。本人も、もしかしたら自分の行動に気づいていないかもしれない。
アンバーは急に切なくなって、泣きそうになった。
そんなアンバーをデイブは優しく引き寄せると、アンバーの髪をぽんぽんと撫でた。
「未来があるのが羨ましいよ。デイブもアンバーも仲良くな」
スチュアートは目を細めてデイブがアンバーの頭を撫でるのを見てそう言うと、ソコロに視線を移した。
馬のいななく声が聞こえ、馬車が止まった。宿屋に着いたようだ。
スチュアートがソコロを起こすと、ソコロは目を擦り、眠そうに伸びをする。
一同は宿屋の中に入り、それぞれの部屋へと消える。
最後の夜が幕を開けるのだった。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
スチュアートさんを浮気者と思わないでね~。婚約者に触れなれない……若いし男の生理ゆえの行動と理解してください。
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